2015 年 12 月 のアーカイブ

自分に自信をもった子どもにするために

2015 年 12 月 28 日 月曜日

 年末年始を経た後、これから年度末にむけて「学習発表会」などの機会が増える学校も多いのではないでしょうか。こうした場面を見ていると、失敗してもめげることなく堂々と振る舞うことができる子がいる一方、すぐに周囲を見回して親や先生に助けを求めたり、ちょっとしたトラブルで「もうやりたくない」と投げ出してしまったり・・・といった子もいます(もちろん性格的なものや、緊張によるミスなどは誰にでもあるとは思いますが)。
 こうした違いはどこから生じるのでしょうか?

 近年、ちょっとしたことで自暴自棄になったり、何事にも意欲をもてなかったりする子どもが増えていることが問題視されていますが、その原因の一つとして、子ども達の「自己肯定感」や「自尊感情」の低さが指摘されています。
 2015128a「自己肯定感」とは、自分の存在そのものを自分自身で肯定的に受け入れる気持ちのことをいいます。この気持ちがないと、自分の存在価値を自分で認めることができないということですから、どんな人であっても前向きに生きることができません。

 児童心理の専門家によると、自己肯定感の高い子どもは概して、情緒が安定している、責任感がある、社会的適応能力が高い、学業成績が良い、周囲との対人トラブルが少ない、社会規範をきちんと守るなどの特徴があるとされています。中でも、「逆境に強い」という点は、ストレス社会の中で生き抜くためには非常に重要なポイントでしょう。逆境に強い子どもは、失敗に動じることなく、良い意味で他人の目を気にせず、悪い仲間の誘いも毅然とした態度で拒否することができます。
 「自分の存在を前向きに受け入れられているかどうか」は、単に人前でどう振る舞うかという点だけでなく、学業や習い事、運動や交友関係をはじめ、社会で生きていく上であらゆる面に影響を及ぼすことになるのです。

 内閣府による調査の中に、日本・韓国・アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・スウェーデンの各国約1,000人の13~29歳の男女を対象として、日本と海外諸国の子ども・若者の意識を比較した内容のものがあります。
 それによると、「私は、自分自身に満足している」「自分には長所があると感じている」「うまくいくかわからないことにも意欲的に取り組む」などの質問に対して肯定的な回答をした割合は、諸外国の若者・子どもが軒並み高い数値を示している一方、日本の若者・子どもの数値はいずれの質問に関しても調査国中最下位でした。中には、日本の若者・子どもの回答が他国の約1/2ほどの低い数値になっている質問もあります。

 2015128bこのような調査結果からは、自分自身に誇りをもつことや、物事に前向きに取り組もうすることに関する、日本の子ども・若者の意識の低さが明確に示されています。もちろんここには日本人特有の「奥ゆかしさ」や「謙遜の情」などもいくらか影響しているのでしょうが、日本だけがここまで極端に低い数値を示しているのをみると、単にそれだけが原因だとは考えられません。

 では、このような状況をふまえて、親にできることとは何でしょうか。
 勉強も習い事も運動も全ての事柄に関して言えることですが、たとえ親から見て稚拙であっても、子どもなりに努力した様子があれば、その過程や頑張り自体をしっかり認めてあげてください。そして、普段からそれを言葉にしてわが子に伝えてほしいと思います。加えて、「昨日の夜、お父さんが◯◯のことを『よく頑張ったな』ってほめてたよ」などと、その場にいないお父さんやおじいちゃん・おばあちゃん、学校や塾の先生などの言葉をうまく活用するのも効果的ですね。2015128c
 また、親同士の会話や担任の先生との三者面談などで「うちの子は本当にダメで・・・」などと言ってしまう場面はないでしょうか?もちろん謙遜から出る言葉だとは思いますが、わが子の前でこのような言葉を口にする場面が重なると、それを聞いた子どもは「自分はダメな子どもなんだ」「苦労して頑張っても意味がない」と感じるようになるのも当然です。できることならこうした場面では、自然な言葉でわが子をほめてあげてほしいものです。もし、それがなかなか難しい場合(「わが子を自慢するみたいで抵抗がある」という方も含め)は、せめてわが子を貶める言葉を口にしないようにするところからまずは始めてみてください。それだけでも、子どもが受ける印象はかなり違うはずですからね。
 こうした普段からの積み重ねが、「あなたが自分を評価する尺度は一つだけではない」「失敗しても、あなたには他にもこんなに良い面がある」ということを、わが子に伝えることにもつながります。何か一つでも「僕はこれが得意なんだ」「私は◯◯を活かして頑張ろう」と前向きに思えるものが子どもの中にあれば、ちょっとした失敗で自分に自信を失くしたり、思い通りにならない状況ですぐに全て投げ出してしまったり・・・というようなことはありません。

