2015 年 4 月 のアーカイブ

2015前期「おかあさんの勉強会」のご案内

2015 年 4 月 27 日 月曜日

 「おかあさんの勉強会」は、学習塾には珍しいワークショップ形式の催しです。2009年に試験的に実施し、翌年から正式にスタートしました。

 当初は「おかあさん塾」という呼称にしたのですが、おかあさんがたに講義をし、勉強していただくというふうに受け止められると、本来の趣旨と齟齬を来してしまいます。そこで、2年目からは「おかあさんが主役」というニュアンスをもたせた現在の呼称に変更しました。

 無論、中学受験の主役は言うまでもなく受験生たる子どもたちです。しかし、しつけの終わっていない年齢ゆえ、大人の関わりやサポートなしに受験を乗り越えることはできません。とりわけ、日常生活の様々な面において子どもの世話をしておられるおかあさんがたの関わりは重要で、おかあさんこそ受験の影の主役と言ってよいほどです。

 こうしたおかあさんの立場を踏まえると、おかあさんがたを励まし、お子さんの受験生活の充実に向けてサポートする催しが必要ではないかという思いが湧いてきます。日本人の欠点は、他と比較して不安に陥ったり、自信を失ったりしがちな点であると言われます。わが子のテスト成績を見ていると、「他のお子さんがどんどん力をつけているのに、わが子は大丈夫だろうか」といった不安に苛まれるおかあさんもおありのようです。

受験生の母親という同じ立場にある方々が、共通のテーマに則って気楽に話し合える場があれば、無用の苦労がなくなり、心理的に楽になるのではないでしょうか。

 根拠のない不安を払しょくし、「みんな悩んでいるんだ」とわかれば不安は安心に変わります。また、子どもを巡る共通の問題について、解決法をともに考える場があれば、勇気づけられるし元気が出てきます。そうした意味においても、弊社から一方的にご説明するのではなく、「一緒に考え、話し合う」というワークショップ的な方法のほうが催しとして有効であろうと考えました。

 ここ2~3年は、前期(2~7月)と後期(9~2月)にそれぞれ2回ずつ実施しています。テーマは毎回異なり、4・5年部「週3日コース」の会員児童のおかあさんを対象に、弊社の各校舎単位で実施しています。今年の前期開催分は、次のようなテーマに基づいて実施する予定です。

20150427a第1回「“音読”が子どもの学びを変える!」

 確かな読みの力は、国語の長文読解で求められるだけではありません。算数の文章題、理科・社会の学習も読む力が土台になっており、成果に多大な影響を及ぼします。「“読み”を制する者が“学力”を制する」と言っても過言ではないほどです。

 この読みの力が不足し、学習が空回りしている児童は少なくありません。この場合の読みとは黙読ですが、滑らかで正確な黙読は「音読練習」の積み重ねでもたらされます。今からでも遅くありません。活字を読むことに不安のあるお子さんは、音読で読みの力を鍛え直すべきです。ただし、効果的な音読練習をするには家庭のバックアップが必要です。そこで今回は、音読を起点とした読みの能力アップをテーマに掲げ、おかあさんのバックアップ法についてともに考えていきます。

 以下は、この勉強会の流れを簡単に記したものです。

1.学力が伸びない理由は読みの力の不足
 すべての教科の学習を推進するのは読みの力 → わが子の読みの現状を振り返る

2.なぜ音読練習が黙読力の土台になるのか
 黙読の能力は、絶えざる音読練習を土台にして定まる。音読→黙読の流れを築き直せば、読みの態勢が大きく変わっていく。黙読が滑らかで正確になれば、全ての勉強に好循環が訪れる。

3.1日15~20分の音読練習をいつどのようにするか
 音読はいつ、何を材料に、どのように、どれぐらい行ったらよいか。親はどうフォローしたらよいだろうか。ワークを交え、全員でその方法を考えていく。

4.恥ずかしがらずに、大きな声で元気良く音読しよう!
 大きな声で音読をすることで、子どもに読みの能力の改善だけでない様々な波及効果が表れる。

 声に出して読んだほうがよく覚えられるものです。理由は、書き言葉(視覚からの言語情報)と話し言葉(聴覚からの言語情報)の両方を使うので、より記憶として残りやすいのです。音読に慣れてからも、声に出して読む学習を継続すれば、より効率的に知識を拡充していくことができるでしょう。

