中学受験を子どもの成長の場に!

2015 年 2 月 2 日

 主要中学校の入試と合格発表が一段落し、ひところの喧騒がうそのように静けさを取り戻しました(たぶん、これは中学入試関係者のみが思っていることでしょうが)。

 入試会場へ足を運び、緊張や不安と闘いながら入試に臨もうとする受験生、わが子に付き添い無事の受験を祈る保護者の方々、受験生の応援に駆けつけた多数の塾関係者…。その様子を目の当たりにしていなければ、僅か2週間ほどの間に生じた様々なドラマに思いを馳せることはおそらくないでしょう。中学受験への挑戦が、受験生のみなさん一人ひとりに悔いの残らぬものであったことを祈るばかりです。

 さて、主要中学校の合格者発表はすでに終わり、さらには補欠者の繰り上り合格などもおおよそ収束しつつあります。弊社の会員受験生の合格状況もほぼ確認を終えており、本日(2月2日)中にホームページで結果をご報告する予定です。補欠の繰上り等があれば、その都度修正して状況を掲示いたします。

 それでは、いつものブログ記事に移りましょう。今回は、前回に引き続き筆者が書いたチラシの記事(2月1日折り込み)をご紹介し、若干の説明をつけ加えてみようと思います。まずは、チラシのメイン記事をご紹介しましょう。「中学受験を子どもの成長の場に!」という見出しで書きました。

 中学受験と言うと、とかく「合格できるかどうか」に注意が向けられがちです。しかしながら、私たちは「受験のプロセスに意義があるのだ」と考えています。発達途上の子どもが、受験という目標を掲げて努力を積み重ねる。この体験が子どもの人生に大きな影響をもたらすからです。

 小学生ゆえ受験校についての知識はわずかです。受験の意味すらわからない子どももいます。ところが、1~2年もしないうちに受験を自分なりに受け入れ、真剣に勉強に向き合い始めます。ついこの間まで、「遊びに来ているんじゃないぞ!」と、私たちを嘆かせていたというのに。

 無論、これは偶然の産物ではありません。学習塾は、「初めに受験ありき」の指導をするのではなく、勉強の楽しさやよさを実感する体験を繰り返し提供していきます。保護者にも、学習塾の指導と歩調を合わせ、日々の努力を奨励し辛抱強く応援していただくようお願いしています。

 このような指導やサポートは、受験への自覚が高まることと決して無関係ではありません。勉強のよさにふれ、親の期待が何かを知る経験が、「なぜ学ぶのか」「なぜ受験をするのか」への意識を育てます。だからこそ、子どもは勉強に前向きになり、受験を自ら受け入れるようになるのです。

 受験勉強は楽なものではありません。「受かりたい」という気持ちが募れば不安も高まります。苦手科目が悩みの種になったりもします。乗り越えられない壁を感じ、「受験は無理かもしれない」という絶望感と必死に闘う子どもの様子を見て、かわいそうになることも度々です。

 20150202bところが、勉強のもつ価値を知った子ども、受験という目標を定めた子どもは諦めません。「お兄ちゃんと同じ、あの私学に通いたい!」「おかあさんの母校、○○中学に行きたい!」――それぞれの動機を胸に、くじけることなくがんばり通します。こうしたひたむきさが、予想を超えた入試結果を呼び起こすことも珍しくありません。

 受験を終えた子どもは、一様に「もう、受験のない自分は考えられない」と言います。「精一杯を尽くした!」「最後までやり通した!」という手応えを得たからでしょう。それは結果に関わらずどの受験生も同じです。一人ひとりの晴れやかな笑顔がそれを物語っています。

 私たちは、そこに中学受験の“よさ”があるのだと思います。大きな目標を掲げ、実現に向けて惜しまぬ努力をする。この体験を通して子どもは多くのことを学び、一段と成長するのです。

 中学受験には勝者も敗者もありません。自分への確かな手応えを得る。これに勝る結果はないのですから。親にとってもわが子のこのような成長は、子育て上の大きな成果ではないでしょうか。

 この記事は、だいぶ前筆者が一度書いた文章を点検し直し、ほぼ全部に近い個所に手を入れたものです。筆者自身、中学受験生の国語指導をしていたころの体験が書かせた文章と言ってもよいでしょう。お読みになったかたはどのような感想をおもちになったでしょうか。

