2018 年 4 月 のアーカイブ

家庭環境と子どもの学力との関係 その2

2018 年 4 月 30 日 月曜日

 今回も、前回(4月23日掲載)に引き続き、「家庭の環境と子どもの学力との関係」に関わる情報をお届けしようと思います。今度は、保護者を対象にした調査の結果をご紹介します。

 学力を伸ばすには、「何をどれだけ、どんな方法で勉強したらよいか」という発想によるアプローチだけでは成果につながりません。学習者である子どもの内面と勉強の関わりに目を向けなければ、せっかくの勉強も十分な成果をあげることはできないからです。

 言うまでもありませんが、学習成果は子どもの意欲や熱心度、継続性などで随分違ってきます。勉強のメニューや取り組みの方法も重要ですが、それ以前の土台をどう築くかにも目を向けるべきです。そして、小学生の場合、そうした学力形成の側面を決定づけるのは家庭環境や親です。弊社の会員児童を見ても、すばらしい取り組みをしている子どもの背後には、必ずと言ってよいほど上手な親のサポートがあります。以前お伝えしたように、勉強の時間になったのにテレビを見ている子どもに対して、「いい加減にテレビを消して勉強しなさい!」と大声で叱るか、「あれ? いつの間にか勉強の時間が来ているね」と子どもを我に返らせ、行動の切り替えを促すかとでは、子どもの心に宿るものが随分違ってきます。

 子どもの勉強の成果は、「いかにして意欲を伴わせるか」「いかにして自発的な取り組みを引き出すか」で決まります。そしてそのことは、子どもが小学生までのうちは「生活習慣のルーティン化による自立促進」や「親の粘り強いバックアップ」によって、どの子どもも達成可能なのです。

 では、本日のテーマに関わる資料をご覧いただきましょう。まずは、子どもにどんな方面に働きかけをしたかと子どもの学力についての関連性を調べた結果をご紹介してみましょう。なお、調査者や調査の対象者、調査年などは前回と同じです。

※A層・D層:算数・国語それぞれの質問(算数18問、国語19問)に対する正答率を4つの階層に分け、正答率が最も高い層をA層、正答率が最も低い層をD層としたものです。

 ざっと目を通したところで、どなたもいくつかの気づきを得られたのではないかと思います。まず、「絵本の読み聞かせをする」「博物館・美術館へ連れていく」「ニュースや新聞記事について親子で話す」「家に本をたくさん備える」「英語や外国の文化に触れさせる」「いろいろな体験の機会を与える」などは、大まかな括りに基づく共通性が見出せるでしょう。すなわち、リテラシーへのいざないや文化的刺激にふれさせる体験等を通して、子どもに知的なものごとに対する興味関心を引き出す試みを数多くしていた家庭の子どもは、総じて学力が高いということがわかると思います。

 特に、国語に関しては「読み聞かせ」や「文化施設訪問」「家庭の蔵書」「外国語・外国の文化との接触」などが10ポイント以上の差を生じさせています。また、算数に関しては、「読み聞かせ」や「文化施設訪問」、「家庭の蔵書」「外国語や外国文化との接触」などが同様の差を生み出しています。文化的なものに触れる体験は、国語力にも算数力にも影響を及ぼすことが確認されました。

 筆者が興味深く感じたのは、「勉強しなさい」と子どもに頻繁に伝えることが、必ずしも子どもの学力向上につながらないというデータを示していることです。というよりも、国語、算数ともに逆効果を招いています。他の項目と関連づけて考えると、子ども自身が自発的に行動する気持ちになるような働きかけをするほうが子どもの学習にも好影響を及ぼすということなのでしょう。これと同様に、「土曜日にも授業を」と望んでいる家庭の子どもは、そうでない家庭の子どもよりも学力的に芳しくないという生憎なデータが示されていることです。「勉強、勉強」と、親がせきたてると、却って子どもの学習活動は活性化しなくなるということなのでしょうか。