20150427b第2回「“習慣力”が勉強を楽にする!」

 わが子の勉強ぶりを見て、多くの親は「もっと意欲をもてないのか」と不満を抱きます。そうした親の不満が子どもに伝わると、受動的な取り組みがますます助長されることになりがちです。子どもが勉強を辛いと思わず、能動的な取り組みで成果を引き出せるよい方法はないものでしょうか。

 最もよいのは「勉強を習慣化すること」です。幼少期から「コツコツ努力を」と教えられている日本の子どもにとって、学習の習慣化は学力を伸ばしていくうえで必須の方法と言えるでしょう。長い夏の休暇は勉強の習慣化を図る絶好のチャンスです。そこで今回は、「夏休みに学習の習慣化を」をテーマに掲げ、おかあさんがたとともにその方法について考えていきます。

1.習慣化(ルーティン化)は物事を成功させる一番の方法
 親はとかく「もっと意欲を」と考えるが、実は「習慣」こそ優先されるべきものである。その理由をご説明し、習慣化から学力向上の流れを考えていく。

2.学習の習慣化の現状を振り返って
 授業に備えた予習・復習や、マナビーテストに備えたまとめ学習、マナビーテスト後、成績返却後の復習はどれぐらい習慣化されているだろうか。 → 習慣化の度合いをチェック
 結果を振り返り、みんなで話し合う。マナビーテストを軸にした学習のサイクルをルーティン化すると、成果が全く違ってくることに気づいていただく。

3.習慣化を促進するための方策
 習慣化することの大切さはわかった。しかし、どうやれば習慣が定着するのか。そのための具体策を弊社から提案する。毎日の積み重ねを実行に移せるようになるための方法とは?

4.受験のプロセスで道を究める!
 学習の習慣がしっかりと根付き、毎日の取り組みが一つの「型」として定まったならすばらしい。そこまで行けば、受験での合格だけでなく、子どもたちの将来にも前途洋々たるものになることをお伝えして終了とする。

 「習慣」は、学習を無理なく進めていけるようになるうえでとても大切なものです。第1回目のテーマに掲げた音読練習による「読みの能力」向上とともに、学習の推進力となってくれるものです。これらが「伸びしろ」を決める要素なのだということをご理解いただき、今のうちにぜひお子さんをバックアップすることをこの催しでご提案します。

 親に求められるサポートは、勉強の中身に関わることではなく、やる気をサポートしたり、今回のような学習の推進力になる要素を応援したりすることです。ご理解、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

 なお、最後に「おかあさんの勉強会」の実施日程をお伝えしておきます。ぜひご参加ください。案内と申込書は、4月末頃にお子さんにお渡しする予定です(校舎によっては、お渡しする時期が多少前後する場合があります)。

 

第1回

第2回

三篠校

6月2日(火)14:00~15:30

6月30日(火)14:00~15:30

己斐校

6月3日(水)14:00~15:30

6月24日(水)14:00~15:30

広島校

5月26日(火)14:00~15:30

6月10日(水)14:00~15:30

五日市校

5月26日(火)14:00~15:30

6月16日(火)14:00~15:30

呉校

5月25日(月)14:00~15:30

6月1日(月)14:00~15:30

東広島校

5月27日(水)14:00~15:30

6月10日(水)14:00~15:30

 

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おとなになったら何になりたい?なってほしい?

2015 年 4 月 23 日 木曜日

 今回は、小学1年生になる子ども達を対象とした「将来就きたい職業」、およびその保護者対象の「将来就いてほしい職業」ランキングをご紹介したいと思います。こちらは、昨年もご紹介した、ランドセルメーカーとしても有名な化学繊維メーカーのkurarayが毎年実施しているアンケート結果の2015年度版(子ども・保護者各4000名対象)をまとめたものになります。

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 いかがでしょうか?

