2021 年 11 月 のアーカイブ

12/5 第5回中学入試模擬試験を開催します!

2021 年 11 月 26 日 金曜日

 師走が目前に迫り、受験シーズンが近づきつつあるのを実感するこの頃です。入試を控えた6年生児童の模擬試験も、現段階で全5回のうち4回が終了しています。残るは12月5日(日)に予定している最終回のみとなりました。受験生のご家庭では、受験対策の追い込みに向けた取り組みが熱を帯びつつあるのではないかと拝察いたします。

 仕上げ期に突入した段階での模擬試験ですから、この回は広島を代表する男女の私学(修道と広島女学院)を会場にお借りして実施します。毎年弊社の模擬試験は第5回の参加者が最も多く、ただ試験を模した問題に取り組む体験ができるだけでなく、本番に似た雰囲気を味わうよい機会ともなっています。本番と同じ場所、似た雰囲気のもとで試験を受ける体験は、人生経験の少ない小学生の子どもたちにとって心理的な圧迫を軽減するうえで大きな働きをすることでしょう。実際に受験する場所でテストに挑戦するわけですから、お子さんにとっては大人の想像以上にこの疑似体験が助けになるのは間違いありません。

 なお、今の段階からの受験対策においてご家庭で大切にしていただきたいことについては、過去にこのブログで何度か書いておりますので、ぜひそれに目を通していただきたいですね。たとえば、2019年11月18日に掲載している記事などは参考にしていただけるのではないかと思います。すでにかなり多くのご家庭がその記事を見つけ出し、読んでくださっています。よろしければお読みいただき、役立てていただければ幸いです。

 入試に限らず、芸事の発表会やスポーツの試合など、勝負事や優劣・順位がつくもの、多くの人に見られるものの本番が近づくと、誰でも緊張を強いられます。おとうさんおかあさんも、こうした機会と無縁ではなかったと思います。社内の重要な会議でプレゼン役を引き受けたなら、前の晩は眠れないほど緊張に襲われるかたもおありでしょう。だいぶ昔ですが、取引先と新商品の販売契約を成立させるためのプレゼンを担当するかたが、いよいよ開始の瞬間に意識を失い、気がついたら病院のベッドの上にいたという体験がテレビ番組で紹介されていました。

 大人ですらこんな状況ですから、お子さんなら緊張するのは当たり前のことです。保護者の方々もまた、前述のように試験本番前の緊張をよくご存じです。11月14日に開催した「オンライン親子セミナー 広島学院編」においても、「どうしたら緊張を回避できますか?」「緊張に負けないで済む方法はありませんか?」といった内容の質問がいくつもありました。

 そのとき、回答くださった広島学院の倉光先生は、「私だって、今緊張していますよ」とおっしゃっていました。つまり、緊張は避けられないもので、そこから逃げようという気持ちではなく、緊張している自分を認め、緊張と向き合えば、自ずともてる力は発揮できるものだということなのでしょう。そもそも「緊張している」という自覚があるのは、意識が正常に働いていることの証です。実力が全く発揮できなくなるのは、緊張していることすらわからないくらいのパニックに陥ったときです。

 かつては筆者も受験指導の現場に立っていました。ある年の広島学院の入試の日、担当クラスの男の子が、「先生、どうしよう。緊張してきた」と言ってきました。もうすぐ教室に入る時間になろうかというときです。彼の顔を見ると、いつに増して真っ白です。いつもの柔和な笑顔が消え、こわばっているように見えました。「だいじょうぶだよ。今までさんざんテスト練習をしてきたじゃないか。それと同じだと思えばいいんだよ」そう言って入試会場へと送り出しました。

 「はたして彼は緊張に飲まれることなく試験を受けられただろうか」 そんな心配をよそに、彼は見事合格を手にしたのでした。当時の広島学院は千名を超える受験生がおり、彼がベストを尽くせても必ずしも合格できる保証はないと思っていました。それだけに入試合格を巡る厳しい競争、そして行きたい学校の入試本番ゆえの緊張を乗り越えた彼のがんばりに、心から祝福の言葉を送りたい気持ちに駆られたものでした。こういった体験を、毎年数えきれないほど多くの受験生が繰り返しているのが入学試験というものなのですね。