 自己肯定感は、人生の初期段階に自分を守り育ててくれた人(大抵の場合は親)から愛情を注がれることによって、その土台が築かれるといわれます。ですから、わが子に「自分のことが好きだ」「自分を大切にしたい」という気持ちを抱かせるのは、親にとって最も重要な役割のひとつです。子ども達が自分に自信をもって日々健やかに成長していけるよう、厳しくも温かい目で見守りながら、たくさんの愛情をわが子に注いであげてくださいね。


 さて、早いもので、2015年もあと数日を残すのみとなりました。来年も、学力形成に関する話題をはじめ、少しでも日々の子育てに役立つ情報をご提供できるよう精進してまいりますので、2016年もどうぞよろしくお願いいたします。

(butsuen)

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カテゴリー: 子どもの発達, 子育てについて, 家庭での教育, 小学1~3年生向け

河合家のサンタクロース

2015 年 12 月 21 日 月曜日

 12月になると、夜の街路はライトアップされ、郊外では家の周りに光の装飾を施す家庭がたくさん見られるようになります。

 このような光景を目にするたびに、「ああ、今年もクリスマスが近いな」と思うのですが、筆者のような年齢になると子どもはすでに独り立ちしています。クリスマスは家庭のイベントになり得ず、そのままスルーして正月を迎えることになりがちです。

 いっぽう、小学生をおもちのご家庭はどうでしょうか。おそらく、お子さんがたはクリスマスの到来を心待ちにしておられることでしょう。

 そこで今回は受験ネタやしつけネタではなく、クリスマスにまつわる話をお届けしようかと、手持ちの書物に何かないかと探してみました。すると、心理学者の河合隼雄さん(1928-2007)の著作の中に、子ども時代のクリスマスの様子が書かれている箇所が見つかりました。ユング心理学の大家として有名な先生の子ども時代のほほえましいエピソードを、ちょっとご紹介してみようと思います。みなさんの子どもの頃のクリスマスを思い出すきっかけになれば幸いです。

 以下は、全て書物からの引用です。

 私が子どもだったころ、わが家にはサンタクロースが来たのである。私の両親はクリスチャンではないけれど、どういうわけかサンタクロースだけは取り入れて、十二月二十四日の夜、贈り物がとどけられることになっていた。しかも、それは二十四日の夜、子どもたちが眠っているうちに、家の中のどこかに隠されていて、二十五日の朝暗いうちから起きて、兄弟一同で贈り物を探すことになっていた。

 子どもにとって、これほど不思議でまた楽しいことはない。私は朝暗いうちに起きることなどめったにないが、今でも所用で早く起きねばならぬとき、服を着ながらふと子ども時代のサンタクロースのことを思い出すほど、その印象は強烈に残っている。朝早く起きて、兄弟で探すのだが、興奮しているのでなかなか見つからない。サンタクロースは賢いので、年々まったく思いがけないところに隠しているのだ。兄弟への贈り物がつぎつぎ見つかって、自分のだけがなかなか出てこなかったときの心細かったこと。また、それだけに発見したときの嬉しかったことなど、今なお心に残っている。

 わが家の家の構造上、煙突からはどうしてもはいってこられないことがわかって、問題になったとき、父親は「うちの家は、ここからはいってくる」と、玄関の上の小さい菱形の飾り窓を指さして教えてくれた。そこで、二十四日の夜、兄たちはひそかに細い糸を張っておいたが、二十五日の朝、それはみごとにちぎられていた! サンタクロースが通ったのだ。

