2015 年 9 月 のアーカイブ

子どもの人生の基盤を築くのは“今”です!

2015 年 9 月 28 日 月曜日

 今回は、まだほんとうの意味で入試を意識する前の段階にある4~5年生までのお子さんの学習について、筆者が保護者の方々にお伝えしたいことを書いてみようと思います。

 中・高一貫の私学の先生がたによると、いつも授業の予習や復習を怠らず、しっかりした自己管理のもとで勉強を進めている生徒が多数いる一方、予習や復習をおろそかにしたり宿題をため込んでしまったりする生徒も一定数いるそうです。同じ条件の入試を突破して入学したはずの生徒が、どうしてこのような状況に至るのでしょうか。

 同様のことは、大学生にも少なからず当てはまります。晴れてめざす大学に進学したのちも、決して気を緩めることなく専門分野の学業に熱心に打ち込み、自らの才能を開花させていくすばらしい学生がいる一方、同じように狭い関門を突破して志望大学へ進学したというのに、入学後はろくに勉強をせず、いざ試験のときには他人のノートを借りてその場しのぎの対策をする学生がいます。このような違いは、どうやって生じるのでしょうか。

 これは社会人にも。言えることでしょう。経験のない様々な仕事を、しっかりとした段取りや情報収集、十分な準備で次々とやりこなし、会社の要請に応えられる人物がいる一方、言われた仕事を言われたようにしかできない人物もいます。また、言われたことしかできないのはまだしも、言われたことすらまともにできない人物も少なくないと言われます。これらの人物は、学歴上はたいした違いはありません。これはどういうことなのでしょう。

 以上のような話は、どなたも幾度となく耳にされたことがおありだと思います。今や、学歴や学校歴などの看板は、その人物の能力をはかる「参考資料」の一つにしかすぎません。入学偏差値の高い中・高一貫校にも、誰もが憧れるような有名大学にも、名前の通った一流企業にも、「できる人間」とされる人たちと、「できない人間」とされる人たちがいるのです(とても残念なことですが)。

 このブログ記事をお読みくださっている保護者の方々は、もちろん「わが子には、『できる人間』に成長してほしい」と願っておられることでしょう。その願いは、親の働きかけとお子さん自身の努力があれば必ず実現できます。

 なぜなら、中学生以降の学業面の成果を決定づけるのは、小学生いっぱいまでの生活や勉強のありかただからです。人間の性格や生きかたの原型は小学生時代までに形成されると言われます。落ち着きがあるか、それともおっちょこちょいか。こうした性格的特徴は、子どものころ明確になり、あとから変えることは大変難しいということはみなさんご存知でしょう。物事への取り組みかたや、勉強の仕方なども同じで、いったんその人間の様式として固まるとおいそれとは変えられません。そうして、後々までも善きに悪しきに人生の歩みに影響を及ぼします。

 中学入試を視野に入れておられるご家庭の場合、この受験対策の毎日をいかに過ごすかによって、以後の状況が随分違ってくることでしょう。今、お子さんはどんな受験生活を送っておられるでしょうか。塾での勉強をお子さんが受け入れ、楽しく塾に通っておられるでしょうか。家庭での勉強の習慣は定着しつつあるでしょうか。授業の予習や復習は軌道に乗りつつあるでしょうか(弊社は、4年生には予習を課していません)。こうしたことの一つひとつがお子さんの行動の自律性や主体性を築くための土台となるのです。

 小学生の受験勉強は、全くの子ども任せにはできません。ある程度親が関わりながら、いかにして子ども自身を軸とした学習へ転換させていくかが必要になっていきます。いつまでも親が手をかけたり、無理やりやらせたりしたのでは、子どもの自律的な学習姿勢は身につきません。また、保護者のなかには「子どもの学習を全て学習塾が管理し、丸ごとサポートしてほしい」と望むかたもあるかもしれません。しかしながら、この方法は学習塾の利益にはなっても、お子さんの将来に貢献することはほとんどありません。確かに、毎日の勉強を全部塾が管理すればテスト成績は上がるでしょう。それと引き換えに、子どもは自律性や主体性という人生を有意義にするうえで最も大切なものを失う恐れがあるのです。

