21世紀を担う子どもたち

1月24日、フェニックスホールで行われた講演会に行きました。講演者は、ベストセラー『国家の品格』の著者である、藤原正彦さんです!
藤原さんは数学者なのですが、“国語がとても大事”ということを本に書いておられます。『祖国とは国語』という題の本も書かれていますから、いかに“国語の重要性”を考えておられるかがわかります。
さて、フェニックスホールには、たくさんの人が集まっていました。私が入ったときには、既に1階が満員の状態で、「2階へどうぞ~!」の声が響いていました。しばらくすると、2階もほぼ満員となり、「3階へどうぞ~!」の声が。さすが、ベストセラー作家です。
藤原さんが登場すると、会場全体から大きな拍手の音。「21世紀を担う子どもたち」というテーマのお話が始まりました。
藤原さんによると、子どもたちにとって重要なのは、「論理的思考力」「知識」「情緒力」なのだそうです。たとえるならば、「論理的思考力」は“船頭の腕力”、「知識」は“堅固な船”、「情緒力」は“船頭の方向感覚”。そもそも“船”がなければ海の上を進んでいけない、「知識」は物事を考えるための“道具”として最重要なのです。そして、前へガンガン進んでいくためには「論理的思考力」が重要です。しかし、やみくもにガンガン進んでいくのは危険が伴います。「とりあえず北に行ってはみたものの行き止まりだった」では困りますよね(^^;)。そこで、方向感覚となる「情緒力」が重要になります。
「情緒力」…これは難しい概念です。心の力といってもいいのかもしれません。藤原さんは、「喜怒哀楽よりも高次のもの」と言い、例として「美的感受性、物事を楽観的に見られること、他人の不幸を悲しむ気持ち、もののあはれを感じること、郷愁、惻隠」などとお話されました。桜が散るのを見て人生の儚さを投影し、何ともいえない気持ちになるのも、情緒が豊かだからできるのだそうです。『枕草子』なんかは、“情緒の塊”といえそうですね(^.^)。
つまり、子どもにとって「知識」や「思考」を鍛えることと同じように、いろいろな経験をして、人と関わり人とぶつかり、成功や失敗を繰り返し、様々な“心”を持つようになることも重要なのです。そうして、10年先、20年先を見据えた〈教育〉をすることで、子どもたちは豊かな〈人間〉として成長するのです。
藤原さんは、こういった深い考えを、たとえや経験談なども織り交ぜながらお話してくださいました。とてもユーモアがあり、会場が笑いに包まれることも何度もありました。きっと、たくさんの経験をされただけでなく、それをうまく取り入れる感性も人に伝える豊かなことばもお持ちなのだなぁと思います。とても楽しくとても身になる、有意義な一時を過ごすことができました。私が藤原さんのようにお話できるようになるには、まだまだ修行が必要です……(^^ゞ
(ishimaru)