修道と広島女学院の校長をお招きして その2
木曜日, 11月 28th, 2013
前回に引き続き、修道と広島女学院の校長先生をお招きして実施したイベント、「私学が育む子どもの未来」の様子をご紹介します。今回は、修道の田原校長、広島女学院の星野校長にお話しいただいた事柄の後半をご紹介します。
④ 自分を見つけ出すための環境
中学・高校の6年間は、思春期を経て青年前期に移行していく大切な時期ですが、この期間に子どもたちは自分という人間のありかたを追求し、将来の展望を定めていくことになります。しかしながら、近年は自分がどんな適性をもった人間なのか、どんな進路を歩むべきか、そういった大事なことに向き合う姿勢の欠落した生徒が増えていると言われます。
私学には高校受験がありません。思春期を受験準備に追われることなく過ごせる私学の生徒にとって、“自分探し”のゆとりをもてることは大きな強みです。修道、広島女学院では、この点に関してどのような教育やサポートをしておられるのかを尋ねてみました。
修道 修道で過ごす6年間で、生徒は「自分でものを考える」という姿勢を養い、自分の進路を見つけ出します。学校は、そうした生徒に様々な刺激を与えます。たとえば、年間を通じてOBを招いて講演をしてもらっています。ありがたいことに、その講演に出たいという申し出がたくさんあります。また、「東大見学ツアー」というのを高校1年生対象でやっています。数ある大学の中で、敢えて頂点にある東大を選び、最高のものを見せることで発憤を促すわけです。東京ドームホテルのオーナーは修道OBで、そこに泊まらせてもらいます。参加者はバス一台分、50名に限ります。中学3年生のときの成績で選抜しますので、行きたい連中はこの時期に必死で勉強します。このように、男の子は単純な仕掛けに燃えるので、そういう刺激をたっぷりと与えます。ともかく、卒業生にいっぱい協力者がおり、その人たちと交流することで生の進路指導ができることが修道の強みだと思っています。
女学院 女の子が仕事に就くにあたっては、自分の隣国のこと、世界で何が起こっているのかということなどを学びながら、人間としての視野を広げておくことが必要です。そういう知識を修めることで、「自分に何ができるか」「何に貢献できるか」「自分の力は、どこで発揮できるか」を考えるようになっていきます。そうした成長を引き出すため、たとえば世界銀行で働いているOBをお呼びして話をしてもらったり、海外の人々との交流を積極的に行ったりなどの働きかけをしています。年間を通じて、100名以上の人に来校していただいています。その方々は、教員、社会人といろいろです。海外の大学に進学を希望する生徒も調べてバックアップするなど、時代の要請に答えるグローバル教育といった視点を大切にしています。
⑤ 校長先生にちょっと聞いてみたい!
このコーナーは、ひとつのまとまったテーマとしては掲げられなかったものの、どうしてもお聞きしたかった話題について手短にお話しいただこうという趣旨で設けたものです。
1.私立進学校への進学が決まったとき、私たち(学習塾)が最も多く受ける質問は、「勉強についていけるでしょうか」というものです。実際、学習状況に問題が生じた生徒さんに対しては、何らかのフォローがあるのでしょうか。
修道 まず大切なのは、そういった状況に至らないことです。本校は、「自由、自由」といった雰囲気がありますが、中1と中2(初級)においては、みっちり勉強を鍛えます。相当な勉強をしてもらっています。これで学習習慣や学習姿勢をしっかりとさせ、基礎を固めます。それでもテストの成績がよくない生徒は、担任がピックアップし、バス1台(50名)で夏休みに山奥にあるお寺に出向き、セミナー合宿をやります。2泊3日で、朝から夜中までひたすら勉強に取り組ませ、「もう絶対にこんな経験はしたくない!」と生徒が悲鳴をあげるほど勉強させます。そういうきつい体験を通して生徒を目覚めさせ、取り組みを変えていこうというわけです。入ってからの心配など無用です。
2.英語が世界共通語としてますます重要になっています。広島女学院は明治19年の創設以来、英語教育に定評があります。英語力をつけることに関して、どんなことをされているのでしょうか。
女学院 おっしゃるように、本校は英語塾としてスタートしました。英語習得のための教育には熱心に取り組んでおり、外国からも外国人が多数やってくる環境にあります。本校では、英語教育の根本として、“英語を学ぶ”というのではなく、“英語で学ぶ”ということを大切に考えています。語学は何かを学ぶための道具であるという認識に立っているからです。英語教員は、英語の授業においても英語を覚えさせるのではなく、英語の文章にあるメッセージ性に着目させるよう心がけています。入学いただくにあたっては、予め英語を学んでおく必要はありません。ゼロからのスタートを前提に指導していきます。また最近では、「使える英語にする」という文部科学省の方針に沿って、トーイックだけでなく、話す力を重視しているトーフル(トーフルジュニア)も導入しています。