 まず子ども達の「就きたい職業」をみていくと、ランキング上位には、男女とも昔から子ども達の夢として挙げられることの多い職業がズラリと並んでいます。自分が子どもだったころとは社会全体が大きく変化していますが、時代が変わっても子ども達の思い描く夢はそれほど変わらないというのを感じると、何だか少しほっとする気持ちになりますね(それだけ歳をとったのかもしれませんが・・・)。


 この中で個人的に気になる点を挙げるとすると、女の子のランキングには、「モデル」「美容師」「ファッション・美容関係」など、“おしゃれ”に携わる職業が多く入っていることでしょうか。最近の子ども達は、服装や髪形にこだわりをもった子どもも多く、書店には小学生を対象にしたファッション雑誌も並んでいます。こうした影響から、目指す職業もそうした関係のものが多くなるのでしょう。

 男の子のランキングにおいて気になった(驚いた)のは、「会社員」が1999年の調査開始から初めてランキング圏外になったということ。といっても、今年の調査で初めてランキング圏外になったことに対してではなく、これまで20年間近くもずっとランクインしていたということに驚きを覚えました。

 「会社員」というと、職業の区分としては非常に広い範囲をカバーする表現ですから、この言葉ひとつで多くの職業を括れてしまいます。子ども達が「将来は『会社員』になる」というのは、具体的な職業よりも、どこかの会社に入ることが先に頭に浮かぶということなのかな・・・と思うと、何とも複雑な気分になるのは私だけでしょうか(子ども達には違う理由があるのかもしれませんが)。
 

 もう一つ目を引いた点としては、「教員」の人気がやや盛り返している点でしょうか。

 以前は男女ともにベスト10の常連だった「教員」も、昨年のランキングでは、女の子の保護者「将来就いてほしい職業」で第7位に入った以外は、女の子「将来就きたい職業」で第12位となり、男の子およびその親御さんのランキングにいたっては「ランキング圏外」となっていました。

 それが、今年の結果では、女の子のランキングで第4位、男の子のランキングでも第17位に入っています。保護者のランキングでも、女の子の保護者では第5位、男の子の保護者でも第14位になるなど、子ども・保護者いずれのランキングでも男女ともに昨年より上位に入る結果となりました。

 やはり教員は、「先生ってすごい」とか「自分もあんな風になりたいな」など、子どもから良い感情を抱いてもらえる存在にならなければ、子どもとの関係は良好なものになりにくいですし、指導の質そのものを高めることも難しいのではないかと思っています。ですから、子ども達の将来の夢としても「先生になりたい」という気持ちが高まるのは、とてもうれしいことだと思っています。
 

 そして、保護者の方々の「就いてほしい職業」についてです。

 子どものランキングと対比しながら見てみると、こちらは非常に現実的なものが多く(当然といえば当然なのですが)、なかなか興味深いものがあります。男の子の上位3つ(「公務員」「スポーツ選手」「医師」)と女の子第1位の「看護師」は、調査開始以来ずっとその地位をキープしていることからもわかるように、わが子に対する親の願いはみなさん共通するものがあるのだなあと改めて感じます。
 

 どちらのご家庭でも、それぞれ様々な事情や親子の思いがあるものと思います。親としては、色々な心配や不安がある一方、とても楽しみな気持ちがあるのも事実。いずれ将来の職業について真剣に話し合うべき時がきたら、どれだけ親の思いがあったとしても、できるだけフラットな気持ちで子どもの希望を聞きたいものです(そこで色々悩むことになるのかもしれませんが・・・)。

 「親の背を見て子は育つ」と実感することも「親の心、子知らず」と悩むこともあると思いますが、子どもの気持ちを聞いて励ましながら、そっと背中を押してあげるぐらいの心の余裕をもっていられたらいいですね。

(butsuen)

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“習慣”は学習に不可欠な推進力

2015 年 4 月 20 日 月曜日

 同じように学習塾に通い、共通のカリキュラムに沿って同じテキストで学んでいても、子どもたちの学力状態は実に様々です。どうしてでしょうか。今回は、学力を順調に伸ばしている子どもと、うまく学力を伸ばせない子どもとの違いを決定づける要素の一つを取り上げてみました。

 学力差の原因を「才能」と言ってしまえば簡単です。努力など意味をなさなくなってしまうでしょう。しかしながら、大人なら誰しも経験のあることですが、勉強に向かう意欲があるときは集中できるし成果も上がります。また、勉強法のコツがつかめればこれもまた成果を大きく左右します。よい先生やよい友との出会いは、子どもの勉強を一変させることもあります。自らに授かった才能を芽吹かせるための様々なファクターが稼働する仕掛けを、いかにして手に入れるかが学力を伸ばすうえでの最も重要なポイントであろうと思います。

