2014 年 1 月 14 日 のアーカイブ

算数学習からみた4年部1年間の意義

2014 年 1 月 14 日 火曜日

 2014年度「前期講座」は、5・6年部が2月22日(土)、4年部が3月8日(土)に開講します。そこで年明けからは1月11日(土)を皮切りに、毎週土曜日にご入会いただくための「会員選抜試験」を行っていきます。

 この試験は、3月初旬まで毎週実施しますが、開講までに入会するには、開講日の1週前までにこの試験を受け、合格していただく必要があります。ご検討の程、よろしくお願い申し上げます。

 さて、「いずれ中学受験を」と考えておられるご家庭では、「いつから受験勉強を始めるか」ということが問題になろうかと思います。弊社の場合、基本としては「4年生からの3年間で受験対策を完成させる」という考えに立って指導を行っています。

 なぜ4年生から受験指導を始めるのかと言いますと、主に算数の学力形成面からくる理由によるものです。算数の学力は一朝一夕には伸ばせません。また、算数的な思考やセンスを磨くには、5年生からの受験対策では難しい面があります。

 今回は、この点に関する弊社の考えをご説明してみようと思います。以下は、弊社の教材開発課の算数担当者が説明会用の資料として書いた原稿をベースに、筆者がブログ用に手を入れたものです。

 算数は、受験対策で最も大きな比重の置かれる科目です。それは、小学校教育のみならず、中学進学後も教科の中心的存在であり、大学受験においても国立大学や理系学部を受ける際に必須とされる教科だからでしょう。

 また、教科としての重要性という観点を抜きにしても、算数は子どもにとって大切な教科です。というのは、考えの筋道を明らかにしていく醍醐味が最も感じられる教科であり、がんばった成果がはっきり数字になって出てくるため、子どもにとって最も“励み”や“達成感”の得られる教科だからです。

 しかし、それだけに算数の成績はよきに悪しきに子どものやる気や有能感を刺激します。また親の側も、わが子の算数の学力や評価点を、入試での可能性のバロメーターや将来の見通しの尺度として受け止めがちです。こうした様々なファクターが、「何とかして算数のできる子になって欲しい」という親の願望に繋がっているのでしょう。

 では、算数学力の伸びしろはいつ決まるのでしょうか。それは、だいたい小学校4年生前後だと思われます。と言うのは、算数で最も難しい内容は、1に割合、2に分数、3に小数です。また、

算数の最初のハードル・・・2年のたし算のくり上がりとひき算のくり下がり
次のハードル・・・3・4年の整数のわり算、分数・小数
最後のハードル・・・5・6年の比例・割合
         と言われています。

 この点を踏まえると、4年生が「算数学力を伸ばせるかどうか」の鍵を握っていることがわかります。この学年を境にして、算数の学習内容が抽象性を帯びてくるのです。

 算数・数学が難しいと思われがちなのは、その抽象性にあります。分数で全体を1としたり、割合で全体を1とみたりするのは、抽象性の典型です。発達心理学においてよく言われるように、具体的思考から抽象的思考が育っていくのが小学4年生です。論理性に目覚め、Body Language・非言語的言語から大人の正式の言葉に切り換わるときなのです。

 したがって、算数力が身につくかどうかも、このような言語の質的転換に成功するかどうかによる、と言われています。このことから考えると、国語的観点からも、算数的観点からも、4年生という時期の思考の発達が学力形成の分岐点だと言えるのではないでしょうか。

 20140114特に算数は、前述のように子どもの有能感を大きく左右します。その理由と深く関わるのですが、「算数・数学は、考える喜びを得ることができるから、考え方を学ぶのに最適な科目」ということです。1本の補助線を考えついたことですっと課題が解けた喜び、ちょっとした工夫で複雑な計算が簡単にできた喜び、数学なら、いまだに証明されていない定理もあります。こんな経験は他教科では味わえません。

 以上のことから、「算数のできる子=考える喜びを知っている子」だとおわかりいただけるでしょう。では、このような子どもはどうやって育つのでしょうか。それには、本格的な受験勉強を始める前の年齢期(4年生まで)に、考える喜びを味わう体験をたくさんしておくことです。以下は、算数学力を支える主要な要素を示したものです。

20140114b

 受験の算数というと、大概の人は上の二つの要素を思い浮かべるでしょう。しかし、小学校の低学年頃までは、通常の意味での「教える」ということは、殆ど役に立たないと言われています。算数的な実場面にふれ、そのもつ意味を肌で感じとったり、自分で得心したりする経験こそ意味をもちます。

 ですから、低学年期から公式を意味もわからずに覚えさせたり、方法のみをたたき込んだりしても、真の算数力は身につきません。それよりも、上表の関心・態度を伸ばすことが重要なのです。それがうまくいけば、残りの3つの学力は自然に備わってきます。小学校低~中学年までの子どもにとって、算数学習に関わる自由な思考、自主的な学習態度を育む体験を繰り返すことこそ重要なのです。弊社は、4年部の1年間をそういった意味で活かしたいと考えています。

 なお、弊社の資料をお取り寄せいただくとお気づきになると思いますが、4年部では教科書の範囲を一から指導するものの、学校よりもはやくカリキュラムを消化していきます。これは、中学入試の算数課題のレベルと教科書で扱う課題のレベルに大きなギャップが存在するためで、その穴埋めをする期間がどうしても必要だからです。

 弊社が心を砕いているのは、前述のような根本的な方針と、受験の事情を考慮した指導とが矛盾しないようにすることです。したがって、テキストの作成は専門のスタッフが指導現場との連携をはかりながら、周到な配慮のもとに行っています。

 ここまでの説明でお気づきでしょうが、「4年部から入会しないと受験に間に合わない」ということはありません。学習意欲の高いお子さん、学習習慣のしっかりとしたお子さんなら、5年部以降の入会でも十分受験に対応することができます。6年部終了時点の弊社会員の入会時期を調べると、4年部からの入会が6割強、5年部からの入会が約3割、残りが6年部からの入会者です。

 「いつから受験勉強を始めるか」についてはお迷いになるご家庭もあると思いますが、交通の事情や、お子さんの気持ち、通学曜日の都合なども合わせて考慮していただき、もし支障がなければ4年部からぜひお子さんを預からせていただきたいと存じます。

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