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4年生の今月の本


ふしぎの時間割 タイトル ふしぎの時間割
著者 岡田 淳
出版社 偕成社
 

★『消しゴムころりん』:二時間目、さおりはとっくにできあがった作文を前にして、机のうえで消しゴムをころがしていました。とくにものを大切にしているとは思っていませんでしたが、さおりはいつも消しゴムだけはほんとうに小さくなるまで使っていたのです。そのときでした。 
「あ。」
  もうパチンコの玉くらいになったその消しゴムが、机からころりと落ちて、床板(ゆかいた)のさけ目に消えていきました。おどろいたさおりが思わずまわりを見回すと、となりのゆきひろがあわてて目をそらしました。その口もとがちょっと笑っていたのを見たさおりは、むっとします。わたしのことを笑ってるんだわ。

 口をとがらせながら床にあいた小さな穴をのぞきこむさおり……と、そのときです。穴から一ぴきのヤモリが出てきたではありませんか。ヤモリは床に両手をかけて、さおりを見あげているように見えました。さおりは胸のドキドキがおさまると、心のなかで言いました。
(ねえ、ヤモリ。消しゴムをその中に落としたんだけどさ、ひろってきてくれないかな。)

 するとヤモリはさっと穴の中に消え、なんと消しゴムをかかえて出てきたのです。
「ありがとう」
  さおりが消しゴムを受けとると、ヤモリはもう一つ、さおりのものではない白い消しゴムも、その小さな手でさしだしたのです。
(あの、それ、わたしのじゃないよ。) 
 するとヤモリは白い消しゴムを床の上において、またさおりを見あげました。じつは、この消しゴムにはふしぎな力がかくされていたのです……。

★『ピータイルねこ』:みどりは、教室の前のろう下で、とほうにくれていました。先生から、〈朝の会〉でつかった出席簿(しゅっせきぼ)を保健室までとどけてほしいとたのまれていたのですが、みどりはまだ一人ではどこへ行くこともできなかったのです。でも、先生に
「いけるわね。」
と言われると、首がかってにうなずいてしまったのでした。
(トイレならいけるのに。)
  みどりはトイレに行くときはかならず緑色のタイルをふんで行くことを思い出しました。緑は自分の名前だし、すきな色だからまもってくれるような気がしたのです。

 と、そのときです。黒い猫がみょうな歩き(あるき)かたでみどりの方へやってきました。
「おれの体は黒くって、おれの名前(なまえ)もクロだから、おれは黒のピータイル。」 
 猫はそんなふうに歌いながらみどりを追いこすと、体をひねってみどりを見ました。まるでつぎはおまえの番だ、と言っているみたいにです。
「わ、わたしの名前はみどりだし、わたしの服も緑色。だから、緑のピータイル。」
  するとまた猫が言いました。「おれの体は黒くって……。」
  みどりも負けずに言いました。
「わたしの名前は、みどりだし……。」
 みどりと猫は競争(きょうそう)でもするみたいにして、いつのまにか下へおりる階段のところまで来ていました。そこで一人と一ぴきははたと立ちどまりました。もう、そこには緑のタイルも黒のタイルもなかったのです。さて、このとき猫が言ったことばとは……?

【 みんなが毎日かよっている学校。その教室の、なかで、そとで、知らないうちに始まっているもう一つの「時間割」。「三時間目の魔法使い」、「石ころ」、「もういちど走ってみたい」など、ぜんぶで10このお話があります。どれもおもしろく読むことができます。】

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