遊びや娯楽と学業成績との関係

2019 年 4 月 29 日

 GW(ゴールデンウィーク)が始まりました。弊社の教室も4月29日(月)~5月5日の1週間は休講とさせていただきます。授業は5月6日(月)から再開する予定です。お子さんがたには、リフレッシュの期間に充てるとともに、これまでの学習の振り返りと修正点の確認をしていただければ幸いです。

 現在までのお子さんの学習を見守られて、どのような感想をおもちでしょうか。4~5年生なら、計画通りに勉強をやりこなせているか、塾への通学が楽しいものになっているかどうかがまずは重要なポイントでしょう。無論、成績面でも手応えを得ておられるなら言うことはありません。

 6年生は、4月末をもって「基礎力養成期」の学習が修了ました。すなわち、学校の教科書範囲をひととおり学び終えたわけです。GWが終了すると、いよいよ「応用力養成期」へと移行します。ただし、まだ入試レベルの学習内容に取り組む段階には至っていませんので、いきなり高度な内容へ移行するのではなく、基礎内容の見直し・点検と、応用的な学力育成への橋渡しをすることが当面の課題となります。その意味においても、GW期間に基礎の定着度を振り返り、課題を明確にしておくことが重要です。現段階で苦手としている単元があればチェックしておき、夏休みまでに少しずつ埋め合わせをしていきましょう。

 さて、保護者におかれては、お子さんのこれまでの学習状況について成果や課題を把握されているでしょうか。子どもはなかなか集中力が続かないうえ、目先の楽しいことに流されがちです。勉強の面白さがわかるようになったり、決めたことをやらずにはいられなくなったりするなど、進歩がはっきりと見て取れるようになれば、「やればやるほどレベルアップする」という好循環の連鎖が生じてきます。このレベルに至るまでが受験生にとって当面の課題であり、目の前に立ちはだかる大きな壁でもあります。親の目配りやサポートが最も必要なのはこの段階だと言えるでしょう。

 ここで、子どもの家庭での過ごしかたと学業成績との関係について調べた資料をご紹介してみましょう。中学受験をめざしている小学生の勉強のありかたを考えるうえで参考にしていただければ幸いです。小学5年生を対象としたものですが、学習時間と成績の関係や、子どもにとっての身近な娯楽が学業成績にどう影響するのかについて、「やっぱり」と思われるかたが多いのではないかと思います。

※調査時期:2007年~2008年。対象:公立小学校の5年生。調査人数:2952名。

 まず、「家での勉強時間と学力」について見てみましょう。これはきわめて単純明快な相関関係が見出せます。すなわち、勉強時間が長い子どもほど学力が高いという結果が示されています。これは、算数か国語かに関わらず同じような傾向のようです(ただ、子どもの体力面のことを踏まえると、やたらと時間をかけるのも望ましくありません)。

 次に、テレビ視聴の時間と学力の関係はどうでしょう。こちらは勉強時間とは逆に、視聴時間が短いほど学力も高くなるという結果が見て取れます。

 テレビゲームはどうでしょう。こちらもテレビ視聴と同じで、ゲームに熱中する時間が短ければ短いほど学力は高くなるという結果が出ています。

 パソコンを使ったインターネット視聴はどうでしょう。こちらは、他の項目とは違う結果が示されています。ほとんど見ない、30分くらい、1時間くらいの子どもの学力差がほとんどありません。2時間くらい、3時間くらい見る子どもの場合、若干学力が下がっているものの、3時間以上見る子どもの学力はそんなに悪くありません。これはどう受け止めたらよいのでしょうか。

 おそらく、インターネットを学習に必要な情報入手のために活用している子どもも多分に含まれているからではないかと思われます。ただ、利用時間はあまり長くないほうが学力向上の観点からも望ましいということは言えそうです。

 中学受験のための学習に取り組んでいる子どもにとっても、テレビ視聴やゲームは楽しいものであり、勉強を疎かにする原因になりがちです。おたくでは、お子さんが勉強をする予定の時間になったのにテレビを見続ける、ゲームに興じているなどということはありませんか? 小学生の場合、自己制御の能力や、今やっていることがどういう結果を招くかについて見通す力がまだ十分に育っていないため、勉強の取り組みのブレーキになっているケースが少なくありません。

