非言語的コミュニケーションのもつ力 その1

2020 年 3 月 30 日

 人間は、言葉を介して思いを伝え合える動物です。しかも、音声と文字という二つの異なる性質の言語を使います。しかしながら、コミュニケーションの方法は言葉だけではありません。むしろ、言葉を交えないコミュニケーションのほうが互いの意思を有効に伝え合える場合もあります。今回は、非言語的なコミュニケーションが子どもの育ちや能力形成に及ぼす影響について考えてみたいと思います。

 1904年の夏の終わり、ニューヨークタイムズ紙に驚くべき記事が掲載されました。小学校3年生並みの算数ができる馬がドイツにいるというのです。クレバー・ハンスと名づけられたこの馬は、オーナーのオステン氏(ギムナジウムの元数学教師)から約4年間にわたって教育を受け、出された算数課題に右足の蹄を踏み鳴らして正解を示す(その回数で答える)というのです。たとえば、今は何時か、今日は何曜日かなどの質問に答えたり、足し算をしたり、割り算の余りを答えたり、といった具合です。

 クレバー・ハンスはほんとうに算数の問題を理解して解けたのでしょうか。この話はかなり知られていますので、実際のところをご存知のかたもおられることでしょう。もしご存知でなかったなら、「真相はどういうことか」を考えてみてください。なお、飼い主はハンスに施した教育の様子を誰にでも見せていましたし、見物料もとっていませんでした。そして、自分が教えた成果として、ハンスが算数のできる馬になったのだと固く信じていました。

 算数ができる馬の存在はやがて広く知られるところとなり、「この馬はほんとうに算数ができるのか」についての議論が高まりました。そこで事実を究明するための委員会が設置され、大掛かりな調査が進められました。しかし、結論は「見物人をだますようなトリックは何もなかった」というものでした。調査に関わった一人の委員は、「馬の好物を与えて意欲を引き出し、調教をくり返すことで算数の問題を解けるようにしたのだろう」という見解を示しました。

 無論、これで納得する人ばかりではありません。ついには心理学者まで真相解明に乗り出し、オステン氏の協力を取りつけたうえで、様々な実験を試みては算数ができる馬のなぞ解きを試みました。そして、ついに真相をつきとめることに成功しました。すなわち、「馬は算数の問題を理解して解いていたのではなく、質問者が発している無意識の合図に反応していたのだ」というのです。

 問題を出したあと、質問者は馬に足を踏み鳴らすよう促します。それに反応して、馬が一つ、二つと足を踏み鳴らしていきますが、やがて正解の数にたどり着いた瞬間に生じるかすかな身振りの変化が、踏み鳴らしをやめさせる合図になっていたのでした。その場に居合わせた人の誰もが気づかないレベルで生じていた筋運動に、馬は敏感に反応していたのです。

 遅ればせながら、今回の話題はレナード・ムロディナウ氏の著書「しらずしらず」(ダイヤモンド社)から拝借しています。以下でお伝えすることも、この本の内容をもとにして書いていることを予め伝えしておきます。

 動物は人間のように言葉を理解したり操ったりすることはできません。そのかわり、人間の発する非言語的なシグナルには敏感に反応します。前述のクレバー・ハンスのエピソードでもわかるように、人間が意図的に示したわけではない合図(しぐさや表情、かすかな動き、声の抑揚など)も逃すことなく察知し、反応する鋭敏なセンサーをもっています。したがって、人間が動物に何らかの働きかけをしたとき、動物は常に人間の側から発せられる非言語的な合図を感じ取っている可能性が高いと言えるでしょう。

 そのことを裏づける有名な話があります。大学の研究生に、ラットを使った学習の訓練をさせる実験が行われました(実験の詳しい内容は、本記事の趣旨とは異なりますので省きます)。訓練の内容は、T字型の迷路を用意し、5匹のラットに餌がもらえるルート(Tの字の横棒の右側を辿るか、それとも左側を辿るか)を覚えさせるというものでした。それを1日10回繰り返すよう指示しました。ただし、ラットは5匹ずつに分けられ、片方のグループは「迷路を探検できる賢いラットだ」と伝え、もう一方は「方向感覚をもたないラットだ」と伝えていました。学生に先入観を与え、それが実験の結果にどう影響するか調べることを意図したもので、実際には二つのグループのラットに違いはありませんでした。

