2021 年 1 月 のアーカイブ

中学受験への目標意識をどう育てるか

2021 年 1 月 30 日 土曜日

 広島県西部地区の中学入試は、本日(1月30日)の広島大学附属東雲中学校・県立広島中学校・県立三次中学校、明日31日の崇徳中学校後期入試をもってあらかた終了します。

 今年受験した子どもたちは、仕上げの1年間をコロナ・パンデミックの渦中で過ごすことを強いられました。塾の授業も混乱しがちなうえ、受験校の生の情報を得る機会も制限されるなか、緊張の糸を切らさず最後までよくがんばり通しましたね。新型コロナウィルスの感染拡大によって、学習指導を担当する私たち学習塾関係者にも様々な対応を余儀なくされましたが、それ以上に大変な思いをされたのは受験生の保護者の方々であろうと思います。ほんとうにお疲れさまでした。

 各中学校の合格発表も次々に行われ、男女私学の人気を二分する広島学院と修道、ノートルダム清心と広島女学院の合格発表、そして広島大学附属の合格発表もすでに終わっています。今年の会員受験生のみなさんも、例年に劣らぬよい結果を得ています。ただし、弊社会員の合格実績公表につきましては、まだ補欠繰り上がり等の確認作業がありますので、もうしばらくお待ちいただきますようお願いいたします。※2月1日(月)の夕方、確認済みの合格実績を本ホームページで公開しています。

 長い受験生活はまさに山あり谷ありで、順風満帆に勉強がはかどった受験生はほとんどいないのではないかと思います。まだ12歳の小学生のことですから、入試に向けた準備の段取りや取り組みは親(保護者)から見ると粗が目立ち、随分とイライラハラハラさせられたことでしょう。これは年齢的に仕方のないことで、中学受験生の子どもたちすべてが乗り越えねばならないハードルです。多くの場合、6年生の夏や秋ごろからめざす中学校が定まり、ようやく受験することの意味を噛みしめながらの勉強が始まります。この段階からが本当の試練です。すなわち、受験や勉強にまつわる不安や悩みとの闘いが始まるのです。それぞれの受験生に、それぞれの葛藤があったことでしょう。そうして今に至ったわけです。

 受験の結果は様々でしょうが、この受験までのプロセスを経験したことで、どの受験生も人間として成長を遂げているに相違ありません。成果と反省点をしっかりと振り返り、中学進学後の更なる進歩発展に向けてがんばっていただきたいと存じます。

 さて、今回は次年度の中学入試を控えた新6年生をおもちの保護者に向けた記事をお届けしようと思います。前述のことからもおわかりいただけると思いますが、小学生の受験において問題となるのは受験への意識が定まるのが遅いということです。人生経験が大人よりもはるかに短い子どもの受験ですから、こればかりは避けようのない問題です。しかしながら、大人の水の向けかたやサポートの仕方を工夫することで、「あの学校に行きたい!」「合格するためにがんばるぞ!」という意識を早めに高めることは可能です。それによって、受験する中学校の選択肢は広がりますし、受験合格への展望も随分と違ってくることでしょう。

 そこで親は何をしてやればよいかという話題になります。すでにアイデアをおもちで、いろいろ実行しておられる保護者もおありかと思います。ですが、多くのご家庭では「もっと受験生らしくなってほしい」「目標を定めてがんばり出すのはいつのことやら」などと不満や心配を抱くものの、いまだ具体的な方策を実行に移しておられないご家庭もあるのではないかと想像します。

 そんな保護者にお伝えしたいのは、「6年生になる今が、子どもの意識を変えるチャンスだ!」ということです。児童期の子どもは現在に生きており、過去や未来を想像する力が未発達です。しかしながら、行動範囲が広がり、様々な知識を習得し、思考がグレードアップする高学年に至ると、「明日の自分は何をしているか、何をすべきか」といったことについて考えられるようになっていきます。「どんな中学校に進学するか」ということについても、自分のこととして受け止め、そのための準備としての受験勉強のありかたを修正していく姿勢も育ってきます。親への絶対的な依存から、「自分自身はどうしたいのか、どうすべきか」という主体性が育ってくるのが児童期の最後の学年、すなわち6年生なのです。

