今さら音読? いえ、今こそ音読! その2

2013 年 5 月 13 日

 4月初めだったかと記憶していますが、このブログで音読について記事を書きました。今回は、その続編を書いてみようと思います。

 音読に関しては、いくら「大切です」とお伝えしても、お子さんは「面倒くさい」「たいぎい」と言い、親のほうも「何となく気が進まない」といったような反応をされるかたが少なくありません。お子さんの反応はともかく、親もあまり乗り気にならないのはなぜでしょうか。

 今回は、その理由について考えてみました。音読というと、「機械的訓練」というイメージがつきまとうからでしょうか。このような認識に立つと、「音読は、自発性や思考力の発達の妨げになるのではないか」という疑念が湧いてきます。実際のところどうなのでしょうか。

 確かに、音読は文章をひたすら声に出して読むだけの退屈な訓練に見えるかもしれません。「何度もワンパターンの訓練をして何の得があるのか」と、思われるかたがあっても不思議ではありません。しかし、この反復練習こそが子どもの“読み”の熟達に欠かせない重要な学習方法なのです。

 前回お伝えしたように、音読の反復練習によって文字列を目でとらえながら意味に変換していく脳内のシステムができあがります。読みの態勢づくりにとって、反復による学習こそ“命”なのです。また、繰り返し同じ文章を音読すれば、文章をまるごと暗唱できるようにすらなります。後述しますが、そこに大きな価値があるのです。

 こうした学習が「子どもの自発性を損なうのではないか」と、心配する人もおられるかもしれません。しかし、それは無用です。“読み”の態勢を築く時期と子どもの発達過程とがうまく連動しているからです。小学校低~中学年は、繰り返しを厭わない時期、単純な記憶に最も強い時期にあたります。声に出して読む学習を繰り返すのは、むしろ理に叶った方法なのです。

 この反復によって、読みの態勢が整うだけでなく、日本語の文の基本的な構造が脳に浸透します。これが後々までも役に立つことになります。よい文章を書けるようになるには、よい文章を暗唱できるまでに声に出して読む方法がいちばんです。これによって、よい文章がどういうものか、脳に浸透していくのですから。

 小学校の5・6年生だって遅くありません。国語の能力に不安を感じているお子さんは、毎日少しの時間でもよいですから音読練習を繰り返すべきです。それによって、文字列から言葉を取り出し、意味を理解していく脳内の態勢が、練習に応じて整っていきます。感受性期、臨界期などという言葉がありますが、それは最適な時期を意味するものの、その時期を過ぎれば効果がなくなるわけではありません。

 また、意外に思われるかもしれませんが、音読は子どもの自発性を奪うどころか、積極的な読みの姿勢を育ててくれます。どういうことかというと、読みの態勢がある程度整ってくると子どもは自然と読むことへの欲求を高め、自分で本を読んだり、活字から知識を得ようと行動し始めたりするのです。それが読みの楽しさを実感する経験につながり、読書好きの子どもへと成長させていきます。活発な読書は、ますます読む力を伸ばしますから、好循環の連鎖を引き起こしてくれます。

 前述のような人間の特性を、「自発性使用の原理」と言います。ある技能の習得が一定レベルに達すると、人間は自ずとそれを実際に活用しようと行動を起こし始めるのです。これはフランスのジャーシルドという学者が唱えた説ですが、人間の活動の様々な面に当てはまります。逆に、読みたがらない子どもは、読もうにもうまく読めないから苦痛なのです。もともと本が嫌いなわけではありません。読むことで受けられる恩恵に浴すことができないければ、読もうという気が起こらないのは当然です。

 思考力についても同様のことが言えるでしょう。音読が子どもの考える姿勢をスポイルすることはありません。音読によって、自分の読みの状態を自ら検証したり、自分の声を通して著述内容を理解しようとしたりすることで、むしろ自ずとものを考える姿勢を備えた人間に育っていくのです。

 以上からもわかるように、音読は学習に欠かせない基本的能力を形成してくれる優れた学習法なのです。音読について、「積極的な行動学習である」とか、「自学自習のもっとも基本となる形態である」と指摘する専門家がおられますが、決して誇張ではありません。声に出して読むのは目で読むよりもはるかに子どもの積極的な意志を引き出しますし、また子ども自身が一人でできるシンプルな勉強なのですから。

 今のうちに音読をたっぷりとやっておきましょう。音読を嫌がらずに張り切って取り組むようにするためには、しばらくはおかあさんのサポートが必要かも知れません。その場合、ぜひ実行していただきたい大原則があります。それは、元気よく大きな声で読むということです。

 以下は、専門家の著述を参考に、大きな声での音読がいかに子どもの知的成長を促すかについて簡単にまとめたものです。

大きな声で読むことの効能

音読の効能は、黙読の準備以外にも多々あります。特に、大きな声で読むと次のような効果が引き出されます。

1.大きな声で読むと、元気がでる。
   →やる気・積極性名称未設定-2
2.大きな声で読むと、間違いに気づく。
   →自己評価
3.大きな声で読むと、内容がよくわかる。
   →学力向上
4.大きな声で読むと、よく覚える。
   →黙読より効率的
5.大きな声で読むと、周囲も活性化。
   →明るい家庭に

 どうでしょう。大きな声で元気よく音読することが、こんなにも子どもの知的成長を引き出してくれるのですね。普段音読をしないお子さんが、いきなり音読するのは少し恥ずかしいかもしれません。ですが、音読の様々な効能を踏まえるなら、何としても取り組んでいただきたいものです。ぜひ、おかあさんから「音読をやってみよう!」と励ましてあげてください。お子さんのすばらしい成長に向けた転機になるかもしれません。

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カテゴリー: アドバイス, 勉強の仕方, 子どもの発達, 家庭での教育, 家庭学習研究社の特徴

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