 さて、ラットの訓練結果に何らかの差があったでしょうか。大いにあったのです。学生が「迷路を探索する天才だ」と思い込んでいたラットのグループは、迷路を辿って餌にありつくことがうまくできるようになっていました。ところが、「方向感覚がない」と思い込んでいたラットの訓練結果はよくありませんでした。学生の思い込みが、訓練をするときの態度に違いをもたらしたのです。すなわち、「能力が高い」と思ったラットには手厚く優しく辛抱強く訓練を施したのに対し、「能力がない」と思ったラットには機械的な訓練しかしていなかったのです。

 では、ラットへの扱いが同じだった場合はどうなるのでしょうか。同種の実験をし、その際に「二グループへの接しかたに違いがあったら、正確な実験データが得られない」と学生に警告し、まったく同じ訓練をするよう徹底させました。ところが、結果は変わりませんでした。「頭がよいラットだ」と思っていたほうのグループの成績がよかったのです。学生は意識の上では公平に扱おうとしました。しかし、ラットに対する期待の違いが表面的な行動とは別のシグナルを送っていたのでしょう。それにラットは反応したのです。

 以上のことは人間にも当てはまるのでしょうか。親のわが子への評価や予想(「できる子か、できない子か」など)は、子どもの能力形成や育ちに何らかの影響を及ぼすのでしょうか。今回の参考文献には、このことにも言及されていましたので、次回ご紹介してみようと思います。また、この話題を土台にして、弊社の会員家庭の保護者の子育てや学習の見守りと応援について、参考にしていただけそうなことを検討し、お伝えできたらと考えています。よろしくお願いいたします。

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カテゴリー: アドバイス, 子育てについて, 家庭での教育

まずは家庭学習の習慣を根づかせましょう!

2020 年 3 月 24 日

 新型コロナウィルスの感染防止の一環として、弊社では2週間の休講という措置を取りました。今月21日から授業を再開しましたが、まだまだ予断を許さない状況が続いていますので、ご家庭におかれましても感染の予防に向けて細心の注意を払っていただきますようお願いいたします。

 新年度のスタートから一頓挫した格好ではありますが、例年開講からしばらくの期間は、塾での勉強になじむこと、家庭での計画に基づいた学習を習慣づけることなど、勉強の内容よりも受験に向けた学びの態勢を安定軌道に乗せることに主眼を置いています。長い受験生活ですから、行き当たりばったりの勉強をするお子さんと、計画に沿って決めた学習メニューをきちんとこなすお子さんとでは、成果に雲泥の差が生じるものです。まだ講座は始まったばかりですから焦る必要はありません。まずは足場を固めることに注力していきましょう。

 よい家庭学習の習慣を根づかせるために、まずもって必要なのは「学習計画」を立てることです。計画を立てずに適当にやってよい成績をあげるお子さんもなかにはおられます。しかし長くは続きません。学習の高度化に伴ってマナビーテストの問題も難しくなり、確かな準備なしによい結果を得るのは難しくなっていきます。そこに至って自分の間違いに気づいても、学習の習慣形成どころではなくなっています。どの分野においても、成功の秘訣は自分の「型」を築くことにあるのだと心得てください。

 とは言え、初めから理想的な学習計画を立てるのは困難ですし、お子さんにとって理想の計画がどのようなものかはわからないものです。ですから、「とりあえず」の計画で構いません。あとで状況に合わせて修正していきましょう。

 開講時に「家庭学習の進めかた」に関する案内を配布していますので、おそらく大半のお子さんは学習計画を立て、それに沿った家庭学習をしておられると思います。しばらくは、お子さんが実行されているかどうか、行き詰ったりしていないかどうかを注意して見守ってあげてください。今の学習計画を修正する必要性については、次の項目を参考にチェックしてご判断ください。

