2016 年 3 月 7 日 のアーカイブ

受験生活における家庭教育の役割

2016 年 3 月 7 日 月曜日

 2月20日(土)に開講した5・6年部に続き、3月5日(土)には4年部の新年度講座がスタートしました。

 そこで、今回は受験生活を円滑に進めていくためのごく基本的なことを話題にとりあげ、この1年間の受験生活を実りある充実したものにするうえで参考にしていただければと思います。

 わが子が受験をするとなると、親はどうしても「1日何時間勉強したらよいか」、「何をどれだけやったらよいか」「親は勉強の面倒を見るべきか」など、勉強の成果をどうやってあげるかに気持ちが奪われがちです。それはそれで当然ですし、学習塾も家庭での勉強に目配りをしながら子どもたちの指導をしていきます。しかしながら、親も学習塾も家庭生活を受験勉強という側面のみに偏ってとらえていると、子どもの健全な成長にとって大切なものを見失ってしまうおそれがあります。

 とくに気をつけていただきたいのは、受験準備の学習に取り組んでいる小学校の中~高学年という時期は、親にとっては毎日の生活を通してしつけ・教育の仕上げをすべき大切な段階にあるということです。つまり、「家庭教育という柱をしっかりさせたうえでの受験勉強なのだ」ということを忘れないでいただきたいのです。この柱がしっかりしていれば、結果としてお子さんの受験勉強の成果もあがりますし、何よりもお子さんが学問を身につけた成果を将来に活かしていける人間に成長することができます。

 このように申しあげると、「では、結局何をすればいいのか」という疑問をもたれるかたもおありでしょう。学校の教育現場で長年活躍され、家庭教育にも造詣の深い先生の著作に、次のようなくだりがあります。参考までにちょっとご紹介してみましょう。

 家庭教育とは、端的にいうと、子どもの健全なからだとこころを育てる教育です。からだを育てる土台は食事です。また、心を育てる土台は、家庭生活の会話です。すなわち、ことばです。ところが、いまの家庭生活では、この二つの基本条件とも乱れているのです。しかも、親も教師も国民も、このことにほとんど無関心に放任しているのです。ここに、こんにちの家庭教育の致命的な欠陥があるのです。

 フランスの科学者、アンリ・ポアンカレは、「ものごとの原理や原則というのは、もっとも単純でくり返しの多いことがらにある」といっていますが、家庭教育の原則も、家庭生活で最もくり返しの多い食事と会話にあるのです。わたしたちは、まず、このことをはっきり認識して、自信をもって正しく実践することが急務なのです。

 以上から気づかされるのは、「食事」と「会話」に目配りをすることの重要性です。家庭生活を営むうえで、この二つは数限りなく繰り返されることです。また、食事と会話は同時に行われることも多く、その内実がどのようであるかで、子どもの成長に及ぼす影響は少なくないことでしょう。

 まず食事について考えてみましょう。食事は一日に三度採るのがふつうです。すると1年間に千回以上繰り返していることになります。その食事が、毎日同じくらいの時間に、ゆとりをもってリズムよく採られているかどうかで、子どもに与える影響は随分違ってくることでしょう。食事抜きで学校に出かけたり、不規則な時間になりがちだったり(塾のある日とない日とで時間が変わるのはやむを得ません。塾のある日の夕食は通塾前と帰宅後に軽く採るなどの工夫も必要です)、慌ただしく口の中に押し込むだけの食事になったりすることはないでしょうか。また、食事の内容にも気を配っておられるでしょうか。糖分や塩分の多い食事は避けたいものです。また、やたらと間食に甘いものを採り過ぎたりしていないでしょうか。

 食事は体づくりの基盤です。また、行動のエネルギー源です。しっかりとした栄養バランスのよい食事は、何をするにつけても意欲と活気を与えてくれます。ぜひ一度食生活の現状を振り返り返ってみてください。

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 次は会話です。小学生の子どもにとっての会話は、大人のそれよりもはるかに大きな意味をもっていると言われます。日々の親子間、家族間の会話を通して子どもは様々な知識を得たり、新しい語彙を獲得したりしています。また、まだまだ十分に考えていることを理路整然と言葉にして表現できない小学生の子どもにとって、家族同士で気兼ねなく話せる会話の時間は、コミュニケーション技術を学び取る絶好の時間となります。

 いろいろな仕事で忙しくしているとき、子どもがとりとめもないことを話しかけてくるとうっとうしいこともあるでしょう。また、相手をしている時間自体がないこともあるでしょう。そういうときは「後で」で構いませんが、必ずほんとうに時間を取ってあげてください。会話の時間は子どもに必要なものです。毎日10分、15分程度で構いません。その積み重ねが、1年も経つとお子さんの内面の成長にとって莫大な違いを生み出すのです。

 無論、自分のことに親が興味をもってくれ、話を聞いてくれること自体、親の愛情を感じ取り、ものごとに取り組む意欲を高めるうえで欠かせないことです。その意味においては、受験生活に入ってからこそ、親子の会話の時間はますます重要になってくるのだとお考えください。また、親はもどかしくてもできるだけよい聞き役になってあげてください。毎日楽しい会話の時間があるとないとでは、子どもの内面に大きな違いが生じるものです。

 以上からおわかりいただけると思いますが、親との会話は子どもの知的成長を支え、勉強に向かう意欲を育てる大切な役割を果たします。ぜひ、毎日の家庭生活に親子の楽しい会話の時間を設けましょう。その場合、できるなら勉強の話は少なめにし、楽しい話題をできるだけ提供してあげてください。そのほうが子どもは親を信頼し、尊敬します。また、親の愛情を感じた子どもは、必ず「自分はどうすることを望まれているのか」を考えると言われます。ですから、会話の時間が終わると、自然と子どもは机に向かい始めるのです。

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 当たり前のことを長々書いてしまったかもしれません。ですが、どんなに賢明な親も、わが子が受験生活を始めると、ともすれば学習成果としての成績に目を奪われがちになるものです。学びの基盤を築くための家庭教育こそ親の役割なのだということを思い出し、しっかりとお子さんの成長をサポートしてあげてください。

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カテゴリー: アドバイス, 子育てについて, 家庭での教育