 もっとすごいことがあった。小学校五年生の兄が徹夜してサンタクロースをつかまえる、と言い出したのである。私は小さかったので、そんなことをすると贈り物がもらえないのではと大変心配したが、何と父親が大賛成で協力を申し出た。二十四日の夜、父と兄は徹夜をしようと頑張ったが、兄はついとろとろと眠ってしまい、父親も「お父さんも、つい一緒に眠ってしまって、おしいことをした」というしばらくの間に、サンタクロースはすかさず、すべての贈り物を隠して去っていったのである。これには驚嘆してしまったが、この話は、サンタクロースの素晴らしさを示すものとして、河合家の伝統のようにその後も何度話をされたかわからないくらいとなった。

 ところが戦争が厳しくなり、欧米のものに対しては極端な敵意が向けられるようになった。サンタクロースが日本に来るなど考えられないし、来ても断固として排除しなくてはならぬほどの雰囲気になった。子どもたちはクリスマスが近づいてくるにつれ心配が深まってきた。そんなとき、父親が一同に対して、「サンタクロースはもう来ない」と宣言した。しかし、「よう考えてみたら、日本には大きい袋をかついだ大国主命(おおくにぬしのみこと)という神さんがおられる。気持ちが通じるかどうかはわからんけど、今年は、おとうさんは大国主命にお願いしてみよう」ということになった。

 さて、おとうさんの提案の結果はどうなったのでしょうか。「大国主命がクリスマスに来るというのも変だな」とは思いながら期待して待っていると、ちゃんと来てくれたのだそうです。そのうえ、「一同に大国主命の絵のついている箱にはいった菓子さえ来た」のです。

 おとうさんの子どもたちへの愛情が本当によく伝わってくるエピソードですね。おとうさんは、大国主命にお願いしたのだからサンタクロースではなく、大国主命からの贈り物であることをしっかりと印象づける細工までしてくれていたのですね。20151221a

 河合隼雄さんのご兄弟六人は、家庭をもつようになってからも、それぞれにおとうさんから受け継いだクリスマスの催しを楽しんだとか。そして、この催しが家ごとの楽しい物語を生み出す原動力になったといいます。

 今年のクリスマスには、おたくではどんなことを予定されているでしょうか。それぞれのご家庭の、それぞれの過ごしかたがおありでしょう。受験生のご家庭でも、この日はちょっと気分転換をし、楽しい家族一緒のひとときをお過ごしください。

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カテゴリー: 子育てについて, 家庭での教育

1ヶ月後の本番に向けた親の心構えとサポート

2015 年 12 月 17 日 木曜日

 12月6日(日)には、中学入試本番に向けた最後の模擬試験(第5回)を実施しました。最終回は男子が修道中学校、女子が広島女学院中学校を会場に実施したこともあり、受験者もこれまでよりも多く(当日の受験者は、男子683名、女子562名でした)、本番さながらの雰囲気のなかで行われました。

 参加されたご家庭には、すでに結果をお届けしています。保護者のみなさまは目を通されたでしょうか。無論、受験生の子どもたちは、それぞれに努力を積み重ねたうえで試験を受けています。そういう集団のなかでもたらされたデータですから、厳しい判定を受け取ったお子さんもおられることでしょう。

 ただし、模試のデータとして提示されている「合格可能性の予測」は、合格を確約するものでも、否定するものでもありません。あくまで、その回の試験が本番であった場合の、合格に向けた可能性を%で示したものに過ぎません。

 本番では出題される問題は当然違います。同じ教科のテストであっても、得意な範囲が出題されることもあれば、出題されないこともあります。問題の難易度によって、お子さんの出来栄えは大きく変わる可能性もあります。難しい問題が出たほうが有利に働くお子さんもいれば、それが裏目に出るタイプのお子さんもいるのです。また、その日のコンディションも得点に関わってくるでしょう。

 ですから、模試の判定結果に振り回されるのではなく、模試の判定結果がそのようになった理由を考えるほうが、はるかに得るものが多いのです。

 重要なのは、どこを間違えているか、間違った原因はミスなのか、仕上げ不足なのか、捨てるべき問題(難しすぎる問題)だったのかなど、問題と解答結果を照らしながら、対応できるものを見出していくことが重要です。もうすぐ「冬期実戦講習」が始まります(12月23日開講)が、それまでに模試の結果を親子でよく点検することをお勧めします。