 もうすぐ6年部の講座が始まります。この機会をとらえ、受験に向けたわが子の意識をよりはっきりしたものへと高めるべく、働きかけてはいかがでしょうか。以下は、どなたでも思いつかれることをいくつかピックアップしたに過ぎませんが、親が提示する情報をわが子と共有しながら、どのように意味づけをはかるかで、受験に対する動機づけ効果は違ってきます。そういうことを踏まえたうえで目を通していただければ幸いです。

受験への意識を高める働きかけ<例>

学校をリストアップする
受験校を検討するには、候補となる中学校をリストアップする必要があります。受ける学校を決めてから資料を取り寄せるのではなく、親子でネット検索をしたり、案内書を取り寄せたりして、いろいろ特徴の違う学校があることをわが子に学ばせるとよいでしょう。学校の歴史や伝統に触れると、お子さんに微妙な変化が生まれると思います。
わが子の反応を見守りながら、親の知っていることを話してやると、よりお子さんの興味は高まることでしょう。

 

学校の教育の特色を学ぶ
私学に限らず、中・高一貫校ではそれぞれに特色のある教育が行われています。ネットや案内書などを通じて、各中学校の教育や学校環境の特色を箇条書きにして比べてみると、お子さんの中学校に対するイメージが少しずつ具体的になって行きます。
親は、そういった教育が何をめざすものかを簡単に説明してやりながら、わが子の興味関心を少しずつ広く深いものにしてあげるとよいでしょう。

 

学校の部活動の様子を調べる
学校ごとの部活の様子を一緒に調べると、お子さんは、それぞれ特徴があることに気づきます。小学校とは違う規模で、勉強以外の活発な活動があることを知り、どの中学校で何をしたいかなどが具体的になることもあるでしょう。これも受験への意欲を高める効果につながります。
また、中学生と高校生が一緒の部活は、先輩からたくさんのことを学べる利点があることも教えてやりたいですね。それが中・高一貫校の大きなメリットでもあります。

 

知り合いの中高生から話を聞く
大人の説明より効果的なのは、実際に中学高校に通うお兄さんやお姉さんから学校生活について語ってもらうことでしょう。制服姿で自校について楽しい話をしてくれる先輩の様子を見て、憧れを抱くようになるお子さんが多数います。
兄姉が通っているというだけで、「どうしても行きたい」という気持ちを抱くお子さんは多数います。年上のお兄さんお姉さんの影響力は絶大なんですね。身近にそういった存在がいない場合、つてを探してでも試してみていただきたいですね。

 中学・高校生活は、小学生の児童にとって未知の世界です。そこに半歩足を踏み入れる機会を設けることは、中学・高校への憧れの気持ちを引き出し、受験へのきわめて大きな動機づけ効果もたらすことでしょう。上記は誠にありふれた事例ですが、保護者それぞれの工夫で試していただきたいですね。

 他にも学校の文化祭や体育祭など、公開されている催しを実地見学することも大きな効果を期待できます。しかしながら、昨年はコロナ感染拡大の影響で、そうした学校見学の機会が制限された学校が多かったようです。次年度の受験生に対しては、コロナ感染の鎮静化の進捗状況次第であり、まだはっきりとした見通しは立っていません。

 保護者におかれては、いろいろな機会を設けてもうじきやってくる中学校生活についてお子さんに語って聞かせてあげていただきたいですね。おそらく、「勉強しなさい!」という言葉よりもはるかにお子さんのやる気を高める効果が引き出せることでしょう。泣いても笑ってもあと1年後には進学先は決まります。後悔が残らぬよう、今からお子さんへの働きかけを工夫し、試みてあげていただきたいですね。無論、弊社からも6年部生のご家庭に様々な行事や制度をご用意するほか、授業においても適宜受験についての話題を提供して子どもたちの受験に対する意識を高めるよう努めてまいる所存です。どうぞよろしくお願いいたします。

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カテゴリー: がんばる子どもたち, ごあいさつ, 中学受験

子どもの道徳心や正義感を育てる環境や体験って!?