 では、もう一つ資料をご覧いただきましょう。今度は、保護者の普段の行動と子どもの学力との関係性について調べたものです。

 注目されるのは、「本を読む」や「文化施設を訪問する」などが、子どもの学力にプラスの影響を強く及ぼしていることです。やはり子ども自身に体験させると同時に、親もそのことに熱心であるということが重要なのですね。また、「新聞の政治や経済欄を読む」「クラシック音楽のコンサートに行く」「政治や社会に関する情報をインターネットでチェックする」「パソコンでメールをする」なども、同じように文化的なもの・知的なものへの志向性を引き出すプラスの効果を引き出しています。

 逆に、「携帯でゲームをする」「TVのワイドショーやバラエティ番組を見る」「スポーツ新聞や女性誌を読む」「カラオケに行く」「ギャンブルをたしなむ」などは明らかにマイナスの影響を与えています。これらは、子どもの知的好奇心や向上心を刺激しないだけでなく、勉強よりも今の楽しみを優先する子どもにしてしまうのではないかという懸念を感じます。

 この資料でもう一つ注目したのは、「学校の行事」に保護者が頻繁に参加した家庭の子どもは、行かない家庭よりもかなり正答率が高い(学力が高い)というということです。子どもは、親が自分のことに興味・関心を持ってくれることを大変喜びます。親に期待されている、見守られているという気持ちが、前向きな姿勢を育んでくれるからでしょう。

 以上は小学5年生の保護者を対象とした調査の結果でした。昔から「子どもは親の背を見て育つ」と言われます。また、外国の教育関係者の著作を見ても、「子どもは親を模倣して育つ」(「モニタリング」という言葉を使って、以前ブログ記事を書いたことを思い出します)などということが書かれていました。子どもは目に前にある手本を見て育つのは自明のことであり、その手本とは親に他なりません。

 筆者は、このことに関しては胸を張れる点が全くないので偉そうなことは言えませんが、児童期にあるお子さんをもつ保護者(このブログをお読みくださっている方の大半が該当するでしょう)は、「今こそ親にとってしつけの仕上げをする重要な時期なのだ」という認識の下、お子さんによい手本を示してあげていただきたいと存じます。

  次回の掲載日は5月14日(月)を予定しています。ゴールデンウィークを挟む1週間は、社全体がお休みさせていただきます。ご了承をお願いいたします。

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家庭環境と子どもの学力との関係 その1

2018 年 4 月 23 日 月曜日

  もうすぐGW(ゴールデンウィーク)がやってきます。弊社では、GWと重なる5月初めの一週間を休講期間としております。新年度の講座が始まって約2カ月が経過したところですので、ちょっと息抜きをしながら、これまでの学習の振り返りと調整の機会にしていただければと思います。

 さて、今回は家庭での生活習慣や時間の使いかたなど、日々のルーティンが子どもの学力にどのような影響を及ぼすかを話題に取り上げてみました。家庭で毎日繰り返される行動は、子どもの人間性や知的能力の成長に深く関わっているのではないかと想像されます。そのことについてある程度データとして判断できそうな資料を探してみました。お子さんの家庭生活のありかたについて参考にしていただければ幸いです。

 小学生までの子どもの学習の様相は、保護者の関わりや周囲の大人の環境整備のありかたによって随分違ってきます。特に、弊社のような中学受験塾に通う子どもの場合、1日における学習の比重が一般の子どもよりもかなり高いため、学力形成により大きな影響を及ぼします。

 これからご紹介する資料は、文部科学省の委託に基づいてお茶の水女子大学の研究者がベネッセ教育開発センターと共同で行った調査による結果をまとめたものです。調査は平成7年~8年にかけて、全国の大都市圏、一般都市圏、町村部の公立小学校の5年生とその保護者、学校関係者等を対象に行われました。今回は児童対象の調査結果の一部をお伝えします。回答者は、2952名(算数2952名、国語2950名)、男女の比率はほぼ半々です(参考程度にしていただくための資料ですので、細かい調査の内訳データについては割愛します)。

 まず、「家庭での子どもの時間の過ごしかたと学力とに何らかの関係があるのか」、についての調査結果を見ていただきましょう。以下の表で示されている数値は、国語19問、算数18問に対する正答率をパーセントで示したものです。