 ある年の修道中学校入試で、受験会場に向かう男の子に声をかけたときのことです。「落ち着いて。落ち着いて。普段通りにやればいいんだから」 それに対して、男の子は「先生、ここは普段通りの力じゃ受からないよ」と切り返してきました。不意を突かれて息を飲みました。つぎに言ってやれる言葉が見つかりませんでした。しばらくして、「そうか。彼なりに合格できるかどうかの不安と闘い、入試に立ち向かう決心をしているんだな。すまん。何もしてやれないで」と無力な自分を情けなく思ったものでした。そんな彼の入試結果は見事合格! 当時の修道受験生は、千数百名ぐらいいましたから相当な難関です。いったい彼はどのような心境で入学試験の重圧や緊張を乗り越えたのでしょうか。それを今更ながら知りたいと思わずにはいられません。

 ここまでお伝えしたことが、多少なりとも緊張をほぐす、緊張を乗り越えるうえでのヒントになれば幸いです。ここで、心理学者の著作にあった緊張への対処法をちょっとご紹介してみたいと思います。なお、下記の調査結果を紹介した著者はバイロック氏ではなく別の人物です。

心理学者 シアン・バイロック

 私の研究チームの調査では、試験の直前に今の気持ちや考えを紙に書き出すと、失敗は許されないという精神的重圧の悪影響を小さくすることができます。書くことで、否定的考えを頭から解き放すことができるため、本番の肝心なときに後ろ向きの考えが頭にふとよぎって気が散ることも少なくなるのです。

 どうでしょうか。今の自分の気持ちを紙に書き出す。それによって自分を精神的な重圧から解放できるのだそうです。試してみる価値があると感じたら、ぜひ実行に移してみてください。

 最後に。小学生の子どもの心のよりどころは親、特におかあさんの存在です。若い頃に見た映画で思い出すのですが、屈強の大男が窮地に立ち、獅子奮迅のアクションを展開する直前に、泣きそうな顔を堪えて、「おかあさ~~ん!」と絶叫するシーンがありました。あれは世の東西を問わず母親のもつ絶大な影響力を物語るものだと思います。

 緊張から来る不安に押しつぶされそうになったとき、目の前におかあさんの優しいまなざしがあればこれほど心強いことはありません。何も語る必要はないのではないでしょうか。黙ってうなずくだけでよいのです。入試を目前にした段階での親の役割は、それだと心得てください。まさに最後の手段にして最強の手段です。それだけで十分であり、それこそが子どもにとって最大の援護射撃なんですね。

 入試の日には、弊社の指導担当者も極力お子さんがたを一人残さず見つけ出し、いつも通りの心理状態を取り戻せるようサポートします。また、そうしていると、自然と一緒に学んできた仲間も集まってくるものです。おかあさんがたは、その様子を傍で見守りながら、気持ちが落ち着いたタイミングを見計らって入試会場へと送り出してあげてください。入試本番までにはまだたっぷりと時間がありますが、今のうちに不安な要素を解消しておきたいご家庭のために、早目に入試当日のことについて書いてみました。

本番まで時間はまだまだあります。焦らず、今できることをやっていきましょう!
お子さんにとっていちばんの心強い味方はおかあさんです!

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オンラインセミナー“広島学院編” 内容報告

2021 年 11 月 19 日 金曜日

 11月14日(日)には、オンライン親子セミナー“広島学院編”を実施しました。当日は、進行役を務める筆者、広報スタッフ、オンライン担当者が帯同し、広島学院さんにお邪魔しました。下の写真でおわかりいただけるでしょうが、収録は倉光先生が普段おられる生物研究室で行わせていただきました。背景に、淡水魚のいる水槽、人体の模型が写っています。先生が手にしておられるのはダチョウの卵です。

  オンラインの催しは初めてのうえ、視聴者の方々が見えないので反応がわかりません。うまくいくかどうか不安を抱えての開催でしたが、話者の倉光先生はいつも通りのゆったりとした語り口で、わかり易いよい話をしてくださいました。

 今からセミナーの内容をかいつまんでご紹介しようと思います。なお、家庭で視聴できるのでお子さんにも参加してほしいと考え、当初は「保護者セミナー」と銘打っていたのを、「親子セミナー」に改称しました。しかしながら、親子の両方にマッチした話をするのは難しいものです。いちばん多かったのは5年生家庭(5年42%、6年35%、4年以下23%)でしたが、お子さんには多少内容的に難しかったかもしれません。それでも倉光先生は、お子さんにもわかるよう配慮してくださり、とてもよい話をしてくださったと思います。倉光先生、ありがとうございました!

