わが子の着座姿勢をチェック!

2021 年 8 月 23 日

 近年は学校の夏休み期間がかつてよりもだいぶ短縮されているようです。今月の25日あたりから学校への登校が再開するお子さんが多いのではないでしょうか。夏休みの課題はやり終えましたか? 体調を崩しているお子さんはおられませんか? 元気で登校日を迎えられますように。

 今回は着座姿勢と学習の成果との関連性についてお伝えしようと思います。学習成果は、何をどう学ぶか、学習意欲が高いかどうかと関連づけて捉える人が多いと思います。無論、それは間違いではありません。しかし、着座姿勢の良し悪しと関連づけ、子どもに注意や助言をする大人は意外と少ないのではないでしょうか。

 これから専門家の見解をご紹介しようと思いますが、その前に筆者が指導現場にいた頃、着座姿勢と学業成績との関連で印象に残っていることがありますのでご紹介しておきます(以前もご紹介した記憶があるので、二度目のかたがおられたらお許しください)。

 ある年、6年生の男子クラスの授業をしているときにふと気づいたことがあります。それは、ある列(縦の列5名)の男の子の背筋が全員ピンと伸びており、実に清々しいのです。授業を聞く態度も文句のつけようがなく、いつも熱心に筆者の説明や問いかけに耳を傾けてくれました。こういう子どもばかりならありがたいのですが、男子の場合は必ずしもそうでなく、授業が始まってすぐに頬を机に付けたり、体をねじって椅子の背もたれに体を預けたりするお子さんがいます(もちろん、目に余るようなら注意をします)。

 彼らの成績はと言うと、押しなべて良好で、全体の1番を取るお子さんはいなかったものの、トップランクかそのすぐあとくらいを推移していました。そのような成績でしたから、入試においても全員が第一志望校に合格しました。それ以来、彼らのその後を知る機会はありませんでしたが、あるとき、ひょんなことから彼らのうちの4人が、日本最高峰の国立大学に進学しているという話を耳にしました。あの背筋のきちんと伸びた気持ちのよい着座姿勢はだてではなかったのです。

 子どもの姿勢が脳の働きに影響を及ぼすことについて、専門家が言及しておられるのでご紹介します。以下は、福岡教育大学名誉教授の永江誠司先生の著書(「子どもの脳を育てる教育」)からの引用です。

 子どもの姿勢と脳の活性化とは密接な関係があります。それは、姿勢が悪いと十分な酸素を脳に供給できなくなるからです。背筋をしゃんと伸ばした子どもと、前かがみで猫背の姿勢を比較してみてください。どちらが、しっかりとした大きな呼吸ができるでしょうか。背筋がしゃんと伸びた子どもは、しっかりと大きな呼吸ができ、脳に十分な酸素を送り込むことができるでしょう。その分、脳の活性の度合いが高まるのです。 ( 中略 )

 今の子どもの家庭生活を考えてみると、外で遊ぶことが少なく、家でテレビやビデオを見たり、ゲームをして遊んだりと、座って過ごす時間が多くなっています。座った姿勢というのは、背筋が曲がっている状態です。この状態は脳への刺激を弱めてしまうのです。人の背筋は、脳のしっぽのようなものです。背筋の内側の脊椎骨の中には中枢神経系である脊髄が通っていて脳につながっています。したがって、座って背筋が曲がっていると脳に刺激が行きにくくなり、必然的に活動が低下してしまうのです。

 おたくのお子さんの座ったときの背筋はちゃんと伸びていますか? 一度夕食のときにでも、食卓の椅子に座っているお子さんの姿勢をチェックしてみてください。体を捻じ曲げたり、猫背になっていたり、足をブランブランさせていたりするようでしたら、この機会に背筋を伸ばした着座姿勢を心がけるよう助言してあげてください。

 とは言え、「背筋を伸ばして座ることが難しい」というお子さんもおられるかもしれません。それはやる気がないからだというわけではありません。上記引用文の著者によると、運動が足りていないからのようです。背筋の力は運動によって強化されますが、運動不足の子どもは背筋よりも腹筋の力のほうが勝ってしまいます。そのため猫背になりがちで、呼吸したときの酸素供給が不足し、脳の働きに悪影響を及ぼすことになります。

 おたくのお子さんは、運動が足りていますか? 引用文の( 中略 )とした部分には、「正しい姿勢を取ることは、筋肉に無駄な緊張がなく、体のバランスを取るのに有効です」とありました。効率のよい勉強を実現するには、運動も欠かせないということなんですね。運動と縁のないお子さん、運動が苦手なお子さんの場合、背筋を鍛えるストレッチを1日10分前後でもよいから試みてはいかがでしょうか。ネットなどで検索すれば、よい方法が見つかるかもしれません。

 さて、もう少し小学生の運動についてふれておきましょう。以前、弊社の会員家庭のお子さんを対象にした調査を実施したところ、スポーツをしながら塾通いをされているお子さんがかなり多いということがわかりました。弊社の中学受験指導の対象は小学校の4~6年生ですが、この年齢は体がどんどん成長していく時期と重なります。上述のように、運動をすることで背筋の力が強化されるということも併せて考えると、スポーツは受験勉強の妨げになるものだと考えるのではなく、いかにして上手に両立させるかという観点でとらえるのが妥当なのではないでしょうか。

 スポーツ(運動)は成長ホルモンの分泌を促し体の成長を引き出すとともに、ストレスの解消にもつながります。今特に運動らしいことをしていないお子さんは、どうしたらよいでしょうか。今から慌ててスポーツを始める必要はありません。ただし、少しでも歩くことを心がけましょう。もしも可能なら、安全な散歩コースを見つけ、少し長めの散歩をするとよいと思います。

 なぜかというと、散歩をするだけでも体の健康維持によい影響がありますし、長めに歩くだけで大脳の働きが活発になります。また、脳内の血流が通常の10倍になると言われます。血流の増加は、酸素や栄養素を脳により多く補給することになり、脳にある老廃物の除去や脳の活性化に貢献してくれます(これは、前出の永江先生の著述から情報をいただきました)。

 運動も上手に取り入れて、心と体のバランスのとれた充実した受験生活を実現しましょう!

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カテゴリー: アドバイス, 勉強の仕方, 子どもの発達, 子育てについて

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