2021 年 1 月 22 日 金曜日

 今日は1月22日(金)です。広島の中学入試もいよいよ大詰めを迎えました。明日23日(土)には修道と広島女学院、24日(日)には広島学院とノートルダム清心の入試が行われます。また、翌25日(月)には広島大学附属の入試も控えています。

 伝統と実績があり、全国的にも名の通った上記私学4校は、広島の中学受験生の憧れです。また、国立大学の附属中学校のなかでも指折りの難関校である広島大学附属も、相変わらず多くの受験生を集める人気校です。さらにすっかり受験生の人気が定着し、志願者数が高止まりしている県立広島の適性検査も1月30日に予定されています。これらの中学校を本命にしている受験生にとっては、今から1週間余りのコンディションが結果を左右しかねません。しっかりと体調やメンタル面を整え、もてる力を出し切れる態勢で入試に臨んでいただきたいと存じます。

  なお、広島学院や修道、ノートルダム清心などの入試においては、学校側から塾関係者の入試応援自粛に関する具体的な要請はいただいておりませんが、コロナパンデミックのさなかにある入試であることに鑑み、弊社の指導担当者は入試会場へ出向かないことにしております。少しでもリスクがあれば、それを回避しなければなりません。ご理解とご了承のほど、お願い申し上げます。重ねて、受験生のみなさんの健闘をお祈りいたします。指導者一同、担当した受験生のみなさん一人ひとりの顔を思い浮かべ、心から応援のエールを送らせていただきます。

 さて、今回は受験や勉強の話題ではなく、子どもの精神面の成長にとって望ましい環境や体験とはどのようなものかということにスポットを当ててみました。子どもをもつ保護者の方々にとって、小学校卒業まではしつけ教育の大切な時期であろうと思います。子どもはそもそも何もわからない状態で人生を出発し、成長のプロセスで人間としての行動規範を少しずつ身につけていきます。幼児や児童期において、それを教える役割を担っているのは主に親です。これまで、いったいどれだけ教えたり諭したり、注意したり叱ったりされたことでしょう。それは、親はわが子の能力面もさることながら、人としての健全さを身につけてほしいと願っているからに他なりません。

 あるとき、文部科学省のサイトを見ていると、「親が家庭教育で心掛けていること」が主としてどのようなことかについての調査結果が紹介されていました。ちょっとご紹介してみましょう。

★親が家庭教育で心掛けていること(小学生保護者) 
※グラフ画像をクリックすると拡大表示されます

 上記調査によると、「悪いことはきちんと叱る」というのがいちばんになっています。やはり、行動規範、倫理観のしっかりした人間になってほしいという願いが日本の親には強いのでしょう。このほか、上位にランクされているものは、生活習慣や行動面の自立、健康、家族のコミュニケーションなど、うなずけるものばかりでした。みなさんのお宅ではどうでしょうか。

 ただし、同じサイトのアンケート調査結果に、これに関連する興味深い調査結果が紹介されていました。

自然体験と道徳観・正義感の関係 ※グラフ画像をクリックすると拡大表示されます

 上記は、小学生と中学生対象の調査による結果のようですが、自然体験が豊富な子どもほど道徳観や善悪の判断がしっかりしているという明確な結果が示されています。親がわが子に対して悪いことは悪いのだということを教え諭すだけでなく、自然体験を多くさせるということも、同様に大切なことのようですね。

 ただし、この資料をご覧になったかたのなかには、「どうして自然体験が道徳観の醸成に役立つのか」と不思議に思ったり、釈然としない思いをしたりされたかたもあるのではないでしょうか。そんなことを考えていると、ふと10年余り前の低学年児童の保護者向けセミナーに資料の前書きで参加者の方々にお伝えした事柄を思い出しました。それは、つぎのようなものでした。

