2018 年 11 月 のアーカイブ

中学受験を検討しておられるご家庭へ

2018 年 11 月 26 日 月曜日

 お子さんの中学受験を検討され始めたとき、真っ先に保護者の方々の頭に浮かんだのはどんなことでしょうか。「うちの子に、それだけの能力があるだろうか」「今のわが子の学力で通用するだろうか」という学力・能力面の心配をされたかたもあるでしょう。あるいは、「いつから受験勉強を始めるべきか」、「どの学習塾にわが子を通わせるべきか」なども、悩ましい問題かもしれません。

 周囲に中学受験に詳しいかたがおられたり、保護者自身が中学受験の経験者であったりすれば、そういったことについてある程度目鼻を立て易いでしょうが、これといった情報源をもっておられなかったり、身内に経験者がおられなかったりした場合、いろいろとお迷いになるケースも多いのではないかと拝察します。

 今回はそのことに関して、簡単に弊社の考えをご説明しておこうと思います。中学受験への向き合いかたについて、いくらかでも参考にしていただければ幸いです。

① わが子に受験するだけの学力・能力があるかどうか

 まず、学力や能力に関する判断ですが、弊社では「学校の勉強を、余裕をもってやりこなせているかどうか」を、お子さんをお預かりする際の目安としています。そこで、入会希望者に対して「会員選抜試験(算数・国語)」というテストを実施し、基礎学力の定着度を判断させていただいています(「このテストは無料です。わが子が受験に通用する学力を備えているかどうか」についてご心配のかたは、この試験の結果で判断していただくことができるでしょう)。

 ただし、このテストはお子さんのもっておられる「能力」を判定するわけではありません。何度も入会ラインに届かずに受け直したお子さんが、入会後に奮起してがんばり、やがて難関とされている中学校に受かったケースも決して少なくありません。人間の「能力」というのは、鍛えかた次第で随分変容していくものなのだとご理解ください。大切なのは、基礎段階の勉強を疎かにしないことです。そこから勉強を継続していくことで、能力はどんどん磨かれていきます。このことでおわかりいただけると思いますが、中学受験をすることの大きな価値の一つは、実は受験のプロセスでお子さんに宿っている潜在能力を開発できるということなのです。

 

② いつから中学受験対策の勉強を始めるべきか

 次に、受験勉強の開始のタイミングですが、これに関しては「ズバリ、この時期から!」という絶対な判断基準はありません。弊社は、受験対策の開始時期を基本的に「4年生から」としていますが、それは大多数のお子さんが無理なく基礎レベルから入試レベルへと学力を伸ばしていくためには、3年という期間が最も妥当だと考えるからです。

 なお、この判断は主に算数の学力形成という観点に基づくものです。中学受験対策の学習で最も手間がかかり、学校の教科書との学習レベルの差が大きいのは算数です。この算数の学力形成の流れを理想に近づけるために、3年間の受験対策をご提案しているのだとご理解ください。少し具体的な話をすると、4年部のスタートから少しずつ教科書の内容を先取りし、4年部の後半から5年生の学習範囲へと移行していきます。こうして、入試を意識した応用的な学力育成のための時間を確保し、6年部の5月から難度を上げた入試対策(応用力養成期)へと進んでいきます。


 なお、弊社においては5年部からの入会者も相当数おられます。算数のカリキュラムは4年部のスタートから徐々に先取りしていますが、この先取り部分に追いつくための勉強をこなせるお子さんなら、2年間の受験対策期間でも十分に志望校合格は可能です。

 算数以外の入試科目ですが、理科と社会は5年部開始から正式な指導を開始します(4年生では、季節講習で扱います)。また、国語は基礎的な読解力や基礎文法の指導、読書指導などを4年部の1年間において実施しています。国語は、家庭での読書生活や言語生活によって培われた語彙力や読解力、思考力がものを言う科目ですから、この点がしっかりとしていれば5年部以降の入会がハンディとなることはありません。逆に、この点がおざなりになったお子さんは、いつから受験対策を始めても苦労される確率が高いと言わざるを得ません。というのも、入試科目の勉強はいずれも文字言語を通して行います。「読む」と「書く」が確かでないお子さんは、どの科目の学習においても難渋するのは当然のことです。逆に、読み書きの達者なお子さんは、受験勉強を快適に進めていける可能性が高いと言えるでしょう。

③ どの学習塾を選ぶか

 この話題について、一学習塾の内部にいる者であるという意識を離れて申し上げると、塾選びに絶対的な判断基準はありません。保護者やお子さんの好みも作用するでしょう。また、塾の選択にあたって何を重視されるかでご家庭ごとに違った答えが導き出される場合も多々あるでしょう。