「学習計画」にまつわる問題点のチェック

.時間が短すぎると、やるべき学習がこなせません。長すぎると、疲れたり、クオリティが下がったりの問題が生じます。また、計画が複雑すぎると取り掛かること自体が難しくなってしまいます。

.お子さんの集中力に合わせた計画内容になっているかどうかが重要です。集中力が続かないタイプなら、時間を刻んで休憩を挟みましょう。

.早く終えた場合、無理に他の勉強をさせる必要はありません。逆に、時間内に予定の勉強が終わらない場合、時間延長するかどうかはお子さんの意志や体力に応じた判断が必要です。

.個室での勉強は小学生にはお勧めしません。気が散ったり、他の遊びに手を伸ばしたりしがちです。家族がそばにいるリビングか食卓での勉強が成果につながります。

.取り掛かりに難渋するお子さんには、「あれ?時間になったね」など、お子さんが受け入れるような声かけを試みてください。叱ってやらせようとすると、逆効果や悪循環を招きます。

.勉強中は、できるだけ静かな家庭内になるよう協力をお願いします。テレビはなるべくつけないようにしましょう。

.注意散漫なタイプのお子さんの場合、親が近くで本を読んだり仕事をしたりすることで、「今はやるべきことをやる時間だ」という気持ちを引き出してやりましょう。

.「副教材」「授業の復習」「テキストの問題(難問を除く)」に取り組めば、基礎は身につきます。「がんばりチェック」で、まとめをしっかりやってマナビーテストに臨みましょう。

 何事も初めが肝心です。家庭勉強が軌道に乗ると、「やるべきことをやらないと気がすまなくなる」といった状態になるものです。ここまで漕ぎつけたなら、半ば受験に成功したようなものです。この言葉がお子さんから口をついて出てくる状態に至ることを、当面の大きな目標にしたいですね。そうなったなら、成績の心配も不要になっていきます。

 親が手を出して教えることでテスト成績を上げようとすると、確かに一時期は目に見える効果が引き出せます。しかしながら、いつまでもお子さんは親を頼り勉強の自立を達成できません。やむを得ず手を差し伸べているご家庭がおありでしたら、「今できそうなことは、子ども自身にやらせよう」という意識を常にもち、一人でやれそうなことは手を放してください。そして、やり遂げたなら、大いに喜んで褒め称えてあげてください。そのほうがお子さんは力を伸ばせますし、何よりも入試に向けた追い込み期の親の負担が断然違ってくるものです(それこそ、天国と地獄のように違います)。「自分でやるのは当然」といった風情で勉強に取り組む、頼もしいわが子を見てみたくありませんか? それは、親の接しかた、応援のしかた次第でどの家庭でも実現できますよ。

 なお、弊社の授業は「家庭での一人勉強の方法を教える場」としての役割も担っています。したがって、家庭勉強でのノートのとりかたや、家庭での問題の取り組みに関する指導も行っています。お子さんの勉強ぶりが要領を得ないようでしたら、遠慮なく校舎の指導担当者にご相談ください。

 新型コロナウィルスの感染問題に伴い、校舎ごとに学年単位で実施する予定だった「保護者説明会」の実施が延期されています。この催しにおいて、家庭学習研究社に通っての学習全般について保護者にご説明いたしますので、遅れての開催案内をご確認のうえ、ぜひ参加くださいますようお願いいたします。

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カテゴリー: アドバイス, 勉強の仕方, 家庭での教育

子どもの“やる気”のメカニズム研究 その2

2020 年 3 月 16 日

 前回は、子どもがやる気になるのはどういうときかを、弊社でのアンケート結果をもとに考察してみました。今回はその続きですが、最終的には「進学塾で学ぶ子どもたちのやる気をどう支えるか」という話につなげていけたらと考えています。よろしくお願いします。

 唐突ですが、ある書物を読んでいたときに目が釘付けになった文言があります。それは、「教育とは“やる気”を育てることに尽きる」というものでした。確かに、やる気があれば困難なことにチャレンジする勇気が湧いてきますし、失敗しても挫けることなく立ち向かい、やがては満足のいく結果を手に入れることができます。決して勉強だけに必要なものではありません。やる気こそ、人間にとって成長の原動力となる大切なものなのですね。

