児童期までは、子どもを励ますのを忘れずに!

2022 年 11 月 21 日

 朝方は随分寒さを覚えるようになりました。再びコロナウィルスの感染者が増加しつつあるようです。みなさま、十分お気をつけください。今回は、おもに小学校低~中学年をおもちの保護者に向けた内容となっていますが、高学年のお子さんの子育てにも言えることだと思いますので、よろしければ目を通してみてください。

 児童期までの子どもは、親の意向を気にします。そして、親のOKサインを見て安心し、落ち着いてものごとに取り組めるようになります。そこで保護者に留意していただきたいのは、「わが子を上手に励ますことを忘れない!」ということです。児童期のうちに、多少困難なことでも勇気を出して実行し、そして最後までやり通す姿勢をもたせるには、親が繰り返し子どもを励ましてやることが必要です。みなさんは、常日頃わが子を励ますことを念頭に置き、お子さんに接しておられますか?

 ただし、難しいのは「どういう言葉で、どのように励ますか」です。そこで今回は、わが子への励ましかたの原則について、多少例をあげながらお伝えしてみようと思います。

 

 同じ励ましを意図した声かけでも、言葉一つで子どもが受け止める印象は随分変わります。つぎの二つのうち、どちらが子どもを勇気づけるでしょうか。

A.見掛け倒しの簡単な問題よ。こんなの、あなただってできる
  でしょ!
B.なかなか難しそうな問題だね。よくがんばっているね!

 おそらく、Aの声かけだって子どもに自信をもたせようというつもりで出たものだと思います。しかし、これだと「あなたはこんなのもできないの!?」と揺さぶられているように感じるお子さんもいるでしょう。子どものネガティブな感情に刺激を与えてしまいます。いっぽう、Bの声かけだと、子どもは自分の前向きな取り組みを認めてもらっている気がして、意欲を高めるのではないでしょうか。子どもの側の気持ちを汲み取った励ましの言葉を投げかけてやりたいものですね。

 

 子どもがうまくやれないで難渋しているときは、その部分をクリアできるよう少しばかり手伝ってやり、「よし、ここまでちゃんとやれたね。もうだいじょうぶよ!」などと明るく励ましてやりましょう。また、1と同じで「難しいことにチャレンジしているね」と、子どもの気持ちに沿った言葉かけをすると、より効果があるでしょう。子どもにとって、既習内容が少しでも発展的な形で問われると、実際よりも難しく感じるものです。助走部分でサポートをしてやり、「あとは自分でできそうかな?」と、優しく背中を押してやると、子どもは励まされた気分になるし、もっとやってみようという意気込みも得ることができるでしょう。

 

 たとえば学習の計画を立てるとき、低~中学年のうちは自分で適切な判断ができないことが多く、つい親の考えを優先して割り振りを決めてしまいたくなるものです。しかし、「学校の算数の宿題、夕食の前にしたほうがよいと思う? それとも夕食のあとにしたほうよいと思う?」と、子どもに考えさせるようにしたいものです。ついでに、「どっちが気持ちいいかな?」など、少しばかり考えの道筋に方向性を与えると、多くの場合、子どもは親の望んだほうを選択する傾向があります。特に日本の子どもはおかあさんの意向に強く影響されるのが特徴です。さりとて、親の関わりは、あくまで子どもの自立促進のためです。そこで、「先に面倒なことを済ませたほうが気持ちいいよね!」と同調し、「あなたなら、この計画をちゃんと実行できそうね!」と子どもを信頼した声かけをしてやりましょう。子どもは励まされた気持ちになってがんばれるでしょう。

 

 親は、とかく子どものダメな部分にばかり目が向きがちです。字が汚くて乱雑、最後までやり通さない、ミスが多い、決めた時間が守れない……。小学生には、特に男子のお子さんにはこういったことがつきものですが、イライラして厳しい言葉ばかり浴びせても、逆効果を招くのがおちです。子どもには、欠点やあらがつきものですが、よく見るとよいところも必ずあるものです。ちゃんとやっているときは、絶対にそれを見逃さず、大げさなくらいほめてやりましょう。「きれいな絵が描けたね!」「この問題、よく解けたね!」「片付けてくれてありがとう。助かったよ!」などの賞賛や感謝の言葉をかけてやり、そのうえで「これができたんだから、この間のミスも気をつければ防げたよね!」など、建設的な姿勢で欠点修正に向けて励ませば、きっとお子さんは自分のいけない点にも目を向けて改めるようになると思います。

 

 親は特に意識していなくても、無意識のうちに自分の期待する方向に子どもをコントロールしようとし、そのために子どもの現実を越えた要求をしてしまいがちです。これは親心に他なりません。しかし、子どもには今の力量にあったペースというものがあります。それを越えた要求を突きつけると、子どもはまごついたり、自信を失ってしまったりするおそれがあります。今のペースをまずはよく見極め、とにかくゆっくりでもやっていることを評価してやり、少しずつの進歩を引き出すべく粘り強く励ましてやりましょう。ゆっくりタイプの子どもに他との比較は禁物です。努力を継続しているうちに、必ず急速に進歩する段階がやってきます。

 

 ゆっくりでもいいから、自分のペースでよいから、何事も最後までやり切るようわが子を励ましてやりましょう。そして、それが親のいちばんの期待なのだと伝えてやりましょう。無論、最後までやり切ったなら、それを親が一番喜んでいることを伝え、大いにほめてやりましょう。難しいことをやったのではなくても、とにかくほめるのです。そういう親をもった子どもは幸せです。ものごとを最後までやり抜く力こそ、人生を生き抜くうえで最も重要な宝物であり、中学高校生になってから身につけるのがきわめて難しい資質に他ならないからです。「最後までやり抜こうとする姿勢」は、親を絶対的に信頼し、親の望むような人間になりたいと願っている児童期だからこそ、わが子に与えてやれるものなのだということを忘れないでください。

 

 親としてはそんなつもりはないのに、わが子のことになると支配的な態度になったり、批判的になったり、果ては脅し文句のようなことを言ったりしがちです。子どもの自主性や行動力を育てるには、子どもを一人前の人間として扱うことが必要です。子どものプライドを損なうような対応は、子どものやる気や努力の芽を摘み取るだけです。

 なお、親のほうは「~してごらん」という声かけを、励ましのつもりでしたのに、子どものほうは命令や強制と受けとめることもあります。表情や声のトーンで印象も随分変わりますから。「そんなことを言ったって、これは私のキャラクターだし、地声なので…」とおっしゃるかたもあるかもしれませんね。しかしながら、大事な声かけのとき、常に子どもの目を見て言葉をかけていれば、このような気持ちのすれ違いは起こりません。互いの目を見ての話し合いは、互いの真意を受け止めるための最善の方法です。親は家にいても忙しく働いています。ですが、片手間の会話は子どもの心に響きません。大事な話は互いの目を見ながら伝え合いましょう。そういう経験を積み重ねた親子に意志の齟齬はありません。

 いかがでしょう。親の励ましは、子育てのなかでも重要なもののひとつです。子どもの物事に取り組む姿勢や、行動力、ひいては生きかたにも大いに影響するからです。いつもうまく励ましてやれるとは限りませんが、上述のこと踏まえて子どもを励ましていれば、自ずと子どもは親の考えや価値観を吸収していきます。この働きかけは、子どもの児童期までが勝負です。何度も申し上げましたが、思春期になってからでは親は関与できません。今こそがんばっていただきたいですね。

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