 学習塾選びに適用されるふるいとして一般的なものをあげてみましょう。たとえば、通塾の方法や所要時間、距離なども選択の基準になるでしょうし、週当たりの通学日数や授業の時間帯なども希望される条件にかなっているかどうかも気になるところです。無論、学費も無視できない要素でしょう。これらは調べれば簡単に入手できる情報です。

 そのほか、学習塾の評判も判断材料とされるかたが多いと思います。また、保護者がもっておられる学習塾に対するイメージも、「なんとなく」ではあってもふるいの一つとして無視できないものかもしれません。

 ですが、学習塾選びにおいて最も重要なのは、「学習塾のもつ“学力観”がどのようなものであり、どのような方針や指導法によって志望校への合格をめざしているか」であろうと思います。受験とは、行きたい(行かせたい)学校への進学のためにするものですから、どの学習塾に通っても入学試験で合格できる学力を身につけるための指導をする点では同じです。ただし、そのための方法論は学習塾によって随分異なるものです。それを知らずに塾を決めると、あとで様々な問題が生じ、親子共々後悔することになりがちです。

 問題は、この観点に基づく塾の取捨選択が難しいことです。ですから、まずはとりあえずピックアップされた学習塾に関する詳しい資料を入手したり、学習塾の説明会に参加して塾の指導方針等を確認したりするなどし、塾の特性を調べることをお勧めします。漠然としたものではあっても、保護者のもっておられる進学や勉強に対する考えと突き合わせることで、ある程度は学習塾ごとの違いやお子さんとの相性もつかめてくると思います。

 

 以上は、お子さんの中学受験を検討しておられる保護者に、受験対策のスタートラインに立つ上で基本となる情報を提供するために筆者が書いたものです。無論、最終的に保護者の方々が選ばれた学習塾が弊社であることを願って書いたのですが、できるだけ客観的な視点を失わないよう心がけたつもりです。

 次回は、塾選びにおける最も重要なポイントとなる、「どのような学力観に立ち、どのような学習指導で合格をめざしている学習塾か」について、弊社の情報をお届けしようと思います。

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カテゴリー: お知らせ, アドバイス, 中学受験, 入塾について, 家庭学習研究社の特徴

子どもの読書活動の活性化に向けて その2

2018 年 11 月 15 日 木曜日

 先週に引き続き、「子どもと読書」をテーマに掲げてみました。今回は、読書心理学を専門とする先生の著作の一部が目に留まり、それをご紹介しながら、読書のもつよさについて共に考えていただこうと思います。内容は、「同じ本を読んでも、子どもの年齢や成熟度によって『面白い』と感じる場面が異なる」というものです。

 「よい本は、年齢を問わず誰が読んでも面白い」とよく言われていますね。みなさんも、子どもの頃に読んだ本で、今でもお気に入りの本があるのではないでしょうか。あるいは、昔読んだ本が懐かしくなり、再び手に取って読まれたことのあるかたもおられることでしょう。ただし、同じ本でもそのどこを面白いと感じるかは、年齢や心の成熟とともに変わっていくようです。

 読書心理学の専門家として著名な東京大学の先生の著作に、同じ本のどこを面白いと子どもが感じているかを調査した結果が紹介されていました。調査研究に使用された本は、みなさんよくご存知の「ないた赤おに」(著者:浜田廣介)です。調査対象は、小学3年生93名と5年生93名の児童でした。学年の違う子どもたちそれぞれに同じ本を読んでもらい、提示されたあらすじのどの場面を面白いと感じたかを指摘してもらったところ、年齢によって面白さを感じた場面が異なるということがわかったそうです。

 上記の書物には、子どもたちの感想として次のようなものが紹介されていました。

 「さいごの場面がかわいそうだった」「やさしいお話でかわいそうなお話だった」「あおおにの気もちとあかおにの気もちがよくわかった」「二人はとてもなかよしなおにだとぼくは思いました。あと、しんせつでやさしいおにで、たすけるおにだと思いました」と、小三の子どもたちが読み終えた後の感想を書いてくれています。

 また、小五の子どもも次のような感想をあげています。

 「赤鬼はとくをしたけど、青鬼は自分がぎせいになってあげた。最後にぼくは赤おによりも青おにのほうがやさしいなと思いました。自分より先に友達のことを考えてあげるのはとてもよく、ぼくもこういう友達がいたらすごいだろうなと思いました。

