2022 年 3 月 のアーカイブ

入試まで10カ月しかない? あと10カ月もある?

2022 年 3 月 28 日 月曜日

 早いもので、2022年度の講座が開講しておよそ1ヶ月が経過しました。ただし、学校は現在春休みであり、まだ新学期開始には至っていません。新6年部生の子どもたちも「いよいよ来年は受験するんだ!」という意識はあるものの、おとうさんやおかあさんから見たら、まだまだのんびりとしているように見えるかもしれませんね。

 試しにお子さんと一緒にいるとき、「入試まで残された期間を、月ごとに指を折って数えてみよう!」と振ってみてください。「えっ、あと10ヶ月ほどしかないよ!」と驚かれるかもしれません。ただし、子どもは大人の期待や予想とは全く違う反応を示すことが多いものです。特に男の子の場合、「あと10カ月もあるじゃん」などのように、無自覚を絵にかいたような返答をしてくるケースもしばしばあります。親でなければ微笑ましいエピソードで済むかもしれませんが、これがわが子のことであれば、がっかりしたりイライラしたりで、嘆かわしい思いに駆られる保護者もおありでしょう。

 これはある程度しかたありません。もうすぐ最上級生になるとは言っても、まだ11歳の子どものことです。人生で数々の経験を積んできた大人と違い、残された時間と、その時間枠で何ができるかを突き合わせて考える思考様式が身についていないのですから。

 したがって、これを機にお子さんが一気に本気モードに変わるかというと、そう簡単にはいかないものです。小学生にとって、2~3ヶ月以上の先を見通すのは難しいことなのだとご理解ください。そう、大袈裟に言えば2、3カ月先は"未来”に等しいのです。それでも、「入試まであと10ヶ月なのだ」という事実は心の片隅にセットされることでしょう。この意識をもたせることから、本格的な受験勉強の始まりに向けた第一歩を踏み出してまいりましょう。

 ここで少し具体的な提案をしてみます。この春休み中に「今の自分の学力がどのような状態にあるか」や、「当面、自分は何に力を注ぐべきか(自分に足りないのは何か、どの教科・単元が弱点か)」などについて、親子で話し合ってみてください。そのとき、これまでの教科ごとの成績、単元の得手不得手についてチェックしてみましょう。そのうえで、これからどのように対策をしていくか、作戦を練るとよいでしょう。平均点がとれず、基礎が不十分な教科については、これまで配布された副教材のやり直し、5年部テキスト内容の復習、テストのやり直しなど、お子さんと何をするかについて一緒に考えてあげてください。それがきっかけとなり、受験に対する意識も変わってくることもあるでしょう。

 無論、教室で指導にあたっている担当者も、子どもたちの自覚ややる気を引き出すべく、5年部生の頃とは違った入試に直結する話を少しずつ加えながら子どもたちの取り組みに刺激を与えてまいります。教室の雰囲気も、これまでとはどことなく引き締まったものに変わり、最上級生の6年生になるという自覚と相まって、少しばかり落ち着いた大人びたものになっていきます。こうした諸々のことも、お子さんの意識や取り組みを変えていくでしょう。

 なお、これまで少しずつ学校の履修内容を先取りしてきましたが、この4月末で小学校課程の履修内容をすべて学び終えます。これをもって基礎学力の養成指導の期間が終了し、ゴールデンウィーク明けから、いよいよ応用力の養成指導に移行します。その意味においても、前述のような学力状態の点検や、これまでの振り返りをしておくことは大いに意味のあることです。

 また、これは毎日生活を共にされている保護者にお願いしたいことですが、子どもの意識を高めるには、周囲の大人が言い聞かせるのではなく、子どもの意識に刺激を当てるような接しかたのほうが効果的です。一人前に扱われることで、自律の姿勢が高まるからです。一方的な命令や指示は、効果がないばかりか、子どもの反発を招いてしまい、親の意図に反する逆効果を招く事態に至りがちです。お子さんは、もうすぐ思春期に到達するのですから当然のことでしょう。ご理解ご協力の程よろしくお願いいたします。

