2014 年 10 月 のアーカイブ

私学教育のよさにふれてみませんか?

2014 年 10 月 30 日 木曜日

 毎年11月には、冬期講座・次年度講座の会員募集の開始に合わせ、中学受験に絡めたイベントを開催しています。ここ2~3年は、広島の私立一貫校の校長先生をお招きし、「私学教育とはどのようなものか」について語っていただいています。中学受験を視野に入れておられるご家庭にとって、「なぜ私学進学か」について考える機会をもつことは、大変重要なことだと考えるからです。

 ただし、一度に多数の私学を同時にお招きすると、1校当たりの情報が少なく、総花的かつ画一的な内容に陥りがちです。そこで、1回の催しで2校に絞り、その2校のカップリングに明確な意図のある企画にすれば、催しとしてよりおもしろくなるのではないかと考えました。

 一昨年は広島学院と修道の校長先生をお招きしました。広島で永遠のライバルであり、私立学校としてのカラーが全く異なる両校の教育とはどのようなものかを対比しつつ、それぞれのよさを感じ取ってもらおうという内容にしました。 また、お互いをどのような学校と認識しておられるのかを尋ねてみる試みをしてみました(興味をおもちでしたら、このブログの過去の記事をお読みください)。

20141030 また、昨年は修道と広島女学院の校長先生をお招きしました。両校は広島で最も歴史のある私立男子校、女子校です。さらには、例年一番多くの受験生を集める人気校であり、明るく自由な校風という似通った特色をもっています。そういった立ち位置の共通性に着眼した組み合わせを試みてみました(こちらも過去の記事でかなり詳しくご報告しています)。

 今年は広島学院とノートルダム清心という組み合わせで、カトリック系私学の教育とはどのようなものかをメインテーマに掲げた内容にしました。催しのタイトルは、「広島学院と清心が身近になる!」(副題:最難関だけどフレンドリーなカトリック系私学)となっています。

 ご存知かと思いますが、広島学院とノートルダム清心はカトリックの教義に基づいて戦後まもなく設立された私立学校です。また、いずれも開校後すぐさま広島の私学最難関校としての地位を不動のものにしたという点で似通っています。

 カトリックの教義に基づく私立学校は全国に多数あります。そのなかでも進学校として長きにわたって優秀な卒業生を輩出している両校は、広島の受験生にとってあこがれの最難関ターゲット校です。しかしながら、そうした特色ゆえにカトリックの放つ重々しく厳粛な雰囲気と相まって、ややお堅いイメージをもたれがちであり、「敷居の高い私学」という印象を受ける人が多いようです。

 そこで、「実際はどうなのか」という視点から、両校の私学としての素顔が見られるような催しにしたいと考えています。当日は、広島学院から三好彰校長が、ノートルダム清心からは今﨑成志校長がお越しくださる予定です。実施日、会場は以下の通りです。

1.11月12日(水)10:30~12:00  会場:弊社呉校(呉市中通2丁目2-3)
2.11月13日(木)10:30~12:00  会場:弊社東広島校(東広島市西条朝日町13-3)
3.11月14日(金)10:30~12:00  会場:広島ガーデンパレス 2F孔雀:朱鷺の間(広島市東区光町1-15) 

 興味をもたれたかたのために、おおよその内容をお伝えしておきます。催しは2部構成となっており、第1部は広島学院とノートルダム清心の校長先生のお話がメインになっています。第2部は、両校への合格に向けて受験生の学習指導にあたる立場から、弊社の各校舎の責任者がお話しさせていただきます。

 第1部ですが、校長先生がたにはいくつかのテーマに基づき、自校の教育の特色や理念などを交代で語っていただきます。お二人の校長先生には、学校の代表者として「わが校はどんな学校か」をお話しいただこうと思っています。

 できるだけ打ち解けた雰囲気のもと、来場者に親しみをもっていただける内容にしたいと思っているものの、外せない重要なことに関してはそういった配慮抜きにしっかりとお話しいただくほうがよいと考えています。