 問題なのは、意欲を引き出す要因や成果のあがる勉強のコツが人によって異なり、誰にも当てはまるわけではないことでしょう。また、子どもの場合自分で成果のあがる方法を見出すのは難しいですから、われわれ大人が子どもの個性を見極め、その子どもに合った勉強に行き着くよう導いてやらねばなりません。そこが難しいところです。

 今回話題に採りあげる“習慣”(ルーティン)は、子ども一人ひとりの個性を云々する必要はなく、どの子どもでもそれを身につければ学習成果につながるものです。“習慣”が学習成果をあげるうえで引き出してくれるプラスの要素とはどのようなものかを考えてみたいと思います。

 図書館でふとある本を手にしてみたら、当たり前のことが書かれているのにどんどん引き込まれてしまいました。その本の著者は、日本のプロ野球のトレーナーをしていた人で、後にアメリカへ渡り、あのイチロー選手のトレーナーも務めたかたでした。そのかたは、「ルーティン化(習慣化)することで物事への取り組みの成果をあげることが、日本人の特性に合っている」というようなことを書いておられました。

 その人は、「ルーティンとは、同じ時間やタイミングで決まった行動を行うこと」だと述べておられます。その本で紹介されている“ルーティン化”のメリットは、中学受験の準備学習をしている子どもたちにも大いに参考になると思います。

 たとえば、ルーティン化するとものごとが無意識にできるようになります。継続しているうちに無意識に行える様式になっていくのですね。そうやって、常に安定した結果を出し続けることができるようになるのです。イチロー選手は、1日をルーティン化することで、毎日のように続くメジャーリーグでの試合で安定した成績を残せるようになったといいます。そのあたりのことについて書いてあるくだりをちょっとご紹介してみましょう。

 イチロー選手は、欧米人に比べると比較的体も細く、筋肉量も特別多いわけではありません。また高校野球は1回戦敗退、オリックスに入団したときもドラフト4位、1軍レギュラーに定着したのも入団3年目から、ということを考えると、誰もが認めるような天性の才能があったわけではなさそうです。

 にもかかわらず、唯一無二の選手になったのは、毎日のルーティンによってプロの選手に必要な「心」「技」「体」を突き詰めたからだと思います。(中略)練習メニューにもストレッチ内容にも特別な「魔法」はなく、唯一違うのが、それを毎日継続しているかどうかなのです。

 ひとつの技術を卓越したレベルまで押し上げていく職人さんや、製造業に浸透している「カイゼン(改善)」の精神も、日本人の「こつこつ」型のメンタリティが生んだものです。日本人精神の根底にあるこの強みは、私たちの仕事にも活かせるのではないでしょうか。

20150420a イチロー選手の習慣術は徹底しており、時差のあるアメリカにおいても起床時間を固定し、決めた時間に同じメニューの食事をとり、同じ時間に球場入りすると言われます。これらは、「試合でヒットを打つという行動を、失敗なく行うための手法」なのです。アメリカ大陸は広く、球場によって気候条件も様々ですし、個性的でレベルの高い選手がいっぱいいます。そんな中で結果を残し生き残るため、「自身が“コントロールできる行為”をルーティン化、つまり習慣化したのだ」と前出の本の著者は述べておられました。

 ところで、イチロー選手のようなやりかたでメジャーリーガーとして成功した選手はほとんどいません。同じことを毎日継続するのは、欧米人にとってほとんど不可能なことのようです。しかしながら、われわれ日本人は、学校の授業を受けるときの挨拶、朝礼のときの隊列、夏休みのラジオ体操など、子どものころから一定の様式を繰り返して習慣化することに慣れています。ですから、日本人にとっては目標とする結果を引き出す方法として有効なのかもしれません。

 ここで、中学受験対策の学習とルーティンの関係について考えてみましょう。弊社のマナビーテストで安定した成績をあげているお子さんは、予習(5・6年)や復習(4~6年)を常にコンスタントにこなしており、「やっていません」「忘れました」などということがまずありません。プリント課題の提出も溜めたりすることなく、期限までに必ず提出します。

 いっぽう、成績が安定しなかったり、振るわない状態が続いたりするお子さんは、取り組みにむらがあり、提出物は遅れたり滞ったりしがちです。これは明らかに、取り組みをルーティン化しているかどうかの差であり、同じような能力のもち主であっても、成績が異なる主要な原因となっているのではないかと思います。

