2018 年 2 月 19 日 のアーカイブ

2018年度「前期講座」が開講しました

2018 年 2 月 19 日 月曜日

 中学入試の余韻が残るなか、2月17日(土)には5・6年部の「前期講座(2~7月)」が開講しました(4年部は2週遅れの3月3日に開講します)。

 新6年部生は、いよいよ来年の中学入試に向けて“待ったなし”の1年が始まります。同時に、小学校課程の学習も来年3月をもって終了します。言わば小学校6年間の集大成としての1年間を送るわけです。お子さんなりの自覚を胸に、やるべきことに正面から向き合いながらベストを尽くしていただきたいですね。毎日の積み重ねをいかに大切にするか。それで結果が決まります。

 さて、先週はブログをお休みさせていただきました。毎週の更新をめざしていますが、更新予定日直前の土曜日から3日間連続で低学年部門の「体験授業会」を実施したため、ブログを書く時間が確保できませんでした。ご了承ください。

 このブログは文字数が大変多いのが特徴です。一般的な日記風のブログなら、短時間で読み終える分量で、印象に残る楽しい話題を提供できるでしょうが、知育や受験に関する情報をある程度しっかりとお伝えしようとするとどうしても長くなります。それをかなり短時間で書きあげるため、更新後にミスを見つけたり、直したい表現が出てきたりします(後でこっそり手を入れています)。読んでおられるときに、「あれ!?」と思われることもあるかも知れませんが、こんな事情に免じてお許しください。

 さて、今回は先ほど触れた低学年部門の「体験授業会」を話題に取り上げ、ご報告してみようと思います。高学年のお子さんをおもちのかたは興味が湧かないかもしれませんが、もしもお読みくださったら、現在の学力形成上の問題点について、その原因や打開策に関する情報も見出せるかもしれません。よろしければ読んでいただきたいですね。

 低学年部門には、弊社のオリジナル講座「ジュニアスクール」と、「玉井式国語的算数教室」の2講座があります。「ジュニアスクール」は広島市内の4校舎に3年部を、「玉井式国語的算数教室」は弊社の全校舎に1~3年部を設けています。また、ジュニアスクールには、「ホームワークコース」という通学のない付設コースもあります。こちらは1~3年生を対象としています(昨年、このコースに3年生児童約40名が所属していましたが、大変優秀なお子さんたちでした)。どちらの講座も中学受験を視野に入れている点は共通ですが、ジュニアスクールは「基礎・基本の徹底習得」を、玉井式は「才能開発」を主目的にしており、受験学力の獲得に向けたアプローチのしかたに大きな違いがあります。

 「体験授業会」は、上述の対象校舎・対象学年の全てで実施しました。お子さんがたには「授業」を体験いただき、保護者にはまず講座の内容や意図をご説明し(「説明会」)、後半の時間に「授業参観」をしていただきました。

 筆者は広報関係の仕事だけでなく、低学年部門の総合責任者をしている関係もあり、全ての会場で約40分保護者向けのプレゼンをしました。人数こそまちまちだったものの、どの会場の保護者も熱心に筆者の拙い話に耳を傾けてくださいました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

 これより後は、「学力を飛躍させるための条件」というテーマを掲げてお話した事柄をご紹介しようと思います。6年生になって、小学生にはかなり難解な学習課題に取り組むようになると、「頭のよさ」や「文系か理系か」など、天賦の才能や適性を理由にあきらめの気持ちを吐露するお子さんが現れ始めます。しかしながら、小学校課程で学習する内容は、誰でもちゃんと学べば理解できるものであり、努力しだいで中学受験で求められるぐらいの学力は身につけることができます。

 まずはこのことを保護者にお伝えし、どういうポイントを押さえた勉強が重要かをお伝えしました。時間の制約もあり、いささか乱暴ですが次の4つを掲げてお話しました。

学力を飛躍させるための条件

1.読み書き(リテラシー)の確かな土台を築く。
 小学校前半の3年間で、子どものリテラシー能力の土台ができあがります。高学年になってからの勉強を快適にやりこなすための絶対条件は、児童期前半までに「読みの態勢」をしっかり築くこと。一般に、2年生前半で「黙読」へ移行しますが、お子さんの黙読の状態を把握しておられる保護者は少ないものです。スムーズな黙読が読書を活発にし、語彙の増強や読解力の進歩を後押しします。読みが達者なお子さんは、国語だけでなく、全ての教科の学習で有利です。活字を介した情報のやりとりに強いからです。

 では黙読力を保障するのは何かというと、それは「音読」です。文字に対応する音、書き言葉に対応する音声言語(話し言葉)を確認していくこの音読作業によって、子どもは黙読(脳内で文字に対応する音声をイメージする)ができるようになっていきます。音読が不十分な子どもは、黙読がスムーズでなく、同じ文章を読んでも得られる情報が正確でないうえ、読むのに時間がかかります。これが勉強のブレーキになってしまうのです。テスト時間の制約にも弱いのは言うまでもありません。