 また、実際の学校の様子を知っていただくには映像をご覧いただくのがいちばんです。そこで、両校に取材に出向き、かなりたくさんの授業を撮影させていただきました。これを編集し、それぞれ5分程度ではありますが、一流の私立進学校の授業の実際にふれていただこうと思っています。広島学院、ノートルダム清心という私学をよくご存じないかたには、大いに参考にしていただけるでしょう。

 さらには、両校に現在通っておられる生徒さんが、自分の学校をどう見ているかも知りたいところですね。そこで両校の生徒さん各2クラス(広島学院が高1、清心が高2)にお願いし、アンケートを実施させていただきました。どんな内容をお聞きしたかについては、当日詳しくご紹介しますのでお楽しみに。ご来場になれないかたで興味をもたれたかたもおありでしょうか。そういうかたは、今年もイベント終了後にこのブログで様子をご紹介する予定ですので、それをお読みください。

 前述のように、広島学院とノートルダム清心は広島の私学きっての進学校です。卒業生はいったいどのような進路選択をしているのでしょうか。お子さんの中学受験を視野に入れておられる保護者には興味のある話題であり、既に詳しく調べておられるかたもおありかもしれません。

 両校の生徒さんの大学進学実績は“素晴らしい”の一言ですが、その実績が毎年180名あまりの卒業生によるものであることを知れば、よりその凄さがおわかりいただけるでしょう。両校は、最難関校だけに進学実績をアピールすることは控えておられます。ですから、進学実績についての解説は弊社が行い、後で校長先生方にコメントをお願いしようと思っています。

 第2部ですが、こちらは弊社の校舎責任者から、弊社会員家庭の広島学院、清心を志望する際の学習上の留意事項や、弊社からの進学状況などをお伝えする予定です。

 少しでも興味をおもちでしたら、ぜひ足を運んでみてください。参加にあたって予約や申し込みは不要で、無料の催しです。どうぞお気軽に。

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カテゴリー: 行事のお知らせ

算数はなぜ得意・不得意が生じやすいの!? その2

2014 年 10 月 27 日 月曜日

 前回は、算数という教科が得意不得意の生じやすい理由として、「流動性知能の発達の個人差が大きい」ということ、そしてこの知能はどんな特色をもつのかなどについて簡単にお伝えしました。今回は、この種の知能の活動領域の単元が苦手なお子さんに、どんな対策が考えられるかをお伝えしようと思います。

 もう一度、流動性知能の発達曲線を見てください。

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 ご覧のように、この知能が急カーブを描いて上昇しているのは9~10歳前後までです。後はゆっくりと上昇し、15歳頃には早くもピークを迎えます。そして年齢を重ねるごとに下降していきます。なんと、中学生頃ピークに達する知能なんですね。このことから、この知能を伸ばせる時期(小学生まで)に必要な体験をすることが有効であることをお伝えしました。

 繰り返しますが、この知能は脳の柔らかい年齢のうちに急速に発達します。この波にうまく乗れる体験をすると問題を解くのが楽しくて仕方がなくなり、飽きることなく取り組むようになります。それが相乗作用を引き起こし、はたから見ると天才のように見えるほどの能力のもち主になることがあります。子どものころの環境や学習次第で、同じ人間なのに能力開花の道筋が全く違ってしまうのです。このこと一つとっても、「よい学習の機会に恵まれることは、ほんとうに大切なことだ」と思わずにはいられません。

 ただし、この知能は結晶性知能と比較すると低下する年齢が早く、数学の専門家ですら30代になると早々に自分の衰えを感じることがあるとか。何ともショックな話です。筆者のような年齢になると、難しそうなパズル課題などを見ただけで、はじめから戦意を喪失してしまいます。仮に取り組んだとしても、おそらく脳の衰えで解を得るには至らないことでしょう(若いころでも無理かも知れませんが)。

 では、9歳以降の学習で流動性知能を伸ばすのは難しいのでしょうか。確かに最適年齢を過ぎると伸びのカーブは緩やかになりますが、伸ばせないということではありません。たとえば、知能の発達カーブにはかなりの個人差があります。お子さんの成長が「ゆっくり型」であれば、取り組み次第でかなり伸ばせるかもしれません。