 今よりも児童数がはるかに多く、中学受験熱も高かったころは、とにかく合格を巡る競争が激しかったと記憶しています。かつて、修道中学の受験生は2000名近く、広島女学院中学は1500名近くに達していたのですから、いかに合格を得るのが大変であったかおわかりいただけるでしょう。「こんなにできる子が受からないなんて…」と、落胆の思いに駆られることが数限りなくあったものでした。

 そんなときも今も、変わりなく学習指導において大切にしている考えがあります。それは、「子どもの望ましい成長に資する学習指導を実践する」ということです。

 「たとえどんなに合格を巡る競争が厳しくとも、私たち大人が子どもを無理に追い込み、限界を超えるところまで受験対策の勉強をさせるようなことをしてはならない。あくまで子ども自身が受験の主人公として、自らの意志で精一杯の努力をし、その結果として合格が得られるよう導くのが私たちの仕事である」

 この方針は、中学受験専門の塾を始めて間もないころ、経営者の反省に基づいて掲げられたと聞いています。せっかく受かったというのに中学・高校で行き詰り、「勉強の方法がわからない」「やらなければいけないとわかっているのに、それができない」などと言って、卒業生がたびたび相談にやってくるようになりました。「これではいけない」という思いに突き動かされた経営者は、「この勉強で受験を迎えたなら、どの中学校へ進学してもやっていける」と、自信をもって入試会場へ子どもたちを送れるような学習指導こそ、私たち学習塾が肝に銘じて実践すべきである。そう強く決心したそうです。

 チラシでは、子どもがまだ受験を意識しないで塾に通っている段階から、受験生としてしっかりとした自覚のもと、自ら厳しい勉強に打ち込むようになる段階に至るまで、子どもたちに学習塾はどういう働きかけをすべきか、また、保護者の方々と我々学習塾はどう連携していくべきかをお伝えしています。

 20150202c受験勉強の期間は、「受験生という意識を明確にもつに至らない時期」と、「志望校が決まり、受かりたいという気持ちを背景に受験勉強に取り組む時期」に分けられるでしょう。二つの時期の学習は、いずれも子どもの成長にとってかけがえのない体験を提供してくれるでしょう。

 前者は、勉強から得られる楽しさや面白さにふれることを通じて、学ぶことへの志向性を育ててくれます。受験のことなどまだ意識にない分、純粋に学ぶことから得られる喜びを享受できるのです。後者は、「受かりたい」という願望と「ダメだったらどうしよう」という二つの気持ちに揺れながらも、「どうしたら受かるか」を一生懸命に考え、様々な工夫を凝らして受験に挑戦していく段階です。

 前者、後者とも、先々高い水準の学問を修め、社会人として一人前の仕事をしていける人間となるために欠かせない経験になると思います。もしも大人が、「はじめに合格ありき」という発想で、子どもの勉強を取り仕切ってしまったなら、子どもは決して前述のような自らを成長させる受験生活を実現することはできないのではないでしょうか。

 受験勉強を全て学習塾が引き受けるなら、必然毎日の塾通いになります。それも夜遅くまでの勉強にならざるを得ません。しかし、中学進学後に待っているのは、学校と家庭を軸とした自律的勉強に基づく生活です。そこで飛躍できる準備をしておくことこそ、試験対策に勝るとも劣らぬ重要なものではないでしょうか。

 自立勉強への道のりは平たんではありません。勉強での行き詰まりもさることながら、他のやりたいことの誘惑、友人関係など、受験勉強に専念するのを難しくする要素もあります。そういった諸々の障害を乗り越え、子ども自身が自ら打ち込む受験勉強の域に達したなら、受験生活の段階ですでに合格を得たようなものです。自分への自信や手応えを得るからです。

 筆者の家内も息子も弊社の教室で学んだ経験があります。どちらも「受験生活は楽しかった」と言います。また、受験生活で得た勉強の習慣や方法こそ宝物であると思っているようです。

 家庭学習研究社は、これからも子どもたちの成長の場となる受験環境を提供したいと考えています。そのことと受験の結果を高い次元でバランスさせる。そういう学習塾が存在意義のある学習塾だと信ずるからです。

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カテゴリー: 中学受験, 家庭学習研究社の特徴, 家庭学習研究社の理念

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