「怒る」と「叱る」 どこがどう違うの?

2021 年 5 月 6 日

 今日は5月6日(木)です。ゴールデンウィークが終わり、学校も再開されたことと思います。学校休みが続くと、大概の家庭の保護者、特におかあさんがたは疲労困憊ということになりがちです。なにしろ、四六時中子どもが家にいると、落ち着きがない、騒々しい、世話が焼ける、言うことを聞かない等々、イライラする原因満載の日が続くのですから。

 子どもも児童期後半になると、肉体的な面だけでなく、精神面においても著しい成長を遂げるものです。それは、親の理解を越えた振る舞いの増加や、親への反抗という形で現われます。すなわち、親が注意する機会が増え、それに対して子どもが口答えや言い逃れをするようになります。また、受験勉強をしている子どもであれば、相応に苦しみや悩みも抱えていますから、ストレスもあることでしょう。そんな子どもと毎日一緒に家で暮らすとなると、親子間のいざこざが増えるのは無理からぬことです。

 そこで表題の「怒る」と「叱る」、の話になります。「怒るのではなく、叱ることが大切だ」などの文言が教育書にしばしば登場するので、みなさん先刻ご承知のことと思います。怒るのは感情に任せた行為であり、叱るのは理性に基づく行為です。したがって、子どもの素直な反省を引き出す効果は後者のほうにあると言われます。どちらが望ましいかについては論を待ちません。

 ただし、今回は「感情に振り回されて怒るのではなく、冷静に子どもを叱りましょう」ということをお伝えするわけではありません。きちんとした叱りかたをするつもりが、いつの間にか感情の高ぶりが押さえられなくなり、怒鳴ってしまう(怒ってしまう)かたはおられませんか? そんなとき、大概の保護者は後味の悪い思いを引きずったり落ち込んだりするものです。なぜそうなるのでしょうか。その理由やメカニズムについてもっと客観的な視点から検証していけば、わが子への対応も微妙に違ってくるでしょうし、「ああ、親って報われない」と嘆く場面も少なくなるのではないでしょうか。

 筆者は、子育ての最中にある保護者に「お子さんをきっぱりと叱ってあげてください」「子どもを改めさせるプロセスで、後味の悪い思いをしなくて済むメンタリティをもってください」ということをお伝えしたいのです。

 そのために必要なことは、「怒る」と「叱る」の違いをよりつまびらかにし、怒って後悔する自分と決別することだと思います。そこで、この点について何か参考になる資料はないかと、いくつかのネットのサイトや教育書にあたってみました。そして、以下のように両者の相違点を比較対照してみました。

 少し振り分けかたが乱暴な点もあるかもしれませんが、「怒る」と「叱る」の違いが一目瞭然となったのではないかと思います。順を追って簡単にみていきましょう。

 まずは1から。右脳は感覚や直感に関わる分野で働き、喜怒哀楽にも関与します。左脳は言語脳と言われ、論理的思考を司ります。「叱る」という行為は、論理に基づいて子どもを納得させることですから、左脳が働いているということなのでしょう。子どもを叱るときには、子どものしたことを客観的に指摘し、振り返り反省させる必要があります。論理に基づいて話をするよう努めればよいというわけですね。

 「怒る」とき、親は無意識に自分の気持ちに寄り添っています。親のメンツや都合が主導しているのです。いっぽう、「叱る」ときには子どもの立場に立ち、どう改めるとよいかを考慮しています。

 「怒る」とき、「悪いのは子ども」という観念が働きがちですが、「悪いのは子どもの行為で、子ども自体が悪いわけではない」という考えに基づいて接するほうが、子どもの素直な反省につながります。「叱る」のは、子どもの行為を改めさせるためなのですね。

 「怒る」ときには、子どもがやったことを咎めがち(過去に目が向きがち)です。いっぽう、「叱る」ときには、子どもの成長という視点があります。未来志向で子どもに接する。これが教育です。

 親は子どもを自分の持ち物だとまでは思っていなくても、「親の言うとおりにすべき存在だ」と無意識に思っているものです。そのため、子どもをコントロールしようとする物言いをしがちです。その言いかたに子どもは敏感に反応します。「子どもは親とは別人格なのだ」と認識し、子どもの考えにも耳を傾ける姿勢で臨めば、子どもも冷静になって親の言うことに耳を傾けるものです。

 1~7はみな相互に関連していますから、これ以上の説明は不要でしょう。結局、「怒る」ときには親の都合や論理が軸になっており、「叱る」ときには子どもの成長という視点が軸になっているのだという違いがあるのだと思います。だから「叱る」ほうが効果を引き出せるのですね。

 お子さんが望ましくない態度や行動に及んだとき、まして注意の言葉に反抗してきたとき、感情が全く高ぶらない親などいません。ですが、「これは成長の一環として、必ずやってくる場面なのだ」と能動的に受け止めていただきたいですね。子どもの成長という視点に立っていたなら、厳しくきっぱりと叱っていいのです。子どもはそういう親に反発はしないものです。ぜひ、お子さんをよりよい方向へと向かわせるためのチャンスにしていただきたいと存じます。

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カテゴリー: アドバイス, 子どもの発達, 子育てについて, 家庭での教育

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