 当日の話題は、倉光先生のご提案に基づいて5つに絞りました。簡単ですが、順を追って駆け足で内容をご紹介します。

 

①「なぜ男子校なのでしょうか」

 広島学院は、広島の私立男子一貫校です。この枠組みを70年以上前の設立以来堅持されています。その理由を楽しい語り口でご説明いただきました。まずは、首都圏の有名男子一貫校の校長先生が、「男子校はおたくの天国である」と発言されたことを紹介され、男子校のよさはどういうところにあるのかをお話しくださいました。

 小学校では、女子のほうが体格面でも精神面でも成長が早いため、男子は女子にことあるごとにやり込められがちです。そんな男の子たちですが、中学入学を契機に男子だけの環境になると、女の子の存在に煩わされることなく伸び伸びと活動を始めます。優秀な集団には、ある事柄については大人も全く敵わないほどの知識をもった男の子や、ある方面で大変な才能をもった男の子がいるものです。そういった個性豊かな生徒集団のなかで、互いに触発されもまれ合うことでもちまえの能力が開花し、すばらしい成長を遂げることができます。このような男子だけの環境のよさについて、わかり易く語ってくださいました。

②「なぜ中高一貫なのでしょうか?」

 上記のように、女子よりも幼稚で成長が遅い男子ですから、中学生になってからやっと精神的に母親離れする準備をしていきます。くっつきながら離れていく。倉光先生はこのように表現されていました。そして、「親離れの途上にある揺れがちな時期に、中学校と高校が分けられるのは不自然だ」と、先生はおっしゃいました。そもそも、初等教育6年間、中等教育6年間、高等教育が4年間ですが、なぜ中等教育だけが中学と高校とに分断されるのか、という疑問も提示されました。

 また、中学に入った当初はなにもかも新鮮で学業にも励む男の子たちですが、ずっとは続きません。二休み、三休みしながら高校生になり、高2ぐらいから再び学業に励むようになります。つまり、ゆったりした形状のお風呂の断面のようなカーブを描いていくのが中高一貫校の生徒の成長曲線の特徴です。それでめざす大学への進学を果たせるのが中高一貫校のよさだということなのでしょう。高校受験があったなら、そうはいきませんね。中学と高校が連結し、カリキュラムに自由度の高い一貫校だからこそ、「ゆるみの時期を見通しながら、高い次元の進学目標を達成できるのですね。

③「広島学院の教育のなかで、最も貴重だと思うことは?」

 倉光先生は、広島学院に入った生徒さんたちに、何でもいいから様々な経験を積んでほしいと願っておられます。失敗や逸脱があってもよいのです。そこから何かをつかみ取ってほしいと語っておられました。実例として、福島に行って得意なバイオリンを被災者の人たちに披露する体験を通じて、人に奉仕する喜びとともに自らの無力さを学んで帰った生徒さんの体験を紹介しておられました。

 そうした体験は、東大や京大、国公立の医学部をめざすような生徒さんたちにとっても、決して無駄なことではありません。むしろ人生の充実にとって重要なものなのですね。上記の二休み、三休みの時期と関連づけるとわかり易いのではないでしょうか。様々なことがらに挑戦し、多様な考えを身につけながら自分という器を磨いていく。そのうえで、自らの人生の夢を描いて実現していく。そういう環境が広島学院なのだということを、倉光先生のお話を通して学ばせていただきました。

