学力形成の要は言葉の力 その1
2025 年 11 月 28 日
早いもので、今年も余すところあと1か月余りとなりました。今回は、これから中学受験準備に向けた学習の開始を検討しておられるご家庭、小学校中学年までのお子さんをおもちのご家庭に向けてお伝えしたいことについて書いてみようと思います。「言葉の力こそ学力形成の要である」ということをご理解いただければ幸いです。
国語辞典の編者であり、有名な国語学者である林四郎氏(筑波大学名誉教授1922―2022)は、「国語教育」の任務として、次の三つを挙げておられます。
<国語教育の任務>
①教育の手段としての「言葉の教育」を行う。
教育は、何の教育であれ、言葉を重要な手段とします。言葉が教育の手段として必要なのは、言葉が人間同士の意思の伝達交流をつかさどるものだからです。
②知識を支える手段としての「言葉の力」を身につけさせる。
教育の内容に、知識は欠かせない存在です。その知識は、言葉を必須の媒介手段とします。どの教科にも知識が必要であり、その知識がことばを必須要素とするのですから、ことばの教育は、どの教科の教育にも基礎を提供するものでなければなりません。
③言葉それ自身によって創られる価値をつかみ取らせる。(文学教育)
文学教育は、言葉で創られた価値の結晶である文学作品を表現・理解の両面で体得させる教育です。学習者が文学作品を作ることと、作られた文学作品を理解することができるように、学習者の能力を開発することが文学教育の内容です。
以上のように、国語教育は、国語という教科それ自体に終始するのでなく、躾・教育を行うため、また、知識を獲得するための手段として、なくてはならない存在であるということがおわかりいただけるものと思います。お子さんがたが、これからさまざまな教科の学習をしていき、知識を修めていくための大切な手段として、言葉の教育が大切な鍵を握っていると言えるでしょう。
このことを裏づける一つの例を挙げてみましょう。弊社では、会員の子どもたちを対象に2週間に一度のペースで単元のまとまりごとにマナビーテストと呼ばれるテストを実施しています(4~6年生)。このテストで残念な成績を繰り返しているお子さんの「算数」の答案用紙を見てみると、意外な事実に気づかされます。算数の学力不振の原因は、「言葉の力」が不足していたからでした。計算問題は、かなり難しい問題に答えられているというのに、計算式を立てることさえできればそれよりはるかに易しいはずの、文章題でつまずいているのです。それも、一問や二問ではありません。わずか数行未満の文のいわんとすることを理解できなかったために、正解にたどり着くことができないでいるのです。「言葉の力」は、どの教科の学習にも大きな影響を与える見本となる事例でしょう。
「言葉の力」を身につけることが、学力にいかに大きな影響を与えるかについて示唆を与えてくれる話があります。ずいぶん前の話ですが、ある作家がわが子の中学受験を思い立ってフォローした顛末を書いた本を出しておられたのですが、そのなかにつぎのようなくだりがありました。
小学校2年生のときだ。学校の国語のテストで、こんな問題が出た。
「はやぶさは、するどいはやつめで、えものをとらえます」
この文を含む長文を読んだ上で、
「はやぶさは、何を使ってえものをとらえますか。二つあげなさい」
という設問があり、解答欄にカッコが二つ用意してある。わが次男の答えは、最初の答えに「早つめ」と書き、二つ目のカッコは空白である。どうやら彼は、「はやつめ」というのを、「歯や爪」と解釈せずに、何かしら不思議な武器だと思い込んだらしい。あるいは、「隼」の爪だから、「はやつめ」と思ったのだろうか。
いずれにせよ、「はやつめ」を一つの言葉だと思い込んでしまったので、いくら探しても、もう一つの答えは見つからなかったというわけだ。
得意なはずの算数でも、こんなのがあった。
「ネギが3たばあります。べつのところに5たばあります。合計何たばですか。」
わが次男は、この「たば」というのにつまずいてしまった。「たば」というのが何のことかわからなかったので、そこで思考がストップして問題を解く段階に進めなかったのだ。
受験対策を始めてからも、こんな問題にぶつかったことがある。
「果物屋のAさんは、1個40円で、りんごを何個か仕入れました。大きさがふぞろいだったので、大、中、小の3種類に分け、大は80円、中は60円、小は45円で売りましたが、25個はくさっていたので、処分しました。売れたりんごの個数は、大は全体の60%、中は30%、小は、大と中をとった残りの80%より8個少なかったそうです。Aさんの利益は何円でしょうか」
これは大して難しい問題ではないのだが、わが息子は、「処分」という言葉につまずいてしまった。「処分」というのが、「ただで棄ててしまう」ことだということが理解できなかったので、問題全体の意味がわからなかったのだ。
入試問題ともなれば、かなり長文の応用問題が出る。「算数」の問題でも、「国語」の実力がないと解けないのだ。
すべての教科の学習は言葉を介して行われます。テキストはすべて書き言葉で成り立っています。当然のことながら、言葉の習得が不十分では何を勉強するにも不自由をかこつのは当然のことでしょう。以上を踏まえ、お子さんの言葉習得の状況を一度振り返ってみてください。
次回は、児童期までの子どもの語彙獲得の道筋についてお伝えしようと思います。掲載は、12月2日(火)ごろを予定しています。主として小学校の低~中学年児童をおもちの保護者の方々を念頭に置いていますが、よろしければ目を通してみてください。
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