 提出物管理がしっかりしているお子さんは、毎日決まった時間に勉強に取り組んでいます。一定時間勉強する習慣が浸透すると、その時間の勉強が定式化し、「何をいつまでにやっておくべきか」といったことを念頭に置いた学習が自然と行われるようになります。だから「忘れました」「やる時間がなくて、できませんでした」などということもなくなるのです。決めた時間に決めた学習をやることが身についているお子さんにとって、今述べたような理由は「はずかしい言い訳」以外の何物でもありません。

20150420b 今からでも遅くありません。朝の起床時間、食事の時間、学校の宿題をやる時間、塾の勉強をやる時間、自由時間、就寝時間などの現状を親子で振り返ってみてください。おそらく、日によって計画がまちまちなお子さんほど、やるべきことができていないのではないでしょうか。

 毎日やるべきことが無意識のうちにできるようになる。そのことは、勉強に対する身構えや苦痛な気持ちを随分和らげてくれるでしょう。また、ルーティン化(習慣化)すればやっていることの面白味もわかってくるようになります。

 そのことについては以前も書いたことがありますが、今回は、ふと手に取った本を通じて再びそのことの大切さや効能を思い出すことになりました。お子さんの勉強に限らず、おとうさんおかあさんにとっても参考になる面があるのではないかと思います。

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学力形成には『読み』の力が欠かせません

2015 年 4 月 16 日 木曜日

 学校でも新学期が始まりましたが、新生活は順調にスタートできているでしょうか。

 新しいクラスのメンバーのこと、新しい担任の先生のこと・・・、色々心配事はあるかと思いますが、やはり新しい学年の学習内容に問題なくついていけているかという点は、最も気になる点の一つだと思います。

 どの教科においても、教科書やテストの問題などは当然活字で書かれていますから、その文章が何について説明されたものなのか、そこで何を問われているのかといった点を正確に読み取ることは必要不可欠な能力です。ですから、タイトル通り、「読み」の力の向上なくして学力形成や向上を図ることはできません。

 では、この「読み」の力は、どのようにして伸ばしていけばよいのでしょうか。

 「読む」ということを考える際、多くの方の頭にまず浮かぶのは「読書」ではないかと思います。さまざまな本を数多く読むことは、そこに書かれた文章の内容だけでなく、単語や熟語、言い回しなど様々な要素を吸収することができますから、結局のところ、読みの力を伸ばすためには多くの本を読むのが一番の近道だということになります。ただし、いくら読書が良いものだといっても、自分から本に手を伸ばそうとしない「活字嫌い」「本嫌い」といわれる子どもは数多くいます。実際「うちの子は、なかなか本に興味を示さなくて・・・」とお嘆きの方も少なくないのではないでしょうか。

 しかし、本来であれば、こうした自分から本を手に取ろうとしない子も含め、本が嫌いな子どもなどいないはずです。その証拠に、幼い頃にはお母さんが読んでくれる絵本に目を輝かせて見入っていたと思いますし、今でも教室で先生が読み聞かせを始めると、みんな別人のように集中して楽しそうに耳を傾けている姿を見ることができます。こうした点からもわかるように、子どもにとっての読書とは、色々な想像の世界に連れていってくれるとても楽しいものなのです。

 こんなに魅力的なものであるにもかかわらず、自分で本を読もうとしない子がいるという理由を考えると、やはりその多くは「文字は読めても、文章の意味がうまく理解できない→読書が楽しくない」ことが原因になっているものと考えられます。

 入学後間もない1年生はまだまだこれからだとしても、3年生になっても自分から本を手に取ろうとしないようであれば、読みの態勢そのものを一度確認してみる必要があるかもしれません。もし、読みの態勢がきちんと築けていないとしたら、たとえ「今のところ学業成績的には問題ない」「もう一人で本を読める」という子であっても、近い将来、より難度の高い学習に取り組むようになった際、頭打ちになってしまう可能性があります。 