 また、先ほどのグラフを見てもわかるように、15歳で発達のピークを迎えるわけですから、あきらめずに伸びる可能性を追求すべきです。それに、物事の可能性については肯定的な考えをもつほうが成功率は高いものです。

 必要なことは、流動性知能の特性をよく知ること。そして、テスト対応のために解きかたを暗記しておくとか、たくさんの問題を解く練習をしておくなどといった発想で、子どもに勉強を無理強いしないことです(学習効果が得られないばかりか、算数嫌いの原因になる)。そもそも、流動性知能の働きが必要な課題は、暗記や知識、思考が及ばないのですから。

2014102027b もしもお子さんがこの領域の学習を苦手にしておられるなら、まずはテストの成績とは切り離し、この種の問題の初級編に取り組むことから再出発するのも一つの方法でしょう。親子で同じ問題に取り組んで、楽しい競争をしてみるのもよいかもしれません(おとうさんが本気で勝って、「オレもまだまだいける!」とばかりに有能感に浸らないことが重要ですが)。この知能の発達を促すには、解決することの楽しさや喜びを味わうことに尽きるのです。

 お子さんは、図形課題などを苦手にしておられませんか? もしもそうなら、まずは「こういう問題は好きなんだけど、なかなかテストで点がとれなくて…」という段階まで、辛抱強くお子さんを見守りサポートしてあげてください。なぜなら、「好き」という気持ちで取り組む勉強は苦痛とは無縁です。ですから、困難を乗り越えるうえでこれ以上の味方はありません。基本的でシンプルな課題に取り組む中で、「自分で解けた!」→「おもしろい!」→「好き!!」といったような流れができれば、伸び盛りの小学生なら1年で相当なリカバリーが望めるでしょう。

 逆効果をもたらすのは、苦手意識を既にもっているお子さんに、難易度も考慮せずにたくさんの課題に取り組ませたり、解きかたを一方的に伝授しようとしたりすることです。ただでさえ自信を失っているのに、できもしない問題を次々とあてがわれるのですから、「いやだ」という拒否反応がますますひどくなり、挽回の可能性が失われてしまいます。お子さんの将来のためにも、今のレベルに即した課題に再挑戦することから巻き直していくことをお勧めします。

 筆者の知っているお子さんは、この「算数は、好きなんだけど~」の、「好き」という感情が結局大学進学での学科・専攻選びにまで影響を与えました。「成績」以上に「好き」が決め手になり、さらには数学に打ち込む原動力になったのです。お子さんの算数学力について、とくに流動性知能に関わる要素に不安を感じておられるご家庭におかれては、「好きこそものの上手なれ」という諺を信じ、この原点に立ち返ってお子さんの前向きな学習を応援していただきたいと存じます。

 結晶性知能については、次回以降に話題として取り上げてみようと思います。

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カテゴリー: アドバイス, 勉強について, 勉強の仕方, 家庭での教育

算数はなぜ得意・不得意が生じやすいの!? その1

2014 年 10 月 20 日 月曜日

 子どもの学力を決定づける要因として、いちばん大きなものは何だと思われますか? アメリカの心理学者の書物によると、欧米人は「先天的な才能」「遺伝で受け継いだDNA」をあげる傾向が強く、アジア人は「努力をしたかどうか」と考える傾向が強いそうです。

2014102027a その学者は、日本や韓国、中国(大都市域〕、シンガポールなど、アジア地域の国の子どもの学力が相対的に高い理由としてこのことをあげ、「努力をすれば、学力は伸ばせる」という考えかたの重要性を説いていました。

 ただし、こと算数・数学の能力となると、日本人の多くは「才能」や「センス」を問題にし、それらに恵まれるかどうかが学力を左右すると考える傾向が強いように思います。努力・勉強ではどうにもならない、壁のようなものを感じるからでしょうか。あなたはどう思われますか?

