子どもに適しているのは「デジタル」?「紙」?

2015 年 9 月 10 日

 近年、教育現場へのデジタル機器の導入が急速に進んでいます。
 授業の一部でパソコンやタブレット端末を使った活動を取り入れることは以前から行われていましたが、最近では、教室に設置された従来の黒板・白板を全面的に電子黒板に置き換える動きや、遠隔地の子ども達や企業の担当者などとインターネット回線を使ってリアルタイムでやり取りを進めながら学習内容の理解を深める活動なども行われています。
 文部科学省はこれからさらにデジタル化を推し進めていく方針で、2020年までには国内全ての小中学校にデジタル教科書を配布するという目標を示しています。今後は公立・私立を問わず、教育現場のデジタル化に一層拍車がかかることになるでしょう。

 さて、こうなってくると、「わが子を取り巻く教育環境はどうなるんだろう」という点は非常に気になるところです。「うちの子はちゃんとついていけるかしら」と心配される方や、急速にデジタル化されていく教育環境にわが子を適応させるべく、既に何らかの行動を起こしている方もいらっしゃると思います。
 デジタル機器と一口にいっても種々ありますが、親として特に気になるのは、子ども達が実際に手にするツールではないでしょうか。この部分のデジタル化を端的にいえば、紙でできた従来の教科書やテキスト、授業用のプリントやドリル教材などが、パソコンやタブレット端末などに置き換わっていく・・・というのが一般的なイメージだと思います(通信教育でも、パソコンやタブレットを活用した講座がどんどん新たに登場していますし)。

 こうした分野に関して、調査・研究を進められている研究者や学校教員の方々がいらっしゃいますので、今回はその内容を少しご紹介します。
 教育テスト研究センターの赤堀先生は、紙教材では伝えられないリアルな情報を手軽に伝えられる点や、学習者の意欲を喚起して想像力を膨らませることができる点などデジタル教材の良さに着目され、子ども達が実際に触れる「紙」「パソコン(PC)」「タブレット」の3つについての比較実験を行われています。

 150910この実験は、大学生60名・中学生60名に、紙・パソコン・タブレットのそれぞれを使って、文章・図形・写真の記憶テストを行うというものでした。その結果からまとめられたそれぞれの特長は右のような内容(一部要約)です。

 この実験から得られた結論として、「知識を問うような言語系の問題には紙のテストに優位性があること、写真や図などの非言語系の問題にはタブレット端末が優位であることが明らかになった」とされています。

 さらにこの結果の中で注目すべきは、タブレット端末での学習は「退屈しにくい」という感想をもった生徒が多かったという点でしょう。
 この実験とは別に実施された学習ツールに関するアンケートでも、「もう1度やりたい」と答えた生徒が最も多かったのは、この実験の結果同様にタブレットを使用した勉強法だったそうです。
 子どもは「新しもの好き」な面が大人以上に強いですから、おそらく目新しいデジタルガジェットを手にして興味津々で取り組んだのでしょうね。ただ、タブレットの魅力はそれだけではありません。紙より情報量が多い(クリックすれば映像や音楽が流れる点など)、パソコンより直感的で簡単な操作が可能(キーボードではなくタッチ操作が主である点など)というタブレットの特長が、子どもの心を惹きつけたのではないかと推察されます。
 つまり、タブレットを使用すれば、これまでの紙教材に取り組むのとさほど変わらない感覚で、これまで以上に多くの情報やリアリティのある美しい写真・映像などを手に入れながら勉強することができるというわけです。

 これらの点から、赤堀先生は「タブレット端末は、パソコンよりも自分が動かしているという当事者性が強く、学ぶ意欲がわきやすい仕組みになっている。与えられた情報以外も知りたいという気持ちにさせ、子どもの創造性を高めることができるメディアである」と説明されています。
 つまり、タブレットを主とするデジタル機器を活用し、映像や図表など情報量の多さや通信機能を活用した双方向性を活かすことによって、子どもの学習意欲を高めたり、学習に幅や深みを与えることができるのではないかと考えられるのです。

 では今後、学習ツールをタブレット端末などのデジタル機材に置き換える方がよいのでしょうか?
 少し長くなってしまいますので、続きは回を改めて書かせていただこうと思います。

(butsuen)

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カテゴリー: 勉強の仕方, 家庭学習研究社の特徴, 小学1~3年生向け

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