2019 年 9 月 9 日 のアーカイブ

失敗は学びのチャンス。失敗を糧にできる子どもに。

2019 年 9 月 9 日 月曜日

 あるとき図書館で教育関連の書物を手にし、読むべき本かどうかを検討するために章ごとのタイトルを何とはなしに眺めていたら、次のような著述が目に留まりました(筆者はそうやって、ときどきブログのネタを探します)。

 「失敗とは転ぶことではなく、そのまま起き上がらないことです」

 ほかにも目を引く言葉がいろいろあったのに、なぜこの言葉に注目したのかというと、これこそ小学生の受験勉強のありかたを語る貴重な示唆に他ならないと思ったからです(ただし、本文の内容は筆者の予想とは少し違ったものでしたので、ここでは割愛します)。

 人間のやることに失敗はつきものです。失敗の繰り返しが人間を育てます。あらゆるジャンルにおいて、「成功者に、失敗経験のない人間など一人もいない」と言っても過言ではないでしょう。よくスポーツの世界で大成した人の言葉や経歴を紹介した記事が、ウェブ画面や雑誌誌面に掲載されていますが、そのほとんどにおいて失敗の繰り返しを糧に研究を重ね、より高いレベルへと到達するための方法を編み出し、たゆまぬ努力で自らを高みへと導いていったエピソードが語られています。また、優れた科学研究の業績を残した人について語られた本を読むと、おびただしいほどの失敗のプロセスがあったことが紹介されています。「失敗は成功の母」という諺(ことわざ)がありますが、まさに人間が何らかの分野で成功するうえでの核心を突いた言葉だと思います。

 ところで、本ブログをお読みくださっている保護者の方々にとって、現在の最大の関心事は「わが子の中学受験」であろうと思います。みなさんのお子さんの受験勉強の様子はどんな具合でしょうか。小学生の子どもはものの考えかたが楽観的で、今の勉強で十分かどうかの判断も甘いものです。弊社が1週おきに実施しているマナビーテストへの備えにしても、「何をどれだけやっておけば、テストで好成績を得られるか」を見通すこともせず、漫然とした取り組みのままテストに臨み、その度に残念な結果に至っているお子さんもおられるのではないかと思います。これは、先ほどご紹介した言葉に照らすと、「転んだのに、そのまま起き上がろうとしない」のと同じで、単なる失敗を繰り返しているに過ぎません。失敗と向き合い、何をどう変えればうまくいくかを考えることこそ、成功への転換を図るための第一歩になるのではないでしょうか。

 おたくではどうでしょう。テストで失敗したということは、点を失った箇所が多数あるということです。その点を失った箇所を一つひとつチェックすれば、その原因・理由が当然見えてくるはずです。

 上図のように、テストで50点だった場合を考えてみましょう。ものは考えようで、半分はちゃんととれていたということに他なりません。どうしてその50点がとれたのかを点検することも意味があります。それが、できなかったところをできるようになるために生かせるからです。そして、失った50点の検証です。上図以外にも、点を取れなかった理由はいろいろあるでしょう。それらをつまびらかにし、必要な対策を講じれば必ず失点はかなり減ることでしょう。

 前回、卒業生のコメントをご紹介しましたが、それらの言葉のなかにも失点を減らしたり、実力を養ったりするうえで有効なものが多数あるように思います。たとえば、「覚えたいことを紙に書き、ドアや壁に貼って眺める」「うっかりミスをなくすため、ゆっくり書く、見直す、を実行する」「夜やったことを、翌朝チェックする」――これらは、忘却対策やうっかりミス対策に有効ですね。「復習しやすいようノートを工夫する」「教科ごとの勉強法を箇条書きにする」「苦手教科こそ、伸びる余地が多いと考えて取り組む」「こつこつ投げ出さずに続ける」――これらは、地道に学力を伸ばすうえで随分効力を発揮する勉強法です。

 保護者におかれては、ただ「こうしなさい」と指示や命令をするのではなく、お子さんと現状を一緒に振り返り、いかにしたら問題点を改善できるかについて子どもに考えさせ、そのうえで必要なアドバイスをしていただければ幸いです。

 無論、お子さんなりに努力し取り組んでも歯が立たない問題があるものです。それについては、現段階では無理に克服しようと時間や労力を投じる必要はありません。重要なのは、今努力すれば改善できることをしたり、ミスなどの不用意な失点を減らしたりすることです。それが成績を安定させることにつながり、それによって自信や意欲を取り戻すことが先決です。この流れができれば、少々難しいことに対してもチャレンジし食い下がっていく意欲や能動性も生まれてくるでしょう。

 あるとき、男子の地元私立最難関校の先生が保護者や子どもたちにこんなことを語っておられました。

 勉強は楽ではありません。大変なものです。そのことについてうちの生徒がこんなことを言っていました。「大変という字は“大きく変わる”って書きますよね。つまり、大変なときというのは、自分が“大きく変われるチャンス”ってことじゃないですか」――勉強は大変かもしれませんが、ポジティブに考えて取り組めば、大変=辛いには必ずしもならないものです。

 テストで失敗をし、残念な点を取るのは誰しも辛いものです。しかし、その残念な点を取る経験こそが、自分を成長させるために欠かせないものなのです。そこから今ある問題点を見出し、同じ失敗をしないよう努力すれば、間違いなく一歩前進することができるでしょう。失敗しても失敗しても不屈の精神で立ちあがる。その姿勢が人間を変えるんですね。大切なのは受験生活を通してわが子が成長すること。保護者の方々におかれては、わが子が失敗を恐れず、失敗に学ぶ姿勢をもった人間になるよう導いてあげてください。

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カテゴリー: アドバイス, 勉強について, 子育てについて