2013 年 7 月 1 日 のアーカイブ

子どもの学習意欲は親次第 ~おかあさんの勉強会2~ 後半

2013 年 7 月 1 日 月曜日

 前回に引き続き、第2回「おかあさんの勉強会」の内容と様子をご紹介します。弊社の会員家庭ならずとも、また受験生家庭かどうかに関わらず、「親からの働きかけで、わが子の学習意欲が高まるよい方法はないものか」ということは、子どもをもつ親共通の関心事であり、悩みであろうと思います。今回の記事が多少とも参考になれば幸いです。

 さて、4・5年生会員の子どもたちに実施したアンケートの結果を確認したところで、つぎは保護者に学者の調査資料をご紹介し、小学生の子どもの学習意欲は何によって高まるかについて一緒に考え、勉強していただきました。

② 小学校4~6年生の学習意欲を支えるのは親の差し出す期待である

 参加された保護者にお配りした資料は、このブログでご紹介したことのある資料です。受験生をもつ家庭にとって非常に参考になるでしょう。

 この資料は、筑波大学の先生の著作にあったものです。同大学には、東京教育大学の時代から教育心理学や発達心理学を専門とする優秀な学者が多数おられます。子どもの学習意欲の源となる要素は、「賞罰で引き出される意欲」「内発的意欲」「規範意識による意欲」「目標達成に向けた意欲」の4つです。これらの要素の強さは常に一定ではなく、年齢で変化するということがこの資料でわかります。

 おかあさんがたに注目していただきたいのは、4・5年生のころに「規範意識による意欲」がいちばん高くなるということです。規範意識という言葉はやや難しいのですが、簡単な例で言うと「親が期待するような人間になろう」という意識などがそれにあたります。

 ただし、子どもは無条件に親の期待に沿おうと思うわけではありません。親子の信頼関係あってのことです。また、親の差し出す期待に対し、子どもが納得しなければそういう気持ちは湧いてきません。また、親の期待が大きすぎると子どもには重荷になり、やがて重圧に負けてしまうおそれがあります。ですから、「何を期待として差し出すか」については、親がよく考える必要もあるでしょう。

 以上の点は非常に大切ですので、あとでもう少し掘り下げて採り上げることにして次へ進みました。

③ 規範意識以外の3つの意欲の要素

 残りの学習意欲の3つの要素については、校舎の責任者がご説明しました。規範意識に基づく学習意欲が中~高学年ではいちばん強い要素ですが、実は親の向けかた次第で他の要素も有効に働きます。校舎責任者から、そのことを例に基づいて説明してもらいました。

 たとえば賞罰(褒美や叱責など)は、子どもが全面的に親頼みの2~3年生まではいちばん強い要素です。しかし、子どもの成長につれて影響力を弱め、6年生後半には4番目の要素に下がります。ただし、親の愛情が伝わるご褒美なら何歳でも有効です。遅くまでがんばるわが子に夜食をつくって励ますおかあさんは少なくないことでしょう。そういう心遣いは子どもの胸に響きます。

 目標達成に向けた意欲は、6年生前半まで4つの要素のなかでは最下位を推移します。小学生の子どもには、目の前の具体的な目標はともかく、中~長期的な目標(受験など)を意欲の糧にすることはほとんど期待できません。これは社会的な知識に乏しい年齢ですからしかたありません。しかし、「私学の行事を一緒に見に行く」とか、「私学に通ういとこに学校の楽しさを語ってもらったり、激励してもらったりする」など、年齢なりの動機を引き出す試みを繰り返していると、徐々に効果が表れてきます。ですから、この要素から子どもに働きかける方法も有効なのです。

 内発的動機は、「知りたい」、「解き明かしたい」という欲求に基づく意欲ですが、小学校の6年間を通して2番目を推移します。内発的動機に基づく学習意欲は、人間の本性として必ず存在するもので、それを背景とした意欲は健全で望ましいものです。ですから、親も塾も一貫して大切にしてやりたいものです。たとえば学習塾は、日頃の学習指導の場で、考えることの楽しさや、論理に基づいて思考を押し進めていくことの醍醐味を子どもたちに教えるように心がければ、大いに効果があるでしょう。その意味で、学習塾ががんばって支えるべき要素と言えるでしょう。弊社は、「受験は受からなければ意味がない」と子どもに思い込ませ、子どもを追い立てて頑張らせるるような指導は、小学生にさせるべきでないと考えています。勉強のよさを知り、自らを伸ばす喜びを味わうことのの延長線上に受験を位置づける。こうした勉強で受かれば、受験後の長い人生が有意義で前向きなものになるのではないでしょうか。その意味において、「内発的意欲」は先々まで尊重したい意欲の要素なのです。

④ 親の影響力が強い、4・5年生の今をどう活かす?