 まずは、毎日のお子さんの勉強ぶりを見つめ直してみましょう。自分からやろうとする姿勢が根付きつつあるようならすばらしいですね。それを大いにほめて喜んでやりましょう。「自分でやり遂げた」という手応えを味わう。そして、それを親が喜んでくれる。この繰り返しこそ、「できる人間」に成長するための大切な第一歩なのです。

 20150928cできる人物の特徴は、自分の考えや行動に軸があり、何をいつまでにどのようにしてやり遂げたらよいかを自分で判断できる点にあります。自分の手に余る案件に遭遇したら、先輩や他者に相談したり意見を求めたりしながら、その時点でできる最善の解決策を見出そうと努力をします(自分の力が及ばない場合、他者の協力を取りつけることも自立した人間の重要な要素です)。そういう人間にわが子がやがて成長していくことをイメージしてみてください。そして、わが子がそのような人間に成長していくためには、どう関わったらよいかを考えてみましょう。きっとこれからの親としての振る舞いが変わってくるのではないでしょうか。

 「そうは言っても、なかなか現実を変えるのは難しい」「これまで、自立した勉強ができるようサポートしていなかった」「とりあえず、親として何をどうしてやればよいかわからない」――そんなかたもおられるかもしれませんね。そんなかたは、このブログの過去の記事をいろいろ当たってみてください。筆者だけでも500回以上の記事を書いています。参考にしていただける記事があるかもしれません。

 また、おかあさん同士で受験生活のフォローについて話し合える、「おかあさんの勉強会」という催しも実施しています。今年の秋実施分のテーマとおおよその内容をご紹介しておきましょう。

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 なお、この催しは、弊社の「4・5年部週3日コース会員」のご家庭が対象となっています。数名ずつグループになっていただき、二人一組で、またはグループ全員で楽しく会話を交わしながらテーマに沿って成果を得るための方法を考えていく催しです。

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 いずれの校舎でも、まだ受け付け可能です。興味をおもちになったら、ぜひ参加してみてください。

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カテゴリー: お知らせ, 子どもの発達, 子どもの自立, 子育てについて, 家庭での教育, 行事のお知らせ

子どもに適しているのは「デジタル」?「紙」?<続き>

2015 年 9 月 21 日 月曜日

 先日、子どもの学習に活用できるデジタル教材、特にタブレット端末の優れた点について書かせていただきました(「子どもに適しているのは『デジタル』?『紙』?」)。
 しかし、だからといって、全てをタブレットに置き換えてしまえばいい・・・とは言い切れません。それは、どれだけデジタル化が進んでも、紙教材ならではの素晴らしい点や、紙でなければ得られないものもあると考えられるからです。

 その一例が、前回ご紹介した実験結果の中にもあった「紙教材は学習した実感をもちやすい」という点です。
 タブレットが「もう一度やってみたい」という学習の動機づけに適しているのに対して、紙教材はしっかり取り組めばそれに応じた実感を得やすいという特長をもっています。その点をうまく活かせば、他の学習ツールよりも大きな達成感を得ることができると考えられますし、「しっかり勉強した」という実感が支えとなって、基礎知識を習得する際にも効果を発揮するはずです。
 つまり入口や導入はタブレットに優位性があるとしても、一度習慣化されて流れができた後は、紙教材の長所が際立ってくるということになります。

 さらに、上記のような心理面での効能だけでなく、紙教材を使った筆算の練習や漢字の書き取りなどでは、筆記用具を通して紙と接触する感覚が脳を刺激することによって学習効果を高めているといわれています。もちろんタブレットでも指やタッチペンなどを使って「書く」という動作は可能ではありますが、どうしても「紙+鉛筆」の組み合わせとは異なる面があり、現段階では感覚的なものも含めた違いを埋めることは難しいようです(今後の技術の進歩如何ではこの点も変化する可能性はありますが・・・)から、この点も紙教材を使って学習することの見逃せない長所でしょう。
 この他にも、紙教材には、文章の読みやすさや課題に取り組む際の疲れにくさなどの長所がありますから、それらを活かして長い文章を読んで設問を解くことや、反復的な筆算や漢字の書き取りに少し長い時間取り組むなどの用途にも向いているということができます。
 このように紙教材にも多くの優れた点があるのです。

