2016 年 7 月 7 日 のアーカイブ

親の養育タイプと子どもの育ちの関係

2016 年 7 月 7 日 木曜日

 みなさんは、わが子がどんな人間に成長することを願っておられますか? いきなり突飛な質問をされて驚かれたでしょうか。改めてお伺いします。この質問に対して、みなさんはどのような答えを用意されるでしょうか。無論、誰かに伝えるわけではありません。自分自身の心のなかで、親としての期待はどんなことかを改めて確かめてみてください。

 このブログをお読みいただいているかたの多くは、小学生の子どもをもつ保護者であろうと思います。言うまでもありませんが、小学生はまだ人間形成の途上にあり、まだまだしつけをしなければならない段階にあります。毎日の子育て場面でどうわが子に関わるか、その積み重ねが子どもの人間的側面を特徴づけていくことになります。

 そこで今回は、親の子育ての姿勢と子どもの成長の方向性の関係について考えてみたいと思います。みなさんの子育ての方針は、子どもに対する期待を踏まえてのことであろうと思います。ですから、大概の保護者は「どんな子育てをすると、子どもはどんな人間に成長するのか」ということにある程度以上の関心がおありでしょう。

 親の養育傾向と子どもの成長との関係を専門的に研究した学者としては、ダイアナ・バウムリンド氏が有名です。氏は3~4歳児とその親を対象とした研究の結果、親の養育姿勢を3つに分類し、それぞれのタイプごとに児童期、青年期になった段階の子どもの人間的特徴を明らかにしました。

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 それぞれの養育タイプについて、もう少し詳しくご説明してみましょう。

① 権威がある親 20160710c
「子どもを自立した人間に育てよう」という明確な方針をもち、子どもの置かれている状態に応じて、臨機応変に導いていくタイプです。親の要求を一方的に押しつけるのではなく、子どもとのコミュニケーションを大切にし、子どもの要求にも耳を傾けながら、何事も自分で考えて行動するよう励ましサポートしていきます。子どもの逸脱に対しては、巻かれてしまうのではなく、必要なときには厳しい姿勢で臨みます。親の権威を振りかざすのではなく、真に権威を携えた親と言えるでしょう。

② 権威主義的な親20160710a
 親の当てはめた価値観や基準に基づき、子どもをコントロールしようとします。子どもには服従を求め、歯向かうことを許しません。子どもが親の思い通りに行動しない場合、やるべきことがきちんとやれない場合は、厳しく叱り罰を与えることもあります。子どもの意思や考えを尊重することはなく、言われたことを責任も取ってやることを子どもに求めます。子どもの自発性を尊重しようという姿勢はなく、親のコントロールに従うことを常に子どもに求めます。

③ 甘やかす親20160710b
 子どもに立派な人間になってもらいたいという願いはあっても、そのための子育ての方針が定まっておらず、何かにつけ子どもの我儘に巻かれがちな傾向があります。そのため、家庭は常に混乱しがちです。子どもに対し、やってよいことといけないことの線引きを明確に教えることができず、子どもにルールに則って行動しようという規範の意識が育ちません。したがって、子どもは成長に伴って集団内でトラブルを頻繁に起こすことになりがちです。

 バウムリンド氏の研究は、1970年代のものです。したがって、最近ではもっと詳しい分析をしている研究資料も数多く見かけます。しかしながら、今となってはシンプルな分析ですが、それだけに子育ての傾向と子どもの成長の道筋との関係がわかり易いとも言えるでしょう。

 筆者が指導現場に立っていたころは、こういった研究資料を見たことがなく、随分勘違いをしていたものです。たとえば、クラスをかき乱し、教室を混乱させがちな男子児童にてこずったことがありますが、そういう子どもの親について誤った想像をしていました。こういう子どもの親はこわいタイプではないかと勝手に思い込んでいました。

 ところがあにはからんや、いざ面談でおかあさんにお会いすると全然違うのです。「いつも息子が御迷惑をおかけしていると思います。ほんとうにすみません。親の言うことなんか全然聞かない子なんです。遠慮なく、どんどん叱ってやってください」などと言われるのです。そういうことが何度か続いて、やっと得心しました。親のコントロールが効かないから、子どもがあんなふうになってしまうのです。

 いっぽう、自己表現を控え、いつもひっそりとおとなしい感じの子どもは、「きっとおかあさんも、おとなしくて優しいんだろうな」と思っていると、これが全く違っているのです。非常に厳しく子どもに接しておられるタイプの親だったのです。

 こうしてみるとおわかりのように、「子どもは親が育てたように育つ」のですね。子どもの性格は、親の関わりかたに対する反応として形成されるもののようです。それを踏まえると、②のようなタイプの子育て、③のようなタイプの子育てのどこが問題なのかがわかってくるのではないでしょうか。

 ただし、子育てのタイプを①②③とはっきり認識できる親は稀でしょう。たとえば、普段は①のようなタイプを志向していても、何かのはずみで子どもが意固地になったり、親が看過できないような行動に及んだりすると、突然②のようなタイプに変身してしまうタイプのかたはおられませんか? 実は、そういうタイプの親が最も多いということを聞いたことがあります。

 みなさん、①のタイプをめざしてがんばってみてください。少なくとも、うまくいかないことがときどきあったとしても、子どもには納得のいく子育てであるのは間違いありません。したがって、親が何を望んでいるのかを子どもは理解しています。決して間違った方向に走ってしまうことはありません。

 受験生活においても、①のタイプの親であることを軸にしてお子さんに接することが望ましいでしょう。おそらく多くの保護者は①のタイプを志向されていたでしょうが、改めて①のタイプのよさを思い起こし、子どもの自立した学びを応援する親であるようがんばってください。また、②や③の傾向があったと振り返っておられるかたは、徐々に①のタイプへとシフトしていくことをお勧めしたいですね。

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カテゴリー: アドバイス, 子育てについて, 家庭での教育