 もう一つお伝えしておきたいことがあります。お子さんのなかには好きなスポーツや習い事などがあり、今も続けておられるご家庭も少なくないと思います。それらを中断すべきかどうか迷っておられるかたはありませんか? その判断において大切なのは、お子さんが続けたいという意思をはっきりともっておられるかどうかです。いけないのは勉強も好きなことも中途半端になることです。「言い訳無用」の気持ちをお子さんにもたせれば、お子さんの意識や実行力の進歩というすばらしい成果も期待できるでしょう。

 つまり、もしもお子さんが「続けたい」とはっきり意思表示されるなら、続けることはハンディにはなりません。「好きなことを続ける分、時間を有効に使って集中力の伴った勉強をしていこう」と励ましてあげてください。中学校に進学したら、部活と学業との両立が大きな課題となります。受験のプロセスで既にそれを経験し、乗り越える体験をしておけば、親としてこれほど安心なことはありません。

 もう一度繰り返します。大人にとっては入試まで僅か10カ月ですが、子どもにとっての10カ月は大人の何年にも匹敵するほど先のことです。辛抱強くお子さんに問いかけ、考えさせ、今やるべきことを行動に移すよう励ましてあげてください。やったことが成果につながるには時間がかかります。そのことを実感する経験を通して、徐々にお子さんは入試までを見通しながら受験勉強に打ち込む、一人前の受験生になっていくことでしょう。

 焦らず、愛情深く、お子さん自身の考えを引き出しながら応援してあげてください。

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中学受験のほんとうの価値はどこにある? その2

2022 年 3 月 21 日 月曜日

 今回も前回に引き続き、中学受験をすることの価値について考えてみようと思います。無論、行きたい学校への進学の夢を叶えるための受験ですから、「合格」をめざす強い意志に基づいて学ぶ必要があるのは言うまでもありません。しかしながら、中学受験の勉強を通して得られるものを他にも知っていたなら、心身の成長期に受験をすることの意義はさらに高まるのではないでしょうか。そのことに立脚し、適切な見守りやフォローをするのが大人(保護者や学習塾)の役割であろうと思います。

 前述のように、受験生は成長途上の年齢期にあります。子どもが先々心豊かな人生を歩むことを期待するなら、合格以外の成果としてどのようなものが得られるのかを、いろいろな角度から検証することは決して無駄なことではありません。また、合格以外に大切なものの価値を見誤らないことが、進学の夢の実現と、その先にある人生の歩みに希望の光をともすことにつながるのだと筆者は考えています。

 さて、それでは今回みなさんにお伝えしたい事柄を順次取り上げ、子どもの成長との関わりについてともに考えていただこうと思います。

 

③ 学問に造詣の深い人間へと成長するための基盤を築ける。

 中学受験対策の勉強は、どう取り組むかで内面の成長の様相を大きく変えます。進学のための手段としての学習に終始するか、それとも新たな知識や考えを獲得する過程で得られる楽しさや喜び、興奮など、心的な充足感に惹かれて学習するかは、おのずと人間形成にも影響を及ぼします。

 テストでよい点を取りたい、受験で合格したいという思いは誰しも同じでしょう。しかしながら、学習を通して未知の世界に惹かれる体験を数多くするほうが、心の充足につながるし、将来到達する知的水準が高くなるのは疑いようがありません。そもそも人間が学ぶのは「何かのため」ではありません。「目の前の学習対象そのもの」に真の学びの目的があると言われます。すなわち、「知りたい」「解き明かしたい」という願望を成就することこそ、人間が心血を注いで学ぶ理由なのです。こうした体験を成長著しい時期に繰り返すと、将来学問に造詣の深い人間になる可能性が高いのは間違いありません。