 「おには人間には悪いものだと思われているが、作者はおににも心のやさしいおにがいるということをいいたのだと思う。赤おには立て札をたててまで人間と仲良くしたいというのはすごいと思う。青おには自分をぎせいにしてまで赤おにを人間と仲良くさせてあげたいというきもちはすごいと思う。

 紹介された子どもたちの感想を読むと、それぞれの学年の子どもなりに読んで感動したり面白さを感じ取ったりしている様子がうかがえます。この調査研究にあたった先生は、物語をあらすじごとにいくつかのブロックに分け、それぞれの学年の子どもたちがどこを面白いと思ったかを調べておられます。詳細については割愛させていただき、あらすじのおもな場面ごとの子どもたちの反応の様子をご紹介してみましょう。

 上記の調査研究をされた先生は、3年生と5年生の読み取りの違いとして、小3が第二部分を面白いと思っているのに対して、小5は第3部分を面白いとしている点を指摘されていました。また、おもしろかった箇所にある記述の特徴を面白さの広さと内容によって分類し、かなり詳しく両者の違いを分析説明されていました。ただし、ここでは筆者の目についた特徴的な違いのみについて触れておきます。

 上表をご覧になると、おもしろいと感じた場面はエピソード6と9に集中していることがわかります。二つの場面の違いはどんな点でしょうか? エピソード6は青鬼が暴れまわるシーンが印象的で、アクションが目に見えるようで躍動感があります。いっぽう、エピソード9はなんだかしんみりとした様子が描写されています。青鬼が自分(赤鬼)のために犠牲となり、旅に出るという趣旨の手紙を読んでいる場面です。

 小3・小5ともに面白いと思う場面に共通性はありますが、小5のほうがエピソード9のほうにより多く反応しています。上記研究者の先生は、年齢による面白さの違いについて、「おかしいとかスリルがあるというおもしろさだけではないおもしろさを味わい感じとっていることがわかる」と述べておられます。つまり、年齢が上がるほど読み取りの質が変わってくるということなのでしょう。

 試しに同じ物語を中1の生徒90名ほどに読ませてみたところ、やはり小5と同じように第三部分に対する反応が目立ったそうです。おもしろさについての言及に注目してみると、子どもたちは「じーんときた、泣けてきた、心温まった」といったような語で読後感を表現していました。やはり年齢があがると、同じ場面に共感した場合でも、自分の受け止めかたや気持ちをより細かく的確に表現できるようになっていることが伺えます。

 どうでしょう。子どもは読書活動の繰り返しを通じて、仮の体験をたくさんしていきます。このことが語彙の著しい増加をもたらしますが、それは同時に内面の成長にも影響を及ぼします。ですから、本の筋立てのなかで興味をもったり、共感したり、感動したりする部分が年齢とともに変化していくのは当然の流れだと言えるでしょう。さらには、読み味わって得た感想や共感を述べる場合にも、より詳細に、自分の微妙な感じ取りかたも伝えられるようになっていくのですね。

 一度、お子さんと同じ本を読んで、読後感を交換してみてはいかがでしょうか。わが子が、その本のどこに興味をもち、心を惹かれているのか。そのことを知ること自体が親にとって興味深いことですし、親が思ってもみなかった成長を発見されるかもしれません。おかあさんが「面白かった」と言った箇所について、お子さんがどういう反応を示すかも楽しみですね。

 ご承知のように、読書は実益を意識して行うものではありません。様々な本とのめぐり逢いを通じて、心の中の世界を広げ深めていける楽しさを味わうことこそ、読書の魅力と言えるでしょう。親子で本を楽しむことは、家族がある側面において価値観を共有する、家庭文化の形成にも少なからぬ貢献をしてくれるものです。前回は、本を全然読まない中学高校生が増えているという調査データをご紹介しましたが、今のうちにわが子を本好きにしておくことも、親からわが子へ授けられるすばらしい贈り物ではないでしょうか。

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カテゴリー: アドバイス, 子どもの発達, 音読・読み聞かせ

校長先生を通じて、私学教育の魅力を確かめよう!