④「長い間広報を担当して、一番印象に残ったことは?」

 倉光先生は、長年広島学院で広報の仕事をしておられます。筆者も、家庭学習研究社の広報担当として、かれこれ20年以上お付き合いさせていただいています。そんな倉光先生にとって忘れがたい思い出は、広島学院の合格者発表の日に目撃した光景だったと言います。

 合格を一刻も早く確かめたいという思いを胸に、息せき切って掲示板に駆け寄る男の子が目に留まりました(当時は掲示板による発表が中心でしたので、掲示板前は感動的なシーンが繰り広げられたものです)。男の子は自分の番号がないことを知ったのでしょう。泣きたい思いを堪え、後からやってきたおとうさんのほうを振り向いて両手で大きなバツ印をつくりました。それを見たおとうさんは、歩み寄って優しく息子さんの手を取り、一緒に校舎に向かって深々とお辞儀をして帰られたそうです。「不合格の掲示を見たあと受験した学校にお辞儀をして帰る。こういう親子なら、受験の合否など問題ではありません。息子さんはどの学校に進学しても、きっと立派に成長されるでしょう」 倉光先生はそのような趣旨のことをお話しになりました。

 ④までを終えたところで、しばらくの時間、ご家庭から寄せられた質問に対する回答をしてくださいました。ご紹介した質問は次のようなものでした。

1.これまでのご経験から、どのような生徒が伸びていくのか教え
  てください。
2.授業について行けない生徒のフォローの体制はありますか? 
  どういうことをしておられますか?
3.僕はまだ将来の夢が見つかりません。もし入学したら見つけら
  れますか?(お子さんから)
4.中学生と高校生は一緒に活動することはありますか? 
  あるとすればどんなときですか?

 このほか、セミナーの最中に寄せられた質問にもお答えいただきました。たとえば、「緊張したとき、それをほぐすよい方法はありますか?」などです。質問の1については、「集中力が重要です。他の子が3時間かかるところを1時間でやる。そういう集中力を養えば、同じ努力をしたときの成果が全く違ってきます」といったようなことをお話しになったと記憶しています。これに対してセミナー終了後に、「どうやったら集中力がつくのか、詳しく聞きたかった」という感想が多数書き込まれていました。保護者の大きな関心事だったようですね。また機会があればHPなどで先生のお考えをご紹介できたらと思っています。

 いずれの質問にも、倉光先生は丁寧かつ簡潔に答えてくださいました。それぞれの話はおもしろく、ここでご紹介したいところですが、長くなりますので割愛させていただきます。「質問→回答」の形式はテンポよく進むので、多数の保護者からよい反応をいただきました。

 

⑤「中学受験において、また中高6年間で母親の果たす役割とは?」

 この段階で、ほぼ予定していた1時間が経過しようとしていました。倉光先生は、「⑤のテーマに基づく話のとき、おかあさんがたに熱いエールを送りたい」と事前におっしゃっていたのですが、時間が残り少なくなっており、申し訳ない思いをしました。ですが、倉光先生はそれでも短くも丁寧に心のこもったお話をしてくださいました。

 その内容は、北風と太陽のイソップ童話になぞらえて、「入試までにはいろいろな困難があるでしょうが、おかあさんがたには太陽のような存在であっていただきたいですね」といったような内容だったと思います。男子の受験生活は、親にとってはイライラの連続です。どうかすると北風のような振る舞いに陥りがちです。そこを踏み留まり、わが子のやる気を後押しできるとしたらおかあさんしかいません。おかあさんの温かい愛情を背に受験勉強を最後までやり通す。その経験は、入試でよい結果をもたらすだけでなく、お子さんの更なる先の成長とがんばりのエネルギーとなります。「おかあさん、がんばってください!」と、このようなお話をされました。

 

 以上、駆け足でセミナーの様子をご紹介しました。準備不足の面もあり、うまくやれなかったという後悔も多々ありますが、広報の経験豊かな倉光先生のすばらしいトークに救われました。なお、倉光先生と広島学院さんの広報活動から一貫して感じるのは、縁が入試結果で左右される受験生家庭への配慮と思いやりの心です。これはカトリックのスピリットかもしれません。広島学院は、望めば入れる学校ではありません。入学の希望がかなわない受験生や家庭への礼儀として、学校の単なる自慢と受け取られかねない話はしないようにという心遣いを常にされています。筆者などは、それをじれったく感じることもありますが、一流とはこういうものなのですね。