 そこで保護者に留意していただきたいのは、テストで好結果をあげることを期待するのは当然としても、それを必要以上に子どもに要求するのは控え、それぞれの教科の勉強の中にある楽しさに子どもが気づき、興味をもって取り組むようフォローすることです。わが子が、少し難しい算数課題をやり終えたときなど、「よく解けたね」とほめた後、どのような思考の道筋を辿って解いたのかを尋ねると、一生懸命になって説明してくれるかもしれません。そういう経験を通じて、子どもは自分に自信をもつこともできるし、勉強がより好きになる可能性もあるでしょう。

 受験勉強は楽なものではありません。それどころか、かなりの負担を強いられます。だからこそ、興味をもって前向きに取り組む体験へと転じるよう、大人がうまく導く必要があるのだと思います。

 

④ メタ認知的な思考や行動の様式が身につく。

 これはテスト対策の勉強に限りませんが、ものごとで確実にスキルアップしていくためには、自分ができていることとできていないことを客観的にとらえ、問題点を見つけては修正をはかる必要があります。このように、自分の認知の状況を認知することを「メタ認知」と言いますが、それができるかどうかは、ものごとのはかどりに大きな影響を及ぼします。

 メタ認知的な思考や行動は、受験勉強のような時間や労力を要する目標の達成プロセスに大きな作用を果たします。テストで得たデータを検証して成果と課題を洗い出し、不十分な点や当面の課題を埋め合わせていくことをくり返すか、それをしないまま次の勉強に進むことをくり返すかで、同じレベルにあったはずの受験生の学力が、1年もすれば大きな違いとなり、受験での結果を決めることになります。

 そこで弊社では、テスト結果が返ってきた後、自分の答案を点検し、必要に応じて弱点や足りない点を埋め合わせるよう指導しています。まだ新年度の講座が始まったばかりですから、テスト結果を検証して必要な手当てをする習慣を定着させることを怠らないよう、ご家庭におかれても助言やフォローをお願いいたします。

 すでに出たテスト評価を覆すことはできません。そこで、どうかすると悪かった過去のテスト結果を埋め合わせることよりも、つぎのテストへの備えのほうに気を取られがちです。しかし、過去の失敗の原因をしっかり掌握し、つぎに同じしくじりをしないよう対処する姿勢を身につければ、やがて無用な失敗をしないようになりますし、自分に合った勉強法を見出すこともできるようになります。

 ぜひ、今のうちにテストと併行して、自分の勉強の現状を客観視し、より効果的な勉強をしていくための体制を築いていきましょう。それはやがて中学校進学後の学習において強い武器になり、学習の進展に寄与することにもなるでしょう。

 

⑤ 生涯変わることのない親子の信頼関係を築ける。

 中学受験は、親の協力なしには成立しない受験です。はじめから完成された取り組みのできる子どもは皆無であり、不完全、不十分な勉強を繰り返しながら少しずつ要領を理解し、自立した勉強へと前進していくべきものです。弊社はそういったプロセスを通して子どもたちの成長を促すプログラムに基づいて指導しています。

 しかしながら、このような受験生活はご家庭の保護者にとってはストレスの種にもなりがちです。取りかかるべき時間になったのにいつまでもテレビにかじりついていることもあるでしょう。やっと机に向かって勉強し始めたと思ったら、すぐにゲームをいじり始めていることもあるでしょう。散々なテスト結果をもらって帰ったというのに、少しも反省している様子が見られないこともあるでしょう。

 こういった不完全な勉強を見ていると、たまりかねて怒鳴ってしまう保護者もおありでしょう。ですが、親として何を期待しているのかをあきらめずにわが子に伝え、「どうすべきだったか」を問いかけること、少しでも進歩していることがあったら、それを見逃さずにほめて元気づけることをくり返していると、やがて子どもは親が何を自分に期待しているかを理解し、少しずつその期待に沿った行動をするようになっていきます。

