2022 年 5 月 30 日 のアーカイブ

モチベーションアップと目標設定の関係

2022 年 5 月 30 日 月曜日

 みなさんのお子さんは、今やる気に満ちて受験勉強をがんばっておられますか? ものごとを成功へと導くうえで欠かせないのがモチベーション(やる気)です。そこで今回は「どうしたらモチベーションが上がるか」を話題に取り上げてみました。

 ただし、いきなり上記のような問いかけをすると、なかには嫌みに感じるかたもおられるかもしれませんね。というのも、「うちの子はやる気が足りない」「どうしてもっとがんばれないのか」「やることが長続きしない」といった悩みを、大概の家庭の保護者が抱えておられるからです。しかしながら、もとからやる気のない子どもなんて一人もいません。ですから、今の状態が親から見て不満でもあきらめるには及びません。また、傍目にやる気が足りないように見えるお子さんの現実も多種多様です。そこで今から、最大多数の子どもたちに効果のあるモチベーションアップの方法を考えてみようと思います。

 まず、わが子のやる気のなさを嘆いているかたへ。ある書物の小見出しに、「やる気を育てることに『手遅れ』はない」というのがありました。そうです。受験が迫っていようと、受験が終わろうと関係ありません。大切なのは、わが子が明るい未来の構築をめざして常に前向きに生きていく人間へと成長できるよう、親はあきらめず応援し、温かい目で見守り続けることが大切なのだと思います。

 「モチベーション(やる気)を高めるには、目標を定めるとよい」とよく言われます。しかし、それだけではピンとこないかたが多いのではないでしょうか。そもそも、みなさんのお子さんにはすでにれっきとした目標が存在します。そう、中学受験です。受験という魅力的で明確な目標がありながら、なぜお子さんのモチベーションが上がらないのでしょうか。そこから考えてみる必要がありますね。

 実は、モチベーションというのは、目標が定まれば必ず上がるものではなく、成功体験と結びついてこそ上がるものだと言われています。小さな成功体験で得た喜びや満足感がより大きなモチベーションを引き出してくれるからです。ですから、中学受験を目標に据えるだけでは必ずしもモチベーションアップにつながりません。また、高いレベルの目標設定をすると、現実とのギャップを感じて早々に息切れを起こしたり、挫折感を味わったりしがちです。保護者としては最終的に高いレベルの期待をもっておられたとしても、そこへ望みをつなげられる状態に漕ぎつけるための、実現できそうな「当面の目標」というのも必要でしょう。

 右の資料を見てください。モチベーションは、目標が高すぎても低すぎても高まらないことがわかります。注意してグラフを見ると、少し実現するのが困難と主観的に思うレベルの目標をもつとき、もっともモチベーションが高まるようです。

 それでは、今からどのような目標を設定するとモチベーションが高まるのか、いくつかのポイントをあげてみようと思います。以下は、モチベーションについて専門に研究しておられる大学の先生の書物の一部分を参考にしてまとめたものです。

①目標はなるべく具体的なものがよい。

 具体的というのは、たとえば「勉強時間を多くする」というよりも「1日必ず1時間は勉強する」など、数字で明確な尺度が示されているといった意味合いです。サッカーのPKに強くなる練習をするにあたっても、「必死でゴールめざして蹴ることをくり返せ」というよりも「100回練習をくり返せ」と言われたほうが練習を継続させる効果があるでしょう。弊社のマナビーテストの成績でも、これまでの成績の数値を振り返りつつ、努力して届きそうな目標を具体的に数字で掲げると、意欲が増すと思います。

②成功確率50%の目標が最もファイトを
 かきたてる。

 小学生を対象とした興味深い心理学の実験があります。子どもたちにいろいろな距離から輪投げに挑戦してもらいました。その結果、最も子どもたちがエキサイトして挑戦しようとした距離は、統計的に成功確率がちょうど50%ぐらいの距離だったそうです。これをマナビーテストでの目標設定に生かしてみたらいかがでしょうか。絵に描いた餅のような高次元の目標ではなく、がんばったら何とか届きそうな目標数値を設定すると、チャレンジに向けた意欲が増すことでしょう。たとえ失敗しても、「惜しかった!」という悔しさが次なるモチベーションにつながります。

③与えられた目標より自分で決めた目標を!

 大人であれ子どもであれ、人から与えられた目標よりも自分で決めた目標のほうがやる気になるものです。親からあてがわれた目標だと、しばらくうまくいかない状態が続くとモチベーションも早々にしぼんでしまいがちです。ただし、小学生の場合、適正な目標数値がどれぐらいかを自分で判断するのは難しいかもしれません。親子で相談して目標を決めるとよいでしょう。なるべく親は聞き役になり、子どもの意思を尊重しつつ、上手に落としどころを見極めてあげてください。

④順位を上げる目標だけに偏らない。

 進学塾で掲げる目標というと、「何番を取る」といったような、他者との比較で成果が決まるものになりがちです。しかし、これだと他者との相対的な比較で結果が決まりますから、モチベーションが下がってしまう危険性があります。「~ができるようになる」といったように、他者との比較が入り込まない目標も設け、努力が実を結ぶことを実感できるような目標も必要でしょう。子どもは何よりも親の評価を気にします。努力したら成果がわかり、しっかりとほめてやれる目標ももたせてやりたいですね。

⑤遠い目標だけでなく、当面の目標も設ける。

 子どもにとって受験合格は究極の目標ですが、まだ実感が湧かない遠い目標であるのは否めません。そこで、もっと小刻みな当面の目標も設定することが必要でしょう。お子さんにとって、今の状態にピッタリのめざすべき目標は見つかりませんか? 授業後の復習や、副教材の学習などのなかから、身近な目標が見つかりませんか? お子さんが当面の目標を一つずつクリアしていくことで、しだいにまとまりのある大きな目標が見えてくる。そんな流れが築ける目標をいろいろ考え、お子さんに提案してみていただきたいですね。

 いかがでしょうか。目標があると毎日の暮らしに張りができますし、明確な意識をもって行動できるようになります。目標は、年令によって、環境によって様々に変わっていきます。しかも、生涯もち続けるものです。子どもの頃から、目標を定めてその実現に向けた努力をくり返す経験を続けていくと、その経験が生かされ、何をするにあたっても高い次元の目標を実現できるようになっていくものです。受験の結果も重要でしょうが、このような経験を早くからしておくこと自体が、受験をめざしたことの大きな収穫にもなるのではないでしょうか。

 今回の記事をご覧いただいたことがきっかけで、目標をもつことの重要性や、その実現に向けた努力がもたらせてくれる成果に着目していただき、お子さんのより一層の成長に向けた応援へとつなげていただけたなら幸いです。

※今回の記事は、「やる気」を育てる! 植木理恵/著 日本実業出版社2018、行動を起こし、持続する力 外山美樹/著 新曜社2011を参考にして書きました。上記グラフは、後者の本より引用し、加工を施しました。

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