 28日はノートルダム清心の神垣校長にお話しいただくセミナーを実施します。今回の経験を生かし、視聴くださる保護者やお子さんに喜んでいただける催しにすべくがんばる所存です。どうぞよろしくお願いいたします。

追伸:後日、倉光先生から「視聴していただいたご家庭に」と、つぎのようなメッセージをいただきました。

「先日は、お忙しい日曜日にセミナーをご視聴いただき、心から感謝しています。もしも広島学院に入学されたら、息子さんをぜひ生物研究室に招待したいですね。一緒にお茶しましょう!」

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入会前の学力チェック事項で大切なものって?

2021 年 11 月 13 日 土曜日

 秋も終わりが近づき、朝や夜間の冷え込みが厳しくなってきましたね。毎年この時期になると、次年度講座の会員募集が始まります。新4年部(現3年生対象)への入会にあたっては、「3年生 冬期集中講座」に参加いただければ、お子さんの現段階の学力状況がおおよそ判断できるでしょう(本日HPにて告知予定です。案内チラシの折り込みは14日です)。 

 なお、この講座については学費をいただかず、教材費とテスト代のみの格安な費用で参加いただけます。最終日のテストで一定の成績をあげたお子さんには、4年部前期講座の入会資格を進呈します。家庭学習研究社という学習塾を知るよいチャンスですから、ぜひご利用ください。また、「今のところ、入会するかどうかはわからない」というかたも、お子さんの学びを活性化させるよい経験になると思いますので、気楽な気持ちで参加してみてください。

 今回は、新年度講座の会員募集開始前の時期でもあり、「受験勉強開始にあたり、重要な学力要素が身についているかどうか」をチェックするための目安になる事柄を話題に取り上げました。それは何かというと、「読み書き能力」と「計算力」です。「何だ、それならうちの子はだいじょうぶ」「それぐらいのことはマスターしている」と思われるかもしれませんね。

 しかしながら、近年はそういった「基礎の基礎」が意外と抜け落ちているお子さんが増えており、受験勉強をうまくやりこなせないケースが多々見られます。早めに難しい勉強をするよりも、基本的なことを疎かにしないことが、受験を乗り越えるうえで重要なことなのだとご理解ください。今からお伝えすることは現3年生を念頭に置いていますが、もう少し上の学年のお子さんにもかなり当てはまりますので、参考にしていただければ幸いです。

 たとえば「読み」の力ですが、お子さんが本をたくさん読んでいるというだけでは「読みの力がある」と判断することはできません。外見は同じように読書を楽しんでいるかのように見える子どもたちですが、その内実には相当な違いがあります。

 挿絵などを頼りに、話の展開や終結にばかり気を奪われるような読みかたをしているお子さんがおられます。こういうお子さんは、あっという間に本を読み終えますが、話のプロセスにある様々な面白い点や重要な箇所はスルーしがちです。それでは読書がもたらせてくれる豊かな精神世界にしっかりと足を踏み入れることはできませんし、様々な新規の語彙・知識を身につけることもできないことでしょう。読みの力の増強という観点からも、成果の薄い読書だと言わざるを得ません。

 以前、同時通訳者として、また作家として活躍された女性(故人)の体験談をご紹介したことがありますが、ある国では図書館で借りた本を返すとき、カウンターにいる司書が必ず「読んだ本に何が書かれていましたか?」と子どもに確認するそうです。また国語の授業で音読を要請された子どもは、読み終えたときに必ず先生から「何が書かれていたか、簡単に内容を説明しなさい」と言われるそうです。こういったことが日常的にあると、読みの際の真剣さや集中力が違ってきます。感想文を書くのを嫌がる子どもがたくさんいますが、それは読む力が足りていないという現実的側面もあるのではないかと思います。精読して著述内容を理解する姿勢をまずは培うべきでしょう。