 「読み」の態勢が築かれる流れを考えると、若干の個人差はあるにしろ、誰しもほぼ小学2~3年生頃に安定して黙読することができるようになるといわれています。もちろん小学校入学以前から文字を読み書きできる子どもはたくさんいますし、文字が読めれば自然と一人で絵本などを読み始めることとは思いますが、その段階では、意味のわかる部分だけをとばし読みしていたり文意や描かれた状況をうまく理解できていなかったりすることも多く、実際には「読めているようで読めていない」ものと考えた方がよいかもしれません。

 ですから、低学年の間は、いかにスムーズな読みの態勢を築いていくかという点に重きを置く必要があるわけですが、ここでクローズアップされるのが「音読」です。

 黙読が安定するまでの子どもにとっての「言葉」とは、「話し言葉(音声言語)」を意味します。誰でも最初に話し言葉を身につけ、その後の成長にともなって、頭の中で話し言葉と「書き言葉(文字言語)」との変換が可能になっていきます。自分の中にある言葉のほとんどが話し言葉だった段階から、活字を目にしてスムーズに意味を理解することができる段階へと成長するためには、目にした文字を脳内で一度音声に変換し、話し言葉と書き言葉とを結びつける作業をどれだけ多く経験しているかという点が、非常に大きな意味をもっているのです。

 低学年の時期は、こうした脳内処理を身につけていく過渡期にあたり、この作業の代表的なものが「音読」であるというわけです。

 以上のような点から、新学期を迎えたこのタイミングで新たに家庭学習を見直す際には、読みの力の向上を目指して、ぜひ毎日の音読を加えられることをおすすめします。

 子どもが読む声を隣で聞いていると、言い間違えたりつまったりすることも多く、ついつい途中で口を出したり叱ってしまいそうになりますが、毎日の音読練習の効果が表れるまでには数か月ほどの期間を要するのが普通です。親の側にも子どもの側にも根気強さが必要になりますから、励ましながら親子で一緒に取り組んでみてはいかがでしょうか。

(butsuen)

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「善く生きる」という言葉

2015 年 4 月 13 日 月曜日

 遅ればせながらご報告します。このブログはこれまで中学受験部門(4~6年部)の保護者に向けて記事を書いてまいりましたが、この4月から低学年部門(1~3年部)の「ジュニアブログ」と統合し、より幅広い年齢の児童の保護者に向けて情報をお届けすることになりました。

 低学年部のブログには、もう一つ指導現場から発信している「ジュニアつれづれ日記」があります。そこで、もう少しすっきりさせたほうがよいと考えました。また、低学年の保護者向けの記事に書いている内容は、高学年のお子さんの学力不振の原因を考えるうえで役立つことも多数あり、まとめて同じブログに記事を掲載するほうがよいのではないかとも思いました。

 今後、本ブログの記事は基本として筆者ともう一名の二人で書いていくことになります。ジュニアブログの記事がこのブログに引っ越してきて、より更新の頻度が増えると思っていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、毎年この時期になると筆者は毎日のように外出し、広島市内の主要私学を訪問しています。外出の用件は、6年部会員親子を対象とした私学紹介イベントを開催するにあたり、私学への協力の要請、ならびに準備の段取りの打ち合わせをするためです。このイベントは、「私学がきみを呼んでいる!」というタイトルで実施していますが、すでに10数年継続している6年部恒例の催しとなっていますので、ご存知のかたもおありでしょう。例年、広島学院、修道、広島城北、ノートルダム清心、広島女学院、安田、広島なぎさの7校に参加協力いただいています。

 言い訳がましい話ですが、外出がらみの日は原稿書きが進みません。したがって、「次はどうしようか」「何を書こうか」と迷ったのですが、私学の先生と打ち合わせの合間に雑談をしているとき、(筆者として)うれしい情報をいただいたので、それをご紹介することにしました。そんな話題ですから、忙しいかたは今回の記事はパスしていただいて構いません。

 うれしい話というのは、卒業生の近況に関することです。その卒業生については、「君の涙は無駄ではなかった!」(2009年9月4日掲載)というタイトルの記事でご紹介したことがあります。

 頑張り屋でひたむきな受験勉強をする一方、真面目すぎるがゆえに「精神的にもう少しタフであってほしい」と思っていた男の子がいました。いよいよ本番がやってきたとき、不安が現実となってしまいました。最初の入試で躓き、次もその次もと悪循環に。結局、最後に受けた私学に受かり、そこへ進学することになりました。当時、「彼はどんな思いで中学校に進学しただろうか」と思うと、胸が痛んだものでした。