 さて、入試本番まであと1ヶ月ほどになった今、私たちがお子さんの受験にあたって保護者のみなさまにお伝えしたいことがあります。それは、「“子どもが主役”の受験を実現させて、フィナーレを迎えましょう」ということです。これまで、思うに任せぬ受験生活で、ヤキモキされた面も多々あることでしょう。しかし、最終的にお子さんが入試本番に向けて心を集中させ、全力で挑戦した受験にすれば、この受験の体験は結果を超える価値をもたらします。

 「今の学力で受かるだろうか」「まだやっていないことがたくさんあるのではないか」――こういう心配が親にはつきものですが、くれぐれもお子さんを追い立てたり、いろいろな心配ごとを一度にたくさんお子さんにぶつけたりしないようお願いします。今何をやっているかを確かめながら、各教科の仕上げについて保護者会の資料などを参考に、落ち着いて話し合ってください。そうして、あとは優しく激励してあげれば十分です。前述の模試結果の点検と対策についても、親主導でするのではなく、お子さんと相談しながら決めるというスタンスを忘れないようにお願いいたします。

  無論、指導担当者は今取り組むべきことについてお子さんにお伝えしています。しかしながら、お子さんが問題や悩みを抱えておられるようなら、該当教科の指導担当者や校舎責任者に相談するようアドバイスしてあげてください。冬期実戦講習が始まれば、4教科の担当者と毎日話をする機会があります。入試まで残された日数は多くはありませんが、まだまだ対処できることは少なくありません。

 さて、仕上げ学習の時期に至ると、どの受験生も相応に緊張を高めますし、受験への自覚も生まれてきます。しかしながら、表面に出てくる態度や行動は男女で違っています。たとえば、 

20151217b能天気で、まるで緊張感が足りないかのように見えます(実は緊張しているのですが)。やるべきことがわかっているのか、また、ちゃんと計画的に学力の仕上げ活動をしているのか、それすら心配になるような子どもも見られます(これもある程度わかっているし、しているのですが)。ただし、気持ちが乗ってくると、親も驚くほどの集中力で勉強をはかどらせている子どももいます。

20151217c不安をこらえきれず、表情に出したり口にしたりする子どもが出てきます。「先生、私なんかダメよね。どうせ受からないわよね」などと言ってくる子もいます。無論、「うーん、きみの場合、確かに危ないよね」などとは、口が裂けても言えません。「何言ってるの。大丈夫だよ」「きみが受からなくて誰が受かるの」などと勇気づけてほしいのです。笑顔で力づけ、安心させてやりましょう。

 このように見ると、男女の表面に見える様子は違っていても、入試に向けて不安と闘い、それなりに自覚してがんばっている点では同じです。大人の役割は、子どもが無用の不安に揺れたり、集中力を失ったりしないよう、側面から上手にサポートすることではないでしょうか。筆者は、「子どものラストスパートを支える、“最高の裏方”をめざしましょう」ということを、保護者の方々にお伝えしておきたいと思います。

 なかには、「これじゃ、入試に間に合わないのでは」と、焦りを覚えている保護者もおありかもしれません。しかし、それでも親はその気持ちを子どもにそのままぶつけるべきではありません。お子さんと冷静に話し合い、今から残された期間を上手に活かした対策を一緒に考えてあげてください。

 小学生の受験は、親から見て万全というわけにはいきません。それが年齢ゆえの現実です。しかし、受験への自覚すらままならない状態から、ようやく行きたい学校が見えてきて、やがて「合格したい!」という強い願望を胸に勉強に打ち込むようになる。この流れは、程度の差こそあれほとんどのご家庭で実現されたのではないでしょうか。そのことは、今後のお子さんにとって貴重な体験となることでしょう。間違いなくお子さんは大きく成長しておられます。

20151217a いよいよやってくる入試本番で悔いを残さぬためにも、保護者のみなさまには最後まで揺るぎのない態度でわが子を見守っていただくようお願いいたします。残された1ヶ月は、お子さんにとってこれまでとは数段濃密で重要な意味をもっています。お子さんが自己を燃焼させて学ぶ1ヶ月なのです。お子さんがラストスパートの勉強に専念できるよう、一緒に応援してまいりましょう。

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カテゴリー: がんばる子どもたち, ごあいさつ, 中学受験, 家庭での教育

男の子を育てるのは大変??

