自律的な学びへ誘(いざな)う学習指導

2019 年 6 月 3 日

 今回は、先週お届けした話題の続きです。弊社の夏の講座からお子さんが中学受験対策の勉強を始めるご家庭にとって、「夏の講座以降、どういうステップを経て受験生活を軌道に乗せていくのか」ということは大きな関心事であり、そのことに期待と不安の入り混じった思いを抱いておられる保護者は少なくないのではないかと拝察します。

 前回は、外発的動機づけによって受験勉強を始めた(親や周囲の勧めで塾通いを始めた)子どもが、自らの知的欲求に基づいて学ぶ(内発的動機づけに基づいて学ぶ)ようになるまでのプロセスを簡単にご説明しました。これがうまくいけば、中学受験での合格はもとより、先々の更なる知的成長が見通せるようになるからです(受かることだけを目当てにした受験勉強には様々な弊害があります)。

 ただし、前回は基本的な流れと親の関わりを主にご説明しただけで、学習塾の指導に絡めての説明はしませんでした。今回は、家庭学習研究社がどのような学習指導によって子どもたちの自律的学習を支援するのかについてお伝えしようと思います。

 塾に通い始めた頃の子どものほとんどは、まだ中学受験がどういうものかを詳しくは知らず、受験のための勉強を子どもが受け入れたとしても、どんな内容の勉強をするのかについてまでは到底理解していません。また、そもそも勉強とはどのようなものか、どんな価値をもつものなのか、などについては考えたこともなく、親の勧めに応じてなんとなく興味をもって(あるいは友達に誘われたり、身内の影響で漠然と受験に興味をもったりして)塾に通い始めるのが普通でしょう。

 したがって、まだ勉強に向き合う姿勢もろくにできていない段階から、レベルの高い勉強をいきなり押しつけても、子どもはたちまち塾通いも受験勉強も嫌がるようになってしまいかねません。受験生らしい勉強ができるようになるまでには、かなりの時間が必要ですし、紆余曲折を経ながら少しずつ子どもの勉強は進歩していくものだとご理解いただくようお願いいたします。したがって弊社では、「無理のないステップを踏みながら徐々に受験生らしい勉強ができる状態へと導いていく」ということを学習指導の基本方針にしています。

 受験勉強にしっかりと取り組める子ども(内発的動機づけに基づいて自律的に学ぶ子ども)にしていくため、弊社は次のような点に重きを置いた学習指導を実践しています。

①学習を習慣づける
 
受験勉強をやりこなせるようになるには、一定水準の学習意欲が伴っていなければなりません。しかし、学習意欲は親や学習塾がいくら求めても簡単には高まりません。最も確実に子どもの学習意欲を高める方法として、大学の研究者は「学習の習慣づけ」を薦めておられます。一定のスパンで継続的に学んでいると、少しずつ勉強の面白さがわかってくるし、解けたときのうれしさを知ることになります。そうした体験が学習に向かう意欲を高めてくれるのです。

 弊社では、夏の講座の開講前に「学習計画表」を配布し、モデルプランを参考にしながら全員に講座期間中の家庭学習計画を作成していただきます。また、授業と家庭学習を反復させながら学力を高めていく弊社の学習システムは、子どもたちの望ましい学習習慣の形成を意図したものです。さらには、テキストも授業と家庭学習との組み合わせで単元の学習を完結させるよう編集されており、学習の習慣づけを定着させながら自学自習の姿勢を磨いていくことを意図しています。

②勉強のやりかた・進めかたを習得する
 
小学生の一人勉強が難しいのは、「どうやって勉強したらよいかわからない」からです。年齢的に無理もありません。いくら意欲があっても、勉強の取り組み方法を知らなければすぐに挫折してしまいます。計算や漢字など、ただ機械的に処理する勉強ならまだしも、自ら考えて解に漕ぎつけることを要求される課題を克服するには、よい取り組みかたを身につける必要があります。これが難しいのです。

 前述のように、弊社のテキストは授業と家庭学習を連動させながら学力が身につくよう編集されています。授業は、その回の単元の最も大切な内容の習得を意図していますが、もう一つ、「家庭でどのように勉強を進めて行けばよいか」を指導する場とも位置づけています。授業を通して、テキストの学習方法を体得させるとともに、ノートのまとめかたや家庭学習のやりかたなどを繰り返し教えていきます。つまり、授業は「基本を習得する場」であり、「学びかたを学ぶ場」なのです。

