ほめ上手の親になりませんか? その1

2020 年 10 月 8 日

 弊社会員家庭の保護者にとって、切実な願いの一つが「わが子がもっとやる気を出してくれたら」ということだろうと思います。これは願いというよりも悩みといったほうが適切かもしれませんね。

 というのも、大学受験や高校受験をめざす生徒は年齢的にも大人に近く、目的意識をもった勉強ができますが、小学生の場合はそうはいきません。「いったいこの子はいつになったらやる気になってくれるのかしら」…このようなもどかしい思いをしておられるおかあさんは少なくないことでしょう。受験は将来の進路にも影響を及ぼしますから、期待通りにがんばってくれないわが子を見るとイライラしたり、心配を募らせたりして放っておけなくなるものです。みなさんのご家庭ではどうでしょうか。

 わが子のモチベーションを高め、熱心に学ぶ姿勢を引き出す。そのために親ができることとして真っ先に思い浮かべることの一つが、「ほめる」ということではないでしょうか。しかしながら、小学校の中学年以上になると、見え透いたほめかたや思いつきのほめ言葉ではやる気を後押しするほどの効果は得られません。ほめるには相応の根拠が必要です。それを見つけるには、常日頃子どもを注意深く見守ることが必要です。。それは忙しく働く親にとっては難しいことです。ともあれ、実際のところ弊社会員家庭のおかあさんがたはわが子をどのぐらいほめておられるでしょうか。まずはほめる頻度から確かめてみましょう。以下は、何年か前、弊社の4・5年部会員児童の一部を対象に実施したアンケートの結果です(以前、同じ資料をご紹介したかもしれません。あしからずご了承ください)。

 これを見ると、「ときどきほめてくれる」という回答がいちばん多いことがわかります。また、「あまりほめてくれない」という回答もそこそこあります。筆者にすれば、「かなりほめてくれる」という回答も相当数あり、「おかあさんがたはがんばっておられるな」というのが正直な感想です。ただしそのいっぽう、心理学の本に書いてあった事柄を思い出します。それは、「子どもというものは、いくらほめられても『もっともっとほめてよ!』という強い願望を抱くものであり、ほめてほめ過ぎるなどということはない」ということです。「毎日のようにほめてくれる」というおかあさんが一定数おられますが、すばらしいおかあさんがたですね。こんなおかあさんの元で暮らすお子さんは幸せですね。前述のように、おかあさんにいつもほめられるほど子どもにとってうれしいことはないからです。

 ともあれ、まだまだほめるための努力の必要なおかあさんもかなりおられます。いったいに、日本人はほめるのが下手だと言われます。特に身内をほめることを恥ずかしがったり無用なことだと思ったりする人もおられます。今回の記事をきっかけに、「ほめてわが子を伸ばす」ことに熱心なおかあさんになっていただきたいですね。どうぞよろしくお願いいたします。

 そこでまずみなさんにお考えいただきたいことは、「わが子をほめることがなぜ大切なのか」「わが子をほめることが、どのような効果をもたらすか」ということです。実は、わが子をほめることは、単にやる気を引き出すだけでなく、子どもの成長にとって欠かせない重要な意味をもつのです。それがわかれば、心からほめようという気持ちになれますし、たとえ少々疲れていたとしても、家庭にいるときにはわが子の一挙手一投足に目を向ける注意力も発揮されてくることでしょう。さらには、どういうほめかたが子どもの心に響き、がんばろうという意欲を引き出すのかも明確になってくるのではないかと思います。以下の3つは、専門書の記述や筆者の経験に基づいてピックアップしたものです。

 以上の3つを見ていただくと、親がほめることの重要性が見えてくるのではないでしょうか。1をもう一度見てください。児童期は親の影響力が絶大な時期です。それは、親がわが子にどう関わるかが人間形成において多大な影響を及ぼすことを意味します。親がわが子をほめれば、その分だけ子どもは親を信頼し尊敬する気持ちになります。親の期待に沿おう、応えようという気持ちになるのです。親がこういう時期にどれぐらいほめたか、何を見てほめたか、どのようにほめたかが、すべて子どもの人間としての成長の内実に浸透していくのですね。

 2や3は、1に付随してもたらされるもので、子どもの人間性や将来の歩みに大きな影響を及ぼします。親が自分のしたことの何を見てほめてくれたか、それによって子どもの価値観の育つ方向性は違ってきます。たとえば、マナビーテストの点数や順位が上がったときのみほめられる経験をくり返すか、やるべき勉強を怠らずにしっかりとやったなら、成績がどうであれほめてもらう経験をくり返すかによって、子どもの価値観の育ちようが違ってきます。後者のような努力を評価して褒められる経験をくり返せば、子どもは努力を行動の軸におき、陰ひなたなく前向きに努力する姿勢を培っていくことでしょう。

 また、児童期までに親によくほめられる経験をくり返した子どもは、自分という存在を認められる経験をたっぷりとするわけですから、自分をOKな存在であるという自己肯定の気持ちを養うことができます。2のような努力を評価軸においたほめかたをされることと相まって、何事も簡単にあきらめることなく、最後までやり通そうとする強い意志や根気も養えることでしょう。

 なぜ親はわが子をほめる必要性があるのか。その理由は、わが子のがんばりを引き出す効果があるからだけではないんですね。わが子が中学受験をめざして学ぶ時期は、親にとっては子育ての仕上げの時期と重なります。児童期は親がわが子に関われる最後のチャンスなのだということも踏まえ、子どもをどうほめてやるべきかを考えるきっかけにしていただければ幸いです。

 次回は、よいほめかた、望ましくないほめかたについてともに考えていただこうと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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