 おたくのお子さんの読みの現状はどうでしょうか。上述のような、飛ばし読みに近い読みかたをしておられませんか? これでは文章に書かれている大切な要素(作者が伝えたいこと、表現したいこと)に気づけませんし、活字の流れから抽出すべき情報がアバウトもしくはいい加減になりがちです。国語のテストでは、作者が伝えたいこと(主題)や人物の心情(人物のしぐさや表情、情景描写などから推察できる)、細部の仕掛け、表現の工夫や面白さに関わる部分が主に出題されます。そういった問題に弱いお子さんは、普段の読書に問題があることが多いようです。無論、読書は楽しむべきものですが、しっかり読めると、その楽しさはより深いものになりますから、読みの能力獲得の前提となるスキルをしっかり磨くとともに、著述内容を丁寧に読み進めていく姿勢を身につけてほしいですね。

 ところで、読み(黙読)の土台を築くために欠かせない習練は音読だということを、これまでしばしばお伝えしてきました。まずは、おたくのお子さんの状態をチェックしてみましょう。本や教科書の1ページをひととおり音読させてみたら、読みの現状がわかります。誤読や躓きがなく、すらすら読めるようなら黙読力も備わっていると思って差し支えありません。それができないお子さんは、文字の連なりから言語を抽出する力、言語と言語の接続関係を判断する力が足りません。読みに時間がかかるうえ、書かれている内容の理解も不十分ですから、どの教科の学習においても苦労が予想されます。そういうお子さんの多くは「本が嫌い」と言います。それはうまく読めないので読書が苦痛だからです。

 もう一つ。お子さんが読み終えたら、「何が書かれていた?」と尋ねてみてください。その返答にがっかりされるかたもあるかもしれませんが、ちゃんと読めない現実がわかっただけでも収穫です。まだ巻き返す時間はたっぷりとあります。まずは音読の習練をし、そこから安定した正確な読みの力をつけていきましょう。そうすれば本を快適に読めるようになるし、著述内容もよく理解できるようになるでしょう。繰り返しますが、音読がスムーズにできてこそ黙読力も身につくということを忘れないでください。

 つぎは「計算力」についてチェックしてみましょう。低学年での基礎計算力として重要なのは掛算九九や筆算などです。これらが不十分なのに「ちゃんとできる」と、お子さんも保護者も思い込んでおられるケースがあります。

 九九は、「いんいちがいち、いんにがに」といったように順に上がっていく「上がり九九」と、「くくはちじゅういち、くはしちじゅうに」と下がっていく「下がり九九」、「ろくはよんじゅうに、さんぱにじゅうし、ごくよんじゅうご」などとランダムに問われて対応できる「途中九九」とがあります。すべて縦横無尽に答えられないと役立ちません。また、筆算の際の位取りがスムーズにできないようだと、後々の算数の発展について行けなくなります。これらの状態をチェックしてみてください。

 算数において、もう一つ押さえておきたい大事なことがあります。計算の操作ができたとしても、数の意味がわかっていなければ計算力が身についているとは言えません。式を自分で考えなければならない学習場面で躓いてしまうからです。たとえば、2~3行の簡単な文章題を例にあげてみましょう(3年生の課題です)。

 計算式が提示された問題なら造作なくできても、このような問題が出されると、たちまち立ち往生するお子さんがいます。足し算なのか引き算なのかが判断できず、式が立てられないのです。これは計算の意味が理解できていないことに起因します。「足し算か、引き算か」のヒントがなければ答えられないお子さんは、真の計算力を備えているとは言えません。

 ある調査で、5年生に5分の4m×3mという数式を用いた文章題をつくらせたところ、正解者は2割ほどしかいなかったそうです。これも計算の意味がわかっていないことが原因でしょう。驚くような誤答の例として、「5分の4mのつくえと、1mのいすを3つ買いました。ぜんぶで何mですか」などがあったとか。これは、掛け算と足し算の違いが理解できていないからでしょう。また、辺の掛算が意味すること(長方形の面積を求める)にも気づいていません。計算の意味を理解することがいかに大切かがわかりますね。

