毎日の朝食と学力の関係って?

2017 年 10 月 10 日

 秋が深まり、「食欲の秋」真っただ中になりました。そこで、今回は朝食を話題にとりあげてみようと思います。おたくのお子さんは、毎朝必ず朝ごはんを食べて学校に行っておられるでしょうか。

 朝食と学力の関係と言っても難しい話ではありません。毎朝規則正しく朝食をとる習慣がある子どもと、朝食をとらない、あるいは朝食をとらない日がある子どもとでは、学力に違いがあるかどうかということです。

 あるとき、図書館で新書を手にしていたところ、興味深い情報が目に入りました。東京都教育委員会が実施した「児童・生徒の学力向上を図るための調査」(2005年、5年生児童対象)によると、朝食をとっている子どもは、とらなかったり不規則にとったりしている子どもと比べて、学業成績がよいという調査結果が得られたそうです。しかも、教科を問わず同じ傾向が見られました。算数の学力データが資料として掲載されていますので、ちょっとご紹介してみましょう。

 
 これを見ると、朝食をコンスタントにとっている子どもほど成績がよいことがわかりますね。逆に言うと、朝食をとらない頻度が高い子どもほど成績は振るいません。両極端の「必ずとる」と「とらない」を比較すると、14点もの開きがあります。同様の調査が中学2年生にも行われましたが、ほぼ同じような結果が出たようです。「必ずとる」と「とらない」との差は10点近くありました。

 前述の調査には、「持ち物を点検する」や「家の手伝いをする」ということが習慣として定着しているかどうかを尋ねる項目もありました。どちらも、「する」という肯定的な回答をした子どもほど成績がよいことが報告されています。

 これらの調査結果から、何かわかることはないでしょうか。「朝食を必ずとる」「持ち物を点検する」「家の手伝いをする」は、いずれも日常生活でおなじみの行動です。そして、それらが習慣として根づいているかどうかが学校での学業成績とリンクする関係にあるということまではわかりました。これらにどんな因果関係があるのでしょうか。

 毎日の活動を支える栄養補給を規則正しく行うこと、身の回りのことを自分ですること、家事に積極的に関わること。これらは子どもの心身の健全性を保ち、自律へと成長していくうえで大変重要なものです。それらがきちんとできている子どもには、ものごとに取り組む意欲や実行力も高いレベルで備わるということなのではないでしょうか。

 みなさんのお子さんについて振り返ってみてください。朝食を決まった時間にしっかりとっておられるでしょうか。学校の支度や持ち物点検を几帳面にやり、「うっかり忘れものをしてしまった」ことが少ないでしょうか。家族のために役立つということに喜びを感じ、積極的に手伝いをされているでしょうか。

 子どもの学業面での成功を願うと、「どんな勉強をどのぐらいやればいいのか」と、勉強に直結することに目が向けられ、上記のような勉強に直接結びつかないものは軽視されがちです。しかしながら、実は勉強する主体である子ども自身の生活面のありかたも重要な鍵を握っているのですね。

 朝食をとることが学習活動にどのような影響を及ぼすかについて、前述の新書の著者である大学の先生が次のようなことを書いておられました。

 人間のからだは、心身の活動が昼間最高になるように作られているので、朝食は人間本来のリズムを保つ上で必要です。学力試験はだいたい午前中にあり、規則正しく朝からバランスのとれた食事を摂ることが大切です。脳のエネルギー源であるグルコースは、食事からの供給がないと体内の脂肪から分解されると言われてきましたが、食事から摂取した新鮮なものでなければならないことがわかっています。朝食を摂ると、脳にグルコースが供給されると同時に、ベータ・エンドルフィンという爽快な気分を作り出す物質が分泌されるため、集中力や学習能力が高まり、記憶力が日中に最高になるのです。

 脳の活動エネルギーがグルコース(ブドウ糖)によって供給されることはご存知かもしれません。ただし、ブドウ糖を摂取できる食べ物なら何でもよいわけではないようですね。上記引用文から、できるだけ新鮮な食材からブドウ糖を摂取することが望ましいのということがわかりました。健康面への配慮を含めると、甘いもので代用すればよいというわけではないということもわかりました。

 以前もお伝えしましたが、脳の活動エネルギーになるブドウ糖は、食事で摂取してから12時間までしかもちません。もしも朝ごはんを食べないまま学校に行くと、ブドウ糖は登校したころには枯渇状態になっています。

 「でも、ブドウ糖を余分に貯めておけばよいではないか」と考えるかたもおありでしょう。しかしながら、脳にはブドウ糖を備蓄できる場所はありません。ブドウ糖を備蓄しているのは肝臓です。一度の食事で60gのブドウ糖が肝臓内でつくられます。脳は眠っていても安静にしていてもブドウ糖を1時間あたり、5g消費すると言われています。ですから、肝臓にある60gのブドウ糖が12時間しかもたない理由もこれでわかりますね。

 「朝食抜きだと昼前にはおなかがすくが、勉強ができないわけではない」とお考えのかたもあるでしょう。しかしながら、それは足りない量を体内のほかの場所から回してしのいでいるからであり、そういうことがたびたびあると、子どもの健康面や成長にとって望ましくない影響を及ぼすことになります。

 今回の話題で、日常生活において親が望ましいと思っていることは、単に「気持ちがよいし、健康的だ」ということだけでなく、頭の働きのよい人間になるうえでも貢献していることがわかりました。これを機会に、みなさんのお子さんの生活全般について振り返ってみてはいかがでしょうか。子どもの頭脳の発達は、学習の前提となる生活習慣が支えている点をお忘れなく!

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カテゴリー: アドバイス, 子育てについて

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