 150918新しいツールや学習法が登場すると、そちらへの興味・関心が高くなるのは当然のことですし(まず試してみないことにはわかりませんからね)、反対に、「新しいものは信用できない」という理由でそれを避け、従来通りのものにこだわりをもたれる方もいらっしゃることでしょう。
 ですが、デジタル教材を採用する流れは世界規模で進められており、これから先、日本でも学校をはじめ教育現場のデジタル化が進んでいくことは間違いないでしょう。加えて、上記のように紙教材にも優れた点が多くあることをふまえれば、少なくとも今後しばらくの期間は、両者を複合的に取り入れる形になることが予想されます。
 家庭学習に関しても、最初から「どれか一つのツールが最高で、他はダメ」と決めつけるのはあまり好ましい対処とは思えません。お子さんの性格や特性に応じて各ツールを使い分けることや、それぞれの教材の特長を考慮しながらバランスよく組み合わせるなどの柔軟な発想や対応が、これからの学習には求められるのではないでしょうか。

 

 そしてもうひとつ、保護者の方々にご注意いただきたい点があります。
 それは、デジタル教材であれ紙教材であれ、家庭学習で子どもを指導する際のコミュニケーションの取り方には十分注意を払っていただきたいということです。

 ある研究において、ほぼ同じ学力レベルの小学生達を2つのグループに分けて同じ内容を学習させ、1か月後に算数の計算や漢字の問題などのテストをして比較するという取り組みが行われたそうです。ひとつは、正解・不正解のみを表示するタブレット端末だけを使って勉強するグループ、もうひとつは、母親など家族に質問しながら従来通り紙教材を使って勉強するグループです。
 元々この実験は、「◯×しか表示できないデジタル機器での学習が、指導を受けながら進めることのできる学習にどこまで近づけるか」という趣旨で実施されたものでした。ですから、当然「家族に質問しながら勉強する」グループの方が高得点だと予想されていたのですが、実際に行われたテストの結果は意外なものでした。
 驚いたことに、単純な答え合わせ機能しかもたないタブレットで勉強したグループの方が良好な成績をおさめたのです。

 この成績差が生まれた背景としては、もちろんタブレット学習の効能もあるのでしょうが、それ以上に大きく影響したのが、紙教材で勉強したグループの「親に質問すると叱られる」という点だったと考えられています。
 実験終了後、家族に質問しながら紙教材で勉強したグループの子ども達に家庭学習の様子を確認したところ、「お母さんに質問したけど、『なんでわからないの!』といつも怒られるから嫌になった」「『なぜこんな問題ができないのか』と叱られて、質問する気が失せた」といった答えが多数返ってきたのです。子ども達にとって、頑張っているのに叱られることや親の不満げな表情を目にすることは、かなり大きな心理的負担になります。「解き方を教えてもらえるとしても、質問するたびに叱られるのなら、最初から一人で勉強した方がよい」ということになり、結局、物言わぬ機械が黙々と答え合わせをしてくれたグループの方が、より多くの問題を効率よくこなすことにつながったというわけです。
 家族による助言の優位性を前提に実施されたこの実験によって、「質問して叱られるぐらいなら、単純な機能しかもたない機械を使って勉強した方がましである」ことが証明されたという皮肉な事実は、教材・教具の種類に関わらず、親の関わり方がいかに重要かを示しているといっていいのではないでしょうか。

 今の教育現場は、昨今のデジタル技術の発達によって、その昔印刷技術が発達して紙教材を大量生産できるようになった時代以来の大きな変革期を迎えているのかもしれません。そう考えれば、現在はその過渡期にあたりますから、技術の進歩や科学的な検証がより一層進むことで、今後はさらに進化を遂げることになるでしょう。
 ただし、いくら教材が進化したとしても、「それさえ与えておけば、子どもだけでどんどん勉強できるようになる」ような魔法の道具はありません。どんな教材を使っても、一定の年齢までの家庭での子育てと知的発達が不可分なものである以上、子どもはお母さん・お父さんとの関わりの中で成長していくものです。
 それを忘れず、子どもとのコミュニケーションを大切にしながら、わが子にはどんな教材・勉強法が適しているのかを保護者の方がしっかり見極めてあげてくださいね。

