学力形成の要は言葉の力 その4

2025 年 12 月 12 日

 このところ、「学力形成の要は言葉の力」というタイトルに基づき、子どもの言葉の発達が学力形成に大きな影響を及ぼすことについてお伝えしています。今回は、家庭での会話が子どもの言葉の発達に及ぼす影響についてお伝えしようと思います。

 「書き言葉」の学習が始まると、「話し言葉」の役割は、しだいに小さくなっていくのかというと、決してそうではありません。むしろ、「話し言葉」をより充実させるための努力は、ますます必要になってきます。学校という新しい環境に慣れ、生活の範囲が広がってきた子どもたちは、言葉のやりとりの場を一層増やし、言葉を活発に使用するようになります。このような会話の場で突き当たるのが、いかに相手にわかるように話すかという問題です。相手にわかるように話すためには、伝えたい内容を、流れをもって組み立て、理路整然と言葉としてまとめる必要があります。また、状況に応じた適切な言葉遣いをしなければなりません。このような会話が少しずつできるようになることと、子どもの思考能力と思慮深さの発達は、極めて強い相関関係があると専門家は指摘しています。

 みなさんは、相手に何か話しかけたとき、途中でどんな修飾語を用いるか、述語をどういう言葉で収めるかを意識するでしょうか? そんなことはありえないですよね。たちまち会話は行き詰まり、中断してしまうに決まっています。いったん会話の口火を切ったなら、無意識のうちに自分の伝えたいことが言葉として口をついて出てきて、いつのまにか言い終わります。それでいて、文としてもまとまりのあるものになっています。これは長い年月をかけた鍛錬の賜物です。しかし、子どもはそうはいきません。特に男の子は言語の発達が女の子よりも遅れがちで、「えーと」とか「それでね」とか、つぎの言葉を探り出すための意味のない言葉をもちいながら、もたもたとやっとの思いで言い終わることが多いものです。

 子ども同士の会話を聞いていると、ぶつ切りの言葉でやり取りしたり、気持ちを互いに受け止めあっているとは思えないような会話(自分の言いたいことだけ言い合う)を交わしていたりします。しかし、この段階を経てこそ子どもは会話の技術を磨き、相手の言いたいことを受け止めたり自分の思いを相手に伝えたりできるようになるのです。そこで親が留意すべきは、会話の相手になり、手本を示してやるべきは親なのだという事実です。なぜなら、子どものまどろっこしい未熟な表現に付き合い、最後まで耳を傾けてやれるのは年上の家族(特におかあさん)しかいないからです。たどたどしい子どもの言葉に耳を傾け、辛抱強よく相手をしてあげてください。やがて必ず子どもは上手に話せるようになります。(以下のイラスト部分は拡大できます)

 上のイラストで示したように、まずは親がわが子の会話の相手、先生として粘り強く相手をするということを意識してください。この意識があるかどうかで、わが子との会話の際の対応も理想に近づけることができます。それがなければ、下のイラストのAのように、子どものまどろっこしい喋りに我慢できなくなってしまいます。しかし、子どものへたくそなしゃべりに癇癪を起さず相手をしていると、やがてBのような会話へと進歩していくことができるでしょう。

 どうでしょう。Bのように、子どもが自分の思いをきちんと伝えられるようになるといいですね。子どもが自分の伝えたいことを順序だててよどみなく言葉で発信できるようになると、書き言葉で自分の思いを綴るときにも素晴らしい波及効果が生まれます。理路整然とした達者な文が書けるようになるのです。話し言葉での表現力と、書き言葉による表現力は密接にリンクしているから当然のことです。保護者、特におかあさんがたにはぜひわが子の話し相手、言葉の先生としての役割をしっかりと務めていただきたいですね。素晴らしい成果が得られますよ。

 ここで、家庭内の親子で交わされる会話の重要性について確認しておきましょう。すでに何度も本ブログでお伝えしているので簡単に済ませますが、子どもの知的能力の発達と家庭内会話には強い相関関係があるという研究報告が何十年も前に発表され(ロンドン大学の教育社会学者バーンステイン氏による)、今では世界中の定説となっています。たとえば、論理的で、なおかつ一定の長さをもった構造的な言葉のやりとりをしている家庭と、非論理的で短い言葉のやりとりをしている家庭とでは、子どもの言葉の発達、思考能力、ひいては学力に違いが生じがちです。

 身近な例で考えてみましょう。親子のように気心が知れている人間同士、しかも常に相手が目の前にいる環境だと、「あれが」「これを」「そっち」など物や場所の名を省略して代名詞で済ませがちです。また、言葉を交わさずとも身振りや手振り、表情などで意思疎通を図れます。しかし、こういう生活に偏ると、言葉を尽くして他者に自分の思いを伝えようとする経験が不足します。結果として複雑な思考を言語化し、相手や不特定多数の人たちにわかりやすく伝える力が養われません。それが知的能力の発達にも悪影響を及ぼすのです。

 互いに親密な関係、特に親子関係であれば、つい言葉の省略をしがちです。ですが、子どもとの会話の際は、お互いに丁寧に順序だてて自分の思いを伝えあうことも大切にしたいものです。おかあさんが日ごろからそのことを意識し、子どもにとって少し難しい言葉、たとえば「おごそかな」「つじつまが合わない」「状況を判断する」など、大人が頻繁に使っているような言葉を聞かせるのも効果があります。なお、言葉の使用については子どもの現状に照らし、おおざっぱな判断で結構です。毎日の会話生活で、そういったことを親が配慮しているかどうかで、子どもの表現力や思考力の発達状況はずいぶんと変わります。そのことを、これまでよりちょっとだけ強めに意識してみてください。

 

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