 調査の結果は、大概の保護者が予想された通りの傾向を示しているのではないかと思います。「家で勉強する」という項目では、算数・国語ともに「勉強時間が長い子どもほど正答率が高い」という結果が示されています。テレビ視聴の時間やテレビゲームの時間については、時間が短ければ短いほど正答率が高いことがわかりました。テレビでは、「ほとんど見ない」という子どもの正答率が特に高いことが注目されます。弊社会員の家庭で、テレビをほとんど見ないお子さんがどの程度いるのかを調査してみるとおもしろいかもしれないと思いました。

 「パソコンでインターネットをする」という質問項目に関しては、1時間以内の子どもの正答率が相対的に高くなってはいますが、利用時間と正答率について他の質問項目ほどはっきりとした傾向が見られません。インターネットの利用目的は、ゲームなどのエンターテインメントとは限りません。学習に活用しているケースもあるでしょうから、そういった点がデータに反映されているのかもしれません。家庭にインターネット環境がない子どもの正答率が算数・国語ともいちばん低いことも、それを裏づけているように思います。

 次は、家庭でどのような勉強をしているかということと学力との関係について調べた結果をご紹介してみましょう。

A層・D層:算数・国語それぞれの質問に対する正答率を4つの階層に分け、正答率のいちばん高い層をA層、正答率がいちばん低い層をD層としたものです。

 上記資料は、それぞれの質問項目について、「よくしている」もしくは「ときどきしている」と回答した子どもの正答率を算数と国語それぞれについて示し、A層(もっとも正答率が高い集団)とD層(もっとも正答率が低い集団)を比較したものです。

 「学校の宿題をする」という質問項目については、「よくしている」と答えた児童のみで比較した場合、算数・国語共にA層の児童の9割近くが該当し、D層の児童よりも各20ポイント近く高い数値を示しています。つまり、学力の高い子どもの大半は「宿題をやるのは当たり前」という状態になっていることがわかりました。

 また、A層とD層との数値上の違いが大きいのは、「わからない言葉が出てきたときには辞書を使う(特に国語)」、「勉強の内容を自分なりにわかりやすくノートにまとめる」、「(宿題以外の)プリントや問題集で勉強している」、「苦手な教科もわかるまで勉強する」、「先生や親に言われなくても勉強する」などで、いずれも子どもの学習の積極性や自発性の面で差が生じているようです。勉強を自分なりに工夫したり、わからないことを放っておかないようにしたりするなど、勉強への関わりかたが熱心で継続的な子どもにすることが求められることがよくわかりますね。

 最後に、子どもの日頃の生活習慣や行動のありかたについて、正答率の高い(学力の高い)子どもとそうでない子どもとの特徴的な違いがないか調べた結果を見てみましょう。

 こちらの調査結果も納得されたかたが多いのではないでしょうか。「朝食を食べる」「決まった時間に起床する」「決まった時間に就寝する」など、基本的な生活習慣が自立し、規則正しく繰り返されているお子さんのほうが高い正答率を示しています。

 学校へもって行くものの点検も、まめにやっている子どものほうが優秀であるのも頷けます。漫画以外の本をよく読んでいる子どもは国語で高い正答率を示しています。ニュース記事を読んでいるかどうか、インターネットで情報収集をしているかどうかなども、算数・国語に関係なく正答率に影響しています。

 このことは、生活上自分のことは自分でやるという習慣を身につけることが、何につけ行動の積極性や自発性につながり、ひいては学力の向上をもたらすということを示唆しているように思います。また、興味をもったことをより詳しく知りたいという気持ちをもち、自分でいろいろ調べようという姿勢をもっている子どもは勉強もよくできるということがわかりました。いずれもきわめて当たり前のことではありますが、子どもにしっかり根付かせるのが意外と難しいということも、保護者が実感されていることであろうと思います。

 

 以上、3つの資料を見ていただきましたが、勉強ができるかできないかの因果関係について、ごく当たり前のことが確認いただけたのではないでしょうか。

 子どもを優秀な人間に育てるには、勉強面だけでなく、生活面や行動面と合わせ、子どもの全体的な成長を支援していくことが必要だと言えそうです。特に習慣化することから 諸々の行動の自立性を引き出すことが重要なポイントでしょう。やるのが当たり前になると、やらずにはいられない気持ちになるのが人間です。そこまでたどり着くには、親や保護者の熱心なサポートが欠かせません。

 これをきっかけに家庭生活や学習の現状について振り返り、問題点が明らかになったなら、今のうちに親子で話し合い、必要と感じたなら習慣づけのレベルからやり直してみてはいかがでしょうか。

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「読書」「会話」「勉強」には、相関関係がある?