(butsuen)

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カテゴリー: 勉強について, 勉強の仕方, 小学1~3年生向け

「ほめることの難しさ」を感じておられるかたへ

2015 年 9 月 14 日 月曜日

 子どもをがんばらせるには、親がほめることだ」とよく言われます。しかしながら、「わが子をほめるのは難しい」という保護者が少なくありません。どうしてでしょうか。

 わが子をほめることの重要性や効果についてはこれまで何度もこのブログで書いてきました。そこで今回は、お子さんや保護者に直接接している現場の担当者の書いた文章をご紹介してみようと思います。今まで筆者が書いてきたものとは違い、指導現場に立っている担当者の観点から書かれており、参考になるのではないかと思います。

「うちの子、どこを誉めてやれば良いかわからないのですが…」

 これは、私が定期的に行っている保護者面談でよく相談されることの一つです。「叱る」「注意する」などはどこのお父さんお母さんも自然と口から出てしまうようですが、「誉める」ということに関してだけはなかなか難しいようです。

以下は、数年前4年生から卒業までの3年間指導を担当させてもらった女の子の話です。

「先生、私国語嫌い。」

4年生も半ば過ぎた頃、そんなことを突然言い出しました。

「どうして嫌なの?授業、楽しくない?」

「授業は嫌じゃないけど…だってできないんだもん。」

どうしてそんなことを言い出したのでしょう…。国語は算数ほど得意ではないにしても、話す言葉もしっかりしているし、苦手というほどできないとは思えないのですが…。

「そんなことないよ、よく頑張ってるじゃない?」

「でもお母さんが、『あなたは国語ができない、できない』って言うよ。」

 0601家庭での日常的な会話としては、お母さんがごく普通にわが子に言ってしまうことだと思います。ただし、まだ小学生の子どもは良くも悪くも親の言葉に影響されるものです。そのお子さんもまた、母親の「あなたは国語ができない」という言葉に影響を受けたのでしょう。だんだんと苦手意識をもち始め、やがて国語が「嫌い」とまで言うようになってしまいました。 

 わが子の誉めるところを見つけるというのはなかなか難しいものです。単にテストの点数だけを見て誉めようと思っても、親の納得のいく点数を取って帰ってくることはなかなかないでしょう。ではどのようにすればよいでしょうか。

 2週間の頑張りを見てあげてください。

 子どもから塾のことや今日頑張った勉強のことなどを色々と聞き出してあげてください。

 頑張った家庭学習のノートを見てあげてください。

 そうすれば、親も自然と返却されたテストの見方が変わるのではないでしょうか。良い点を取って帰れば、ただ点数を誉めるだけでなく、2週間の頑張りも含めて誉めることができます。

 思うように点数が取れなかった時も、しっかりと頑張りを見てあげていたら、テストの×ばかりに目がいかず○に目を向け、

「2週間の内容はよく頑張ってたから○も多かったね! 次回はアタック(弊社の副教材)に力を入れてがんばろうか!」、などと声をかけることもできるのではないでしょうか。

 0602子どもは、親から期待され、自分を見てくれているのだとわかると頑張るものです。

 誉められれば、また誉められたいと努力するものです。

 最善のほめる方法というものは、ご家庭によって違うとは思います。2週間の頑張りを見てあげ、テストの×ではなく○に注目してあげるだけでは、うまく誉めてあげられないこともあるかもしれません。

 それでも、自分が我が子に与える影響というものは非常に大きなものだという認識を持ち、毎日の言動に気をつけようと意識するだけでも何か変化が起こるかもしれません。(私自身、この文章を書きながら、我が子に対して感情的にばかりなってはいけないと深く反省いたしました…)
※ちなみに、今回ご紹介した女の子はお母さんの努力もあり、6年生の頃には苦手意識を克服し、見事第一志望の中学校へ合格することができました。