 思い通りにならないわが子に癇癪を起すことなく接し、辛抱強く親の気持ちを伝える。どうすべきかを子どもに問いかけ、できるようになるまで励まし続ける。その繰り返しの中で、少しずつ受験生としての自覚を高め、やるべきことが自分でできるようになるまで温かく厳しく応援してくれる。それができるのは、世界中探しても、おそらくその子どものおとうさんとおかあさんしかいないことでしょう。

 おとうさんおかあさんのご苦労は並大抵のものではありません。しかし、それで得られるご褒美もかけがえのないものです。それは一生ものと言ってもよい「親子の信頼関係」に他なりません。やがてお子さんは親の元を離れていき、独り立ちしていきます。そのとき、「うちの子はそれなりにやっていけるだろう」と信じて送り出せる信頼関係を築いていれば、どんなに心強いことでしょう。中学受験のプロセスは、この強い信頼関係を築く絶好の媒介となるものです。

 

 他にも、中学受験のプロセスで築ける素晴らしい宝物はあるでしょう。今回は、筆者が思いつく大切なものを5つほど取り上げてみました。新年度の講座は始まったばかり、ですが、すでにスタート時の気持ちが揺らいだり混乱に陥ったりしている保護者はおられませんか。今回の記事で参考になる点が少しでもあれば、それをもとにもう一度受験生活の立て直しを図っていただきたいと思います。

 

 初心を忘れず、現状を冷静に見届けながらわが子を応援してまいりましょう!

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中学受験のほんとうの価値はどこにある? その1

2022 年 3 月 13 日 日曜日

 新年度の講座が開講しましたが、まん延防止等特別措置は解除されたものの、新規感染者の数は高止まりの様相を呈しており、決して油断できません。朝の通勤時間帯のバスは解除前よりもかなり込んでいるように感じます。決して気を緩めることなく、感染防止への配慮を怠ることなくなく継続してまいりましょう。弊社の活動も、教室での学習指導と併行してオンラインでも行い、感染防止に努めながら維持してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、今回は受験生の保護者の方々にもっていただきたい視点についてお伝えしようと思います。受験する理由は、どのご家庭も「進学の目的を叶えるため」「合格のため」とお答えになるでしょう。それは当然のことです。ですが、稀に違った視点からお子さんを弊社に通わされた保護者もおられます。その意図について考えてみたのですが、その結果中学受験のもつ別の大きな可能性に気づかされることになりました。そこでこのブログで取り上げ、ともに考えてみていただこうと思ったしだいです。

 だいぶ前のことです。成績は良好で難関校への合格も視野に入る男の子がいたのですが、入試直前まで通われていたのに受験はされませんでした。では、何のために通ってくださったのでしょうか。うろ覚えですが、お子さんの学習に向けた取り組みを見て、また地域のトップレベルの中学受験生に遜色のない学力が身についたことを確かめ、「先の見込みは十分に立った」と判断されたようでした。

 その保護者がお子さんを弊社の教室に通わされたのは、わが子の頭脳を鍛えておく、あるいは将来高いレベルの学問を修めるための素養を身につけておくという意図をおもちだったのでしょう。親が安易に手を差し伸べることなく(助言や励ましはされたと思います)、わが子の学ぶ姿を見て判断されたとしたら、その試みは慧眼であると思わずにはいられません。児童期後半までの学びの体験こそ、将来に向けた可能性の基盤を築いてくれるからです。

 もしも現会員のご家庭の保護者が、合格のための学習とは違った視点に立ってお子さんの学ぶ様子を見守り応援されたなら、「合格」よりも価値のある宝物を手にすることもできるでしょう。「二兎を追うもの一兎を得ず」という諺がありますが、近年の中学受験合格を巡る競争はかつてとは比較にならないほど落ち着いたものになっています。受験勉強を「合格」のための手段に限定してとらえるのではなく、将来の大成に向けた布石を打つ場としてもとらえるほうが、お子さんにとってはるかに有益だと思います。そういった受験で最高峰の中学校に合格することも、今なら十分に可能なのですから。