2018 年 4 月 16 日 月曜日

 寒からず暑からずのよい季節がやってきました。こういう季節は全ての人間を活動的にします。今こそやるべきことを軌道に乗せるチャンスですね。

 さて、お子さんを弊社などの受験塾に通わせておられる家庭では、「これって、受験勉強に差し支えないの?」とお迷いになる事柄もいろいろあると思います。受験勉強が大詰めを迎える6年生の秋からは、「すべて受験勉強優先」で迷うこともなくなりますが、4~5年生までの家庭では、「受験勉強も大事だが、気分転換にもなるだろうし…」と、気持ちが揺れてしまうものです。

 たとえば読書。いったん本を読み始めると、一気に最後まで読みたくなるものです。大人なら踏みとどまって状況を顧みる分別がありますが、子どもは時間を忘れて読みふけってしまいがちです。また、家族団らんの時間の会話は子どもにとっても楽しいものです。特に子どもの興味の範囲の話題なら、いつまでも話していたい気分になります。こういう場合においても、大人は場の雰囲気を察知して適当に切り上げますが、子どもの場合それがなかなかできません。

 「うちの子は受験生なのだから、読書に時間をあまり割くべきではないのではないか」「ぺちゃくちゃしゃべっている時間があったら、勉強に精を出させたほうがよいのではないか」―――こんなふうに迷っているかたはおられませんか?

 実際のところ、読みたい本を読んだり、家族団らんの時間に楽しい会話を交わしたりするのは、受験勉強をしているお子さんにとってマイナスに作用するのでしょうか。今回は、そのことを話題に取り上げてみました。

 今からご紹介するのは、2010年に実施された中学3年生(7131名)を対象にした調査の結果です。調査対象者を一定の偏差値ごとにいくつかの学力の階層に分け、それぞれの階層ごとの読書量を調べたもので、学力と読書量の関係性についてある程度の傾向が読み取れるでしょう。

質問/「どのぐらい本を読んでいるか」 回答/1:ほとんど読まない 2:月1~2冊は読む 3:月3~4冊は読む 4:月5冊以上は読む

 これを見ると、絶対的な傾向とは言えないものの、学力と読書量にはある程度比例の関係があることがわかります。学力の高い生徒ほど月あたりの読書量は多いようです。なお、漫画や雑誌はこの調査においては読書に含まれていません。

 この調査の対象者は中学3年生ですが、もしもより読書が活発な小学生(読書量は、子どもの年齢が高くなるにつれて少なくなる傾向があります)を対象に調査したなら、学力と読書量の関係がより明確になるかもしれません。ただし、類似の調査をいくつか点検してみると、読書時間は長すぎるのも短すぎるのも学力形成にマイナスの影響を及ぼしているようです。読書時間があまり長いと、勉強にも差し支えるのは自明のことですから、気をつけたいものです。

 さて、次の資料は前出の調査と同時に行われたもので、学力階層別に家庭での会話状況を調査したものです。

質問/保護者とは日ごろよく会話する 回答/1:とてもあてはまる 2:まあまああてはまる 3:あまりあてはまらない 4:まったくあてはまらない

 これによると、大ざっぱに見て成績上位者の家庭では親子の会話が相対的に豊富であり、成績不振者の家庭では親子の会話が少ないという傾向が見られます。ただし、会話が多ければ多いほどよいというわけではないことも見て取れますね。 

 すでにお伝えしたかと思いますが、団らんの時間の会話は子どもの心の安定に寄与します。それが子どものやる気につながりますし、親が何を自分に期待しているのかを感じとる場にもなります。ですから、親子団らんの時間が家庭で確保されていることは、受験生家庭にとっても大切なのだということがわかりますね。また、親子の会話は、子どもにとっては理路整然とした話しかたを習得する場になりますし、親から新しい語彙を仕入れる重要な機会にもなります。家族団らんの時間に楽しい話に興じるのも、受験生にとって決して無駄なことではありません。