 高学年のお子さんで思い当たる節のあるご家庭は、文章の音読を試してみてください。特に問題なのは男子で、1行もスムーズに読むことができないお子さんがいます。そういう子は読書も苦手で、語彙も貧しく、高度な心情表現と縁遠く、国語だけでなく、全ての教科の勉強に支障をきたします。音読は親でも聞き役でサポートできますし、何歳であろうと出直せば成果をあげることができます。

2.算数の基礎・基本をしっかりと習得する。
 とかく大人は「早く難しいことができるように」と子どもをせきたてがちです。掛算九九や筆算などは、「もうできる」と判断すると、「もっと勉強らしい勉強を!」と気にも留めなくなる保護者もおられるようです。しかしながら、たとえば九九などは、「上がり九九」「下がり九九」「途中九九」を縦横無尽にやりこなせるようになってこそマスターしたと言えます。このレベルにならないと、高度な算数・数学領域に足を踏み入れてから苦労することになりがちです。問題解決に向けて思考を巡らせているとき、計算処理で立ち止まるようでは思考停止に陥ってしまうからです。

 受験指導は、計算などの習熟に問題がないことを前提に行いますから、低学年のうちにしっかりと取り組んでおいていただきたいですね。最近になって、高学年になっても暗算が不得手で、指を折って数えようとするお子さんが見られるようになったとか。簡単で機械的な作業の学習にはそれなりの意味があります。「無意識レベルまで習熟してこそ役立つのだ」と、心得ていただきたいですね。

3.算数の感覚的素養を磨く。
 算数においては、「センス」や「閃き」がものを言う単元があります。図形単元はその代表的なものですが、得意不得意がはっきり出るため、テストで得点差が生じる原因となりがちです。こういう学習領域で求められる知能を「流動性知能」と言いますが、思考によって判断・解決を図るのではなく、瞬間的に反応・識別する必要のある領域で力を発揮する神経系の知能です。

 流動性知能は、幼児期からの遊びを通して磨かれる知能です。砂場遊び、積み木、自動車のおもちゃ遊び、レゴやタングラムなどを楽しんでいると、自然にこうした領域に強くなります。これらは男の子が好む遊びです。いっぽうの女の子は、動きのない静かで色彩豊かなものを用いた遊びを好み、結果として図形単元への適性を磨き損なってしまいがちです。流動性知能は、9~10歳頃までは刺激を当てるとまだまだ伸びていく可能性があります。そして、誰でもピークが15歳頃に訪れるのが大きな特色です(読みや思考に関わる知能が老人になるまで伸びていくのとは対照的です)。上昇カーブを少しでも上向きにしておけば、最高到達点も高くなります。

 近年は、女性に対する学問的偏見がなくなりつつあります。また、女性の理系分野への進出が求められる社会になっています。4~5年生までの年齢なら、受験勉強だけでなく、形あるものをいろいろ組み合わせたりバラしたり、動かしてみたりする遊びのようなもの(たとえば、「タングラム」など)をしてみることも、こうした方面のセンスを磨く効果があるでしょう。ジュニアスクールや玉井式では、実物かアニメーションかの違いはありますが、図形課題をふんだんに取り入れて効果をあげています。女子でこうした領域に大変強いお子さんが相当数育っています。

4.勉強に対する“快”のイメージを築く。
 最近書いたブログ記事で、スポーツや研究領域、産業界を問わず、最高レベルに到達した人物の特徴として、「入門期、初期段階に“楽しい!”という思いをたっぷりと味わっている」という研究者の言説をご紹介しました。

 これは中学受験の勉強にも当てはまることです。中学受験は受験生が幼いため、大人の圧力で無理やり勉強させるスタイルが一定の効果をあげています。しかしながら、将来の大成という観点に立つとその方法は適切ではありません。子どもの側に、「なぜ勉強するのか」に対する答えがないからです。

 受験が迫った6年生の秋ともなると、大人ですら簡単に解けない問題に取り組むことになりますが、算数の楽しさをたっぷりと味わっている受験生は全然辛そうにしないどころか、むしろ嬉々とした表情で取り組んでいます。こういう子どもに育てたいものですね。

 受験勉強は厳しいものです。しかし、勉強のよさや楽しさを味わった経験の多い子どもは、一見大変そうに見える勉強を辛いなどとは思わず、自ら進んで取り組もうとします。こういうレベルに到達することこそ受験における最も大きな収穫ではないでしょうか。なにしろ、学ぶことを厭わず、自らに課して努力を継続していける人間に成長したのですから。

 

 中学受験までの勉強は、筋のよい頭脳を形成するうえで大変役立つものです。それを大人の押しつけでやらせると、せっかくの成長の芽を摘み取ってしまいかねません。勉強が楽なものでないのも事実ですが、いったん軌道に乗るとやらずにはいられなくなるものです。そこまで導くのが大人の役割ではないでしょうか。

 家庭学習研究社は、このような考えに立った学習指導を実践しています。ご理解ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。毎日見ていると気づきませんが、子どもたちは日々着実に成長し、1年もすれば著しい成長を遂げるものです。辛抱強く、愛情深くお子さんを見守り応援してあげてください。

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カテゴリー: お知らせ, 中学受験, 勉強について