2015 年 12 月 10 日 木曜日

 先日、息子を男子校に通わせているあるお母さんが、学校の魅力として「宇宙人(=わが子)を人間にしてくれるところ」という非常にユーモアのあるコメントをされていました。それを受けて、今回は男の子を育てることについてのお話をさせていただこうと思います(「うちには女の子しかいないよ」という方は、ご参考までにお読みいただければ幸いです)。

 昔からよく「子育てにおいて、より手がかかるのは男の子」だといわれてきました。確かに、赤ちゃんのころには熱を出しやすいとか、気に入らないことがあるとすぐに癇癪を起こすとか、会話ができるようになってからもなかなか親の言うことを聞かないなど、一般的にいわれる子育ての「難しさ」は男の子の方が大きいのかもしれません。
 ただ、男の子・女の子どちらの子育てもそれ相応に大変で、男親の私から見れば「女の子も十分手がかかるぞ」と思います。ですから、「男の子の方が・・・」という感覚は、きっと長い時間育児に携わることになるお母さんの実感にもとづくものが大きいのではないでしょうか。お母さん方にとっては、同性である女の子よりも、異性である男の子の子育てに難しさを感じる場合が多いはずですからね(もちろん「そこが楽しい」というお母さんもいらっしゃいますが)。

 そんなお母さん方から聞かれるのが、「ほめて育てたいけど、うちの子のどこをほめればいいのかわからない」という声です。
 片づけもせずに身の回りのものはいつも使いっ放し、言われないと宿題にも取りかからない、毎日のように忘れ物はするし・・・という現実を前にして、何度叱っても効果がないとなると、「ほめるところがあったら、誰か教えてほしい」とお感じの方もいらっしゃるかもしれません。実際、当社に子どもを通わせている保護者の方からもそうした声が聞こえてきます。
 あくまでも一般的な話(+私の経験)ですが、概して男の子は多動で落ち着きがなく、言葉で表現することが苦手で、口より先に手が出てしまう傾向が強いものです。そして、他人から見れば「訳の分からないもの」に夢中になって、時間を忘れて没頭するタイプが多いのも男の子の特徴といえますね。

 ですが、男の子には、上記のような「手のかかる」点が多い反面、数字や科学系に強く、記憶力に優れていて、色々なことを合理的・客観的に考えられる・・・などの良い面もたくさんあります。
 先に挙げた「口より先に手が出てしまう」という点に関しても、男の子が生まれながらにもっている衝動性や暴力性の高さによるものですから、活かし方・発揮の仕方次第で、それを上手に活用することが可能です。これをうまくコントロールすれば、男の子ならではの非常に高い集中力を発揮したり、短期間で爆発的な力を発揮したりすることにつなげることもできるわけです。入試や競技など真剣勝負の場で「本番に強い」「不測の事態にも臨機応変に対応できる」という男の子の特性もここに通じているのでしょう。

 ただし、どんな環境でどんな生活をしていても、いつの間にか自然とコントロールできるようになるのかといえば、そんなことはありません。男の子が自らの衝動性を上手に操れるようになるためには、幼いころから「訓練」を積み重ねる必要があります。
 「訓練」というと大げさですが、幼いころから自分の気持ちをきちんと言葉にして伝えたり、感情の昂りをスポーツや芸術活動など目に見える形で表現したりといった、適切な形で自らの感情を表現する取り組みを、どれだけ積み重ねながら成長できているかを意味しています。「そんなことは誰でもやっている」と考えられがちですが、核家族化が進み、人との関わりが減少している今の子ども達の中には、こうした経験が不十分なまま年齢を重ねていってしまう子が思いのほか多いのです。

 151210②もちろん、わんぱくでやんちゃ盛りの男の子には、何でもやらせたい放題にするのではなく、「重し」になる存在も必要でしょう。問題のある言動に対しては、当然きちんと叱らなければなりません。
 しかし、叱ることが大半を占め、子どもの言動を抑えることに重きを置いてしまうと、いつまで経っても自分の感情をコントロールする術を身につけることができないままです。将来、年齢的には十分に「大人」なはずなのに、思い通りにならないと感情を抑えられない、計画立てて動こうとしない、自分が興味のあることしか取り組まない・・・といった状態にもなりかねません。大切なのは、親が「重し」の役割を果たせなくなった後ですから。