 どうでしょう。「わが子のがんばりを促したいけれど、またそのためにほめてやりたいけれど、なかなかうまくいかない」と感じている保護者はおられませんか? 今回指導担当者からご紹介した話を参考に、「よし、もっともっとわが子をほめてがんばらせよう!」という気持ちをもっていただけたなら幸いです。

 なお、今秋に2回実施する予定の「おかあさんの勉強会」(4・5年部「週3日コース」の会員のおかあさん対象)では、「成績アップは効果的復習から!」「ほめかた次第で子どもは変わる!」というテーマを予定しています。「どうほめてわが子の奮起を促すか」と思案しておられるおかあさんは、ぜひ参加してみてください。この催しについては、後日案内チラシを配布するとともに、このHPにおいてもご案内します。よろしくお願いいたします。

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カテゴリー: アドバイス, 勉強について, 子育てについて, 家庭での教育

子どもに適しているのは「デジタル」?「紙」?

2015 年 9 月 10 日 木曜日

 近年、教育現場へのデジタル機器の導入が急速に進んでいます。
 授業の一部でパソコンやタブレット端末を使った活動を取り入れることは以前から行われていましたが、最近では、教室に設置された従来の黒板・白板を全面的に電子黒板に置き換える動きや、遠隔地の子ども達や企業の担当者などとインターネット回線を使ってリアルタイムでやり取りを進めながら学習内容の理解を深める活動なども行われています。
 文部科学省はこれからさらにデジタル化を推し進めていく方針で、2020年までには国内全ての小中学校にデジタル教科書を配布するという目標を示しています。今後は公立・私立を問わず、教育現場のデジタル化に一層拍車がかかることになるでしょう。

 さて、こうなってくると、「わが子を取り巻く教育環境はどうなるんだろう」という点は非常に気になるところです。「うちの子はちゃんとついていけるかしら」と心配される方や、急速にデジタル化されていく教育環境にわが子を適応させるべく、既に何らかの行動を起こしている方もいらっしゃると思います。
 デジタル機器と一口にいっても種々ありますが、親として特に気になるのは、子ども達が実際に手にするツールではないでしょうか。この部分のデジタル化を端的にいえば、紙でできた従来の教科書やテキスト、授業用のプリントやドリル教材などが、パソコンやタブレット端末などに置き換わっていく・・・というのが一般的なイメージだと思います(通信教育でも、パソコンやタブレットを活用した講座がどんどん新たに登場していますし)。

 こうした分野に関して、調査・研究を進められている研究者や学校教員の方々がいらっしゃいますので、今回はその内容を少しご紹介します。
 教育テスト研究センターの赤堀先生は、紙教材では伝えられないリアルな情報を手軽に伝えられる点や、学習者の意欲を喚起して想像力を膨らませることができる点などデジタル教材の良さに着目され、子ども達が実際に触れる「紙」「パソコン(PC)」「タブレット」の3つについての比較実験を行われています。

 150910この実験は、大学生60名・中学生60名に、紙・パソコン・タブレットのそれぞれを使って、文章・図形・写真の記憶テストを行うというものでした。その結果からまとめられたそれぞれの特長は右のような内容(一部要約)です。

 この実験から得られた結論として、「知識を問うような言語系の問題には紙のテストに優位性があること、写真や図などの非言語系の問題にはタブレット端末が優位であることが明らかになった」とされています。

 さらにこの結果の中で注目すべきは、タブレット端末での学習は「退屈しにくい」という感想をもった生徒が多かったという点でしょう。
 この実験とは別に実施された学習ツールに関するアンケートでも、「もう1度やりたい」と答えた生徒が最も多かったのは、この実験の結果同様にタブレットを使用した勉強法だったそうです。
 子どもは「新しもの好き」な面が大人以上に強いですから、おそらく目新しいデジタルガジェットを手にして興味津々で取り組んだのでしょうね。ただ、タブレットの魅力はそれだけではありません。紙より情報量が多い(クリックすれば映像や音楽が流れる点など)、パソコンより直感的で簡単な操作が可能(キーボードではなくタッチ操作が主である点など)というタブレットの特長が、子どもの心を惹きつけたのではないかと推察されます。
 つまり、タブレットを使用すれば、これまでの紙教材に取り組むのとさほど変わらない感覚で、これまで以上に多くの情報やリアリティのある美しい写真・映像などを手に入れながら勉強することができるというわけです。