 では、実際のところはどうなのでしょう。中学受験においては、算数、国語、理科、社会の4教科入試が一般的ですが、そのうち算数の点数のばらつきが最も大きく、合否を左右する傾向が強い(算・国は配点が高いケースが多く、それも影響していると言えるでしょう)ことはよく知られています。どうして得点差が大きくなるのでしょうか。

 その理由として考えられるのは、得意不得意が生じやすい単元の存在です。たとえば、図形(立体図形、投影図、展開図など)や速さなどの単元は苦手意識の強い子どもがたくさんいます。これらの単元は、いわゆるセンスや閃きが問われ、暗記や記憶が通用しません。なかには極端なまでに苦手意識をもつ子どももいます。

 ある課題について解法説明を丁寧に聞き、納得し理解しても(わかったつもりになっても)、いざ似たような別の課題に取り組んでみると、自力で正解にたどりつけない。そういうじれったい思いを、子どもの頃経験されたかたは少なくないでしょう。実は、こういった類の単元と、暗記や知識で対応できる単元とでは、同じ算数・数学でも求められる知能の種類が違っているのです。

 ご存知かもしれませんが、知能には2つの種類があると言われます。一つは結晶性知能で、もう一つは流動性知能です。前者は、頭のなかで蓄えられた情報をもとに稼働する知能で、言語、知識、思考、判断などに関わると言われます。後者は、知識や思考が及ばない、予測がつかない状況のもとで稼働する神経系の知能です。図形の識別や空間把握、速度などの学習の際に威力を発揮します。

 これである程度はっきりとしてきたかたもおられるでしょう。算数・数学の能力差が生じやすいのは、流動性知能の「個人差が大きい」という性質によるものではないでしょうか(もちろん、ほかにもあるでしょうが)。この流動性知能の発達がどのように推移するのかをグラフで見てみましょう。

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 この資料(レイモンド・キャッテルによる)を見ると、流動性知能の発達が著しいのは9~10歳前後までで、15歳頃には早くもピークに達し、以後は徐々に下降していくことがわかります。つまりこの知能には発達上の臨界期が存在し、その時期を過ぎると学習してもなかなか成果につながりにくくなるのです。

 算数の図形課題や速さの単元は、まさに流動性知能の働きが期待される領域です。流動性知能の発達カーブを踏まえると、幼児から小学生にかけての学習体験次第でより上昇カーブを上向きにすることもできるでしょう。そうすれば、最高到達点の水準も上がっていきます。ですから、この知能の発達曲線の特性に合わせ、適切な時期にこの知能に刺激を与える体験をすれば、相当な成果を引き出すことができるのではないかと思われます。

 弊社は、小学校低~中学年向けの講座として「玉井式国語的算数教室」を導入していますが、この講座の主要プログラムの一つである「かたちの形」は、明らかに流動性知能の発達を促すことを意図しています。また、オプション講座として導入している「パズル道場」も、流動性知能の開発に特化した教育商品です。前者は3D映像の特性を活かし、後者は様々な具体物(パズル)にふれさせるという、それぞれ異なる手法を採っています。

 パズル道場では、「考えるのではなく、『あーでもない、こーでもない』と試行錯誤することが大切である」とアドバイスされていますが、こうした説明にも流動性知能の特色がよく表れていると言えるでしょう。つまり、言葉や知識の入り込む要素が少なく、直観や閃きに関わる神経に刺激を当てることを意図しているのです。

 長くなりそうなので続きは次回にします。この知能の守備範囲にあたる勉強を苦手にしておられるお子さんに、何か対策はないかを考えてみようと思います。よろしければ引き続きお読みください。
 

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カテゴリー: アドバイス, 勉強について, 家庭での教育

能力をほめるか、努力をほめるか

2014 年 10 月 13 日 月曜日

20140922d 「子どもはほめて伸ばすに限る」とよく言われます。面談の際、これをあるおかあさんに伝えたところ、「先生、うちの子にはほめてやりたくてもほめるところがありません」という言葉が返ってきて、フォローに困ったことがあります。