 最後にもう一つ資料を見ていただこうと思います。子どもの読書量と家庭での団らんの時間との関係について調べたものです。

 この資料を見ると、親子の会話が豊富にある家庭の子どもほど読書量が多いということがわかります。これまで、「学力」と「読書」、「学力」と「家族との会話」には、一定の相関関係があることを確認してきましたが、「読書」と「家族との会話」にも同じような関係があることがわかりました。どうやら、「学力」と「読書」と「会話」には互いに正の相関があるようです。

 子どもにとって、新たな知識や考えを獲得する場は「勉強」だけではありません。「読書」や「会話」も、同じように重要なものなんですね。それらは互いに根底の部分でつながっているのでしょう。知らないことを知るのは人間の基本的欲求で、‟快“の感情をもたらします。まして子どもは成長の真っ盛りですから、「勉強」「読書」「会話」の体験は、いずれも知ることの喜びや楽しさに触れる体験として相互に刺激し合うのでしょう。

 受験を意識すると、とかく勉強を最優先しがちです。特に親がそういう姿勢でいると、お子さんの勉強が活性化しない根本の理由に気づかないまま悪循環に陥ってしまいかねません。今回ご紹介した資料のデータは、「なぜ、わが子の勉強に意欲が伴わないのか」について、解決に向けたヒントになるかもしれません。勉強の成果は、投入した時間に比例しません。子どもの知的欲求が活性化する仕組みを理解し、勉強の時間が効率的で有効なものになるよう配慮することも大人の役割だと言えます。

 「読書」や「会話」は息抜きになるだけでなく、勉強の成果をバックアップする効能もあるのだということを踏まえ、お子さんの受験生活がバランスのとれた有効なものになるよう配慮してあげてください。

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テスト制度を正しくとらえて活用を!

2018 年 4 月 9 日 月曜日

 2018年度の前期講座の開講後、「マナビーテスト」が2回実施されました。まだ年間の講座スパンから見ると序盤が始まったばかりですが、なかには早々と焦りを感じている保護者もおられるかもしれません。

 というのも、学習塾のテストでは学校ではなじみのない‟順位”がつきます。「何人中何番」というのが、教科ごとに、さらには総合成績という形でついてきますのでかなり刺激的です。当たり前のことですが、テストでの成績は子どもたちの能力を判定するものではありません。子どもたちが、メニューとして与えられた勉強にどの程度しっかり取り組めていたかどうかを、全体集団の中の位置づけを含めて判定するものです。 

 データがよかったとしても悪かったとしても、「どういう理由でこの成績がもたらされたのか」をしっかりと掌握し、問題点を見出して改善していくことが肝要です。それによって、お子さんの学習状態は着実によくなり、学力も伸びていきます。そのための道しるべとしてテストは存在します。

 ところが、数字にはある種の魔力があります。悪いデータを何度も突きつけられると、「やっぱり能力がないんだ」と気分が落ち込み、勉強に取り組む気持ちが萎えてしまうお子さんも出てきます。逆に、4・5年部の基礎段階では、やるべき勉強を疎かにしていてもよい成績がとれることがあります。これを勘違いしてしまい、「勉強なんかしなくても大丈夫」と高をくくっていると、伸びるはずの学力が全然伸びないことになりかねません。

 まだ講座が始まったばかりのうちにこそ、テスト制度の役割に正しく向き合い、テストを上手に活用する方法を体得していただきたいですね。今回の話題は、そのために取り上げたものです。

 ここで例をもとに考えてみましょう。お子さんの算数の成績がよかったとします。しかしながら、その理由が次のようなものだったとしたら、今後も大いに期待がもてるでしょうか。

1.テスト範囲が、たまたま得意にしている単元だった。
2.テスト前に慌てて取り組んだ問題が偶然たくさん出た。
3.真面目に勉強していないのに、いつもよい成績がとれている。