 小学生時代は、人生の「原風景をつくっていく時期だ」と言われます。大人になってからの行動様式やものの考えかた、物事への興味・関心などの土台を築いていく年齢期なのです。その原風景をつくるにあたって大きな作用を果たすのが、毎日の生活スタイルであり、おかあさんを初めとする家族との会話であり、自然とふれる体験です。これらの繰り返しのなかで子どもは「自分」というものを形成し、大人になる準備を進めていきます。

 この原風景が、人生を前向きに生きようとする力の源になるかどうかは、小学生時代の体験の繰り返しによってきまってきます。しかしながら、親が子どもと一緒に過ごす時間は決して多くありません。親は日々忙しく働いていますし、子どもも学校や習い事、スポーツなどに多くの時間をつかっており、親子でゆっくり話したり何かをしたりする時間は意外と少ないものです。・・・・・・・・・

 上記引用部分の後に、夏休みは普段できないことをわが子に体験させることのできる絶好の機会であることをお伝えし、夏休みの有意義な過ごしかたについて具体的な提案をさせていただきました。そのなかに、自然体験が含まれていたのは言うまでもありません。

 自然と触れ合う体験は、人間らしさを取り戻したり、生き物や植物をいつくしむ心を育てたりすると言われます。また、ある教育学者の著書に、「大きな自然を前にすると、人間がいかにちっぽけな存在であるかということに気づき、自分という存在と向き合う契機となる」といったようなことが書かれていたことを思い出します。

 さて、ここでもう一度一つ目の資料に目を遣ってみてください。なんと、親が家庭教育で心掛けている事柄の中で、もっとも順位の低い(下から3番目)ところに「ものづくりや自然体験」があるではありませんか。ここに、これからの子育てで参考にすべきヒントがあるのではないかと思います。

 ちなみに、いちばん順位の低かった「美術館や博物館に行く」というのも、子どもの情操教育や才能開発教育にとって非常に意義があるという専門家の指摘が数多くあることもお伝えしておきます。随分前、本ブログでノーベル物理学賞を受賞したアメリカのリチャード・ファインマン氏の子ども時代のエピソードをご紹介したことがありますが、その内容は、「あまり人生の成功者とは言えない父親が、しばしば博物館に連れて行ってくれ、氷河時代の地球について熱心に説明してくれた」というエピソードだったと思います。当時のファインマン氏は、子どもながらに「父親の説明には誤りがある」と気づきましたが、それでも父親への感謝と尊敬の念が揺らぐことはありませんでした。それよりなにより、父親の情熱が心に突き刺さったのです。天才科学者を育てたのは、父親のすばらしい家庭教育だったのですね。

 新6年生のご家庭では無理かもしれませんが、もっと下の年齢のお子さんをおもちのご家庭におかれては、家庭教育の現状を振り返りつつ、今回の記事で参考になる点がありましたら、ぜひこれから生かしていただきたいと存じます。お子さんの児童期は、あっという間に過ぎますよ。今がチャンス!

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カテゴリー: アドバイス, 中学受験, 子育てについて

低学年児童に最適な教育環境って!? ~新年度説明会のご案内~

2021 年 1 月 14 日 木曜日

 コロナパンデミックの収束がいまだ見通せないなか、今年も中学入試シーズンがやってきました。今週末から来週末にかけては広島の私立一貫校の入試が多数行われる予定です。また、国立一貫校の入学者選抜のための学力検査、公立一貫校の適性検査も大半がほぼ同じ時期に行われますので、今からの約2週間あまりが広島の中学受験生にとっての山場と言えるでしょう。

 コロナ禍における受験生活は、通常の年度よりも多くの試練を受験生の子どもたちに与えてきました。不自由な生活を乗り越えての受験勉強、さぞ大変だったであろうと思います。また、受験生を見守り生活を共にされてきた保護者の方々にとっても、多くの心配や配慮が求められた受験プロセスであったことと拝察します。入試が終わってもコロナ禍に見舞われての生活は当分変わらないものの、今春からの中学校生活をどの学校で送るかが決まる大切な選択の場が中学入試です。後悔が残らないよう、心身のコンディション調整には万全を尽くし、本番でもてる実力を出し切れるよう最後までしっかりケアをしていただきたいと思います。