 これらの点から、赤堀先生は「タブレット端末は、パソコンよりも自分が動かしているという当事者性が強く、学ぶ意欲がわきやすい仕組みになっている。与えられた情報以外も知りたいという気持ちにさせ、子どもの創造性を高めることができるメディアである」と説明されています。
 つまり、タブレットを主とするデジタル機器を活用し、映像や図表など情報量の多さや通信機能を活用した双方向性を活かすことによって、子どもの学習意欲を高めたり、学習に幅や深みを与えることができるのではないかと考えられるのです。

 では今後、学習ツールをタブレット端末などのデジタル機材に置き換える方がよいのでしょうか?
 少し長くなってしまいますので、続きは回を改めて書かせていただこうと思います。

(butsuen)

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カテゴリー: 勉強の仕方, 家庭学習研究社の特徴, 小学1~3年生向け

「知りたい」という本能を目覚めさせる

2015 年 9 月 7 日 月曜日

 子どもの心のなかには、“おかあさん大好き!”の気持ちがDNAレベルで組み込まれています。そんな子どもが、おかあさんの注意や叱責の言葉に耳を貸さなくなる理由を前回(8月31日掲載)はお伝えしました。

 わが子の勉強ぶりにやる気が感じられず、たまらず注意したり叱ったりしたものの効果が得られない。そればかりか、ついには親の言うことを最後まで聞かず、言い返して来たり、プイとどこかへ姿を消してしまったり…。そんなことになったら親としてとても悲しく、ストレスがどんどん溜まってしまうでしょう。

 今回は、その恐れを感じているかた、そうなりつつあると感じているかたが、多少なりとも気持ちを明るくできるような提案ができたらと思っています。よろしくお願いします。

 前回、「おかあさんという存在が、子どもの物事への意欲の起点になる」ということを、脳神経外科を専門とする先生が述べておられることをご紹介しました。その先生の書物に、子どもの学びを活性化する効果をもたらすアプローチについて書かれた箇所があります。そのなかで、子どもの脳の神経全体を活性化させ、「知りたい!」という欲求を高める親の関わりかたについていくつか提案しておられます。全部で5つありますが、それぞれについて説明されている部分をかいつまんでご紹介してみようと思います(このブログ用に若干表現を調整しています。ご了承ください)。

1.叱った後は必ずフォローし、子どもの側にいることを明らかにする。

 人間の脳には、「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」という、生まれながらの本能があります。おかあさんが叱ってばかりの状態だと、このうちの「生きたい」という本能から、自分を守ろうとする「自己保存本能」が後天的に発生します。これは生存競争に関わる本能だけにとても強く、ある意味、自己中心的な欲求です。この欲求が、自分への叱責に過剰な反応をしてコントロールを失うと、自分や他人を傷つけたり、不平、不満を爆発させたりすることになります。

 20150907aだからこそ、おかあさんは、子どもに対して“怒りっぱなし”“叱りっぱなし”ではいけません。叱った後は必ずフォローし、子どもの側にいることを明らかにする」ことが求められます。そうでないと子どもは、他人を常に脅威ととらえるようになり、危機感から自己防衛本能に流されやすくなります。

※叱るときに求められる配慮については、このブログの他の記事を参考にしてください。

 

2.ときどき一緒に羽目を外し、子どもと仲間になる。

 前述のように、人間には「仲間になりたい」という本能もあります。おかあさんが日常の家庭生活で子どもの気持ちをくみ取るよう心がければ、子どもの脳内に他者に対する信頼感が醸成され、自己中心的な欲求、排他的姿勢が抑えられるようになります。20150907b

 「ときどき一緒に羽目を外し、子どもと仲良しになる」とは、大人と子どもという関係を超え、大人のもつ弱点や人間的側面をさらけ出して見せることで、子どもに自分の弱点や失敗を素直に認める力を養わせることを意図しています。親の欠点を子どもの前で見せることに危惧を抱くかたもあるかもしれませんが、それこそが「仲間同士」であることのあかしであり、子どもの脳の「仲間になりたい」という欲求を刺激する効果も生まれてくるのだとご理解ください。