 だいぶ前ですが、大学の研究者が「子どもはどんな理由で学ぶか」についてアンケートを実施し、その結果を著書で紹介されたことがあります。これは、「やる気はどうしたら高まるか」に直結する調査と言ってもよいでしょう。調査対象は、小学5・6年生300名でした。ちょっとご紹介してみましょう。調査の結果、子どもたちが学ぶ理由はつぎの4つにグループ分けされました。

 ①は知的好奇心や向上心が学ぶ理由となっています。②も①と同様に学び手である子ども自身の気持ち(~になりたいという欲求)が学びの理由となっています。③は、子ども自身の気持ちだけでなく、他者との比較や関わりもファクターになっていますから、①や②とは異なり、自己と他者の両方がからむ学びの理由と言えるでしょう。④は他者からの承認に対する欲求が学びの理由となっています。

 さて、小学校5・6年生にいちばん強くみられた理由は①~④のどれだったでしょうか。いちばん強かったのは、③の「よい成績を取りたい」という理由でした。みなさんの予想どおりだったでしょうか。つぎが②の「自己実現のために学ぶ」で、そのつぎが①の「おもしろいから学ぶ」、いちばん学ぶ理由として弱かったのが④の「認められたいから学ぶ」でした。

 この資料は、子どもの成長の過程をよく表しているように思います。児童期前半の子どもは、目の前にあるものすべてが好奇心の対象になりますから、「おもしろいから学ぶ」という傾向が強いものです。同時に、大人の庇護のもとで生きていますから、「親が喜ぶから」「親がほめてくれるから」「先生に叱られたくないから」などのように、大人の影響が多分に反映されての意欲になりがちです。

 しかしながら、年齢を重ねるうちに世の中のことがわかるようになり、自分の人生について見通す姿勢も備わっていきます。やがて中学2年生頃になると、単に知りたいからというよりも、自分の知的興味と先々の進路とを重ね合わせ、それを励みに学びの欲求を高めるようになっていきます。

 こうした変化の途上期に見られるのが、「よい成績を取るために学ぶ」という傾向です。純粋に「おもしろいから」「知りたいから」という理由で学んでいた子どもも、学校という小集団社会で教育を受けるにつれて、自分自身の満足・他者との比較の両方においてわかりやすい評価目安を求めるようになるのではないでしょうか。それが「成績」なのでしょう。成績がよければ「自分はやれる!」という自信をもつことができ、それがまた次なる学びに向けた意欲を刺激します。

 こうしてみると、中学受験をめざして学ぶ子どもたちは、最も成績に敏感な時期に受験勉強をしているわけですね。進学塾につきものの得点や順位は、順調なときには否が応でも学習意欲を刺激してくれますが、皆が同じ目標に向かって勉強している集団のなかでの勉強ですから、思うような成績が得られないことも多々あります。運悪くスランプが長引いたりすると、成績の低迷が有能感の喪失につながってしまう恐れがあるのだということも知っておく必要があります。

 そういうときこそ、大人の出番ではないでしょうか。というのも、思春期までの子どもは、まだまだ親に頼っています。上記資料では、④は学びの理由としてはいちばん下になっていますが、それは子どもの顕在意識に問いかけた場合の結果であり、実際にはまだまだ親(大人)に様々な面で依存して生きています。だからこそ、親は大切なわが子を成績のもつ負の側面から救い出してやらねばなりません。

 成績が落ちたとき、みなさんはどうわが子をフォローされるでしょうか。親自身の落胆の気持ちを抑え、やる気を引き出すべく励ましてやることが望ましいとわかっていながら、ついやる気のなさを指摘したり、能力不足に言及するような言葉を浴びせたりすることはありませんか?