 無論、わが子によいところが一つもないなどと、本気で思っておられるのではないと思います。おかあさんの関心がわが子の受験への見通しにあり、今の状態が不満でしかたがないからこのようにおっしゃったのでしょう。おかあさんの気持ち自体はよくわかります。しかし、これでは子どもを励まし奮起させるのは難しいと言わざるを得ません。

 似たような心境にあるおとうさんやおかあさんはおられませんか?そんな方々のほとんどは、わが子のがんばりを期待し、これまでにいろいろわが子に働きかけてこられたのだと思います。それでもよい兆候が見られずイライラしているうちに、「うちの子にはほめるところがない」などという心境に至ってしまわれたのでしょう。

  しかしながら、「うちの子はやる気も才能もないんだ」などと悲観しても、状況を巻き直すことにはなりません。ぜひ、もう一度「わが子はほめて伸ばすべし」という原則に立ち返っていただきたいと思います。

 要は、「なぜほめるのか」ということに対する発想を変えればよいのではないでしょうか。これは、ある有名な学者の著書にあった言葉ですが、次のような発想に立てば、わが子をほめてやりたいという気持ちが取り戻せるのではないでしょうか。

 親がわが子をほめるという行為は、がんばりの対価などではない。がんばったからほめてやるのではなく、わが子をがんばらせるためにほめるのだ。親がわが子をほめるのは、わが子が試練を乗り越え、自分を信じて努力する姿勢をもった人間に育てるためなのだ。無償の愛に基づくものなのである。

 「よし、これからはわが子をもっとほめてやろう!」と思われたでしょうか。それならいいのですが。ただし、問題は「わが子の何を見てほめたらよいのか」ということです。これに関して、アメリカの社会心理学者の著述に参考になるものがあります。ちょっとご紹介してみましょう。(一部改変)

 賢いからと子供を褒めるのは、おそらく悪い考えだろう。そうではなく、自分が直接コントロールできる、懸命に勉強したかどうかで褒めるべきだ。知能で子どもを褒めることの問題点として、子どもは自分がどれだけ賢いかを示そうとするあまり、よくできる課題ばかりに取り組んで、うまくできない課題は避けようとするようになる。言い換えれば、子どもは賢いことを褒められると、骨のある課題を受けたがらず、多くのことを学べるようなことをやらなくなる。20140922b
 ある発達心理学者は、この点を明らかにするために次のような試みをした。子どもに課題に取り組ませたあと、出来が極めてよかったと伝え、賢いこと、あるいは一生懸命取り組んだことを褒めた。続いて、別の問題に取り組むチャンスを与えた。問題としては、簡単なもの(子供が「これならよくできる!」と考える)あるいは手応えのある難しいもの(「賢い子には見られないかもしれないけれど、とても勉強になる」と考える)のどちらかを選ばせた。
 すると、賢いことを褒められた子どもの66%が、自分の賢さを示せる簡単な問題を選んだ。一方、懸命に取り組んだことを褒められた子供の90%以上が、多くのことを学べる問題を選んだ。前者は、自分が実は賢くなかったと悟られる危険を回避したのだ。一方、後者の子供は、自分の限界を試し、さらに上達する方法を教えてくれるような問題を好んだのだ。

 実験はさらに続けられました。子どもたちに自分で選んだ問題に取り組ませる前に、最初の問題よりずっと難しい第二の問題を与えて取り組ませました。そして子どもに、第二の問題でできが悪かった理由を説明させました。

  すると、最初の問題で賢いことをほめられた子どもは、第二の問題で失敗したのは能力に欠けていたからだと考える傾向があり、一方、最初の問題で懸命に取り組んだことをほめられた子どもは、努力が足りなかったからだと答える傾向がありました。能力をほめられた子どもはそれ以上問題に取り組みたがらない傾向があり、第二の問題に楽しんで取り組んだと報告する割合も、懸命に取り組んだことをほめられた子どもより低くなりました。

 最後に、もう一つ実験が行われました。子どもを第三の問題に取り組ませました。すると、最初に賢いことをほめられた子どもは、最初に懸命に取り組んだことをほめられた子どもより正答数が少ないという結果になりました。