 その男の子は律義で、筆者に何度か便りをくれました。やがて彼からの便りは途絶え、彼のことも忘れかけていたあるとき、人づてに彼が東大の法学部に進学したという話を耳にしたのです。その話で記憶の回路のスイッチが入ったのか、彼が筆者に「ボクは、将来弁護士になりたいんです!」と目を輝かせて語っていたことを思い出しました。

 入試の結果が思いもしない失敗に終わった後も、彼は自分の夢を捨てることなく、ずっと努力を継続していたのです。その彼の真摯な努力に、頭の下がる思いをしたことを記憶しています。そのときのことを記事にしたのですが、それでも心のどこかに、「彼は真面目過ぎるからなあ」という、その後の歩みについて心配する気持ちもありました。

 ここからが、最近私学の先生から耳にした「うれしい話」です。その私学の先生と話をしていたとき、ふと彼の出身校であることを思い出しました。そこで何気なく彼の名前を口に出すと、「あ、○○君なら、僕の同期で仲良しでした!」とおっしゃるではありませんか(その先生は母校で教師になっていたのですね)。そして、「彼は今、弁護士をやっていますよ」と教えてくださいました。聞けば、一度別の大学(そこも一流とされる大学ですが)へ進学した後、再受験して東大へ入ったのだそうです。そして、ついに目標の弁護士という職業に就いたのです。彼の今に至るまでの紆余曲折と、ひたむきに頑張り続ける姿勢に改めて感心するとともに、「よかった!」と安堵の思いに駆られることしきりでした。

 大人なら誰もが実感しているでしょうが、「人生は思い通りにいかない」ものです。目の前の試練をようやく乗り越えても、また次の試練が待ち構えています。挫折感を味わうことも少なくありません。しかし、彼のように夢をあきらめずに努力を続けていけば、やがてその夢を叶えることができるのです。今、勉強が思うようにならないで悩んでいるお子さんもおられるかもしれませんが、おとうさんおかあさんには「結果を恐れず、自分のやれる精一杯をやっていけばいいんだよ」と、励ましてあげていただきたいと切に願う次第です。

 前述の彼の近況を知ったとき、ふと頭に浮かんだ言葉がありました。それは、筆者が大学で教えを受けた教育学の教授によるもので、「善く生きる」という言葉です。人生をいかに生きるかを表したものですが、前述の卒業生にぴたりと当てはまっているように思いました。

 かつて受けた授業で、その言葉の意味がどう解説されていたかは全く覚えていません。しかし、5~6年前、大学の創立150周年記念行事が全国各地で行われ、広島にゆかりのあるその教育学の教授(現在は名誉教授)が広島の催しで基調講演をされました。なんとそのときすでに御年80数歳でした(現在もご存命です)。その教授は基調講演の際にも「善く生きる」という文言をお使いになりました。講演終了後、司会者から「先ほどの『善く生きる』という言葉はどのような意味でしょうか」と質問されると、「何度失敗をしても、決してへこたれず、反省を胸にまた努力を継続していくことです」というようなことをおっしゃいました。

 失敗してもそのたびに立ち上がり、あきらめることなく前を向いて進んでいく。それはすべての人間に求められることだと思います。前述の卒業生のような生きかたこそ、「善く生きる」の手本ではないでしょうか。また、80歳をとうに過ぎても矍鑠(かくしゃく)として現役を継続し、はるばる広島までやってきて講演をしておられるその先生こそ、「善く生きる」の体現者だと思いました。

 中学受験をめざして勉強を続ける子どもたちにも、これから様々な試練が待ち受けているでしょう。しかし、決してあきらめずに、失敗をしたらなぜ失敗したのかを振り返り、再び努力を継続していただきたいものです。その繰り返しが、お子さんを成長させ、少しずつ人間の器を大きくしていくのですから。

 おとうさんおかあさんにおかれては、「失敗をしたら、そこに必ずよくなるためのヒントがあるんだよ」と励まし、失敗を糧にさらなる前進をしていく姿勢をお子さんに植えつけてあげていただきたいと存じます。それがお子さんを「善く生きる」人間に成長させ、入試を乗り越える力を、さらには先に控える長い人生を生き抜く力を与えてくれるに相違ありません。

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