③勉強の面白さを体感し、積極的な学習姿勢を育む
 子どもは正直です。つまらない授業を我慢して聞いてはくれません。また、子どもの好奇心や「知りたい」という欲求を満足させてくれない授業では、そもそも内発的動機づけに基づく学習を実現させることなど不可能です。さりとて、「子どもを退屈させないで指導しよう」と、演習を繰り返す方法では子どもの学びの主体性が育たず、自律的学習姿勢がいつまでも育ちません。

 そこで求められるのは、原理原則を理解するプロセスが退屈な時間にならないような授業の実践です。それには、しっかりとした授業設計、子どもの興味を惹く上手な導入、子どもの思考を促す問いかけ、みんなで一緒に考えながら妥当な結論へと近づいていく場面の演出など、子どもに楽しさや充実感を与えられるような授業にするための様々な工夫が求められます。弊社では、こうした考えに基づき、どの校舎のどの教室においても、子どもたちの学びが能動的に発展していくことを念頭に置いた授業を実践しています。

④学習成果を客観的に知る
 
子どもたちの勉強を活性化するための学習塾の方策の一つに、「具体的な指針や励みを提供する」ということがあります。そこで弊社では、一定のスパンで定期的にテストを実施しています。このテストは、「単元の学習事項がどれぐらい身についているかを検証する」といった意味合いに留まらず、「受験という共通の目標をもった大勢の仲間と実力を競い合うのだ!」と、より積極的な気持ちに基づいて子どもたちに参加していただくことを期待して実施するものです。

 無論、テストでのデータはよいに越したことはありませんが、毎回の結果をみて自らの取り組みを振り返り、勉強の在りかたを改善していくことがより重要なことです。以前より進歩している自分を実感できれば、それが自信や励みになり、明日からの勉強をより意欲的で前向きなものにしてくれるでしょう。このテストデータが精緻なものであるかどうかが学習塾にとって大変重要なことですが、設問ごとの正答率や得点分布を示すヒストグラムなどは、広島の中学を受験する児童の集団である弊社だからこそ参考にしていただける資料であろうと自負しています。
 

 どなたもご存知のように、勉強はレベルが上がれば上がるほど辛く厳しい要素が増していくものです。まして受験勉強ですから、楽しいばかりの勉強なんてありえません。しかしながら、初めから「受験は大変なもの」という認識に立って子どもを追い込むような指導をすると、子どもは勉強から得られる手応えや、ものを知るということの醍醐味を味わうチャンスを逸してしまいます。それでは受験までの長い道のりを乗り越えることはできませんし、勉強に対する負の観念が染みついてしまいかねません。

 弊社では、勉強のもつよさに触れる体験を子どもたちに提供しながら、その醍醐味を味わうことを志向する姿勢を少しずつ引き出してまいります。決して楽ではない勉強を、「楽しい!」と言ってがんばるようになるには、そうしたプロセスがどうしても必要です。そうやって築きあげた自律的学びの姿勢は、子どもたちの受験での成功だけに留まらず、先々まで続く学びの人生の歩みを実り多いものにしてくれるでしょう。知的なものを求めてやまない人間にわが子を育てませんか? 今なら十分に間に合います。

 同じことの繰り返しになりますが、小学生時代の勉強の如何によって、人間個々の学びに向き合う姿勢は全く違ったものになります。できるなら、学ぶこと自体に価値を感じる人間に育てたいものですね。以上のような弊社の考えに賛同してくださる方々には、ぜひ夏休みの講座からお子さんを預からせていただきたく思います。弊社の夏休みの講座は、小学1年生から6年生までを対象としています。ご請求(本部事務局または各校舎)いただいたご家庭には、案内や申込書類一式を折り返しお送りいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

 なお、次回は低学年部門の指導趣旨と夏休みの講座についてご説明するつもりです。また、6月14日(金)には低学年部門の「説明会」を実施予定ですが、この催しについてもご案内しようと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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カテゴリー: 勉強について, 勉強の仕方, 家庭での教育

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