 いかがでしょう。頭がよいことをほめられた子どもは、自分の頭のよさに疑念をもたれないよう、難しい問題への挑戦を避けるようとしました。そして、失敗をすると自分の頭がよくないからと考えようとしました。一方、努力を見てほめられた子どもは、課題に取り組むのを楽しみ、難しい問題にも積極的にチャレンジしようとしました。また、失敗したら、「自分の努力が足りなかった」と受け止めました。

 以上を踏まえると、頭のよさ(成績)でほめるのではなく、努力(がんばり)でわが子をほめることが大切だというこ結論が導き出せそうです。

 親として子どもをどう応援したらよいのか。これに関しては、親の期待を「結果」ではなく「努力」に置き、絶えずそれを伝えて励ましてやることが第一であろうと思います。そして、少しの努力も見逃さずにほめたり喜んだりしてやる。そうして、少しずつやる気や自信を取り戻させることが重要ではないでしょうか。小学生までの子どもにとって、親からの評価ほど影響力をもつものはありません。親にほめられるかどうかは、テストの結果よりも子どもにとってはるかに重要なのです。

 今の状態が芳しくないお子さんの場合、テストの成績は当面問題にしないことが必要であろうと思います。たとえ今が5年生でも、今から半年がかりで少しずつ態勢を築き直せば、入試への見通しも今とは比べものにならないほど良化するのは間違いありません。

 子どもを信じ、子どもの努力を喜んでやりましょう!

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カテゴリー: アドバイス, 勉強について, 子育てについて

2014後期「おかあさんの勉強会」のご案内

2014 年 10 月 6 日 月曜日

 子どもはいつだって「がんばりたい!」と思っています。「えらくなりたい!」と願っています。しかし、思いを継続するのは容易いことではありません。中学受験準備のための学習にしても、はじめの頃の意欲に満ちた取り組みが、少ししぼみ気味のお子さんはおられませんか?

 親の期待が重荷になると子どもは元気を失います。やりかたがわからなければ勉強も空回り。成功体験の喜びを味わわないと自信も湧いてきません。子どもたちは今、人間としての器をつくる途上にあります。それだけに、あらゆる面でまだまだ不安定な状態にあります。実り多い受験生活のもと、大いに成長してもらいたいものです。

 ところで、小学生の子どもにとっての親は特別な存在です。特に、おかあさんの影響力は圧倒的なもので、「おかあさん次第で子どもはどのようにも変わる」と言えるほどです。

 毎年春と秋に実施している「おかあさんの勉強会」は、そんなおかあさんがたと学習指導を預かる塾の連携体制を強化するための催しです。「どうすればわが子が最善の受験生活を実現できるか」を、ともに考えてみませんか? おかあさんどうしで楽しく話し合える場面も設定しています。子育てに受験が加わって、ストレスが溜まりがちなおかあさんにとっては、活力を取り戻す場にもなることでしょう。

 今秋の「おかあさんの勉強会」も、通常通り2回予定しています。対象は、4・5年部「週3日コース」会員のおかあさんで、会場はお子さんの通っておられる校舎です。現在、参加申し込みを受け付けておりますが、いずれの校舎もまだ受付可能ですので、興味をもたれたかたは是非一度参加してみてください。

 では、今秋の勉強会のテーマとおおよその内容をご紹介してみましょう。

 1回目のテーマは、「親に求められる‷リーダーシップ”とは!?」(副題:子どもの自立を促進する子育て研究)となっています。

 ‟リーダーシップ”というとなんだか大層な響きがありますが、ここでは要するに「親の子どもに対する影響力」のようなものとお考えください。親にはわが子に対して、「こうあってほしい」という期待があると思います。こうした親の期待を子どもが受け止め、進んで「親の言うとおりの人間になろう」と思わせる力、それが親の子どもに対するリーダーシップと言ってもよいでしょう。

 ただし、現実にはリーダーシップにもいろいろあります。たとえば、「私って、どうしても子どもに甘くなってしまう」とか、「うちの子は自分でやろうとしないから、つい親が命令口調になってしまう」、「何でも子どもの意志を尊重しているけど、ときどき許せないことが生じると爆発してしまう」など、みなさんの個性でそれぞれに違いが生じます。

