小学生に自立勉強はどこまで可能か

2025 年 4 月 4 日

 2025年前期の講座が開講して1カ月余りが経過しました。お子さんは家庭勉強と塾の授業(週3日コース)、マナビーテストのサイクルを受け入れ、受験生活を軌道に乗せるべくがんばっておられるでしょうか。すでに2回ほど学習成果を競い合うマナビーテストが実施されましたが、その結果に手応えを感じているお子さんもいれば、逆にがっかりしているお子さんもおられるでしょう。

 弊社は50年以上前の創設時から、「子どもの自立学習支援」という方針を掲げて中学受験指導を行っています。それは、中学進学後の学習環境や、将来の人生の歩みを視野に入れ、「絶対に必要だ」と考えたからです。学習が質量ともにハイレベルな中高一貫校では、自己管理のもとで勉強をやりこなせるかどうかが成果に覿面に現れます。また、進度の速い学習ペースになじむ過程では、幾度も壁にぶつかったり、悩みが生じたりするものです。このような環境に適応するためにも、できるだけ子ども自身が勉強を自分のこととして受け止め、自ら勉強をやりこなそうという姿勢を築いておいたほうが望ましいのではないでしょうか。しかしながら、みなさんご存知のように小学生にとって自立勉強は難しいものです。

 実際のところ、弊社の教室に通う子どもたちはどの程度学習の自立を果たしているのでしょうか。 正直申し上げて、受験生活のはじめから終わりまで、すべて自分で勉強をやり通せる子どもは皆無でしょう。勉強の手順をいくら子どもに伝えても、結構な難度と分量のある学習を毎日のルーチンとして定着させるのは簡単ではありません。また、カリキュラムに沿って学習計画を立てても、達成度は子どもそれぞれに異なります。状況に合わせた修正も必要です。なかには早々に行き詰まりを感じているご家庭がおありかもしれませんね。しかし、ここががんばりどころです。お子さんは、やるべきことがわかっていますか? 決めた時間枠のなかで最善の努力をしておられますか? 焦る必要はありません。お子さんが今できる精一杯の勉強をするよう励ましてあげてください。

 親の立場に立つと、要領を得ない子どものまどろっこしい試行錯誤のプロセスを見守るのは精神的に辛いものです。しかし、学びの自立に向けた日々のもどかしい取り組みのプロセスにこそ意味があるのだとお考えください。成長途上期に自らを鍛える経験を積み重ねると、子どもは見違えるほど変わっていきます。大人の目から見ると不十分な勉強でも決して無駄にはなりません。心身共に大きく変わっていく時期に、心血注いで勉強に取り組んだなら、それが子どもの頭脳の成長に反映されないはずがありません。

 今の段階で保護者にとっての重要な視点は、「わが子は何をすべきかわかっているか」「学習計画に沿って勉強しようとしているか」「やるべきことがどれぐらいやれているか」ということです。これらが要領を得ないと勉強は機能しませんし、テストへの備えもできません。これまで2回行われたテスト結果と、お子さんの家庭勉強の状況を照らし合わせ、お子さんとこの1か月の学習を振り返ってみてください。勉強がテスト結果に反映されない原因は必ずあります。そこに気づき、少しずつでいいですから改善をはかっていくようお願いしたいですね。繰り返しになりますが、子どもの自立勉強は不完全なのが当たり前です。自立度を高めるべく努力しながら受験に臨み、受かったなかから進路を選び、そこからまた努力を継続していけば、将来に向けた展望は必ず開けていきます。

 ある本を読んでいると、子どもの自立勉強に関する著述が目に留まりました。自学自習で東大の理Ⅲに合格されたかたの著作にあったのですが、つぎのようなことが書かれていました。“人から与えられたことをきっちりこなせるようになってはじめて、自分で計画して実行できるようになる。私のように家庭で人から勉強を強制される経験をさせてもらっている子はよいとしても、そうでない子どももいる。だから、少なくとも小学校6年間は下手に自主性を重んじたりせず、自ら学ぶ力をつけるための基盤をつくらせるべきだと思う”(引用・改編)――これを読んだとき、「なるほど」と思う反面、大人による強制をよしとしておられる点や、「自主性よりも自ら学ぶ力をつけよ」といった考えに若干違和感を思えました。しかし、先を読み進めるうちに、そのかたの親はあてがった勉強をうまくやりこなせなくても決して叱っておられなかったことがわかりました。また、よい点やがんばった点を決して見逃さず、大いにほめておられました。だから親の導きを信じてがんばり、やがて勉強を自分自身のものとして受け入れ、自分で這い上がっていく勉強法を身につけられたのでしょう。

 昨年、私学の先生を何人かお招きして催しを行った際、ある先生がたまたま息子さんを弊社に通わせてくださっていることを知りました。お子さんの勉強ぶりを見て、その先生は「この年齢で受験勉強を子ども一人でするのは無理だと思った」という率直な感想をお話しくださいました。その先生は、わが子が今取り組んでいる勉強はどのようなものかということを調べ、わが子がどれぐらい自分でやれているのかを把握し、そのうえで何についてどこまで手を差し伸べるべきかを考えてサポートされているのだろうと思いました。その点で筆者は最低の親だったと反省しています。かつて愚息を弊社の某校舎に通わせたのですが、仕事柄夜中に帰宅することが多く、とうとう一度もわが子の勉強に関わることなく受験させてしまいました。当然ながら、結果も期待とは程遠いものでした。それでも本人は「受験を経験してよかった」と思っているようで、今では希望する職に就いてそれなりに生きがいのある人生を送っています。少なくとも、わが子の勉強に過剰に介入しなかったことだけは正解だったと思います。

 以上から保護者にお伝えしたいのは、「自立勉強に向けて少しずつ成長していく流れを築きながら、受験で求められる学力にどう漕ぎつけるか」という視点に立ち、子どもの勉強に付かず離れずの距離を保ちながらのサポートをお願いしたいということです。適切な応援がどれぐらいのものかはなかなかわからないものです。しかし、親の愛情深い一生懸命な応援を背にした子どもは、自分でやれる範囲の努力を惜しみません。全て親頼みの勉強や、親に「自分でやりなさい」と突き放されての勉強では、子どもの自発的な取り組みは期待できませんし、成果もあげにくいものです。

 今回の記事がお役にたつかどうかはわかりませんが、親としてわが子の受験勉強にどう関わったたらよいかについて思案しておられるご家庭、お悩みのご家庭にとって多少なりとも参考になれば幸いです。小学生の子どもの成長力はすばらしいものです。それを引き出すべく、親として悔いの残らぬサポートを実践してください。

※テキスト、カリキュラム、授業、家庭学習のシステムなど、弊社の学習指導に関わるものは全て子どもたちの自立学習支援を軸に据えたうえで考えられています。

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