 では、中学受験を通して得られる「合格以外の価値」とは何でしょうか。今から、それを簡単にご説明してみようと思います。

 

① 学問に適した頭脳を形成することができる。

 児童期の中盤から終盤にかけての時期は、子どもの学びのポテンシャルがおおよそ定まる時期にあたります。この時期に「知識」を得ることと「思考」することをくり返す体験は、子どもの頭脳を著しく成長させてくれます。

 高いレベルの学問を修めるにあたり、知識の量は必須ですから、覚えることも非常に大切です。しかし、それだけでは味気ないし使える頭脳は形成されません。小学生の子どもは、「なぜだろう?」「どういうことなのだろう?」「知りたい!」などの欲求に突き動かされると、時間を忘れて夢中になります。知識を得ることと思考すること。両方のバランスが重要でしょう。弊社の「基礎力養成期(4年生~6年生の初め)」の学習は、このような勉強をするうえで最適な環境と言えるでしょう。覚えることもテスト対策で求められますが、考えて解決することを要求する課題もたっぷり用意されています。

 ここで留意したいのは、思考するには手もちの知識がベースになるということです。したがって、知識の獲得を「詰め込み」と同一視しないことが重要です。「いろいろなことを知っている」という意味で知識をとらえたなら、覚えることも大切な勉強の一部なのですね。ただし、なかには覚えるにも考えて解き明かすにも手間どるお子さんもおられるでしょう。しかし、人間の脳はうまくできています。その努力を惜しまず取り組み続けるうちに、少しずつ脳の神経ネットワークが順応(シナプス結合をくり返す)し、やがては情報処理に長けた頭脳ができあがっていきます。中学受験の準備学習は、知識の量を増やし、考える力を鍛えるうえで、ちょうどよい負荷を脳に課してくれる、学習脳の成長にうってつけの場になるのですね。

 

② ものごとを実行するうえで必要な段取り力が備わる

 私立一貫校の先生にお聞きすると、宿題を滞ることなく提出している生徒さんと、提出が滞りがちな生徒さんとがいます。提出状況の差は、時間が経つほどに学習のはかどりに影響を及ぼします。そして、1年もすれば大きな学力差となって現れます。力をつけた生徒さんは学習のレベルアップに対応できますが、宿題を溜める生徒さんは大概ついて行けなくなります(フォローが大変なようです)。やがて、めざす大学の水準に大きな隔たりが生じていることでしょう。もったいない話です。

 大人でもそうですが、少し面倒なことをやらねばならないとき、つい後回しにして直に首が回らない状態に至りがちな人がいます。後手を踏むとどうなるかわかっているのに、段取りをつけて準備することができないタイプの人です。そんな人のなかには、「もはや凝り固まった自分の性分だ」とあきらめているかたもおられるかもしれませんね(努力しだいでやり直しは利きますが)。

 何度もお伝えしたかと思いますが、児童期後半は、子どもたち一人ひとりの性格的傾向が定まっていく時期にあたります。だからこそ、この時期の行動や習慣は何よりも重要なものであり、そこに心血を注ぐべきだと思います。たとえば、行き当たりばったりの勉強でテストに備えることをくり返しているか、テストまでの日数を念頭に置いて段取りよく準備をする習慣を身につけるかは、テスト成績の違い以上に大きな差をもたらすことになります。少し大げさに言えば、人生の歩みにすら影響を及ぼすのです。

 高校や大学での学業成績に違いが生じるだけでなく、社会人になってからの仕事の質にも影響します。調査資料の作成、プレゼンの準備や仕上げ、商品開発までのプロセス等々、あらゆる仕事で段取りがよいかどうかによる成果の違いが出てきます。

