子どもの言葉を増やす親子の会話

Posted 2015年3月19日 木曜日

 早いもので、もうすぐ春休みがやってきます。
 長期休みが訪れると、多くの家庭で子ども達が自宅で過ごす時間が増えることにもなりますから、親子・家族間での会話も増えると思います。そうした中で、「子どもの話す力・聞く力は、家庭での会話によって育まれる」と聞かれたら、どのようにお感じでしょうか?

 高い学力や対人関係能力などの基盤となっているのが高い言語能力だといわれますが、さらにその土台となっているのが豊富な語彙です。例えば、学校や塾の授業など集団学習の場では、先生やクラスメイトの話を聞く能力、自分の意見を正確に伝えるための話す能力が必要不可欠になるのですが、こうした能力を獲得する土壌となっているのは、日常生活のベースである家庭における言葉のやりとりです。
 「たくさん本を読んでいれば、そこから言葉を覚えるんじゃないの?」といわれる方もいらっしゃるかもしれません。もちろんそれはそうなのですが、いくら一人で文字が読めるようになり一人で本を読めるようになっていても、内容をきちんと理解できているかどうかはまた別です。黙読の態勢が安定するのは、概ね小学校2~3年生頃であるといわれていますから、その時期までは文字言語よりも音声言語から語彙の大部分を増やしていくことになるのです。
 「子どもにとっての最高の先生は母親である」という言葉のとおり、子どもはお母さんとの言葉のやりとりを通じて、一つ一つ語彙を増やしていきます。そしてこの時期に築いた土台が、小学4~5年生頃に訪れる爆発的な語彙の増加時期につながっていくことになります。

 では、親子でどのような言葉のやりとりをすることが、子どもの成長にとって望ましいのでしょう。例えば、もし子どもから「なんで勉強しないといけないの?」と質問されたら、どのように返答されるでしょうか?
 「当たり前のことを聞かないでよ」「誰か他の人にでも聞きなさい」などと返されるでしょうか。それとも、「そうだね。じゃあ反対に勉強しなかったらどうなると思う?」などと答えられるでしょうか。
 その場の状況や子どもが質問しようと思った背景などによっても答え方は様々だと思いますが、そのとき親からどのような返答をされるかによって、その後の会話は大きく変わってきます。
 前者のような言葉を返された子どもは、何も返す言葉はありません。それどころか、子どもが「これは考えなくていいことなんだ」と思えば、自分の中の疑問もストップしてしまいます。こうしたやり取りを繰り返していると、子どもの知的好奇心そのものを抑えてしまうことにもなりかねません。
 これに対して、後者のような返答をもらった子どもはどうでしょうか。自分の疑問をきちんと受け止めてもらった上で、「勉強しなかったら・・・?」とさらに自分の中で考えを巡らせることになるのではないでしょうか。重ねて、「もし、もっといろんなことがわかったら楽しいよね」「いっぱい勉強して、覚えたことをお母さんにも教えてくれたらうれしいな」などと投げ掛ければ、子どもの意欲を掻き立てるきっかけにできるかもしれません。
 このような機会は、家庭での日常の中に数限りなくあると思います。何気ない言葉のやり取りの中で、子どもが自分で考えたり相手にうまく伝える工夫をするように促したりすれば、その中で自然と学びの下地が育まれていくのです。

 これまでも、子どもの視点に立って話す、頭ごなしに押さえつけない、子どもにわかりやすい表現で話す・・・など、普段から心掛けられていることはもちろんおありだと思います。ただ、子どもに掛ける言葉のちょっとした表現の違いで、子どもの想像力を膨らませるきっかけを作ることもできます。春休みを控えたこの時期に、家庭での普段の会話を改めて見つめ直してみるのもいいかもしれませんね。

(butsuen)


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