 なお、コロナ感染問題の渦中における入試です。相当数の中学校が塾関係者の応援の自粛を要請しておられます。はっきりと禁止としておられる学校もありますので、弊社としてもその決定事項を遵守することにしております。ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。受験生の子どもたちの奮闘を指導担当者一同心より念じています。

 さて、今回は中学受験を視野に入れておられる低学年児童の保護者に向けた記事をお届けしようと思います。来る1月22日に、2021年度の低学年部門「新年度説明会」(新小学1~3年生児童の保護者対象)を予定しておりますが、この催しへの興味の喚起や、参加いただくうえでの情報収集の視点をご提供することも意図しています。気楽なお気持ちで目を通していただければ幸いです。

 まずは、低学年児童期の教育環境としてつぎの中からあなたが心情的に賛成するものと、実際の姿に近いものとを一つずつ選んでみてください。かなり乱暴な振り分けになっておりますが、考えかたを単純化したほうがわかり易いかと思ってそうしました。また、信条と実際の行動とは違う場合も多々ありますから、そういった観点からも選んでみていただこうと思いました。

 みなさんは、低学年期(小1~小3)の子どもの環境として、どれが望ましいと思われますか? また、現実の環境はどれに近い状態ですか? 実は、どれも理屈のうえで一理あり、絶対これだと言い切るのは難しいというのが筆者の見解です。しかし、筆者があえて一つ選ぶとなると、Bでしょうか。ただし、Bは建前と取る人も少なくないでしょう。中学受験を視野に入れておられるご家庭では、「理想はBだけど、現実にはAのような接しかたをわが子にしてしまう」とおっしゃるご家庭もあるのではないかと思います。Cは一昔以上前は理想と言えたかもしれません。しかし今日では、このような家庭で育った子どもは学問で大成するのは難しいと思います。理由は後述します。

 Aから見ていきましょう。Aのような考えかた一色で子どもに接すると、一部の才能に恵まれた子ども以外は勉強嫌いになるおそれが大です。大人が無理にやらせる勉強では、学習意欲の高い人間に成長できません。低学年期までの子どもは、親が強い姿勢で臨めば言うことを聞きます。また、まだ常識にかからない年齢の子どもですから、自分を律する姿勢も育っていません。ですから、Aのような側面はよきに悪しきにある程度は必要だと言えるでしょう。ただしそれも程度問題。行き過ぎた押しつけによって子どもにストレスを与え、勉強への志向性が低い人間にしてしまうと、中学受験で志望校に合格できたとしても、親の影響力が及ばなくなる思春期以後に伸び悩んだり、勉強から離れたりする恐れがあります。とは言え、決めたことをきちんと最後までやり遂げる姿勢をもたせる意味で、いい加減な取り組みを許さず、強い姿勢でわが子に臨むことが必要な場面もあるでしょう。問題なのは、「ほかの子に先んじて、高い学力を」という考えで、無理な勉強を常に子どもに押しつけるやりかたです。

 つぎはBです。低学年児童期の子どもは、まだ勉強の必要性を自覚できるレベルに到達していません。ですから、いくら勉強の楽しい側面を教えたとしても、一人でやらせるには無理があります。考えること、知ることのプロセスにはある程度我慢が必要ですから、一人での勉強ではまだまだ目先の楽しさ(テレビやゲーム、漫画など)のほうに惹かれる子どもが多いものです。したがって、勉強の時間を親子で取り決め、年齢的に可能な範囲での取り組みを促したり、最初は一緒に取り組み、流れができた段階から手を離したりするといったやりかたも求められるでしょう。また、Bのイラストのように、親が興味を引き出すための働きかけをし、一緒に調べたり考えたりする場面を意図的につくる、などの工夫も必要でしょう。子どもが勉強の必要性を自ら認識し、自覚的に勉強に取り組めるようになるのは5年生後半から6年生にかけての時期で、まだまだ低学年のうちは無理であるということも知っておいていただきたいですね。