2018 年 11 月 9 日 金曜日

 11月14日(水)には、修道と広島女学院の校長先生をお招きし、私学教育について語っていただくイベントを開催いたします。

 すでにこのブログでもかなり詳しくご案内しましたし、当ホームページにも案内記事を掲載しておりますので、ご承知のかたも多数おられるかと思います。この催しの開催が数日後に迫ってまいりましたので、改めてもう一度ご案内するしだいです。

 ネット社会の到来で、必要な情報を家にいながら即座に手に入れられる時代が訪れています。このような時代において、わざわざ足を運ぶ価値があるとしたら、それはどんなことでしょうか。

 お子さんの学校選びに活用する情報も、インターネットを利用したり、学校案内書などの資料を取り寄せたりすれば、簡単に手に入ります。しかしながら、実際に学校で教育にあたっておられる先生の、それも学校長として采配を振るっておられる先生の話を直接聞いてこそ得られる情報もあると思います。肉声は活字や写真では得られない臨場感を伴いますし、校長先生の人格に直接触れることで初めて心に響く、感性に基づく共感のようなものも学校選択における貴重な情報です。「百聞は一見に如かず」の諺ではありませんが、目で確かめた生の情報には格別の真実味があるのは間違いありません。

 このイベントを企画したのは弊社です。手前味噌で恐縮ですが、本催しで得られる情報の大半は、学習塾が企画した催しだからこそ得られるものだと言えるでしょう。本催しは4部構成ですが、ここでもう一度それぞれの企画趣旨を簡単にご説明します。

 

第1部 基調講演「私学教育とは何か」 修道 田原俊典校長

 お子さんの進路選択にあたっては、様々な視点から候補となる学校を検討されていると思います。通学距離や難易度(大学への進学実績)、校風、部活などいろいろな要素が選択の基準になることでしょう。しかし、もう一つ大きなポイントがあります。それは、「私立か、国立か、公立か」という基準です。

 ご存知のように、私学は学費負担という問題があります。それなのに、古くから広島には多数の私学が存在し、それぞれに社会に貢献する多くの卒業生を送り出しています。なぜあえて私学を多くのかたが選んでおられるのでしょうか。それは、私学には「私学ならではのよさ」があり、そこで学んだ人たちの人生の充実に多大な貢献をしているからです。

 そこで第1部では、「私学教育のよさ」にスポットを当ててみました。話者は、私学連盟の要職に就いておられる修道の田原校長です。私学の本質について学べる、貴重な場になることでしょう。

 

第2部 「21世紀を生き抜く人間を育む」 広島女学院 渡辺校長、修道 田原校長

 今日の子どもたちには、グローバル化が進む社会を生き抜くための力が必要です。私立の6か年一貫校出身者の多くは、このグローバル化の波を乗り越えて社会で広く活躍しています。そこで第2部では、「グローバル化と私学教育」という視点から、両校の校長先生にお話しいただくことにしました。私学には、それぞれ「建学の精神」があり、設立以来受け継がれた伝統があります。それらはみな個性という点で異なるものの、「どのような社会においても生き抜いて行ける人間の育成」という共通点があります。修道と広島女学院の校長先生のお話を、そうした視点に基づいてお聞きになると、両校の私学としてのよさについて、新たな気づきが得られるのではないかと思います。

 

第3部 「通って分かった私学の魅力」 生徒アンケートの結果をご紹介

 学校の様子について知る有効な方法の一つに、そこに通っている生徒さんから情報を得るということがあります。そこで、今回出演してくださる校長先生のご理解ご協力を得て、修道生と女学院生を対象としたアンケートを実施しました。今回は、私学の生活にだいぶ慣れてきた中2生と、出口が近くなった高3生の方々に回答していただきました。

 アンケートの内容ですが、「学校のよいところは?」「平日は、何時間ぐらい勉強しているの?」「何時に寝て、何時ごろ起きている?」「この学校に入学して、成長したと思うことってどんなこと?」など、多岐にわたります。さて、どんな答えが返ってきたでしょうか。会場では、グラフや具体的コメントなどを映像でご紹介します。生徒さんたちの、楽しく充実した学校生活の様子が十分におわかりいただけることでしょう。

 せっかく得られた貴重な情報なので、当日配布する資料にかなり詳しくアンケートの回答をご紹介しています。帰宅された後、親子一緒にその資料をご覧になれば、学校について楽しい会話の花が咲くことでしょう。

 

第4部 「校長先生に、そこが聞きたい!」 質問コーナー

 以前のブログ記事でもお伝えしたと思いますが、大勢の人がいる場所で質問するのは相当な緊張が伴い、随分と勇気が要るものです。ですから、たいていのかたは話者の話をただ聞くだけで終わってしまいがちです。そこで、保護者の方々が聞きたいであろうこと(経験的にそう感じている事柄)を、保護者に代わって弊社から校長先生がたに質問するというコーナーを設けました。