 基本的な親の姿勢として、明確な「叱るべき基準」を自分の中で決めておいていただきたいと思います。例えば、身に危険が及ぶようなことをしたとき、他人を傷つけるようなことをしたとき、約束を守らなかったときなど、「これをしたときには叱る」と親がはっきり決めておいて、その場合には毅然とした態度で叱らなければなりません。逆にいえば、この基準に触れるもの以外は(例え親が理解できないものであっても)、広い心でまずは受け止める姿勢が必要だということです。

 普段の生活の中で子どもが口にする意見にきちんと耳を傾け、子どもへの言葉のかけ方を工夫して、自分の思いを吐き出せるような場や環境を整えてあげてください。もちろん親の考えを伝えることは必要ですから、まずは子どもの意見を聞いた上で、「お母さん(お父さん)は、こう思うんだけど」と少し工夫して柔らかく伝えられるといいですね。
 休みの日の行動に関しても、親が最初から制限するのではなく、親子で一緒に計画を立てましょう。勉強や習い事だけでなく、時には色んな場所へ出かけ、様々な人と関わって多くの経験をさせることも成長の糧になります。その場その場で色々な人やものに出会うと思いますが、子どもが親の思いと違うところに興味を示したとしても、(余程問題のあるものでなければ)子どもの興味関心を認めて、まずは見守る姿勢をもってあげてほしいと思います。

 お母さんにとっては、「自分には理解できない」という思いに捉われてしまうことが多いかもしれません。しかし、少し視点を変えて、男の子の「聞き分けがなく、落ち着きのない」(宇宙人のような?)面をじっくり観察してみてください。きっとそれが単なる欠点ではないことに気づかれるはずです。そして、どうすればその面を「主体性があり、行動力がある」という長所に変えることができるのか、工夫しながら日々働きかけてみてはいかがでしょうか。
 「これは『訓練』なんだ」と思えば、わが子の言動に対するイライラも少しは軽減するかも?しれませんよ。

(butsuen)

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カテゴリー: 子育てについて, 家庭での教育, 小学1~3年生向け

2015「4年部からの中学受験指導」のご案内

2015 年 12 月 5 日 土曜日

 今回の記事は、来春小学4年生になるお子さんをおもちの方々を対象とする催しをご案内するためのものです。催しのタイトルは、「4年部からの中学受験対策」となっています。「4年生からの3年間で、いかにして実り多い受験生活を実現し、志望校への進学の夢を果たすか」をテーマに掲げ、保護者の方々にそのための方策や指導の流れについてご説明してまいります。

 この催しは、次のような3部構成となっています。

1.3年生冬期集中講座~4年部開始までの流れ
2.4年部の授業
3.
親の見守りと応援

 ①では、弊社の4年部にご入会いただくための方法についてご説明します。今回の記事は、②と③の内容に関することを少し書いてみようと思います(詳しい内容は、昨年12月1日の本ブログ記事に書いていますので、そちらを参照ください)。

 4年生から中学受験の準備のために学習塾に通う。それは、中学受験に関心のない人にとってはいささか驚きかもしれません。そして、「受験って、そんなに大変なのか」「そこまでする必要があるのか」などといった反応を示されるかもしれません。

 実際のところ、「3年間準備をしなければ受験での合格は覚束ないのか」というと、決してそんなことはありません。特に近年は少子化ととともに受験生の数は減っており、それが合格をめぐる競争を随分緩和しており、ある程度きちんと勉強していけば、1年間、2年間の準備で最難関の私学に受かることも可能です。

 しかしながら、中学受験をめざす最大多数のお子さんが、無理のない学習生活で進学の夢を叶えられるような段取りを考えるなら、ある程度の期間は必要だと言わざるを得ません。4年生からの3年間による受験対策はそのためにご提案している方法です。

 では、3年間のもつ意味はどういうことなのでしょう。それは、「受験に対応する学力をつける」という発想のみに基づいているわけではありません。むしろ、受験に間に合わせるということよりも、中学に進学した後の学習生活を見通してのことだと言ってよいでしょう。