 Cはどうでしょう。数十年前なら、こういう家庭から優秀な人間が育っていたものです。しかし、今日ではそれが難しくなっています。子どもを取り巻く環境の教育力をあてにできなくなったからです。勉強を教えてくれる上のきょうだいがいない家庭が多いのが現実です。近所のお兄さんやお姉さんが勉強の世話をしてくれることもありません。おじいさんおばあさんに優しく勉強の手ほどきをしてもらえる家庭もごく一部でしょう。また、学校もかつてのように居残りをさせて基礎内容習得の徹底を図ることが難しい状況にあります。もう一つ。「いずれ大きくなってから勉強に精を出せばよい」という考えかたも現実的とは言えません。実は、勉学に向いた頭脳の持ち主にするチャンスは児童期前半までです。3年生頃までにリテラシーの基礎を築いているかどうかは、高学年以後の学習の効率性やこなせるレベルに決定的な影響を及ぼします。児童期前半には、学力基盤を築くという大きな使命があります。これがおざなりになると、取り返すのはきわめて困難になってしまいます。Cは子どもの心身の成長にとっては理想的ですが、現代社会においては勉学での躓きを生み出す危険性が極めて大きいと言わざるを得ません。

 以上から、低学年の児童期はA~Cの考えかたのバランスを十分にとった教育環境が必要だというのが私たちの考えかたです(Cの要素も否定しているわけではありません。遊びのなかに、理系の学問の才能開花につながる要素が随分と存在します)。児童期前半までは、勉強を推進するうえで不可欠な素養をしっかりと磨いておくことが肝要です。そのための方法として、子どもに無理矢理勉強を押しつけるのではなく、なるべく学ぶことに興味をもたせ、上手に大人が勉強へと誘導していく働きかけが求められます。勉強の内容は、早く高度なことに手をつけるのではなく、先々の学習の発展を支える諸要素を整備することが大切です。くれぐれも進度を気にして勉強を強要しないでいただきたいですね。将来、高い次元の勉強を自らに課す必要性が必ずやってきます。その段階で飛躍していくための準備こそ、今最も大切にすべきことだと弊社は考えます。今の勉強で他者との差をつけたとしても、それは何の役にも立たないどころか多くの弊害をもたらすだけです。

 以上のような考えに立ち、弊社では低学年児童向けに二つの講座を設けています。一つは基礎学力の基盤形成に比重を置いた「ジュニアスクール」、もう一つは才能開発(理数系の学問で求められる感覚的素養を磨くこと、長文の読解に長けた子どもを育成することをめざす)に比重を置いた「玉井式国語的算数教室」です。いずれも、子どもたちが学ぶことに興味を抱き、自ら学ぶ姿勢を少しずつ養っていけるよう配慮しています。前述のように、学びの志向性の高い人間に成長しないと、先々の勉学での大成は難しくなってしまうからです。無論、中学受験専門塾の活動の一環として存在する講座ですから、中学受験を見通していることは言うまでもありません。

 先にご案内した「新年度説明会」について。新型コロナウィルス感染問題の渦中における催しですので、会場の換気や座席の配置には十分気をつけて実施します。二つの講座の特長や指導内容をできるだけわかり易くご説明します。また、低学年児童期は、親の影響力が極めて強い時期です。そこで、家庭教育の方向性やあるべき姿についても、可能なかぎり具体的にわかり易くお伝えしたいと考えています。興味をおもちになったかたは、ぜひ参加してみてください。なお、この催しの実施日時や会場などの詳細は、当HPにてご案内しています。予約が必要ですので、お手数ですが上記についてご確認のうえ、お電話でご予約をお願いいたします。

 低学年児童期は親の夢実現に向けた土台形成の大切な時期です。私たち家庭学習研究社の低学年部門は、そのためのお手伝いをしています。一緒に夢を追求しませんか?

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カテゴリー: お知らせ, ジュニアスクール, 中学受験, 行事のお知らせ

中学受験必勝の鉄則は、親子の相互信頼!