 そこで、まずはおかあさんがたに「親のリーダーシップの代表的モデル」を6つご紹介し、どれに近いかをチェックしていただきます。そして、子どもを自立した人間に育てる理想のリーダーシップとはどのようなものかを確認し、現状のどこをどう変えたら理想に近づけるかを共に考えていただきます。

 リーダーシップの発揮にあたって、親に求められる重要なものは「心の境界線(バウンドリー)」です。子どもに対して、「ここまではいいけれど、ここからは許されない」という行動の基準を示す必要があります。それを子どもにきちんと伝えるかどうかで、子どもの自立度は違ってくるからです。そこで、次のステップではバウンドリーについて共に学び、「親がリーダーシップを発揮するためには、子どもに行動の基準を示すことが重要である」ということを確認します。

 親が示すバウンドリーは、強すぎても弱すぎても望ましくありません。以後の時間は、弊社から望ましいバウンドリーを築くためのいくつかの提案をさせていただきます。

 親のリーダーシップが適切に発揮されれば、それに伴って子どもも変わっていきます。子どもがやるべきことを率先して取り組む、理想の受験生活を実現するため、まずは親から変わっていくための参考にしていただければ幸いです。

 2回目は、「叱り上手が子どもを伸ばす!」(副題:子どもの奮起を促す叱りかたの研究)というテーマで実施します。「子どもをいかに叱るか」は、子育ての最中にある親にとっての大きな課題であろうと思います。

 多くの親はわが子を叱るのを「難しいことだ」と考えています。なぜでしょうか。それは、子どもも一定年齢に達すると、自分の言動の正当性に関わらず親に口答えをしたり、反抗したりするようになるからではないでしょうか。
 子どもが思うとおりに反応してくれないと、親だって腹が立ちます。そうこうしているうちに、親まで感情的になり、場合によっては言ってはならないことまで言ってしまい、親子間の溝を深めたり子どもを傷つけたりする事態に至ることもあります。

 そこでこの回は、まずはそれぞれの家庭の現実を振り返ったうえで、叱ることの難しさについてみなさんで話し合っていただきます。叱るときに、みなさんはどのような問題を感じておられるでしょうか。

 ところで、叱るということは親にとっていけないことなのでしょうか。外国の書物にあった「親が叱らないのは相続権の喪失」などの金言をご紹介したり、日本の学校教育者の優れた言葉をご紹介したりしながら、叱るという行為が親にとって欠かせない重要な仕事の一つなのだということを、全員で確認していただきます。

 第1回でバウンドリーの重要性を学んでいただきましたが、叱る際にもこのバウンドリーが重要な働きをします。なにしろ、親のバウンドリーは家庭の文化であり、子どもに継承させるべきものです。子どもが親から見て「ここから逸脱したら看過できない」という行動に及んだら、ためらうことなく叱るべきなのです。そうして初めて、親のバウンドリーは子どもへと受け継がれるのではないでしょうか。

 このようにわが子を叱るということは、親にとって必須の仕事の一つです。ただし、親にも子どもにも嫌な後味の残らない叱りかたとはいったいどういうものなのでしょうか。いよいよここからが本題です。

 とまあ、こんなふうに勉強会を進行させていくわけですが、ただ弊社から一方的に話したり、提案したりするだけでは、「おかあさんがたに、確かな指針と元気を!」という会の趣旨を徹底させることはできません。案件ごとに実施するワーク、つまり「おかあさんがたの双方向の話し合い」を織り交ぜながら、他のおかあさんがたと苦労を分かち合い、互いに励まし合う時間を設けているのがこの催しのよいところであると自負しています。

 「興味はあるけど、まだ申し込んでいない」といった状態のおかあさんはおられませんか? そんなかたは、勇気を出して一度参加してみませんか? きっと何かが変わってくると思います。

 なお、勉強会の実施日程は以下の通りです。それではみなさんの参加をお待ちしています。

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