 今なら、どのお子さんにも段取りをつけて準備する姿勢を磨く余裕がありますし、それによって学習のクオリティを高めることができます。授業前の予習、授業後の復習、副教材の家庭学習、1週間のまとめ、テスト前のおさらい、テスト後の振り返りややり直し、学力の現状チェックなど、学習に関わる事柄全てにおいて、取り組む時間や優先順位などを自分で考えて決め、それらを実行に移す努力をしていきましょう。はじめはうまくできなくても、1年後にはお子さんが随分と成長していることに気づかれると思います。

 

 児童期に時間やエネルギーを投入した事柄は、人間としての生きかたや行動様式を築くうえで大きな影響を及ぼします。保護者におかれては、何がわが子の将来の歩みによい影響を及ぼすかをお考えいただき、子どもの望ましい成長に資する受験生活の実現に向けてバックアップしてあげていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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中学受験生の保護者に求められる役割って!?

2022 年 3 月 6 日 日曜日

 2022年度の前期講座が開講しました。いまだに新型コロナウィルスの感染問題は沈静化していませんが、広島県では1月より適用されていたまん延防止等重点措置が今月6日をもって解除となる模様で(この記事は4日に書いています)、多少の明かりは見えてきた感があります。気を緩めることなく慎重に行動し、元通りの生活を取り戻すべくがんばってまいりましょう。

 今回は、新年度講座の開講直後でもあり、スタート時において保護者にお伝えしたいことを書いてみようと思います。特に、今春から弊社の教室に通い始めたお子さんの保護者におかれては、「親の役割は何か」について参考にしていただければと思います。

 中学受験と言うと、「親も勉強に関わり、わが子の面倒を見たり教えたりしなくてはいけないの?」と思われるかもしれません。逆に、「受験勉強はすべて塾が面倒を見てくれるもの」と思っておられるかたもおありかもしれません。しかしながら、家庭学習研究社の受験指導はどちらにも当てはまりません。

 保護者にお願いしたいのは、子どもの日々の取り組みに関心を寄せて見守ることです。勉強の内容に直接関わる必要はありません。その日にやるべきことをやり遂げているかどうか。つまり努力を軸にして見守り、頑張りを大いに喜んでやりながら応援し続けるのが保護者にお願いしたい主要な役割です。

 なぜなら、児童期までの子どもの意欲は、親が自分のすることに関心を寄せ、認めてくれるかどうかで大きく変わるからです。そこが、高校や大学の受験と大きく異なる点です。

 また、親の関心が何に向けられているかも大変重要なことです。たとえば、子どもの取り組みよりも成績のほうに親の関心が強い家庭では、地道に努力することよりもテスト結果を得ることのほうに比重が置かれがちです。ですが、こうした関わりは、間違った学習観を植えつけることになり、先々の人生の歩みに影と落としかねません。

 いっぽう、受験勉強をすべて塾で賄うやりかたはどうでしょう。受験での合格のみに目を向けるなら、それも一つの方法かもしれません。しかしながら、自分で勉強を押し進めていく姿勢を培うことなく中学校に入った子どもは、たちまち壁に突き当たってしまいます。さらに将来まで目を向けるなら、とても国際人として活躍できる人間になど到底なれないことでしょう。

 では、別表の①~④について、若干の補足説明をしてみたいと思います。

 

① 親子一緒に毎日の学習計画を立てる。

 受験生とは言ってもまだ小学生です。自分で適切な学習計画を立てるのは無理でしょう。そこで、モデルとなる計画例をお渡しし、親子で相談しながらとりあえず出発点の段階にふさわしい学習計画を立てていただくようお願いしています。しばらくこの計画に基づいて学び、お子さんが実現可能な勉強の取り組みに合わせた計画に修正するとよいでしょう。

 学びの計画性は、長く続く学校生活を充実させるうえで不可欠なものです。また、将来社会人になってからも、行動面仕事面で計画性があるかどうかは人生の歩みを左右する重要なポイントとなるものです。中学受験対策期の子どもは、どういったタイプの人間になるかが定まる時期にあります。したがって、生活や学習の計画性を培うことができたなら、受験での合格のみならず、一生の財産を得たことにもなるでしょう。