※ブログ内の こちらの記事も参考にしていただけます。

3.全力投球をする子どもの素直な性格を褒める。

 人間のやることは完全ではありません。と言うより、完全なことなどあり得ません。まして小学生の子どものすることは、大人から見れば改めるべきところがたくさんあることでしょう。しかしながら、才能は一生懸命に、夢中になって物事に取り組む体験を通して花開くものです。20150907c

 ちょっとやり始めたらすぐに注意されたり、直しを求められたりしたのでは、子どもの前向きな取り組みの姿勢は育ちません。結果はともかく、まずは一生懸命になって取り組んでいる姿をほめてやりましょう(結果を求める言動を控え、チャレンジする姿勢を喜んでやりましょう)。ほめられることで、子どもはおかあさんからのOKサインを確認し、自分に自信をもつことができるでしょう。それが失敗を恐れず前向きに生きる姿勢を育むのです。

※ブログ内のこちらの記事も参考にしていただけます。

4.表情豊かな心のこもった会話をたくさんするよう心がける。

 脳細胞全体の活性化に欠かせないのが、人間同士のコミュニケーションです。「子ども相手だから」と適当にあしらうような会話をするのでなく、胸襟を開き心から相手に対する親愛の気持ちを表情に出しながらの会話を心がけましょう。それが人間信頼の気持ちを子どもの心のなかに育み、自らの思いを率直に相手に伝えようという意欲を育てることになります。

 20150907また、相手が子どもあれ大人であれ、一対一での会話の際には互いの目を見て話すことが大切です。目を見て話しかけられると、誰でも一生懸命に相手の言うことを聞きますし、双方が心のこもった会話を心がけるようになるでしょう。

 会話によるコミュニケーションは言語知能を鍛えます。「言語知能は」表現知能の一種ですが、他に「理論知能」「計算知能」「音感知能」「空間認知能」「運動知能」などがあります。脳は各機能のバランスを重視し、相互に連帯していく働きを備えた器官ですから、言語知能を活性化させると他の知能の働きも相対的に強化されていきます。

※ブログ内のこちらの記事も参考にしていただけます。

5.自分を守り過ぎないように、よい質問を心がける。

 よい質問を心がけることも、子どもとのコミュニケーションの一環として日常の会話で励行してほしいことです。「なんでこんな失敗をしたの!?」などと、詰問口調の問いかけをすると、子どもは身構えてしまい、素直に自分の考えや意見を言えなくなるばかりか、口を閉ざしてしまいかねません。

 日常の会話においても、「これ、どうしてだと思う?」などと質問を投げかけ、互いの考えを交換する習慣を築けば、子どもとの自然なコミュニケーションが生まれるでしょう。豊かなコミュニケーションを楽しむ習慣は、「共存性」という人間の脳の本質を活性化し、他人と傷つけあうことのない真に幸福な生きかたを、子ども自らが志向するように導く助けとなります。20150907e

 テスト成績が悪かったなら、子ども自身が悔しい思いをしているはずです。まずは、子どもの残念な気持ちに同調する言葉を投げかけ、そのうえで、「今回のこと、あなたはどう思う?」など、一緒に考える姿勢で語りかけると、子どもの態度もずいぶん違ってくるのではないでしょうか。

※ブログ内のこちらの記事も参考にしていただけます。

 いかがでしょう。おかあさんの話しかたや態度がある日突然変わると、「どうしたの?」「気持ち悪い!」と、お子さんが怪しむかもしれません。あせらず、「まずは、わが子とのコミュニケーションのありかたを見つめ直すことから」という姿勢で臨めばよいのではないでしょうか。

 今がどんな状況にあろうと、子どもの心の根底には「おかあさんが大好き!」という気持ちがあります。おかあさんがそのことを忘れず、「何があろうとわが子の味方である」という意識で接すれば、必ずお子さんはそういう親の気持ちに報いようという意識をもつようになるのではないでしょうか。

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