 ここまで勉強してきた事柄から、学習意欲の4つの要素のうち、賞罰と規範意識は親子関係や親からの働きかけによってもたらされるものだとわかりました。低学年期における学習意欲のいちばんの要素は「賞罰」による意欲で、中~高学年のいちばんは「規範意識」による意欲だということを踏まえると、「小学生の学習意欲は親次第だ」という結論が導き出せそうです。特に、この催しの対象学年である4・5年生については、「規範意識に基づく意欲」をどう引き出すかが非常に重要なポイントを握っていると言えるでしょう。

 そこで再び「規範意識に基づく学習意欲」にスポットライトを当てていきます。先ほどお伝えしたように、規範意識というのを最もわかりやすい例で言うと、「親の期待に応えようという意識」です。この意識をうまく引き出し、学習意欲に転化させる方法があれば、子どもの学習はより活性化するはずです。

 そこで、この後は「親から子どもに何を期待として向けるべきか」を一緒に考えていくことにしました。ただし、前述のように4・5年生ともなると、親から向けられた期待が納得のいくものでなければ、「親の言うような人間になろう」とは思いません。また、ただ勉強することが親からの期待では、子どもは素直に「勉強をがんばろう」とは思わないものです。それどころか、親への疑念や反感を抱くおそれもあるでしょう。

 親から向けられた期待が、親への信頼の気持ちを引き出し、子どもの学習意欲の向上につながる。それが理想です。そういう流れはどうすれば実現するのでしょうか。その際に示されるべき期待とはどんなものであるべきでしょうか。それは、おそらく家庭の教育方針や親子関係でそれぞれ違ってくるものだと思います。そこで、「親からわが子へ向ける期待はどういうものであるべきか」を、各自思いつくだけあげてもらいました。そして、それをもとにワーク2を始めました。 

 なお、期待の内容を考えていただくにあたっては、「子どもが納得し、素直に頑張ろうという気持ちになる」「継続することで成果が積み重なるようなもの」「親がほめたり激励したりするチャンスが増えるもの」「直接勉強に関わることだけでなく、結果的に勉強に好影響を与えるものもOK」など、4つのヒントを提示しました。ワークの手順は次のようにしました。

1.親から向けるべき期待として思いついたことを、順に全て発表していただきました。まとまった形である必要はなく、覚え書きで書いたことを羅列する形で構いません。

2.聞いている人は、参考になる点、自分で気づかなかった点があればメモします。

3.次に、これまで書き留めていた期待の内容を点検し、それらの根底に共通することは何かを考えたうえで、子どもに向けたい期待を各自最終的に短文にしてまとめていただきました。

 <例>
 ・何でも、やると決めたことは最後までやりきろう!
 ・だらだら何となくやるのではなく、
  オンとオフの切り替えをはっきりさせよう!
 ・自分にも家族にもウソのない生活をしよう! など

4.全員書き終わったら、順に自分の書いた「わが子への期待」を発表していただきました。そして、全員で感想を述べ合っていただきました。

 これで、この日の予定の終了です。この勉強会を通じて、子どもの学習意欲には親との関わりが随分影響しているのだということに気づくとともに、親は「勉強しなさい!」と子どもに命令するよりも、子どもとの信頼関係を築くことが子どもの学習意欲の向上につながることを学んでいただきました。親への信頼の気持ちが湧けば、自然と「親の期待に沿おう」という気持ちが高まりますし、また子どもの心の奥にある「向上心」に灯がともるのです。

 学習塾の指導担当者が進行役ゆえ、いろいろ至らない点もあったと思いますが、おかあさんの家庭でのサポートに少しでもお役に立てたなら幸いです。

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