 上記のような理由でよい成績をあげていたとしても、それ自体にあまり価値はありません。1や2のような場合、成績が上がったのをきっかけにしてやる気が出て、以後よくがんばるようになるケースもありますが、多くは一過性の好成績で終わってしまいがちです。というのも、不断の努力の価値を学ぶ経験につながっていないからです。また、3のように勉強しなくてもよい成績をとっていたお子さんは、学習の高度化に備える努力を軽んじたために、入試レベルの学習に至ると壁に突き当たってしまいます。

 弊社のマナビーテスト(4・5年部)は、次のような視点から出題しています。

 ①について考えてみましょう。毎回のマナビーテストでは、授業で扱った大切な考えかたが理解できているかどうかを問います(テキストの「学習の手引き」や基本問題の理解)。基礎を学ぶ段階の授業では、単元それぞれの特性に合わせ、筋のよい正攻法の考えかたや解きかたを指導しています。それが、入試レベルの問題に取り組む段階で非常に重要になってくるからです。

 次に②について考えてみましょう。弊社は子どもたちの中学進学後の学習を視野に入れ、家庭で勉強する習慣を身につけることを重んじています。学習のレベルが上がれば上がるほど、学習の自律性が問われることになるからです。そこで、受験勉強の全てを教室指導で賄うのではなく、授業後に家庭で復習をし、さらに発展的な学習に取り組むなど、家庭での自己管理に基づく学習と組み合わせた受験対策を推進しています(土曜コースの場合、授業で扱う導入的内容も全て家庭で取り組みます)。テストでの出題も、このようなシステムとの連動性を踏まえています。家庭でしっかりと自主学習をしておけば、必ず報われるようになっているのです。 

 最後に③について考えてみましょう。副教材は、家庭での継続的な取り組みで基礎を定着させていくためにあります。やればちゃんと報われるのだということを子どもたちに実感してもらうため、算数の計算スキルのほか、国語の漢字、理科・社会の基礎知識などもマナビーテストの出題に毎回反映させています。ですから、毎日の家庭学習のスケジュールにも、必ず副教材の取り組みの時間を設けるよう指導しています。

 「授業をちゃんと聴く」「家庭で復習・発展学習をする」「家庭で副教材に取り組む」――この三つを大切にすれば、テストでがっかりするような結果を招くことはありません。もしもテスト成績が悪ければ、上記の学習が機能していないことが予想されます。保護者の方々にお願いしたいのは、「わが子が授業をしっかり聴いているかどうか」「家庭勉強を予定通りこなしているかどうか」という観点から、お子さんと話し合ったり、お子さんを励ましたりすることです。ときどき、お子さんの学習ノートも見てあげてください。ノートに授業の板書がちゃんと書かれているかどうか、テキストの課題に取り組んでいるかどうかを確かめれば、学習の状況がある程度わかります。

 最後に繰り返しますが、テスト成績はお子さんの能力判定ではありません。どの程度がんばれているか、今の学習内容がどれぐらいものにできているかを判定するものです。テストデータをもとに、お子さんの一層の努力を促すべく、上手に導いてあげてください。くれぐれも尋問口調にならないよう気をつけてください。アドバイスや話し合いのはずが大喧嘩に至っては、元も子もありません。

 無論、各教科の指導担当者も適宜お子さんの状況に合わせてアドバイスいたします。望ましくない状況を放置し、徒に時間を浪費しないよう保護者の方々と学習塾との連携でお子さんをバックアップしてまいりましょう。

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できる子は“切り替え”が上手!?

2018 年 4 月 2 日 月曜日

 4月に入り、入学式や新学期が目前に迫ってきました。このところ弊社の教室には、大学受験を終えて進路の決まった生徒さんたちが、次々に報告がてら遊びに来てくださっています。

 みなさん立派な大学に合格されていて驚くことしきりですが、中学受験生のころの取り組みや性格的特性は中学高校生になっても変わらないようで、大学進学にも少なからず影響しています。小学生時代に望ましい学習姿勢を築いておくことの重要性を改めて痛感する次第です。

 さて、今回は学習成果をあげるうえで重要なポイントの一つである、生活や行動の“切り替え”を話題に取りあげてみました。お子さんの学習生活における問題点として、必ず保護者から相談を受けるのが、この“切り替え”です。どういうことかというと、「勉強を始める時間になったのに、いつまでもぐずぐずしている」「ゲームに夢中になると時間を忘れてしまい、勉強がおざなりになってしまう」などの問題が多くのご家庭で生じており、親をイライラさせているようです。

