あなたは子どもを叱るのが苦手? その2

2014 年 3 月 31 日

 前回は、子どもを叱ることは子育ての重要な側面の一つだということを踏まえ、効果的な子どもの叱りかたについて考えてみました。

 叱るということに関して、筆者は特別な考えや見識は持ち合わせていません。そこで、「“叱る”をテーマに書いてみよう」と思い立ってから、手もちの本を点検して参考になりそうな記述を探しました。

 筆者の目に留まったのは、ユダヤ系アメリカ人の女性(教育関係者)の書かれた家庭教育に関する本でした。子どもを叱ることの難しさの一つは、「怒りの感情を、いかにコントロールするか」ということであるという点を踏まえ、そのことだけで数十ページも割いて詳しく説明されていました。

 感情的に叱った後、親は後悔と自己嫌悪の気持ちに苛まれ、そのせいでしばらく子どもに甘い態度で接してしまう。子どもはそうした親の感情の揺れを見透かしてか、ますます親の意に添わない行動をとる。その結果、以前に増して声を荒げて子どもを叱りとばしてしまう。こうしたことの繰り返しに悪戦苦闘しているのは、日本の親だけではないのですね。

  しかしながら、そうした一見悪循環に見える状況を通して親も成長するのだと、前述の本の著者は述べておられました。ちょっとご紹介してみましょう。

 一生懸命努力して、怒りをコントロールできるようになったのに、またもとに逆戻りするようなことがあると、がっかりして欲求不満に陥ってしまいます。しかし、進歩に後退はつきもの、遅かれ早かれ出てくる現象です。しかも、逆戻りするたびに、怒りの原因となった考え方のおおもとに気づくようにもなります。気づくことで、人はどんどん成長し、自分を変えていくことができるのです。 

 叱った後は気が滅入る。そのために叱るのをためらう。そういう傾向が強い人は、ぜひ勇気を出して「わが子のために叱る」ということを実践していただきたいと存じます。次は、叱ることで生じる心の負担を少しでも軽くするためのアドバイスです。多少なりとも参考になるかもしれません。

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 1ですが、なるべく楽天的に構えるくらいの気持ちでいないと、子どもの反抗にあうとストレスが溜まってしまいます。子どもは親とは別の人格をもった存在ですから、親の思い通りになるわけがありません。そのことを前提として子どもに接したなら、感情に振り回されることはなくなります。「自分も紆余曲折あって今日に至ったのだから、子どもだってやがては必ずよくなる。焦らずじっくり子どもに話して聞かせよう」という、気持ちのゆとりをもつことが大切ですね。

 2ですが、これは子どもを甘やかすわけではありません。ちゃんとやらない理由が子どもにもあるのだろうと認めてやりながら、親がどうしてほしいのかを伝えるほうが、子どもは素直に親の言うことを聞くようになるからです。子どもに落ち着いて冷静な判断をさせるための方策です。

 3は、叱った後落ち込むような人にとって必要な考えかたではないでしょうか。「言い過ぎた」「叱っても反抗を招いただけ」「何回叱っても効果がない」など、叱る効果が得られない状況は様々にあるでしょうが、そのたびに落ち込んでも何にもなりません。正面切って親の気持ちを伝えていれば、それが子どもに伝わらないはずがありません。叱るのを失敗しても失望せず、「少なくとも、私の思いは通じたはずだ」と自信をもちましょう。

 4は、「子どもに反発されるのが辛い」人のための心の持ちかたです。子どもに激しい言葉で言い返されるのが嫌で、つい大目に見てしまう人はおられませんか。これでは我が儘を助長するだけです。また、叱られることに免疫がないと、普通の人なら受け流すようなちょっとした言葉に傷つく人間になりかねません。「これは、子どものためなのだ」という信念をもち、きっぱりと叱ってやりましょう。その場では効き目がないように見えても、子どもは心のなかではちゃんと反省します。

 「叱りかた」について、印象に残っていることがあります。典型的な優等生で、注文をつけることがないほどのすばらしい男の子(6年生)がいました。ある日の授業で、たまたま「おかあさんに叱られるか」が話題になったとき、大概の子が、「勉強しようと思うときに叱ってくる」とか、「成績が下がるとすぐに叱られる」などと興奮気味に話すなかで、彼だけは少し違うことを言いました。

 「ボクも、母に叱られることがあります。でも、勉強のことでは叱られたことはありません。約束を守らないなど、筋の通らないことをしたときに叱られます」というのです。「そういう育てかたをするのが、子どもを優秀にする秘訣なのか」と、感心したことを記憶しています。

 その後、彼のおかあさんにお会いすることがありました。いかにも優しげでソフトな印象のおかあさんでした。「ボクを叱るときのおかあさんは恐いです」と、彼は語っていましたが、「優しいおかあさんの一言が恐い」のは、「おかあさんが感情を交えず、筋の通った叱りかたをされるからだろう」と、今さらながら思います。なお、これは蛇足ですが、彼は広島最難関の私学を含め、受験校の全てに受かりました。

 とかく親は、叱るときに声高になりがちですが、大切なのは子どものためを思い、筋の通った叱りかたをすることなのですね。それが、子どもの心に響くのでしょう。叱るべきときは、ためらわずに叱ればよいのです。問題は、感情のコントロール。これまでの叱りかたを振り返りつつ、上記の4つのアドバイスを参考にしてわが子のためになる叱りかたを工夫して見てはいかがでしょうか。

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カテゴリー: アドバイス, 子育てについて, 家庭での教育

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