中学受験のプロセスを知的冒険の旅に

2020 年 4 月 20 日

 新型コロナウィルスの感染問題が深刻化していますが、広島県内でもクラスターが複数発生し、感染の拡大がますます進みつつあります。

 このような事態に鑑み、弊社においても今日(4月20日)から二度目の休講措置を取ることにいたしました。とりあえず5月第2週から授業を再開する予定ですが、状況に合わせて対応すべき問題ですので、しばらくは感染の拡大が沈静化することを祈りつつ状況を見守ってまいります。

 学校も塾もしばらく休みとなり、外出も控えなくてはならないとなると、お子さんは四六時中家のなかで過ごすことを余儀なくされることになります。親自身も不自由な生活を強いられているうえに、休校中の子どもへのサポートも必要となり、すでにストレスを感じておられるかたもおありかもしれませんね。しかしながら今は日本中が非常事態にあります。感染回避に向けた対策が欠かせないのはもちろんのこと、長期にわたる学校休みで生活習慣の乱れが生じないようケアすることも求められます。

 お子さんが何をするでもなくダラダラと時間を浪費したり、ゲームやテレビ三昧の状態に陥ったりすると後が大変です。というのも、生活習慣や学習姿勢は築くまでには長い期間を要しますが、失うのはいとも簡単なことだからです。ひとたび崩れると、もとの状態に戻すには大変な苦労が伴います。受験勉強は楽なものではないだけに、気持ちや取り組みが乱れると立て直すのに何倍もの時間と努力が必要となります。支える保護者にも大きな負担がかかります。

 これからしばらくの間は、学校や塾、習い事などのない生活が続きます。そこで保護者にお願いしたいのは、通常の生活が始まるまでの期間の過ごしかたについてお子さんとよく話し合い、今の非常事態を無事に乗り越えるための計画を練りあげることです。朝の起床時間、夜の就寝時間は必ず一定に保ちましょう。頭のスッキリとした午前中は勉強もはかどりますから、じょうずに学校や塾の勉強の割り振りをし、リズムよく勉強をやりこなしていくよう助言し励ましてやりましょう。

 日頃、じっくりと読書に勤しむ時間がとれなかったお子さんには、ぜひこの機会に読書の楽しみにふれる経験もしていただきたいですね。読書は心豊かな人生を送るうえで欠かせないものですが、中学生になってからではなかなか根づきません。読書をしない生徒は「読む暇がない」と言いますが、読書は「寸暇を惜しんでするもの」です。そういう人間になるには、児童期までに読書の楽しみを知ることが求められます。また、児童期の読書は新規の語彙獲得にもつながります。中学受験突破という側面においても少なからず貢献してくれるでしょう。

 無論、体を動かすことも成長途上の子どもにとって欠かせません。家の周辺の環境を踏まえ、適度な運動を日課に組み入れることも必要でしょう。これらのことを勘案し、毎日のスケジュールをバランスのとれたものになるよう工夫してみてはいかがでしょうか。「今の局面をチャンスにして、自己管理の下で勉強できる人間に成長してほしい」という親の期待を、お子さんにはっきりと伝えてあげてください。お子さんが、自分の行動を意識してコントロールすることを学ばれたなら、そのこと自体も大きな進歩と言えるのではないでしょうか。

 さて、ここで話題が変わります。弊社の「総合案内書」をご覧になったことがおありでしょうか。研太君一家のイラストが随所に描かれていますね。よく見ていただくと、ページをめくるたびに宝物を探し求める旅の物語が展開していきます。そして、やがて宝物を探り当てます。そう、この物語は宝を発見するための冒険という構図になっているのです。

 この案内書は制作会社とのコラボで生まれたものでした。特に明確なプランがないまま、依頼した会社の担当者に「中学受験を知的冒険の旅に見立て、学んで新たな知識を得ることのワクワク感を表現したい」ともちかけたのが始まりでした。しかし、それだけでは漠とした話に留まってしまいます。そこで「とりあえずキャラクターを」と、社名のなかにある「研」の字を借りて主人公の研太君を考案しました。中学受験には親が重要な役割を果たします。そこで、つぎにおとうさんとおかあさんを登場させることにしました。

 ここまでは簡単でした。しかし、それだけでは絵柄も平凡なものになりがちで、何の訴求性も感じられなくなってしまいます。あれこれ考えているうちに、「冒険の旅」という言葉からふと頭に浮かんだのが、かつて何度も映画で見たインディージョーンズのシリーズでした。「そうだ、少年版のインディージョーンズで行こう!」――これで問題解決です。こうして、見知らぬ地に宝物を探して旅を出かけることと、新たな知識や考えを獲得するために日々勉強に打ち込むことが結びつき、とうとう案内書の構想が具体化したのでした。まあ、今となっては大した思いつきではありませんが、「少年版インディージョーンズで!」という着想が浮かんだときの軽い興奮だけは今も記憶に残っています。

 子どもにとって見知らぬ世界はあこがれであり、そこに足を踏み入れることで様々な発見をするのはたまらなくうれしいものです。中学受験準備のための学習というと、「辛く厳しいもの」という先入観をもつ人もいますが、実際は全く違います。実は、子どもたちを感動させるような知的発見がたっぷりと用意されているのです。それは当然のことと言えるでしょう。中学受験で出題される問題は、長い人生を生きていくうえで土台となる大切な知識をベースにしたものなのですから。

 ただし、中学受験の勉強を通じて新たな知識を得る喜びを感じられるようになるには、学習を継続的に行い、基礎を固めていく必要があります。それが一定レベルに達すると、「もっと詳しく知りたい」「自分で解決したい」という欲求に基づく学習が軌道に乗っていきます。こういう流れができるかどうかで、同じお子さんが全く違った学力の持ち主になるのです。才能さえあれば高い学力の持ち主になれるのではありません。学習を自分のものにし、なくてはならないものにまでもって行けるかどうかが重要なんですね。

 今からしばらくは学校も塾も休みの状態が続きます。しかし、ここで緩んでしまうのではなく、テキストの家庭学習を計画的に行う習慣を築くよいチャンスにしていただきたいものです。おとうさんおかあさんには、そのための助言やサポートをお願いしたいと存じます。自発性に基づく勉強は発見の喜びを味わわせてくれます。飽くことのない学びの旅へと誘(いざな)ってくれます。いっぽう、やらされ勉強はテスト対応力を与えてくれるものの、知識を得ることの喜びを与えてはくれません。

 この差が大きいのです。この差が、将来の歩みを変えるのです。お子さんがたには、コロナ感染問題に起因する休み期間を不幸中の幸いとし、受験勉強を知的冒険の旅にしていくための転機にしていただきたいと存じます。おとうさんおかあさんにおかれては、お忙しいとは思いますが、今回お伝えしたことを踏まえ、親としての期待や考えをお子さんに伝えてあげてください。よろしくお願いいたします。

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