子どもが勉強する理由って?

2022 年 4 月 17 日

 学校の新学期がスタートしました。新小学1年生の子どもたちにとって、小学校は初めて足を踏み入れる未知の世界です。建物の規模も、グランドの広さも、子どもの数も、幼稚園の頃とは全く変わります。「小学校はどんなところだろう?」という期待と、「ちゃんとやっていけるかな?」という不安とが交錯し、胸をドキドキさせながらの入学式だったことでしょう。あれからおよそ1週間が経ちましたが、お子さんは新たに始まった小学校生活を受け入れ、楽しく通っておられるでしょうか?

 また、2~6年生の子どもたちは、一つ上の学年に進級したことで、「お兄さん、お姉さんになったんだ」という自覚も生まれたことでしょう。この進級という経験を繰り返し刻んでいくことで、少しずつ年長者としての自覚を高めていくわけですね。特に6年生の子どもたちは最上級生になりましたから、ことさら意識の変化も大きいことが想像されます。弊社の教室に通う6年生の場合、来年の中学受験も視野に入っていますから、一段と引き締まった面持ちで新学期を迎えられたことでしょう。

 さて、今回は子どもたちが勉強する理由とはどのようなものかを、大規模なアンケート調査の結果を通して確かめてみようと思います。この調査は、ベネッセ教育研究所が2004年11~12月に実施したものです。調査からかなり年数が経っていますが、十分参考になる資料だと思います。なお、調査対象者の住まいが都市部か農村部か、教育環境の状態の違い、サンプル数など、調査結果の変数となる要素は十分に吟味されています。詳しくは掲載しませんのでご了承ください。では早速資料をご覧ください。

勉強する理由(学校段階別)※グラフ画像をクリックすると拡大表示されます

 図表の右手やや下側に説明がありますが、各3本の棒グラフのうち、上が小学生、真ん中が中学生、下が高校生の回答です。この資料をご紹介したのは、子どもが勉強する理由をどう答えているかがある程度わかれば、子どもへの望ましい接しかたも見えてくるだろう思ったからです。

 資料を上から順に見ていきましょう。「問題が解けるのがうれしいから」や「いろいろな考え方を身につけることができるから」という回答は、自己向上心の表れであり、年齢に関わりなく純粋で望ましいものです。小・中・高いずれの段階においても、一定数の子どもが勉強する理由としてあげているのがうれしいですね。さらに、小学生の比率が高い点が注目に値します。解けたときの喜びや達成感、新しい知識を習得することの喜び。これらをわが子が実感している瞬間を見逃さないようにしましょう。そんなときには、すかさず喜んだり、感心したりするなど、親がどう感じているかを子どもに伝えてやるのです。きっとお子さんは励みを得ると思います。

 つぎに「小学生(中学生)(高校生)のうちは勉強しないといけないと思うから」という理由は、どの学年段階でもほぼ同じぐらいの数値を示しています。しかも、勉強に向かう動機としてトップランクに位置づけられます。「勉強はしなくてはいけないもの。必要なもの」という意識は、どの年代の子どもにもあるのですね。その昔、筆者はわが息子に、「お前は仕事をしてお金を得る心配はしなくてよい。その代わりに、お前のすべき仕事は勉強だ。仕事をするための準備が勉強なんだからね」と伝えたことを思い出します。あまり効果はありませんでした。すでに自覚しているのに、親からそんなことを言われたら子どもは説教臭く感じてしまうでしょう。だから逆効果を招いたのかもしれません。今更ですが、反省しています。

 「勉強しないと頭が悪くなるから」という理由は、小中学生よりも高校生の数値が低いのが気になります。すでに自分の能力の限界を感じており、「今さら」と思ってしまうのでしょうか。どの年齢期の子どもにしろ、こういったネガティブな考えではなく、自己向上心にもとづく学びを実現してほしいものです。児童期の子どもには、親子一緒に考えたり調べたりする機会を多く設け、疑問を解決する喜びや楽しさを子どもに味わわせてやりましょう。知識を拡充していけばいくほど未知の事柄への探求心が強まり、以前の自分よりも物知りになることを、子どもに実感させてやりましょう。

 賞罰(ほめられる・叱られるなど)が勉強の動機になるのは概ね小学生までです。特に児童期前半までの子どもには大いに効果があります。このタイミングをうまく生かしたいですね。ただし、ほめられるほうが効果的だということも念頭に置いておきたいところです。「おとうさんに叱られて目が覚めた」と、発奮する子どもは大概男の子です。また、それはおとうさんを尊敬し、信頼している(親がなぜ厳しいのかを分かっている)場合に限ります。もしも子どもがおとうさんの日頃のふるまいを批判的な目で見ていたなら、逆効果を招く恐れもあるでしょう(ひと言多かったかもしれません。ご容赦を)。

 ライバルとなる友人に恵まれるとやる気が高まるのは、どの年齢段階の子どもにも言えることのようです。ただし、なかなかそういう機会に恵まれるケースが少ないことが、この資料の結果からもうかがえますね。ただし、弊社のような進学塾は、その点恵まれています。目の前によい手本がたくさんいるのですから。この環境が大いに作用することを願っています。

 進学目標を達成したいという意欲が勉強の動機になる。これを多くの保護者が望んでおられます。ただし、中学受験の場合は小学生が受験生ですから、先を見通しそれを励みに勉強に向かうということは難しいのが現実です。将来的な観点よりも、その学校の建物や行事を見る、先輩のふるまいを見るなど、学校の魅力に直接触れる体験をさせ、子ども目線での憧れや目標を見つけさせるとよいのではないでしょうか。

 最後の項目ですが、さすがに高校生のポイントが高くなっています。ですが、高校生の段階で「つきたい仕事につく」ことを励みに勉強に打ち込む子どもがこんなにも多いのには驚きました。少し冷めた見かたになるかも知れませんが、「まあそう」と回答した子どもが多かったのかもしれません。ともあれ、小学生にしても6割の子どもが「とてもそう」もしくは「まあそう」と回答しています。親子で、将来のことについて話し合う、子どもに将来の夢を語らせる。そういった機会をときどきつくるとよいのかもしれません。これは、どちらかというとおとうさんに期待したい役割ですね。

 以上、駆け足で見てきましたが、「わが子にもっとがんばってほしい」と願っておられる保護者の方々の参考になれば幸いです。勉強に向かう姿勢の向上も、毎日の親の関わりの積み重ねによって随分変わってきます。現状を嘆いておられる保護者がもしおられれば、もう一度これまでの関わりを振り返り、「今からわが子のためにがんばってみよう!」と奮起していただければ嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。

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カテゴリー: アドバイス, ジュニアスクール, 中学受験, 勉強について, 家庭での教育, 家庭学習研究社の理念, 小学1~3年生向け

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