夏のおかあさんセミナー2022 内容報告1

2022 年 7 月 7 日

 今回と次回は、7月1日(金)に実施した「夏のおかあさんセミナー」の内容をご報告しようと思います。「催しに興味はあったが、都合がつかなかった」「家を空けるのが難しいので、参加できなかった」などの理由で、会場にお越しいただけなかったかたもおありでしょう。よろしければこのブログ記事をお読みいただき、参考にしていただけたら幸いです。

 なお、会場にいてこそ得られるものもあります。たとえば、保護者同士の交流(今回は、コロナの問題があって控えめにしました)。子どもに関する悩みは、同じ立場にいる者同士で交流すると、不思議と元気が出てくるものです。また、会場での話題のなかには、活字でご紹介するのが難しい事柄もあります。それは、概しておかあさんがたに元気を吹き込むことを意図した実例に基づく話であり、会場に笑顔が広がったり場の雰囲気が盛り上がったりするのはそういう話をしている場面です。いささか実力不足の筆者ですが、来場の方々と思い(子どもへの愛情)が通じ合うこの瞬間を大切に思い、気持ちを込めてお話ししています。次回、もしご都合がつけば会場に足をお運びいただきたいですね。一緒に楽しい時間を過ごしましょう。お待ちしています。

 このセミナーは実質1時間ほどです。直前になって欲張りすぎたことに気づき、予告の段階の内容を大分減らしました。今回ご紹介するのは前半の内容ですが、非認知能力を育てるうえで大前提となる家庭教育とはどういうものかを一緒に考えていただきました。

① 主体的な行動様式を備えた子どもにする

 何をするにも自主的かつ積極的に取り組む子どもは、見ていて気持ちがよいだけでなく、やったことの成果をより多く享受できます。端的な例が勉強です。自分のこととして主体的に取り組む子どもは、受け身で取り組む子どもよりはるかに多くの収穫を得ることができます。こういった姿勢の違いは、年齢が上がるにつれ個人の行動特性として定着しますから、人生の歩みに多大な影響を及ぼすことでしょう。ある私学の廊下の掲示板で見た光景をご紹介し、この問題への対処を共に考えていただきました。

 私学の中学高校生に、今更「生活習慣の自立」もないものだと思い、先生に意図を尋ねてみました。すると、「これが万事に影響するからです」といったようなことをおっしゃいました。たとえば朝自分で起きられず、母親に起こしてもらっている生徒がいるとします。そんな生徒は寝坊して遅刻をするとそれを母親のせいにしてしまいます。そんな生徒が自立した勉強を貫き、高い次元の人生目標を達成できるでしょうか。だから、「まずは生活上のことを自立しなさい」と促しておられたというわけです。

 今日の少子化社会では、子どもは万事に甘やかされて自立が遅れがちです。この現実に照らすと、「子どもの主体性は自然と備わるものではなく、親が子育てを通して意図的に育てていくべきものだ」と言えるでしょう。大家族の時代とは環境が違うのですね。まずは自分のことを自分でやるのが当たり前になる。それが、人間としての主体性や行動力の源になるのではないでしょうか。できるなら、小学生の今のうちに基本的生活習慣を確立しておきたいものですね。

 そこで、以下のチェック項目を使って現状を振り返ってもらいました(以前も同じものをご紹介したことがあります)。

 各自チェックしていただいたあと、テーブルに同席されているおかあさんがた同士で、現状をどう受け止めておられるか、わが子にどんなアプローチをしているかを披露し合っていただきました。うまくいかない項目があるかたには、他のおかあさんからアドバイスをしていただくこともお願いしました。

 つぎにこんな話もご紹介しました。家庭学習研究社の5年部で優秀な成績をあげているお子さんのおかあさんに、「どういう勉強で、こんなによい成績をあげておられるんでしょうか。親は何かされていますか?」尋ねてみました。すると、「何もしていません。はじめは苦労したみたいですが、だんだん塾の勉強になじみ、今は家での勉強も『やるのが当たり前』と思ってやっているみたいです」という返事が返ってきました。やるのが当たり前になる。この流れも、生活習慣の自立あってこそのことではないでしょうか。

 さて、今度はおかあさんがたにクイズのような質問をしました。

行動の主体性・意欲を育てるうえで、どっちが有効?

 おかあさんがたのほとんどは、Bとお答えになりました。この結果を受け、「実は、どちらも有効で大切です」とお伝えした後、「小学生、特に低~中学年まではAのほうが有効です」と申し上げ、その理由をご説明しました。望ましいのは、本来はBのほうです。しかし、児童期前半までの子どもは、自己評価よりも親の評価を優先します。親にほめてもらいたいという気持ちのほうが、自己充足感よりもモチベーションの原動力になる年齢期なのです。親にほめられたくてがんばる経験を繰り返しながら、徐々に内面の成長とともに自分の気持ちの充足を支えにして学ぶようになるんですね。

 もう一つ大切なことがあります。成績がよければほめるというのは教育的とは言えません。以前もお伝えしましたが、成績と引き換えにほめるのでは、交換条件のようで、子どもの心に響きません。子どもは、結果に関わらずがんばりを見てほしいのです。「おかあさんは、成績さえよければご機嫌なんだ」と思わせてはなりません。がんばったのに成績が伴わず落ち込んでいるとき、親はがんばっていたことをちゃんと見てくれていて、それをほめてくれたならどうでしょう。そして一緒に悔しがってくれたならどうでしょう。子どもの気持ちは「今度こそ!」と奮い立つに相違ありません。ほめられた事柄に一貫性があり、筋が通っていれば子どもは納得します。そして、心からおかあさんを信頼し、尊敬する気持ちになることでしょう。

 なかには、「ずっと叱ってやらせてきたので、今更どうすればいいの?」と困惑するおかあさんもおられるかもしれません。そこで、「他律から自律へ」「外発から内発へ」と移行することも可能であるということをお伝えしました。ここでも、ポイントは親がほめるということです。勉強だけでなく、どんなことでも構いません。子どもに少しでも前向きな様子が感じられたら、それを取り上げてほめるのです。親に自分を認めてもらえたことがうれしくない子どもなんていません。「どういう行動を親が喜びほめてくれるのかを身をもって学んだ子どもは、少しずつそれを自分からやろうとし始めます。それをまた親は喜びほめるのです。やがて子どもの行動の自発性は内面化し、子ども自身の行動様式へと変化していくことでしょう。

 このことでもわかりますが、子どもを親が望む方向へと成長させるには、「親が何を期待しているのか」をはっきりと伝え、評価の軸を一貫させ、辛抱強く子どもを見守り、ほめるべきときにしっかりとほめることが必要です。大変忍耐の要ることですが、それが子どもの人間形成に強い影響を及ぼすのですから、今親ががんばらないでいつがんばるのかと言ってよいほど重要な局面にいることを思い起こすべきでしょう。

 筆者は多くのことを一気にしゃべる人間ですので、お話ししたことの全てはとてもご報告できません。とりあえず、前半の内容をかいつまんで書いてみました。近日中に後半を書こうと思います。よろしければ目を通してください。なお、セミナーに参加いただいたおかあさんがたには、当日の内容を思い出すためにお読みくださったらうれしいです。

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カテゴリー: お知らせ, 中学受験, 子育てについて, 家庭での教育, 行事レポート

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