2021 年 1 月 6 日 水曜日

 明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。今日は1月6日で、2021年最初のブログとなります。

 2021年度の入試は、コロナパンデミックの渦中というかつてない状況下での実施となりました。今のところ、各中学校の入試は予定通り行われる見込みですが、それがせめてもの救いでしょうか。広島の私立一貫校の入試監禁日は1月1日で、すでに1回目の入試を実施した私学もあります。主要な私立中学校の入試は1月後半に集中していますが、月末にはほぼすべての中学校の入試が終了します。あと3週間余りのコンディション調整が入試結果を決定づけることになります。保護者におかれては、コロナ感染防止もさることながら、心身のコンディション調整全般に目配りしていただき、お子さんがベストの状態で入試を迎えられるよう、しっかりとサポートしてあげてください。

 さて、今回は年頭の記事でもあり、中学受験のみならず子育てにおける鉄則の一つ、「親子の信頼関係」をテーマに掲げて書いてみようと思います。というのも、親にとってわが子はいつだって大切なかけがえのない存在であり、子どもにすれば親は大人になってからも変わることのない精神的支柱です。言うまでもありませんが、親と子の関係は一生ものであり、永遠に変わることのないものなのですね。

 もしも親子の信頼関係が強固なものであったなら、どれだけ人生が心豊かになることか。それは子どもの側のみならず、親にとっても言えることではないでしょうか。子どもの気持ちが親から離れ、会話や交信が途絶えたとしたらどんなに寂しく辛いことでしょう。中学受験は子育ての仕上げ期と重なりますから、永遠に揺らぐことのない親子の信頼関係を築く絶好の場でもあるのです。わが子の受験準備学習を見守り応援する過程は、親子の絆という受験の結果を超える副産物をすべてのご家庭に与えてくれることでしょう。

 

① 受験を目前に控えた6年生児童の保護者のみなさまへ

 いよいよ受験本番が目前に迫ってきました。どのご家庭も、最後の仕上げと調整に余念がないことでしょう。お子さんが、何事もなく元気に入試を迎えるまで、保護者の方々にはいましばらくのサポートが必要です。最後の詰めをしっかりとやり遂げられるよう、お子さんをしっかりとバックアップしてあげてください。

 中学入試は、お子さんにとってかつて経験したことのない緊張の伴う試練に他なりません。というのも、入学試験というものがどういうものかを、自身が理解しての受験はおそらく初めてのことだと思います。一発勝負で「合格か否か」が決まり、進路が左右される。そのことを自覚して緊張しない受験生はおそらく一人もいないと思います。

 このような試練を乗り越えるにあたり、親の存在は子どもにとって実に大きなものであると言わざるを得ません。親が見守り応援してくれている。そのことを実感するか否かで、入試に臨むお子さんの心境は全く違ったものになるのですから。緊張に負けそうなわが子に我を取り戻させ、これまでに培った力を余すことなく発揮させる。それは子育ての最終段階における親の大きな仕事と言えるかもしれません。

 ただし、緊張のしかたはお子さんによって様々です。例えば入試本番の2~3週間前から気持ちが落ち着かなくなり、親を心配させたお子さんが、いざ本番では緊張から解き放たれたが如く落ち着いていることがあります。いっぽう、終始落ち着きを失うことなく、平常心のまま入試に臨めたと思ったお子さんが、いざ本番では極度の緊張に襲われるということもあります。

 その子とは次のようなことを暗示しています。緊張の仕方に違いはあれど、誰しも緊張から逃れることはできません。重要なのは「緊張するかしないか」ではなく、「実力を発揮できるかどうか」です。入試本番を目の前にして、親がわが子にしてやれることは何でしょうか。わが子が緊張に振り回され試験に飲み込まれるのではなく、緊張のなかで自分を見失うことなく、これまで培った力を発揮できるようメンタルを支えてやることであろうと思います。

