子どもの道徳心や正義感を育てる環境や体験って!?

2021 年 1 月 22 日

 今日は1月22日(金)です。広島の中学入試もいよいよ大詰めを迎えました。明日23日(土)には修道と広島女学院、24日(日)には広島学院とノートルダム清心の入試が行われます。また、翌25日(月)には広島大学附属の入試も控えています。

 伝統と実績があり、全国的にも名の通った上記私学4校は、広島の中学受験生の憧れです。また、国立大学の附属中学校のなかでも指折りの難関校である広島大学附属も、相変わらず多くの受験生を集める人気校です。さらにすっかり受験生の人気が定着し、志願者数が高止まりしている県立広島の適性検査も1月30日に予定されています。これらの中学校を本命にしている受験生にとっては、今から1週間余りのコンディションが結果を左右しかねません。しっかりと体調やメンタル面を整え、もてる力を出し切れる態勢で入試に臨んでいただきたいと存じます。

  なお、広島学院や修道、ノートルダム清心などの入試においては、学校側から塾関係者の入試応援自粛に関する具体的な要請はいただいておりませんが、コロナパンデミックのさなかにある入試であることに鑑み、弊社の指導担当者は入試会場へ出向かないことにしております。少しでもリスクがあれば、それを回避しなければなりません。ご理解とご了承のほど、お願い申し上げます。重ねて、受験生のみなさんの健闘をお祈りいたします。指導者一同、担当した受験生のみなさん一人ひとりの顔を思い浮かべ、心から応援のエールを送らせていただきます。

 さて、今回は受験や勉強の話題ではなく、子どもの精神面の成長にとって望ましい環境や体験とはどのようなものかということにスポットを当ててみました。子どもをもつ保護者の方々にとって、小学校卒業まではしつけ教育の大切な時期であろうと思います。子どもはそもそも何もわからない状態で人生を出発し、成長のプロセスで人間としての行動規範を少しずつ身につけていきます。幼児や児童期において、それを教える役割を担っているのは主に親です。これまで、いったいどれだけ教えたり諭したり、注意したり叱ったりされたことでしょう。それは、親はわが子の能力面もさることながら、人としての健全さを身につけてほしいと願っているからに他なりません。

 あるとき、文部科学省のサイトを見ていると、「親が家庭教育で心掛けていること」が主としてどのようなことかについての調査結果が紹介されていました。ちょっとご紹介してみましょう。

★親が家庭教育で心掛けていること(小学生保護者) 
※グラフ画像をクリックすると拡大表示されます

 上記調査によると、「悪いことはきちんと叱る」というのがいちばんになっています。やはり、行動規範、倫理観のしっかりした人間になってほしいという願いが日本の親には強いのでしょう。このほか、上位にランクされているものは、生活習慣や行動面の自立、健康、家族のコミュニケーションなど、うなずけるものばかりでした。みなさんのお宅ではどうでしょうか。

 ただし、同じサイトのアンケート調査結果に、これに関連する興味深い調査結果が紹介されていました。

自然体験と道徳観・正義感の関係 ※グラフ画像をクリックすると拡大表示されます

 上記は、小学生と中学生対象の調査による結果のようですが、自然体験が豊富な子どもほど道徳観や善悪の判断がしっかりしているという明確な結果が示されています。親がわが子に対して悪いことは悪いのだということを教え諭すだけでなく、自然体験を多くさせるということも、同様に大切なことのようですね。

 ただし、この資料をご覧になったかたのなかには、「どうして自然体験が道徳観の醸成に役立つのか」と不思議に思ったり、釈然としない思いをしたりされたかたもあるのではないでしょうか。そんなことを考えていると、ふと10年余り前の低学年児童の保護者向けセミナーに資料の前書きで参加者の方々にお伝えした事柄を思い出しました。それは、つぎのようなものでした。

 小学生時代は、人生の「原風景をつくっていく時期だ」と言われます。大人になってからの行動様式やものの考えかた、物事への興味・関心などの土台を築いていく年齢期なのです。その原風景をつくるにあたって大きな作用を果たすのが、毎日の生活スタイルであり、おかあさんを初めとする家族との会話であり、自然とふれる体験です。これらの繰り返しのなかで子どもは「自分」というものを形成し、大人になる準備を進めていきます。

 この原風景が、人生を前向きに生きようとする力の源になるかどうかは、小学生時代の体験の繰り返しによってきまってきます。しかしながら、親が子どもと一緒に過ごす時間は決して多くありません。親は日々忙しく働いていますし、子どもも学校や習い事、スポーツなどに多くの時間をつかっており、親子でゆっくり話したり何かをしたりする時間は意外と少ないものです。・・・・・・・・・

 上記引用部分の後に、夏休みは普段できないことをわが子に体験させることのできる絶好の機会であることをお伝えし、夏休みの有意義な過ごしかたについて具体的な提案をさせていただきました。そのなかに、自然体験が含まれていたのは言うまでもありません。

 自然と触れ合う体験は、人間らしさを取り戻したり、生き物や植物をいつくしむ心を育てたりすると言われます。また、ある教育学者の著書に、「大きな自然を前にすると、人間がいかにちっぽけな存在であるかということに気づき、自分という存在と向き合う契機となる」といったようなことが書かれていたことを思い出します。

 さて、ここでもう一度一つ目の資料に目を遣ってみてください。なんと、親が家庭教育で心掛けている事柄の中で、もっとも順位の低い(下から3番目)ところに「ものづくりや自然体験」があるではありませんか。ここに、これからの子育てで参考にすべきヒントがあるのではないかと思います。

 ちなみに、いちばん順位の低かった「美術館や博物館に行く」というのも、子どもの情操教育や才能開発教育にとって非常に意義があるという専門家の指摘が数多くあることもお伝えしておきます。随分前、本ブログでノーベル物理学賞を受賞したアメリカのリチャード・ファインマン氏の子ども時代のエピソードをご紹介したことがありますが、その内容は、「あまり人生の成功者とは言えない父親が、しばしば博物館に連れて行ってくれ、氷河時代の地球について熱心に説明してくれた」というエピソードだったと思います。当時のファインマン氏は、子どもながらに「父親の説明には誤りがある」と気づきましたが、それでも父親への感謝と尊敬の念が揺らぐことはありませんでした。それよりなにより、父親の情熱が心に突き刺さったのです。天才科学者を育てたのは、父親のすばらしい家庭教育だったのですね。

 新6年生のご家庭では無理かもしれませんが、もっと下の年齢のお子さんをおもちのご家庭におかれては、家庭教育の現状を振り返りつつ、今回の記事で参考になる点がありましたら、ぜひこれから生かしていただきたいと存じます。お子さんの児童期は、あっという間に過ぎますよ。今がチャンス!

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カテゴリー: アドバイス, 中学受験, 子育てについて

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