何事も“親しだい”なのは児童期まで

2019 年 12 月 27 日

 今回の記事は、2019年の最終回です。このブログは2009年の秋ごろ始めましたので、およそ12年継続してきたことになりますが、累計のビュー数は190万件を超えました。

 ブログを始めた当初は、10年以上も続けるとは思ってもいませんでした。続けられたのは、多くのかたがお読みくださり、それを励みにできたからに他なりません(ビュー数にこだわらないようにしましたが、気にはなりますね)。ほんとうにありがとうございました。

 振り返ってみると、広報担当者として昭和の時代に入社して以来、長く鉛筆で原稿を書く仕事環境が続いた後、パソコンの進化や普及が急速に進み、いつの間にかデジタル原稿が当たり前のようになっていきました。アナログ人間の筆者もやむなくパソコン操作を覚え、フロッピーで原稿を出稿する段階を経て、インターネットを介した出稿や連絡、情報のやりとりへと変わっていきました。20~30年前には想像もしていなかった大きな変化でした。その間、様々な業種の企業がHPをもつようになり、情報発信の場として活用する時代がやってきました。

 そんななか、10数年前ごろからでしょうか。ブログが情報発信ツールとして注目を集めるようになり、「対面式の催しでは保護者との接点が限られる。また、冊子も読んでくださるかたの数はそう多くない。じゃ、今はやりのブログとやらを始めてみようか」と思い立って気楽に始めたのが本ブログです(ブログというより、コラムのような性格を強く帯びていますが)。まさかこんなに長く続き、7百数十編に及ぶ記事を書く(そのうち、20~30編は若手社員に勉強を兼ねて寄稿してもらいましたが…)なんて、そして何よりもこのように多くの方々にお読みいただくとは夢にも思いませんでした。

 令和元年が間もなく終わろうとしていますが、来年もより多くの保護者のみなさまに参考にしていただける記事を書くようがんばる所存ですので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

 先日、現中1生の生徒さんの保護者(おかあさん)とお話しする機会がありました。「入試直前の正月には、近所に住んでいる家庭学の友達と一緒に『正月特訓をするんだ』と言って、一生懸命勉強したんですよ。あのときは親も必死で応援しました。月日が経つのはほんとうに早いですね」と、入試直前の様子を感慨深そうに語ってくださいました。

 お子さんは二人とも見事第一志望校に合格されたそうですが、今受験を目の前にしておられるご家庭においても、同じようにお子さんは希望と不安とがないまぜになった状態で勉強に精を出しておられることでしょう。保護者におかれてはわが子の努力が実ることを信じ、最後までしっかりとサポートをしてあげてください。特に今からは、勉強面では「何を最優先するか」を絞り込み、勉強が空回りしないようにすることが大切です。また、それ以上に大切なのは、メンタル面のサポートや体調の維持管理です。中学受験においては、こうした親のバックアップが欠かせません。何しろ受験生はまだ小学生の子どもなのですから。もうしばらくは気の抜けない日々か続きますが、お子さんの、そしてご家庭の願いが叶うよう、悔いの残らぬ応援をよろしくお願い申し上げます。

 毎年入試シーズンを迎え、受験生家庭の悲喜こもごもの入試結果を目の当たりにするにつけ、筆者が思いを致すのは「親というもののありがたさ」です。どんなときにも無条件に愛情を注いでくれ、うまくやれたときもやれなかったときもすべてを受け入れてくれる存在。それは親以外にありません。受験生活には紆余曲折がつきものですが、見守り応援する親の厳しい言葉も優しい言葉も、すべてわが子を思うが故のこと。子どもたちが困難に負けず受験生活を乗り切れるのは、おとうさんおかあさんの無償の愛に基づく見守りと応援あればこそなんですね。

 中学入試を終えると、間もなく子どもたちは思春期を迎えます。この成長の大きな節目は親子関係に劇的な変化をもたらします。そう、親の言うことをことごとく否定するかのような態度を取り始めるのです(ご存知のように、このことは子どもの自立にとって欠かせないもので、親離れは正常な成長の証しでもあります。もちろん、親にとっては子離れのタイミングです)。これから受験生活を始めるご家庭、再来年以降に受験を控えておられるご家庭におかれては、「中学受験は、そうしたわが子の大きな変化の直前にあるものなのだ」ということを念頭に置き、親として何をしてやるべきかを間違えないようサポートしてあげていただきたいですね。

 どういうことかというと、思春期が訪れると親の影響力は一気に後退してしまいます。ですから、中学受験の助走期は親がわが子に絶大な影響力を発揮できる最後のチャンスなのだといっても過言ではありません。受験生活を乗り切るプロセスで、親は何を期待し、どうフォローするか。このことは子どもの人間形成に多大な影響をもたらします。

 そこで筆者から保護者の方々にご提案したいのは、「受験までのプロセスで、わが子のどんな成長を引き出すか」という視点から、親としての見守りや応援のスタンスを定め直してみるということです。親が一定の方針の下でわが子の見守りや応援をし、常に揺るがぬ態度で接すれば、それは間違いなくお子さんに一定の価値観を授けることになるでしょう。勉強や生活において、わが子にどんな成長を望みますか? そのことに基づいて、ご家庭ごとに親の方針を絞り込んでみてはいかがでしょうか。

 ある年、こんなおとうさんがおられました。第一志望校の入試での付き添いを終えたその足で、筆者を訪ねて来られました。そして、こんなことをおっしゃいました。「先生にいろいろアドバイスをいただき、親として考えたことを息子に伝え励ましてきましたが、もう今の時点で十分満足のいく成長をしてくれたと思います。だから、入試の結果を見るまでもなく、受験をさせたことの成果は得ています。それで、受験を終えた今日のうちに一言お礼を申し上げようと思いまして」――このおとうさんの立派な挨拶に、筆者はただただ恐縮したことを思い出します。

 ちなみに、息子さんは第一志望校に合格されました。この第一志望校よりも難関の中学校に受かっておられましたが、意思は変わらず第一志望だった私学に入学されました。なんでも、その私学だからこそ経験できることがあるからだそうです。おとうさんも凄いけれども、息子さんのしっかりした考えにも感心しました。「こういうお子さんなら、おとうさんおかあさんの期待する(いや、期待以上の?)立派な人生を歩めることだろう」と、つくづく思ったしだいです。

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カテゴリー: ごあいさつ, アドバイス, 中学受験

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