 そこで必要になってくるのは、親がどうこの問題に対処するかです。ただ注意したり叱ったりするだけでは効果がないのは、どなたもよくご存じであろうと思います。そこで、最後に「勉強すべきときに遊びに興じる子どもに対して、どのように関わったらよいか」を一緒に考えていただこうと思います。子どもの反発を招いたり、親子間の軋轢が生じたりすることなく、親の期待に沿った行動を引き出すよい方法はないものでしょうか。

 そこでご紹介したいのが、アサーションのスキルに基づくコミュニケーションの技法です。アサーションとは、自分と相手を共に尊重し、互いが傷つけあうことなくその場に応じた望ましいコミュニケーションをとるための技法です。アサーションをご理解いただくにあたり、まずはいくつかの代表的なコミュニケーションとりかたを見てみましょう(以下の著述は、ヘルスコミュニケーションの専門家である蝦名玲子氏の著作を参考にして書いたものです)。

① アグレッシブな表現(攻撃的な表現)

 自分中心の考えに基づき、相手の気持ちを考慮することなく一方的に自分の思いを伝える表現方法をいいます。「すぐテレビを消しなさい!」「いったいいつまでゲームにかじりついているの!」といった批判や攻撃によって、子どもの行動を変えようとする方法がこれにあたるでしょう。すでに経験済みでよくご存じの方も多いと思いますが、このやりかたでは子どもの反省を引き出せないばかりか、意固地にさせるだけのマイナス効果を生み出しかねません。

② ノンアサーティブな表現(相手に迎合する表現)

 自分の感情を抑え、相手に無理に合わせる表現方法です。「ふーん、今見ているテレビ番組が好きなんだね」「そのゲーム、楽しいんだろうね」といった親の対応がそれにあたるでしょう。こういう表現の背景には、「子どもと揉め事は起こしたくない」というネガティブな心理があります。その結果、子どもの我儘を助長し手に負えなくなっていくケースもあるでしょう。親のストレスも溜まってしまいます。

③ アサーティブな表現(自分も相手も尊重する表現)

 自分の気持ちを正直に相手に伝えつつも、相手への配慮もないがしろにしない表現方法です。「この番組を見たいんだね。でも、おかあさんは約束を守ってほしいな。録画すれば勉強が終わってからも見られるよね」「勉強の時間が来ているよ。うっかり忘れたのかな? ゲームは遊んで構わないときにやろうね」などがそれにあたるでしょう。子どもに自分の気持ちを伝えるものの、子どもも気持ちを害することがないため、スムーズに聞き入れられるでしょう。

 ①の表現方法では、「あなたは」「おまえは」といったように、相手が主語になることの多いのに対して、③の表現方法では「私は(おかあさんは)」と、自分を主語にして話すことが多いという違いがあります。前者は相手の言動を一方的に非難する言いかたであるのに対し、後者は自分の気持ちを相手に誠実に伝える言いかたです。ひところ、You(ユー)メッセージ、I(アイ)メッセージという言葉をよく耳にしましたが、同じ考えに基づくものでしょう。自分(親)としての気持ちを素直に伝えるとともに、相手(子ども)の気持ちも尊重した言いかたをすれば、お互いに感情を高ぶらせることなくコミュニケーションをとることができます。

 子どもは、いけないとわかっていることでも、そのときの気分に流されて行動してしがちです。まだ分別をわきまえるほどに成長していないので当然のことでしょう。それでいて、小学校の高学年になった子どもは、親から一方的に叱られると、悪いのは自分と理解していながらも叱ってくる親に反発するものです。今後は、③のようなアサーティブな表現を心がけてみてはいかがでしょうか。

 なかには、「そういう理屈はわかっている。できないから苦労するんだ」とおっしゃりたいかたもおありでしょう。しかしながら、さきほどの①や②のコミュニケーションのやりかたでは困った事態をちっとも改善できないのも事実です。③のようなやりかたを心がけ、たとえすぐにはうまくいかなかったとしても一貫して続けていくことが求められるのではないでしょうか。そういう親の姿勢が子どもの心に届かないはずがありません。徐々にお子さんの行動に変化をもたらすことでしょう。もしも、現在の状況に問題を感じている保護者がおられれば、上記の③の方法を是非お子さんとのコミュニケーションにおいて貫いていただきたいですね。

※GW期間には弊社の全部署がお休みをいただきます。本ブログは、5月13日以降に再会する予定です。ご了承ください。

 

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カテゴリー: アドバイス, 勉強について, 子育てについて, 家庭での教育

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