 昨年も同様の企画を用意したのですが、うまく時間を確保できず残念な思いをしました。この経験に鑑み、時間をしっかりと確保したうえで、時間の許す限りたくさんの質問をし、校長先生がたにお答えいただこうと思っています。以前、修道の田原校長に同種の企画でご協力いただきましたが、すばらしいテンポで当意即妙の回答をいただき、感心したことがあります。今回も、そうした楽しい時間になればと期待しています。

 

 以上が当日予定している話題の流れです。忙しいなかお越しいただく保護者の方々に、「行ってよかった」「よい話が聞けた」と満足いただけるような、充実した催しにしたいと考えています。興味をもっていただいたかたなら、お子さんの年齢などは問いませんので、ぜひお気軽にお越しください。私学について知るよいきっかけにしていただければ、当日の話者として協力してくださる校長先生もお喜びになると思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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カテゴリー: お知らせ, 中学受験, 行事のお知らせ

子どもの読書活動の活性化に向けて その1

2018 年 11 月 5 日 月曜日

 秋も深まってまいりました。今回は、“読書の秋”に因み、「子どもと読書」をテーマに書いてみようと思います。

 みなさんは、「子どもと読書」と言われて何か頭に思い浮かぶことはありませんか? 筆者が真っ先に連想したのは「読書活動の減少(衰退)」でした。携帯ゲームやスマートフォンなどの普及(あるいは、テレビ視聴や塾やスポーツ・習い事なども原因ではないかと思いました)で、子どもは読書から離れつつあるのではないかと想像したのです。確かに、中学・高校生においてはかなり当たっていたのですが、こと小学生に関しては筆者の予想とは異なっていました。

 これは、小学校の「朝の読書活動」推進の努力が実を結びつつあることや、教科書の素材文に登場した本と、学校図書館の蔵書との連動性を高める努力などの成果であるといったようなことが、メディアから入手した情報にありました。

 子どもの読書活動について残念に思うのは、高校生の月あたり平均読書数が僅か1.5冊(2017年調査)であり、約半数の高校生は全く読書をしないというデータを目にしたことです。下記は、子どもの「不読率」について調査した結果ですが、これをご覧になっても中学高校生の読書離れが進んでいることが伺えます。

 中学高校生がなぜ読書をしないのかについては、次の資料である程度おわかりいただけるでしょう。

 一番多い理由は「本を読まなくても不便はない」というものですが、これは「なぜ本を読むのか」の発想が実益の享受に基づいていることの裏返しであり、筆者はとても残念に思いました。本を読むのは、「面白い」から、「感動を得られる」から、「読後感の気持ちのよさがある」からというのが、筆者の考える読書の主要な理由です。割合としては多くないものの、「学校の授業で読書は十分」「学校の成績に関係ない」という理由が一定数あるのも、筆者には本を読まないことの理由として思ってもみなかったことなので驚きました。

 「読みたい本がない、何を読んだらよいのかわからない」という理由が2番目に多いことにも正直がっかりしました。実は、小学生で読書をしない子どもも、「読みたい本がなかったから」という理由がいちばん多かったことを示す資料があります。小学生なら、大人のサポートで対策がある程度できるでしょうが、中学高校生ともなると、大人が働きかける余地は少ないと言わざるを得ません。どうしたものでしょうか。

 勉強や部活、スポーツ、趣味、友人との付き合いなどは、中学高校生が読書の時間を確保できない理由として筆者にも納得できるものですが、「そうした忙しい生活の中で、時間をやりくりしてもしたいのが読書であってほしいな」とも思いました。

 次の資料は、読書量とコミュニケーションスキルや礼儀作法のスキルの相関関係を調査した結果を示すものです。

 これをご覧になると、読書がもたらせてくれる恩恵は、子どもが想像するよりも、否、われわれ大人が想像するよりもずっと幅広く深いものだということに気づかされます。本の中での人物のやり取りや内面描写を読み取りながら、子どもは登場人物と一緒に仮の体験をし、それを自分の内面に取り入れているのでしょう。本を読んでいるとき、子どもは無論のこと大人にも「これは嘘ごとなんだから」という意識はありません。感情移入をしながら自らも体験し、共感したり反発したりしながら自らの知識や考えとして取り込んでいるのですね。

 ついでに申しあげると、読書量はほぼ学力とも比例する(ただし、極端に多いのはマイナスに作用)という調査結果も目にしたことがあります。

 今回は、子どもの読書の実態と、読書のもたらす恩恵などについてご紹介しました。次回は、子どもの内面世界の広がりや深まりと年齢との関係に着目した資料をもとに、子どもと読書について考えてみようと思います。

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カテゴリー: アドバイス, 家庭での教育