 

② 親は子どもの勉強に関心を寄せ、付かず離れずサポートする。

 上述のように、児童期の子どもは自分のすることに親が関心を寄せてくれるかどうかで取り組みの熱量が違ってきます。まだ自己評価よりも親の評価のほうが優先する年齢なのです。そこで必要になってくるのは、子どもの日々の取り組みに親が関心を寄せ、折を見て励ますことです。また、4年生の場合、取り組んだ問題の答えが適切かどうかを客観的に判断することができませんので、家庭でテキストの問題に取り組んだ後、保護者に〇つけをお願いしています。

 実際のところ、4~5年生までは大人が勉強に関わったほうが成果につながりやすいものです。ですが、やがて何事も自分でやれる状態に成長しなければならないのですから、勉強の内容に深入りし過ぎないようにし、少し距離を置いて見守り、計画通りがんばったときに大いにほめるなど、「勉強は自分でやるんだ!」という気概のある取り組みを引き出すようサポートしてあげてください。これもやがて、お子さんの将来に大きな可能性を引き出すことになります。

 

③ 取り組みの成果やテスト結果を一緒に検証する。

 何につけ、自分の取り組みを振り返ることは、自分を向上させるうえで欠かせない絶対条件です。ただし、児童期の子どもはまだそういった姿勢を要求してもうまくいかないことが多いものです。そこで、定期的な振り返りの時間を親子で設け、一緒に成果と反省点を洗い出すことをお勧めします。

 たとえば、毎週末にその週の取り組みを振り返ったり、マナビーテストの後に単元の学習を振り返ったりしたらどうでしょう。その際、親はついマイナス要素に目を向けがちですが、できるならプラス思考で接してあげていただきたいですね。そうすれば、お子さんはおのずと反省点に目を向けるものです。特にテストの振り返りとなると、「できなかったところをやり直しなさい!」と言いたくなるところですが、まずは成果のほうに目を向けてあげてください。それが次のがんばりの原動力になります。

 

④ 努力を評価軸に据え、取り組みの様子をほめる。

 これは上記の②や③とも関わることですが、親が子どもに何を期待し、何を評価の軸に据えるかで、子どもの育ちは大きく変わるものです。極端な話ですが、テスト成績を見てほめるか、日々の取り組みを見てほめるかで、子どもの価値観にも多大な影響を及ぼすことになります。

 「親は結果ばかり気にし、プロセスを見ずに成績がよいときだけほめてくれる」と子どもに思わせると、やがて「どうせほめてもらえっこない」と、努力を放棄する恐れもあるでしょう。というのも、弊社の通学生は全員が一定の学力を有する集団です。そのなかで常に優秀な成績をあげるのはなかなか難しいことです。できるなら、やるべきことにしっかりと取り組んでいるかどうかに目を向け、がんばっていたら何よりもそれを評価し喜んであげていただきたいですね。子どもはそういう親を尊敬しますし、親の期待に応えようと奮起するものです。

 

 今はまだ受験生活の助走段階で、教室においても「家庭勉強の進めかた」「ノートの取りかた」「授業の受けかた」など、基本的なことをじっくりと指導しています。ですから、ご家庭におかれても、「学習の計画性」「決めたことをやる習慣」など、教室指導と連動する要素がしっかりと身につくようご配慮願いたいと存じます。学習生活に欠かせないフレームがしっかりとできあがったお子さんは、勉強の成果があがりますし、先々親の心配や苦労が随分軽減されることになります。何よりも、「自ら学ぶ姿勢」が身につきますから、将来の更なる成長に向けた確かな足がかりを築くことができるでしょう。

 何事も初めが肝心!受験生活のスタート時に必要なサポートをよろしくお願いいたします。

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