「中学受験なんでも相談室」からのご報告

2022 年 9 月 25 日

 台風14号が日本を通り過ぎた後、めっきり凌ぎやすくなりましたね。朝夕はむしろ寒さを覚えるくらいです。「蒸し暑い夏がいつまで居座り続けるのだろう?」と、夏バテ気味のわが身を慮り困惑していましたが、これで一安心です。やっとお子さんがたにとっても、勉強にスポーツに読書にと、何をするにも好適な季節の恩恵が受けられるでしょう。おおいにがんばってほしいですね。

 さて、このところブログの原稿を書く時間がなかなか確保できません。お読みくださっている方々はおおよそご承知でしょうが、本ブログは見たこと、聞いたこと、やったことなどを備忘録や日記のように綴るのではなく、受験と子育てに関わる情報を提供したり、学習塾としての受験観や教育観を発信したりする場としているため、ブログというよりもコラムに近いのが特徴です。したがって、テーマ設定、資料集め、記述、仕上げの段取りがかなり面倒であり、時間がかかることも少なくありません。無論、1~2時間で割と簡単にできあがることもありますが、他業務が忙しいとき、メンタルのコンディションが不調のときなどはいささか捗りが悪く、1日かけてやっと仕上がるということもあります。

 言い訳がましいことばかりお伝えしましたが、今回は書く時間があまりありません。そこですぐ書けそうなテーマにさせていただくことにしました。ご存じかも知れませんが、この9月に会員家庭へのフォローを充実させようという趣旨で、「中学受験なんでも相談室」を開設いたしました。お子さんの中学受験に関して、どのような相談にも応じるということで、指導経験や対人対応の経験、年齢等などを勘案した結果、筆者がその業務を兼任することになりました。開室を告知したところ、すぐに相当数のお申し込みがあり、対面での対応、ズームを使っての対応を通して、広島市内4校すべての保護者とやりとりする(交流する)機会を得ました。今回のブログは、現在までの相談室の活動を通して筆者が感じていることをお伝えしてみようと思います。おそらく、多くの保護者の方々が同じような問題を抱え、苦労して(やきもきして)おられるのではないかと思います。

 相談される保護者の多くは、わが子の成績に関わらず、学習意欲が今一つ足りない、家庭勉強の段取りを自分でつけられない、学習の自律性が育っていない、計画通りに勉強をやりこなせていない、などの点について心配しておられるようです。原因はいろいろです。ただし、よく話を伺っていると、お子さんがそうなるべくしてなっているのではないかと思うこともたびたびありました。たとえば、つぎのような状況から親の対応としてどんな問題点が見出せるでしょうか。

 場面1は、程度の違いはあれ、多くの家庭の現状としてありがちなことです。子どものすることは、大ざっぱで見当違いな点も多く、親としてじれったいことが多いものです。また、放っておくとやるべきことをなかなかやろうとしないケースもあるでしょう。その結果、親がいろいろと勉強に関わり、やるべきことを具体的に指示してやらせる場合もあるでしょう。子どもは子どもでそのほうが楽であったり、成績が維持できているのは親のおかげであることも自覚していたりで、親の介入を消極的ながらも受け入れざるを得ない状況が続きがちです。しかし、子どもの自立に向けた試行錯誤のプロセスを省略してしまうと、いつまで経っても勉強を自分で管理したり、実行に移したりする姿勢は育ちません。受け身の学習姿勢が染みつくと、中学校に入ってから途方に暮れることになりかねません。親が関わるのが小学生の受験勉強の特徴ですが、関わりつつも、「いつ手を放すか」を常に意識し、徐々に子ども自身でやらせる領域を増やしていくことが肝要です。一時的に成績は下がるかもしれませんが、子ども自身が得た成績をもとに、現実に存在する問題点を親子で検証や点検をしながら、修正をはかっていくような接しかたをお願いしたいですね。

 場面2はどういう状況かというと、イラストの例のように、「勉強しているふり」をして、実はサボっているケースがあります。特に男の子です。他にありがちなのは、勉強をほとんど子ども任せにし、「塾で指導を受けているのだから、やりかたもわかっているのだろう」と親が勉強の内容をほとんど掌握しないまま放置しているケースもあります。この場合、子どもは「やったつもり」の勉強に終始したり、やりかたが要領を得ないままいたずらに時間を費やしてしまったり、といったことが起こりがちです。親は「つかず離れず」のスタンスが基本です。もう少し具体的に言うと、親は子どもの勉強の取り組みの様子や勉強内容に目をやり、まっとうな取り組みができているかどうかを判断する必要があるのです。ノートの取りかたもきちんとわかっているかどうかも見定める必要があります。問題点を感じたら、指導担当者に問い合わせたり、相談したりしてください。勉強の内容に立ち入って教える必要はありません。それをすると目先のテスト成績は上がりますが、子どもの学びの自立がいつまで経っても進みません。子どもの自立に向けた意欲を後押しするのは親の大事な役目です。自分で考え、自ら学ぼうとする姿勢が見られたなら、それを成績が上がったときよりも褒め称えてください。親が何を自分に求めているのかを知り、しかもその求め(親の期待)が納得のいくものだったなら、子どもは親の承認を得ようと一生懸命になるものです。

 中学受験で親に必要なのは、「わが子が今できないことはフォローするが、そのフォローはいずれ自分でやれるようにするためにあるのだ」という意識です。ちょっとずつ手を放す、そのタイミングを常に見計らうことが大切です。そして、子どもが今まで自分ではやれていなかったことができたときには、「凄いよ、進歩したね!」と、心から称賛の言葉を投げかけてあげてください。そういう親の対応こそが、自分でやることへのプライドをもった子どもを育てるのではないでしょうか。親はもどかしい思いを余儀なくされますが、「これは子育ての仕上げの意味もあるのだ」と認識し、辛抱強く子どもの生活や勉強の自立を促していきたいものです。紆余曲折はあっても、お子さんが勉強の要領を手の内に入れ、自分で勉強を取り仕切れるようになったなら、前途洋々たる未来が待っています。自立した人間こそ、社会で自分をまっとうに通用させることができるのですから。

 保護者におかれては、「付かず離れず」を合言葉に、わが子の成長を引き出すべく辛抱強くフォローと見守りを継続してください。過保護と過干渉、子ども任せ(子どもの実態を知らずに信用する)は、わが子の真の成長にとってマイナスにしかなりません。

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