 以上のように、計算力には意味理解と操作の習熟という両面があります。両者は互いに連動しながら習得すべきものです。算数の基礎として欠かせない計算ですが、習熟的側面ばかりに目が向くと、ほんものの計算力は身につきません。少数と分数の計算は、高学年に進級した子どもたちが突き当たる算数の壁としてよく知られていますが、これらも低学年期にほんものの計算力を身につけていれば問題なく乗り越えることができます。今のうちに真の計算力を身につけておきましょう。

 弊社では、4年部から受験対策としての算数・国語指導を開始します。そこでの勉強の土台となるのが読み書きの力(書く力については、この記事では省略しました)や計算力です。これらは知識や技能の獲得、学習の発展を支えるエンジンのようなものですから、疎かにすると勉強が成り立たなくなります。

 「3年生 冬期集中講座」は、考えること、知ることの楽しさを味わう機会を提供することを意図するとともに、上述のような基礎の基礎がしっかり身についているかどうかをチェックする役割も果たします。その意味においても、ぜひ参加していただきたいですね。

 確かな基礎が、学習の発展を支える!

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お子さんの中学受験を視野に入れておられるかたへ その3

2021 年 11 月 5 日 金曜日

 前回は、広島の中高一貫校の教育内容をご紹介する、「オンライン親子セミナー」という催しの開催についてご案内しました。11月1日(月)より受付を開始しましたが、たちまち多くのお申し込みをいただきました。すでに広島学院編(14日実施)も、ノートルダム清心編(28日実施)も当初の定員(各200家庭)に達しており、急遽定員枠を拡大することにいたしました。

 もうしばらくは申し込みを受け付けますが、お申し込みの締め切りは11月10日(水)の正午となっております。この時点でお受けできなくなりますので、参加をご検討いただいているご家庭におかれては、お早めに申し込みいただきますようお願いいたします。

 さて、今回はすでに上記タイトルでお伝えしている記事の続編(その3)を書いてみようと思います。初回は、中学受験専門塾としての弊社が、どのような受験をめざしているかをお伝えしました。成長途上にある小学生の受験勉強は、表面的なテスト学力の獲得のみに走るべきでなく、将来の大成を視野に入れたものであるべきだということ(詰め込みやスキル獲得に偏った学習は望ましくない)、人間としての枠組み形成が健全なものとなるよう配慮すべきであることをお伝えしました。2回目は、塾としての基本方針に基づき、弊社はどのような学習指導を実践しているのかについて簡単にお伝えしました。

 もう一つ絶対に外せない大事な要素があります。それは「家庭教育」との連携です。受験勉強をすべて学習塾で賄うという方法もあるようですが、中学進学後の長い学びの人生を視野に入れるなら、家庭での一人勉強の姿勢確立は欠かせないものです。いわゆる自己教育力を育てておくという意味においても、家庭でいる時間をどう過ごすか、勉強の算段を自分でできるかどうか、やると決めたことを実行に移せるかどうかなどは、将来の学びの発展を踏まえると絶対に欠かせない条件と言えるでしょう。ただし、受験の主人公たる子どもはまだしつけ途上にある小学生。子どもに任せてうまくいくのは難しいと言わざるを得ません。家庭生活を一緒に営み、なにくれとなくお子さんの世話をしておられる保護者のサポートの如何が、今申し上げた学びの自立を果たせるかどうかを決定づけることになります。

 ところで、親がわが子の志望校合格を願う、その根底にある思いとは何でしょうか。「わが子の可能性を広げてやりたい」「自分で夢を見つけ、叶えられる人間になってほしい」「自分の力で生きていける力を備えてほしい」「社会に貢献できる人になってほしい」「充実した、幸福な人生を送ってほしい」……そんな親心ではないでしょうか。このことが意味するもの。それは、子育ての最終目標は子どもを「前向きで自立した人間」に成長させる、ということであろうと思います。子どもの学習を見守るうえで、この本質を見失ってはなりません。

 そこで、子どもがそのような成長をとげるために必要な学習姿勢を5つ挙げてみます。

 これらを見ていただくと、学習塾の指導もさることながら、家庭教育の範疇で捉えるべき要素が多分にあることにお気づきでしょう。こういった姿勢を身につけるには、ご家庭と塾とが子どもの将来を見すえて同じ見解に基づき、ねばり強く子どもをサポートする必要があるのではないでしょうか。

