2022 年 1 月 6 日 のアーカイブ

緊張を乗り越え、入試本番で実力を発揮するには!?

2022 年 1 月 6 日 木曜日

 明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 新たな年の始まりとともに、すぐさま広島県西部地区では私立中学校の入試が始まります。1月4日(火)に行われたAICJ中(入試Ⅰ)を皮切りに、本日(1月6日)は崇徳中(前期入試)、週末の8日・9日には5~6校の入試が予定されています。厳寒期の入学試験は体調もパフォーマンス発揮に影響しますので、体調の管理にはくれぐれもお気をつけください。

 昨年最後のブログで、「緊張は悪いことではない。むしろ適度な緊張は実力発揮に貢献する」ということをお伝えしました。しかしながら、問題はどうやったら適度な緊張状態をつくれるかです。

 そこで、ちょっとよい話をお伝えしましょう。実は、「緊張は味方である」ということを知っているだけでも、緊張はコントロールできるのです。以下の研究結果は、精神科医の樺沢紫苑氏が、著書「いい緊張は能力を2倍にする」で紹介されているものです。

 ハーバード大学のジャミソン博士は、60人の学生を二つのグループに分けて数学の試験を行いました。片方のグループには、「緊張はパフォーマンスを高める」という説明をし、もう片方のグループには何の説明もしませんでした。前者のグループには、「不安な感情はパフォーマンスを下げると考えられていますが、最近の研究では緊張はパフォーマンスを下げない、むしろ不安があったほうがパフォーマンスを上げるということがわかっています。もし試験中に不安を感じたら、緊張はあなたの助けになることを思い出してください」と伝えていました。さて、試験の結果はどうなったでしょう。

 説明しなかったグループの平均点は705点でしたが、説明をしていたグループの平均点は770点でした。この結果は何を意味するでしょう。「緊張はパフォーマンスを上げる」ということを知っているだけで、緊張によるマイナスの影響を取り除き、逆にパフォーマンスを上げる効果を引き出すのです。「成績のよい学生がそのグループに多くいたからじゃない?」と思われたでしょうか。この種の実験は、被検者の学力を均等にしたうえで行うのが常識です。ですから、そういった懸念は無用です。

 さて、つぎは緊張がどうやって生じるのかに関する科学的な説明です。前出の樺沢紫苑氏は、緊張の理由はたったの三つであると述べておられます。その三つとは、①「交感神経が優位」、②「セロトニンが低い」、③「ノルアドレナリンが高い」です。以下は、それぞれに関する簡単な説明です。上記の樺沢氏の文献にあった説明をごく短くしたものです。

①「交感神経が優位」
 交感神経が優位になると、心拍数、血圧、呼吸数、体温が上がり、筋肉は緊張する。いっぽう、副交感神経が優位になると、逆に心拍数、血圧、呼吸数、体温が下がり、筋肉は弛緩する。交感神経が優位になると、緊張で全身の活動性が高まるが、程度が一定領域を越えると思考が正常に働かなくなる。
対策→副交感神経を優位にする

②「セロトニンが低い」
 セロトニンは、「落ち着き」「平常心」「心の安定」「共感」などを司る脳内物質で、健康な生活に欠かせないものである。セロトニンが十分な状態にあると、心が安らぎ癒された感情に満たされる。欠乏した状態にあると、朝に弱い、イライラする、カッとしやすい、ものごとの切り替えができない、などの症状を呈する。
対策→セロトニンが適切に働く状態をつくる

③「ノルアドレナリンが高い」
 緊張状態になるとノルアドレナリンが分泌され、集中力、判断力、記憶力などが研ぎ澄まされた状態になる。したがって、ノルアドレナリンは自分のもてる力を最大限に発揮するために欠かせない脳内物質である。ただし、分泌量が増えすぎると緊張状態を引き起こし、さらには不安に襲われるようになる。
対策→ノルアドレナリンの分泌を適度に押さえる

 「アドレナリンとノルアドレナリンはどう違うの?」と思われたでしょうか。組成は非常に似ているものの、前者は体全体の働きに影響し、後者は主に頭の働きに影響するという違いがあるようです。緊張の理由は上記のとおりですが、対処の方法がわからなければ緊張は克服できません。そこで、前出の樺山氏の著作で紹介されていた対処法から、中学受験生が採り入れて効果のありそうなものをいくつか挙げてみようと思います。

① 副交感神経を優位にする方法
 もっとも簡単な方法は「深呼吸」です。ですが、大半の人がうまく活用できていません。一気に息を吸い、一気に吐いてしまうからです。これでは呼吸が浅くなり、却って緊張を強めてしまいます。5秒かけて鼻から息を深く吸い、10秒かけてゆっくり口から吐き、さらに5秒かけて肺にある空気をすべて出し切るのです。緊張しやすい人は、もともと呼吸が浅い人だそうで、上記のような深い呼吸を一定期間練習するとよいそうです。いざ本番のときに深呼吸を何度か繰り返すと、気持ちがそれに集中し、緊張していることも忘れる効果があります。

② セロトニンを適切に働かせる方法
 セロトニンを欠乏状態にしないためには、睡眠時間をたっぷりと取る必要があります。今からは、”早寝早起き”を心がけましょう。睡眠が足りないとイライラが増し、緊張が高まったり、注意散漫になったりしがちです。また、入試会場には少し早めに着くようにしましょう。到着直後に緊張が一気に増しますが、おかあさんと笑顔で話をしたりする時間的余裕があると、緊張が程よく緩和されてちょうどよい緊張状態になります。笑顔を取り戻せばパフォーマンス発揮間違いなし!

③ ノルアドレナリンの分泌を適度に押さえる方法
 扁桃体は、安全と危険、快と不快を、思考が働くよりもはるかに早く判断し、ノルアドレナリンの分泌をコントロールする脳部位です。過度の緊張に襲われると、ノルアドレナリンの分泌量は一気に増加します。これに対処する方法の一つは、お子さんがすでに行っておられます。模試を受けていることです。過度の緊張を未然に防ぐには、疑似体験をしておくことが有効ですが、お子さんは模試を通してすでに何回も入試の疑似体験をしておられます。これが過度の緊張を緩和するうえで有効なのです。「そっくり」を経験しておくという意味では、過去問を多めにやっておくことも有効でしょう。もう一つ、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と、つぶやくことも緊張緩和に寄与します。

 どうでしょう。簡単におさらいをしておきましょう。

1.「緊張は、本番での実力発揮につながる」ことを知っている
2.正しい深呼吸を本番前に繰り返す
3.早寝早起きを励行する
4.入試の疑似体験をしておく →お子さんは体験済み

 以上が入試本番で緊張に襲われないための対策です。すでにお子さんは半分を体得済みですから心強いですね。これらのことをおとうさんおかあさんから伝えてあげてください。あとは、入試までの残された期間の入試対策学習を、焦らず、欲張らず、集中して行ってください。

 なお、本来は入試会場に指導担当者が出向き、お子さんがたを見つけて声をかけて緊張を解きほぐしたりするのですが、昨年来のコロナ禍においては、入試での塾関係者の応援自粛の依頼がいくつもの学校から出されています。誠に不本意ではありますが、ご了承いただきますようお願いいたします。

全受験生のみなさん、悔いなきラストスパートを!

※今回の記事の大半は、「いい緊張は能力を2倍にする」樺沢紫苑/著 文響社 の著述を参考にして書きました。

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カテゴリー: がんばる子どもたち, アドバイス, 中学受験