自分に自信をもった子どもにするために

2015 年 12 月 28 日

 年末年始を経た後、これから年度末にむけて「学習発表会」などの機会が増える学校も多いのではないでしょうか。こうした場面を見ていると、失敗してもめげることなく堂々と振る舞うことができる子がいる一方、すぐに周囲を見回して親や先生に助けを求めたり、ちょっとしたトラブルで「もうやりたくない」と投げ出してしまったり・・・といった子もいます(もちろん性格的なものや、緊張によるミスなどは誰にでもあるとは思いますが)。
 こうした違いはどこから生じるのでしょうか?

 近年、ちょっとしたことで自暴自棄になったり、何事にも意欲をもてなかったりする子どもが増えていることが問題視されていますが、その原因の一つとして、子ども達の「自己肯定感」や「自尊感情」の低さが指摘されています。
 2015128a「自己肯定感」とは、自分の存在そのものを自分自身で肯定的に受け入れる気持ちのことをいいます。この気持ちがないと、自分の存在価値を自分で認めることができないということですから、どんな人であっても前向きに生きることができません。

 児童心理の専門家によると、自己肯定感の高い子どもは概して、情緒が安定している、責任感がある、社会的適応能力が高い、学業成績が良い、周囲との対人トラブルが少ない、社会規範をきちんと守るなどの特徴があるとされています。中でも、「逆境に強い」という点は、ストレス社会の中で生き抜くためには非常に重要なポイントでしょう。逆境に強い子どもは、失敗に動じることなく、良い意味で他人の目を気にせず、悪い仲間の誘いも毅然とした態度で拒否することができます。
 「自分の存在を前向きに受け入れられているかどうか」は、単に人前でどう振る舞うかという点だけでなく、学業や習い事、運動や交友関係をはじめ、社会で生きていく上であらゆる面に影響を及ぼすことになるのです。

 内閣府による調査の中に、日本・韓国・アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・スウェーデンの各国約1,000人の13~29歳の男女を対象として、日本と海外諸国の子ども・若者の意識を比較した内容のものがあります。
 それによると、「私は、自分自身に満足している」「自分には長所があると感じている」「うまくいくかわからないことにも意欲的に取り組む」などの質問に対して肯定的な回答をした割合は、諸外国の若者・子どもが軒並み高い数値を示している一方、日本の若者・子どもの数値はいずれの質問に関しても調査国中最下位でした。中には、日本の若者・子どもの回答が他国の約1/2ほどの低い数値になっている質問もあります。

 2015128bこのような調査結果からは、自分自身に誇りをもつことや、物事に前向きに取り組もうすることに関する、日本の子ども・若者の意識の低さが明確に示されています。もちろんここには日本人特有の「奥ゆかしさ」や「謙遜の情」などもいくらか影響しているのでしょうが、日本だけがここまで極端に低い数値を示しているのをみると、単にそれだけが原因だとは考えられません。

 では、このような状況をふまえて、親にできることとは何でしょうか。
 勉強も習い事も運動も全ての事柄に関して言えることですが、たとえ親から見て稚拙であっても、子どもなりに努力した様子があれば、その過程や頑張り自体をしっかり認めてあげてください。そして、普段からそれを言葉にしてわが子に伝えてほしいと思います。加えて、「昨日の夜、お父さんが◯◯のことを『よく頑張ったな』ってほめてたよ」などと、その場にいないお父さんやおじいちゃん・おばあちゃん、学校や塾の先生などの言葉をうまく活用するのも効果的ですね。2015128c
 また、親同士の会話や担任の先生との三者面談などで「うちの子は本当にダメで・・・」などと言ってしまう場面はないでしょうか?もちろん謙遜から出る言葉だとは思いますが、わが子の前でこのような言葉を口にする場面が重なると、それを聞いた子どもは「自分はダメな子どもなんだ」「苦労して頑張っても意味がない」と感じるようになるのも当然です。できることならこうした場面では、自然な言葉でわが子をほめてあげてほしいものです。もし、それがなかなか難しい場合(「わが子を自慢するみたいで抵抗がある」という方も含め)は、せめてわが子を貶める言葉を口にしないようにするところからまずは始めてみてください。それだけでも、子どもが受ける印象はかなり違うはずですからね。
 こうした普段からの積み重ねが、「あなたが自分を評価する尺度は一つだけではない」「失敗しても、あなたには他にもこんなに良い面がある」ということを、わが子に伝えることにもつながります。何か一つでも「僕はこれが得意なんだ」「私は◯◯を活かして頑張ろう」と前向きに思えるものが子どもの中にあれば、ちょっとした失敗で自分に自信を失くしたり、思い通りにならない状況ですぐに全て投げ出してしまったり・・・というようなことはありません。

 自己肯定感は、人生の初期段階に自分を守り育ててくれた人(大抵の場合は親)から愛情を注がれることによって、その土台が築かれるといわれます。ですから、わが子に「自分のことが好きだ」「自分を大切にしたい」という気持ちを抱かせるのは、親にとって最も重要な役割のひとつです。子ども達が自分に自信をもって日々健やかに成長していけるよう、厳しくも温かい目で見守りながら、たくさんの愛情をわが子に注いであげてくださいね。


 さて、早いもので、2015年もあと数日を残すのみとなりました。来年も、学力形成に関する話題をはじめ、少しでも日々の子育てに役立つ情報をご提供できるよう精進してまいりますので、2016年もどうぞよろしくお願いいたします。

(butsuen)

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カテゴリー: 子どもの発達, 子育てについて, 家庭での教育, 小学1~3年生向け

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