2019 年 7 月 8 日 のアーカイブ

勉強の得意不得意と自尊心の関係

2019 年 7 月 8 日 月曜日

 前々回、前回と、成績不振に陥っているお子さんの状況改善案として、音読の励行による読みの態勢の再構築をご提案しました。

 文字とは、そもそもコミュニケーションのために考案され、共通のルールで体系づけられた記号です。文字を介して伝えられる情報はそれこそ無限にあり、人生経験の浅い子どもがそれを使いこなせるようになるには、相応のステップが必要です。特に、文字を識別し、発音と照合するプロセスは長い時間と習練を必要としますが、そこでの学習で不可欠なのが音読です。もしも「わが子の読みの態勢づくりが不十分だった」と感じる保護者がおありでしたら、音読の励行から巻き返していただきたいと存じます。

 さて、今回は子どもの自尊心の状態と勉強の得意不得意との関係を話題に取り上げてみました。つまり、自分を好きであるという気持ちと、勉強を得意に思う気持ちとには何らかの関連性があるかどうかということです。その調査結果をご紹介し、子どもの健全な成長を促すために大人(親)が留意すべきことは何かを一緒に考えてみようと思います。

 以下は、上記テーマに基づく公的調査の結果を表にしたものです。なお、この資料は教育社会学者の舞田敏彦氏の著書から引用したものです。

※国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する実態調査」(2014年度)より。

 上記資料をまとめられた舞田氏の著書によると、「自分がとても好き」と回答した子どもの割合は、小4で28.9%、小5で24.4%、小6で22.4%、中2で9.3%だったそうです。あきらかに、年齢が上がるにつれて「自分をとても好きである」と思う子どもの比率が下がっています。その理由ですが、氏は次のように述べておられます。

 小学校と中学校の落差が大きいようですが、高校受験を見据えたテストの連続で、周囲と比した自分の相対的位置を思い知らされることが多くなるためでしょう。よって自尊心の程度が、勉強のでき具合に規定される度合いが高まってくるとみられます。

 上表は、「勉強の得意度×自尊心の程度」を示すクロス表です。網掛けしている数字はA~Dの各項目の最頻値を表します。その分布をみると、勉強の得意度が高いほど自分を好きであると受け止める子どもの比率が高くなり、勉強の得意度が低いほど自分を好きでないという子どもの比率が高くなっていることがわかります。この傾向は、小学4年生でも、高校2年生でも基本的に変わりません。

 上記引用文にある「自尊心の度合いが、勉強のでき具合によって規定される度合いが高まってくる」という状況が、より視覚的にとらえられる資料を舞田氏が作成されていますので、ちょっと見てみましょう。

 この資料を見ると、小4では「自分がとても好き」「自分が少し好き」という自己肯定感の強い子どもの割合がかなり高かったのに、高2になると数的割合が随分減少していることがよくわかります。自分を肯定的にとらえる気持ちが、様々なテストなどでの順位付けの経験によって低下していくのでしょう。申し上げるまでもなく、この傾向が強まるのは決して望ましいことではありません。

 弊社のような進学塾においては、学力の相対的な位置づけを知るためのテスト制度が欠かせません(順位を始め、学力の指標となるデータを出します)。うまく生かせば、自分の勉強の成果や欠点がわかる有効なデータとなりますが、成績が伴わないことが続くと、「これは能力を示すのではなく、現在の勉強の結果が数字に表れたものですよ」とお伝えしても、親も子どもも能力判定のように受け止めてしまい、「力が足りない」と思い込んでしまいがちです。しかしながら、実際には勉強の方法に問題があったり、努力の向けかたがアンバランスだったりしたことが成績低迷の原因であることも少なからずあります。つまり、勉強の改善で対処できるのです。

 親が成績を見て子どもの自己肯定感を低下させるような言動をとると、それが覿面にお子さんに影響します。成績が思わしくなかったときには、どうしてそうなったのかを子どもに振り返らせたり、一緒に原因を話し合ったりし、「成績は、自分の勉強の状態が反映したものだ」と受け止めるよう導いていただきたいと存じます。無論、得意不得意もあるでしょう。お子さんが「今回は苦手なところが出た」と言ったなら、「じゃ、そこは少しずつ対策を考えて実行しよう」など、前向きな対応をお願いいたします。

 言うまでもありませんが、「自分は頭のよくない人間だ」「自分という人間が好きでない」と思うことが、人生でプラスに作用することなどほとんどありません。保護者におかれては、テストデータは能力判定をするものではなく、「学習成果のチェック」のためにあるのだということを肝に銘じ、「どれだけ努力したか」を軸にお子さんの勉強を見守りサポートしていただくようお願いするしだいです。成績を能力の問題と一元的にとらえると、成績がよくてもよくなくてもお子さんによい影響はもたらされません。

 また、得意な教科が一つでもあれば、それはお子さんのもっている可能性がいかに大きいかの証しです。保護者におかれてはそれを大いに評価し、励みにするようお子さんに声かけをしてあげていただきたいと存じます。実際、1教科でもよい成績をとれる力のあるお子さんは、取り組み次第で他の教科の成績も上がる可能性が高いのです。また、一つの教科に秀でたお子さんは、中学・高校への進学後もがんばり続ければ、その教科に関連する進路を選択することで高いレベルの大学への進学も可能です。

 お子さんには、自分のもっている可能性に挑戦するつもりで中学受験に備えた学習生活を送っていただきたいですね。勉強は、「やっただけのことがある」と、教えてくれるものです。前よりも、一歩ずつ進歩することを親は望んでいるのだということを絶えずお子さんに伝え、前向きに努力する姿勢を植えつけてあげてください。そうすれば、きっとお子さんは自分を肯定的にとらえ、何事もあきらめることなくがんばれる人間に成長されると思います。

 中学入試は、完成された人間のためのものではありません。完成度の違いで如何様にも結果が変わる、成長途上の子どもが受ける試験です。その試験の途中で能力を見限るようなことがあっては元も子もありません。保護者におかれては、将来的なわが子の成長の姿を見通しながら、今存在する課題や努力目標を少しずつクリアしていく姿勢を大切にしてください。お子さんの内面の健全性や成長にも決して目を離さないようお願い申し上げます。

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カテゴリー: アドバイス, 勉強について, 子どもの発達, 子育てについて