 わが子の性格に合わせ、わが子が我を失うことなく入試本番に臨ませるためのとっておきの言葉かけを考えてみてはいかがでしょうか。そして、あとはわが子を信頼してやりましょう。「親はどんな結果も引き取ってくれる。心配要らない」――そのことに気づかせる効果を引き出せるなら、どんな言葉かけもOKです。どんなときも、いつだって「親が温かく見守ってくれている」「おかあさんは自分のがんばりを応援してくれている」――それを実感したなら、お子さんは間違いなく心を奮い立たせて入試に臨めることでしょう。

 入試本番での条件はどの受験生も同じです。また、前述のように、おとうさんおかあさんの応援を背に受けていれば大丈夫です。お子さんが入試本番の緊張を乗り越え、もてる力を存分に発揮できますように!

 一つ言えるのは、入試結果で当面の進路は変わりますが、それは将来の歩みを決定づけるものでは決してありません。「失敗したらすべて終わりだ」という重圧からわが子を解放してやればよいのです。そのための重要なキーワードが「親子の信頼関係」ではないでしょうか。「結果を恐れるな。おとうさんおかあさんは、どんな結果になろうとお前の(あなたの)味方だからね。重要なことは、自分のベストを尽くせるかどうかなんだよ」ーーこういった親だからこその気持ちが伝わる言葉を用意してあげてください(もちろん、これをそのまま用いてくださっても、きっと親の気持ちは伝わると思います)。

 

② 来年以降に受験を迎える児童の保護者のみなさまへ

 前述のように、中学受験は子育ての仕上げ期に行う大きな儀式のようなものです。わが子が受験生活を通して勉学上の自立を果たし、自らの手で入試の目標を達成する。そのことが達成されたなら、自ずと子育てが高い次元で完結する流れができたといっても過言ではありません。そういった構図を意識してわが子の受験生活を応援していただくようお願いするしだいです。

 本ブログは、このような中学受験に向けた親の意識やサポートの価値についてお伝えするために設けているものでもあります。今回は、入試を目前に控えたお子さんの保護者に向けたメッセージを主に書きましたが、みなさまにはこれからいろいろな形でこのことに関連する記事を書いてまいりますので、弊社の中学受験に対する考えを参考にしていただければ幸いです。

 とりあえず、今回はひとつのことを申し上げておきたいと思います。受験勉強の自立は生活の全てと深く関わります。勉強だけ自立して、他は全て親に丸投げする。そういうことはあり得ません。勉学の自立と、日常生活の自立は不可分のものです。親がこのような考えに基づいて一貫した対応をすれば、人間的な自立が果たせるだけでなく、子どもは親を尊敬する人間に成長していくことでしょう。それは親子の信頼関係を築くうえにおいても欠かせないものであろうと思います。受験勉強があることで特別扱いせず、小学生として自分でやれることは全てやらせてください。

 ここで現状を少しだけふり返ってみてください。たとえば、親がそばにいないという条件のもとでわが子の行動をどれだけ信じてやれるでしょうか。「親が見ていなくても、うちの子はやるべきことをやっている」――このような確信をもてるでしょうか。もしもそうであれば、すばらしいですね。

 わが子が受験生として成長を遂げているかどうか、受験生活を通して親子の信頼関係が深まっているかどうかを判断するうえでの一つの尺度は、「親が見ていないときのわが子」をどれだけ信頼できるか、ではないでしょうか。一人でいるときもやるべきことをやれる子どもにするには、やるべきことは何かを親子で確認し、一人でやり切ることを親が期待していることをわが子に伝え、ちゃんとやったなら大いに喜びほめてやる。このことの継続しかありません。それを絶えず実行するのは親にとっても楽ではありませんが、やり通せば素晴らしいわが子の成長を見届けることができるでしょう。

 弊社の学習指導のシステムは、基本的に子どもの自学自習を支援する意図で構成されています。家庭での一人勉強が必須となっている理由をご理解のうえ、少しずつお子さんがそれを実行していけるようサポートをお願いいたします。1年後のお子さんが、大きく成長しておられますように! 弊社もこのことを常に念頭に置いてお子さんの学習指導にあたってまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

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カテゴリー: がんばる子どもたち, アドバイス, 中学受験