3.男子だけの学校で6年間、女子だけの学校で6年間を過ごす意義についてお話しください。
修道 正直申し上げて、同じ年齢だと男子より女子は精神年齢が上で、男子は相手にされないほどです。中1や中2の男の子は、言ってみればサルのようなものです。女子に頭を押さえられない環境で、伸び伸びともみくちゃで過ごしてこそ成長できるんです。それに、男子だけで過ごすと女性を神格化し、女性に純粋なあこがれをもつようになります。それはとても大切なことです。近年、経営上の理由で男子校や女子校が激減していますが、その一方、「共学でありながら男女別学」という方式をとる学校が現れています。このほうがよい教育ができるからです。私は、男子校は残されるべきだと思います。
女学院 女子だけだと、自分を遠慮なく出せます。同じ年齢の男子は、幼い、うるさい、落ち着きがないなど、この年齢の女子にとって、言ってみれば面倒な存在なんですね。女子同士のほうが安心できるんじゃないでしょうか。また、女子だけで学校の様々な行事を運営することで、男子に頼ることなく全部自分たちでやることで自立心が養われ、リーダシップをもった女子も育ちます。また本校では、高校に上がっても生徒の進路とは無関係にクラスを編成します。いろいろな方向をめざす生徒が交流を深めながら、グループで励まし合う体験は貴重なもので、こうした経験を通して「全体で力を発揮する女子の特性」が活かされるようになるのです。私も、女子校は必要だと思います。
⑥ 私学で伸び伸びと成長するための秘訣
いよいよ最後のテーマです。先ほどの生徒さんへのアンケートでもわかりますが、どの私学にも入学試験があり、第一志望の者だけが入学しているわけではありません。それなのに、修道や広島女学院の生徒さんの大半は「学校大好き!」と言っています。これは素晴らしいことですが、何か秘密があるのでしょうか。また、思い通りの受験結果が得られなくても、子どもがちゃんと成長していくにはどういう配慮が必要でしょうか。
修道 入学したら、もはや第一志望だったか、第二志望だったかはどうでもよいこと。「この学校が好き!」という思いを育てる力が私学にはあり、それが公立学校との大きな違いです。まず、生徒の面倒見が違います。この細やかな面倒見は、公立では実現できません。また、先生はみな「修道で教師になりたい!」という強い思いをもち、採用に至った情熱ある人間です。その先生は、ずっと修道の先生であり続けながら成長していきます。数年ごとに教育委員会から割り振りされて勤務校が変わる、公立の先生とはそこが違います。つまり、先生の意識や学校愛にものすごいものがあり、ロイヤリティが違うのです。入学してきた生徒も、そうした学校環境にいれば、自ずと「修道大好き!」になるんですね。私学は、基本的にはどこでもそうです。喜んで行かせてあげてください。
女学院 私どもは、たとえ第一志望で入学されたのではなくても、「6年間、この学校に入ってよかった」と思っていただければよいと考えています(弊社から:そういう流れが現実のものであることは、前回ご紹介したアンケート結果でおわかりになるでしょう)。広島女学院に入学した生徒さんには、学校生活を通して「二つ選択肢があったら、しんどいほうを選ぶ」人間になってほしいと願って教育にあたっています。それが人としての成長を意味するからです。このような成長の機会に、お子さんはもうすぐ直面されます。どの中学校を受験するかという受験校選択や受験後の進路選択も、親子で考えを交わしながらしていく経験をすることが子どもにとって重要なことです。たとえショックな結果になっても、他の誰かや何かのせいにせず、自分で責任を引き取ることが人としての成長に繋がるのです。そうすれば、自分の思っていた学校を選べる結果になっても、それが叶わなかったとしても、お子さんは進学先でさらなる成長を遂げることができるでしょう。
以上が、イベントでお二人の校長先生にお話しいただいた内容です。どんな感想をもたれたでしょうか。筆者は、この2校がなぜ広島で大きな人気を得ているのか、ご来場の方々には十分伝わったと確信しました。簡単にまとめたため、実際のイベントでのおかあさんがたの反応の様子や会場の熱気は到底お伝えできないのが残念です。
ともあれ、お二人の校長先生のおかげで、とても内容の濃いイベントになりました。この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。
なお、校長先生がたのお話のあと、弊社の各校舎長が「受験生活を充実させ、私学進学後に大きく伸びていくために、親に必要な配慮としてどのようなことがあるか」についてお話しいたしました。その内容については、残念ですが今回は割愛させていただきます。