 弊社の教室に通う子どもたちの日常を振り返ってみると、だいたい下図で示したような領域で行動の切り替えが必要になってきます。

 これは人間の常ですが、楽しいことには「ずっとやっていたい」という気持ちが強く働き、辛抱の伴うことや辛いことには「できるだけ避けたい」という心理が働きます。両者のバランスを上手にとることが求められるわけですね。

 小学生と言えば、こうした行動の節度を体得していく時期です。本来なら、日常生活で試行錯誤しながら少しずつ身につけていけばよいのですが、目の前に中学受験が控えているお子さんの家庭ではノンビリしていられない切実な問題になりがちです。

 特に多いのが、前述のような「遊びや楽しみ」と「受験勉強」との切り替えがうまくいかないケースでしょうか。

 たとえば、お子さんが、いつまでもテレビにかじりついて勉強にとりかからなかったとき、親はイライラしてストレスが溜まるものです。そんなとき、あなたは次のうちのいずれに近い対応をされるでしょうか(なかには、こういう場面とは無縁のうらやましい家庭もあると聞いています。ほんとうにすばらしいですね)。

 さて、望ましいのがどの対応かについては、わざわざご説明するまでもないと思いますが、2と5が一般的にはよいとみなされているようです。ですが、子どもたちに聞いてみると、1や3の対応をされている家庭も少なくないようです。おそらく、これは親の本意ではありません。打てど響かぬわが子に対して堪忍袋の緒が切れた結果だろうと思います。(こんな事態に至らないようお願いしたいですね)。

 もし「いちばんよい対応はどれ?」と聞かれたなら、筆者は迷わず2を選ぶでしょう。なぜこの方法が望ましいのかというと、子ども自身の意志で行動を切り替えたことになるからです。

 人間だれしも同じだと思いますが、他者から自分について注意されたり叱られたりすると自尊心が傷つきます。まして子どもは頭ごなしに叱られると、いくら自分が悪いとわかっていても、反省の気持ちよりも反発心のほうが勝って意固地になりがちです。いっぽう、②のように子ども自身の自発性を誘導する言いかたをしたならどうでしょう。これなら子どものプライドが傷つくことはありません。意外とすんなり受け入れるものです。やがて、自分からやることに誇りをもつようになるのではないでしょうか。

 弊社の4・5年部では、「おかあさんの勉強会」という催しを実施していますが、この催しでのやり取りにおいて、同じようなシチュエーションへの対応として、2のような方法をとっておられるおかあさんが結構おられることを知り、感心したことを思い出します。

 言うまでもありませんが、行動の切り替えが上手にできれば、時間を有効に集約して活用することができます。いっぽう、いつまでも楽しみごとに執着し、やるべきことへの切り替えができないお子さんは、学習時間が不足するうえ、勉強の効率性も大きく劣りがちです。1年間、2年間の学習で大変な差が生じるのではないでしょうか。

 行動の切り替えはそんなに難しいことではありません。いかに習慣づけるかです。小学生のうちなら、親のサポートで如何様にも変われます。子どもは親から信頼されていると感じると、より親の期待に沿った行動をとろうとするものです。うまくやれていないときでも、叱るまえに「やれるよね」という気持ちをさりげなく向けてやればよいのです。もしも現状に不安を抱かれている保護者がおられるなら、ぜひ前述のような関わりを試してみてください。

 現代社会は時間を有効に使うことを強く求めます。仕事の世界では、受験勉強とは比較にならないほど行動の切り替えや時間管理が重要になってきます。しかしながら、子どものころにそうした行動様式を磨く経験をしていないと、「易きに流れる」姿勢が染み付いてしまい、‟わかっている”のに‟できない”人間になりがちです。よい習慣を、親の愛情と情熱で今のうちにわが子に植えつけてやりたいものですね。

勉強と遊びの切り替えが上手な子どもにできるのは今のうちです。受験のプロセスを生かしましょう!(合格力も間違いなくアップします)

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