 突然筆者の昔話をして恐縮ですが、筆者は上記のような観点に基づく家庭教育を経験しませんでした。大学に進学し、首都圏の中高一貫校出身者を知って驚きました。彼らはあくせく勉強している様子がなく、結構遊んでいるように見えるのに試験でよい成績をとります。理由は、常に先を見通しながら、段取りよく物事の準備をする習慣が身についていたからでした。地方の公立高校出身の筆者は、行き当たりばったりの勉強で「自分はできる」とうぬぼれていたのでした。とても恥ずかしく思うとともに、「彼らのような自律的な行動様式、自己管理の方法を自分も身につけていたら」と悔やみました。というのも、いったん染みついた悪い習慣はなかなか改善できないということも身に沁みて思い知ったからです。

 もしも弊社にご縁をいただいたなら、ぜひお子さんの家庭勉強の自立に向けたサポートをお願いしたいですね。2回目(前々回の記事)でお伝えした、「週3日通学制」の意味をご理解いただき、家庭にいる時間を有効に過ごしながら、「自ら学ぶ」姿勢を築けるようお子さんをサポート願えたらうれしいですね。もしもうまく行ったなら、しつけの仕上げ期の親の役割を見事に果たされたことにもなるでしょう。

 そこで筆者からの提案です。入会前の今の段階から、お子さんの自立に向けた接しかたを試みてみませんか?無論、すでに上手にお子さんを自立させておられる保護者もおられるでしょう。「いや、あまりわが子は自立できていないぞ」と思われたなら、次のような接しかたを基本に置いてみてはいかがでしょうか。以下を、「宿題をうまくやれる子どもになろう!」を親子のテーマに掲げたと仮定して考えてみてください。手伝いなど、他の様々なことがらにも適用できると思います。

<子どもの自立促進に向けた親の働きかけ>

 の、「子どもに相談する」は、日本家庭にはなじみが薄いかもしれません。これは、親から相談をもちかける形式にすると、子どもに「自分で決めたことだ」という意識をもたせる効果があるからです。目標を「宿題をうまくやれる子どもになろう!」としたら、その具体化にあたっての決め事をお子さんが考えるよう仕向けるわけです。「今、自分でやろうとは思っていても、できないのはなぜかな?」などともちかけ、やりとりしながら具体案を考えさせるとよいでしょう。

 の、「信頼して見守る」は難しいことです。いつまでもテレビを観たり、ゲームにかまけていたりすると、親はついイライラして怒鳴ってしまいがちですね。それでは反発を招くだけ。こういうときは、「あれっ? 勉強の時間になっているね」など、子どもを我に返らせるような切り口で声をかけるとよいでしょう。子どものプライドを守り、自分から行動を修正させたことになります。このような親の辛抱が、自発性を涵養するステップとして、やがては大いに効果をもたらすものです。

 は、フィードバック効果を引き出す作戦です。ちょっとの進歩、努力の様子が見られたら、すかさずほめてやるのです。親がほめることは、「自己肯定感」を育てる意味においても、計り知れない効果をもたらします。親にほめられて育った子どもは幸せです。親子間の、過去の忌まわしい思い出と無縁な人生を送れるからです。ときどき、「おとうさんがほめてたよ」などと間接的な情報を伝えると、これもまた大いに子どもの実行力を高めることになります。

 子どもに相談して、子ども自身に考えさせる、決めさせるという親の働きかけを、日本の親は得意にしていないようです。おたくではどうでしょうか。下の資料を見ると、他国と比べて日本の親、特におとうさんは子どもへの働きかけが著しく少ないようです。試してみる価値があるのではないでしょうか。

 受験生活を通じて子どもを自立した人間にする。簡潔に申し上げると、それは小学生を預かる弊社の最も重要とする方針です。受験での合格については、全社一丸となって研究し、実現に向けて努力しています。「合格したその先」を見て、保護者と一緒に子どもたちを応援する。それが弊社のコンセプトです。ご理解ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

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