夏の家庭勉強は、集中してテンポよく!

2019 年 7 月 22 日

 夏休みが訪れ、7月23日の6年部「中学受験夏期講習」を皮切りに、弊社の各校舎で夏の講座が始まります。「夏休みを制する者が受験を制する」とは、昔からよく言われることですが、学校への通学がない時期だけに、休暇期間を上手に活かした勉強をすれば状況を一気に好転させることも可能です。

 近年、全国的に学校の夏休み期間が少しずつ短縮されていますが、それでも1か月あまりある休暇は受験生にとって貴重です。学校がある期間は塾とのダブルスクールになりますから、小学生にとって肉体的な負担があります。ですから、これまで気になる問題点があったとしても、なかなか解消しきれなかったお子さんも少なくないことでしょう。夏休みは、その意味において状況を変える絶好のチャンスなんですね。

 同じテキストの同じページに取り組んでも、一人ひとりの学びの内実はみな違い、当然ながら成果も異なります。予定していた勉強が、計画通りにはかどらないタイプのお子さん、いつも時間が足りなくなるお子さんはいませんか? その結果、時間を延長してやることが当たり前になっていませんか? しかしながら、そういう勉強で成果のあがるお子さんはまずいません。なぜなら、やたら時間をかける勉強は頭を疲労させるし、知識を無理に詰め込もうとすることで頭が混乱を来したりして、却って成績不振に陥るなどの悪循環を招くからです。そんなお子さんは、どうしたら状況を改善できるでしょうか。

 そのためにまず保護者にご理解いただきたいのは、成果のあがる勉強をしている子どもの情報処理の特徴がどういうものかということです。この点について、東京大学の石浦章一先生は、著書の「『頭のよさ』は遺伝子で決まる?」において次のように述べておられます。

 頭の処理スピードが速いというと、脳のシナプスのつながりが速いのではないかと思われるかもしれません。しかし、少なくとも脳の電気が伝わる速さは、頭がいい人も悪い人も、ほとんど同じです。
 おもしろいことに、頭を要領よく使っている頭のよい人の脳は、じつはあまり動いていないのです。逆に頭の悪い人が何か作業をしていると、いろいろな部位が動いています。IQの高い人と低い人にいろいろな作業をさせて調べたところ、IQの高い人のほうが一般に血液量が少ないことがわかったのです。これは神経回路が速く回っているのではなく、神経回路のつながりに無駄がなく、記憶の形式や引き出しが効率よく行われているということです。(中略)
 つまり頭がいい人、要領がいい人は、脳内の回路を省力化して最短距離で使っているといえます。

 石浦先生によると、同じ作業をしても頭のいい人のほうが脳を使っていないから頭が疲れないのだそうです。うらやましい話です。逆に頭の悪い人の作業は時間や労力を使うわりにはかどらず、疲労もたまりがちです。脳を無駄に使っているのですね。できるものなら、頭のいい人の脳の使いかたをマスターしたいものですね。

 では、頭のいい人の勉強ができるようになるにはどうしたらよいでしょうか。そのためにまず心がけていただきたいのは、勉強するときの条件をなるべくシンプルに固定し、決めた時間枠のなかで集中してやり切るような勉強を心がけることから始めたらよいと思います。そもそも弊社の家庭勉強のシステムも、そういった取り組みで成果をあげることをめざしています。

 子どもの勉強の様子を見ると、集中して取り組んでいる時間が短いものです。すぐに気を逸らしたり、ボンヤリしたり、他のものを手に取ってみたり…。しかし、これは勉強の取り組みかたの習慣を改善すれば変わります。また、親が横にいていろいろ指示を出したり、ヒントを言ったり、教えたりしながらの勉強をしていると、受け身の姿勢が集中力をスポイルし、よけいに勉強の効率を悪化させてしまいます。まずはお子さんに予定の時間枠に自分でやり切るよう促し、あとで必要に応じてアドバイスしたほうがよいでしょう。「勉強は決めた時間に集中してやり切るもの」という認識を親子で共有しましょう。前出の石浦先生は、次のようなことも述べておられます。

 何事も初体験ではうまくいきませんから、いろいろ試行錯誤するため脳の負担が大きいのです。それが経験を重ねて「こうすればうまくいく」とわかると、その後は同じ道筋をたどれば脳が効率よくはたらくようになるのです。
 くりかえしますが、ものごとを脳レベルで考えると、脳が回路の最短距離を覚えて省力化するようになることを指します。ですから練習すればするほど、脳は効率よくはたらくようになり、疲れなくなり、思考スピードが速くなって処理速度が上がることになります。
 そう考えれば、計算だって練習すればするほど速くなります。そして創造性を発揮するためには、基礎的な知識を身につけ、いろいろな工夫をする体験を積み重ねることが、最終的には大切なのですね。

 これによると、効率的な勉強ができるようになるまではある程度苦労が伴うものの、自分に合ったよい取り組みの方法にたどり着くと、そこから省力化した能率のよい勉強ができるようになっていくのですね。そこまでのプロセスであきらめたり、おかしな取り組みを染みつかせたりすることなく、努力を継続できるかどうかで個々の勉強成果に差が生まれるのでしょう。

 まずは、夏の講座で毎日すべき勉強に、「テンポよく集中して取り組む」ようお子さんを促してあげてください。夏の講座の期間、一定のリズムでしっかりと取り組む努力を継続する。そうすれば、徐々に脳がその方法に順応し、効率のよい勉強を実現してくれるようになるでしょう。頭のよさは生まれつきなのではなく、努力でつくっていくものなのだということを、ぜひお子さんに伝え励ましてあげてください。

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カテゴリー: アドバイス, 勉強について, 勉強の仕方, 家庭での教育

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