意欲に満ちた学びは習慣づけから生まれる

2021 年 9 月 28 日

 このところ新型コロナウィルスの感染者数の減少が全国的に報じられています。田村厚生労働相は、「ほとんどの都道府県で宣言が10月から解除される見通しである」という見解を述べておられます。無論、重症者数が相変わらず多く、病床数の逼迫問題も解決していませんから、引き続き生活のあらゆる場面で最大限の自粛が必要でしょう。

 さて、前回は「地図を読み込むことの楽しさを、親からわが子へ伝えてやりましょう」といった趣旨の記事を掲載しました。進学塾のブログとしては、少し本道から外れていたかもしれません。そのせいか、いつもより若干閲覧数は少なめでした。ただし、筆者が直接知っている人から、「親子で分水嶺を確認しに、ドライブがてら出かけてみました」「ネットで世界地図のジグソーパズルを楽しめる、おもしろいゲームがありますよ」など、ありがたい反応もいただきました。

 まあ、記事数にして800以上に及ぶブログですから、ともすれば類似した話題が繰り返されがちです。たまには変化をつけてもよいかなと思って書いてみたしだいです。今後もときどきこういうことがあろうかと思います。ご理解のほどお願い申し上げます。

 それでは、今回お伝えしようと思っている話題に移りましょう。たった今、「たくさんの記事を書いてきたので類似の話題が繰り返されがち」と申し上げましたが、その舌の根も乾かぬうちに、以前の記事とオーバーラップする話題をとりあげてしまいました(悪しからず)。

 みなさんはわが子に対して、「もう少しやる気を出してほしい」、「勉強に意気込みや覇気が足りない」、「もっと積極的に勉強に取り組めないものか」などのような不満や悩みを抱いておられませんか? この問いかけをしたのは、これまで多くの保護者からこの種の相談を受けてきたからです。「成績がどうやったら上がりますか?」などの相談よりも、意欲に関する相談が多いのは、「ものごとの成否はやる気しだいで決まる」というお考えがあるからだと思います。それは重要な見識で的を射ています。

 ただし、「もっとやる気を出しなさい」と子どもを諭したところで、一過性の効果で終わるか、ほとんど効果がないのはどなたも経験済みでしょう。「言われてできるなら苦労しない」というのが多くの子どもの現実です。なにしろ受験勉強は小学生にとって高レベルな内容を扱っています。求められる取り組みの量や時間もかなりの負担を伴います。しばらく放っているとちんぷんかんぷんになりかねません。こういった要素が取り組みの受動性につながるのは、まだ将来を見通して行動を律する姿勢が身についていない小学生ゆえしかたない面もあります。それでも、「志望校合格のためにがんばらねば」と、子どもも重々わかっています。やる気がないわけではないが、いざやるべき段になると気持ちも体も重くなってしまう。これが現実でしょう。この呪縛のようなものをいかにして取り除くかが受験の結果を決めるのだといってもよいでしょう。

 いっぽう、弊社の教室に通っている会員児童で、いつもよい取り組みをし、成績的にもすばらしい結果を得ている子どもたちを見てみると、確かにやる気の平均値が高いのは事実です。しかし、そのやる気はもともと誰にでもあるはずのものです。問題は、子どものもつ素朴なやる気を、受験勉強で求められるやる気(意欲)へとバージョンアップできるか否かではないでしょうか。今ちゃんとやれるいる子どもも、思うような取り組みができずもどかしい思いをしている子どもも、そもそも携えているやる気や能力に違いがあるわけではありません。

 受験勉強が軌道に乗っている子どもは、「やると決めたことを放っておくことができない」「今日やるはずのことを明日にもち越すのは耐えられない」と言います。あるいは、やろうと決意するまでもなく、体が自然と時間になると机に向かっていくのです。それは、習慣づけが軌道に乗り、無意識のレベルで体が反応するようになったからであり、そのおかげで「やればやっただけ成績が上がるのだ」ということを実感し、より高いレベルの成績をめざしていく好循環のサイクルができあがっているからでしょう。この領域まで達した子どもは、大人でも感心するほど熱心に勉強に取り組みます。そして、その姿勢は生涯失われることはありません。筆者は、心から弊社の教室に通う子どもたち全員にこうなってほしいと願っています。

 何であれ、子どもは「知りたい」という意欲をもっています。それが受験勉強で稼働しないのは、それへの準備や構えが十分にできていないからでしょう。その準備・構えを築くための出発点は、学習の「習慣づけ」に他なりません。だいぶ前の記事でご紹介したことがありますが、有名な教育社会学者の先生は「意欲は、意欲に直接働きかけて高まるものではなく、習慣づけを通して育ってくるものだ」と述べておられます。日本特有の食材や料理(納豆・味噌汁・シラス(目玉が気になる)・卵かけご飯など)を、初めて見る外国人は気味の悪いものと感じるケースが多いようです。それは食する習慣があったか否かに原因があります。幼いころから食べ慣れている人にとってはおいしいものであり、食欲を刺激する食卓に欠かせない存在に他なりません。勉強もこれと同じで、習慣づけられれば、やるのが当たり前になり、その面白さを徐々に味わえるようになり、それが学習意欲の向上へと発展・転化していくのですね。ここまでなんとしても漕ぎつけたいところです。

 おたくのお子さんの取り組みの現状を振り返ってみてください。たとえ成績がよくても、この習慣化が徹底できていないと、やがて本格的な受験勉強の段階になると、壁にぶつかるおそれがあります。

 毎日、計画を着実に実行に移せているでしょうか。今の計画に無理や無駄はないでしょうか。予習(5・6年生)・復習でやるべきことがわかっているでしょうか。がんばりチェックで重要事項の確認をしたうえでテストに臨んでおられるでしょうか。これらが連動し、やるのが当たり前になったなら受験勉強が完全に軌道に乗ったと言ってよいでしょう。

 もしもやるべきことがおざなりになっているようでしたら、学習の開始時と終了時に親が声かけをすることも必要でしょう。4年生は、家庭学習で取り組んだ問題の〇つけを保護者にお願いしていますが、きちんと対応していただけているでしょうか。やるべきことをやり終えたら、計画表の当該学習日の欄に承認のシールなどを張ってやり、子どもが取り組みの継続に向けた意欲を促す仕掛けも工夫していただけるとよいですね。

 受験生とは言ってもまだ小学生。親が関心を示し、少しでも能動的な取り組みの様子が見えたら、最大限に喜びほめてやることも必要です。決めたことをやり切ることの喜びを学びの原動力にする前段階として、親が子どもに対して率先した取り組み姿勢を期待していることを伝え、いつも温かく見守り、少しでも能動的な姿勢が見えたら褒め称える。そこから、計画実行に向けた行動力が徐々に高まるものです。成績は、努力や実行力に応じて自ずと伴うものとご理解ください。また、前述のように決めたことをやらずにはいられないという人間に成長できたなら、勉強はうまくいかないはずがありませんし、何よりも将来の人生の歩みに多大な威力を発揮してくれるでしょう。

 まずは習慣づけから。ここを原点にして、徐々に学習意欲を高め、洗練された勉強の取り組みのできる人間へとお子さんが成長できるよう背中を押してあげていただきたいですね。小学生までの子どもの勉強は、親の関わりが随分大きな役割を果たします。もしもお子さんの勉強がうまくいっていないようでしたら、親の役割は何かを今一度思い起こし、お子さんの勉強に活気をもたらすための働きかけお願いするしだいです。

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カテゴリー: アドバイス, 勉強について, 子育てについて, 家庭での教育, 家庭学習研究社の理念

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