 すなわち、中学進学後に求められる学習の取り組みとはどのようなものかを視野に入れ、そこでの更なる学力伸長が見込める子どもにするために3年間という指導期間を活かしたいのです。このような発想をなぜするのかというと、子どもの学力観や学習に取り組む姿勢の大本は、小学生時代までに決まってしまうからです。

 知識や技能を修めることを、全て入試合格の手段とみなすような勉強を経験するか、勉強のもつおもしろさや奥深さを実感し、「学ぶことが好きだから」「勉強は自分にとって大切なものだから」という気持ちで学びながら入試を突破するかで、同じ子どもの中学進学後は大きく変わります。

 全てを勉強一色に染められた受験生活を送ると、子どもが年齢相応に身につけるべき立ち居振る舞いや社会性はおざなりにされてしまいます。また、レベルの高い学力をもつ子どもの集合体である中・高一貫校では、生徒一人ひとりに自律的な学びの姿勢が求められます。それを養っておくことも本来受験対策、進学の準備にあたるのですが、目の前に入学者選抜のための試験があると、そちらのほうに目を奪われるケースが少なくありません。

 弊社では、4年部の1年間は教科指導を算数と国語の主要2教科に絞り、授業は週3日までとしています。そして、授業のある日の翌日は、家庭で勉強する流れになっています。それをシステム化することで、「授業」と「家庭学習」が連動するような仕組みを築いています。

 授業では、知ることや考えることに前向きな姿勢を培えるような指導を心がけています。また、テキストで示された原則に基づき、筋道立てて考え、疑問を解決するプロセスを通して、子どもたちが家庭で勉強に取り組むうえで求められる段取りを浸透させていきます。つまり、授業は知識や技能のスキルアップのためにあるのではなく、学びの価値にふれさせること、自分で学ぶ算段を教えることをめざしているのです。

 なぜこのような授業をするのかというと、先々学力の花を咲かせるには、主体性のある学び手になっておくことが必須となるからです。また、進学校のはやいペースの学習について行くには、家庭学習の習慣を身につけていなければなりません。これらは短期間の取り組みでは身につきませんし、心身とも未成熟な小学生に与える負担の限度も考慮されなければなりません。

 催し当日は、こうした考えに立った指導の様子、実際に学ぶ子どもたちの様子について、現場で4年生の指導に当たっている担当者が直接保護者にご説明する予定です。また、弊社には家庭学習で学力をつける「土曜コース」というのがあります。土曜コースは、6年部では随分少なくなりますが、4年部ではかなりの数の児童が利用されています。そこで、土曜コースの担当者も当日は参加し、土曜コースの有意義な活かしかたについてもお話しする予定です。

 進学塾に通っての学習生活については、なかなか具体的なイメージが湧きにくいことと思います。催し当日は、実際の担当者ができるだけ保護者にイメージし易いよう配慮してご説明します。

 最後の20分は、保護者のフォローに求められる原則についてお話しします。このコーナーは筆者が担当いたします。中学受験は「親がどう関わるか」によって大きく変わるものです。小学生の学習意欲は、親の関わりかたひとつで高まりもすれば減退もします。それは、まだ親の庇護のもとで生活する小学生だから当然のことです。

 弊社は、子どもの自律的な学びを促進する親であってほしいと願っています。少子化がとことん進んだ今日、親は子どもの自立を願っているにもかかわらず、知らず知らずのうちに子どもの勉強に手を貸したり介入したりしがちです。普段は愛情深く物わかりのよいおかあさんも、こと受験勉強になると命令口調になったり、子どもを否定するようなことを言ったりしがちです。しかしながら、それでは子どもの望ましい成長をスポイルしてしまいます。

 催し当日は、親に求められるフォローの原則を提示し、子どもが受験を通して大きく成長できる受験のありかたについてともに考えていきたいと思っています。

 なお、入会をご検討いただくにあたっては、各校舎の責任者が担当する「入会ガイダンス」という催しもあります。受験までの流れに沿った説明は、「入会ガイダンス」で行います。本催しのほうは、「受験生活とはどういうものか」「親に求められる視点は何か」などについて明快な答えをご提供できると思います。

 両方の催しにお越しいただいても構いません。どうぞお気軽に参加ください。

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カテゴリー: お知らせ, 中学受験, 勉強について, 行事のお知らせ