 前回お伝えしたように、もともとやる気のない子どもなんていません。テストの繰り返しの中で自信を失い、あきらめの気持ちがチラついたりして、気持ちの入った勉強ができなくなっているのです。そういう状態を立て直しには、まずもって親が「あなたはやれるよ!」と、親が勇気を吹き込んでやる必要があります。成績は能力を判定するものではありません。当該のテスト範囲における、勉強の成果を問うものです。つまり、「どれだけ努力したか」を判定するものです。それはわかっておられるとは思いますが、わが子のことになるとつい感情に振り回されてしまうのが親というものです。

 そこで、親のサポートのキーワードは「努力」ということになります。ただし、「もっと努力しなさい!」と激励するだけでは、直に効果を失ってしまいます。親の基本スタンスとして「やるべきことを自分で決め」、「その日その日にどれだけやったか、を振り返らせ」、「努力の継続と積み重ねこそ、親が期待していることだ、というメッセージを送り続ける」ことが大切だと思います。すなわち、勉強の主役である子どもが自主的に行う受験勉強を尊重しながらサポートすることが求められます。

 テスト成績がわかったなら、その度にお子さんが自分の勉強を冷静に振り返り、「何が足りなかったか」を親が言わなくても自分で振り返るよう励ましてやりましょう。その姿勢が確固たるものになれば、もはや親の心配はなくなると言ってもよいでしょう。そのときが来るまで、親はもどかしい思いをすることになりますが、そうした日々は確実にわが子の成長を後押ししてくれます。また、それこそがわが子を受験させたことで得られるいちばんの収穫ではないでしょうか。

 若干話が逸れたかもしれません。今回の記事を通じて、保護者の方々が「やる気を育てる親になろう!」という気持ちを少しでも強くされたならうれしいです。もちろん、教室の指導担当者もお子さんを取り巻く環境にいる大人のひとりです。普段の授業を通じて、「子どもたちのやる気をいかにして高めるか」に挑戦するつもりで指導にあたってまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

※今回の記事でご紹介した資料は、「自ら学ぶ意欲を育む先生」(桜井茂男/著 図書文化)より引用しました。

 

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カテゴリー: 家庭学習研究社の特徴

子どもの“やる気”のメカニズム研究 その1

2020 年 3 月 9 日

 新型コロナウィルスの感染拡大への対処として、全国のほとんどの小中高がと休校という措置をとっています。弊社のような進学塾は、かなり広範囲から子どもたちが通っているため、通学道中も不特定多数の人との接触が考えられますし(原則、保護者による送迎を勧めていないという事情もあります)、授業においても多数の児童が交流しますから、学校の対処の流れに沿ってと休講いう手段を採りました。

 新年度の学習指導が開講時から頓挫しているため、保護者も戸惑っておられるかも知れません。また、学校が休校状態であること自体、仕事をもっておられる保護者にとっては負担です。もはや国をあげての大問題となっています。今朝などは、広島の繁華街にあるドラグストアに、開店30分以上前から長い列ができていました。おそらくは、マスクなどを求めてのことでしょう。一刻も早く感染拡大が収束し、世の中が平常に戻ることを願うばかりです。

 さて、新年度の講座が始まったものの稼働していない状態ですので、会員家庭のお子さんにはとりあえずカリキュラムの最初のところを家庭で勉強していただいています。そこで問題になるのは、決めた時間に決めた勉強にとりかかれるかどうかということです。お子さんは、自分なりにテキストを広げ、手引きを読む、例題を通して単元の基本事項を学ぶ、練習問題を解く(ノートに式や答えを書く)、配布した解答・解説と照合して適切な考えかたを確認する、などのプロセスをきちんと踏んで勉強しておられるでしょうか。おそらく、塾の勉強に慣れていない4年部生などは、取り組みに難渋するケースが多いのではないでしょうか(保護者の負担が増していれば申し訳ありません)。

 長い受験生活において、保護者の悩みになりがちなのが「うちの子にはやる気がない」「どうしてこんなにやる気がないのだろう」など、やる気に関わる問題です。今回は、新年度の講座が家庭学習からの出発になってしまいましたので、この問題に早くも直面しておられるご家庭が少なくないのではないかと思い、話題にあげてみたしだいです。すでに何度も同じテーマで書いていますが、毎年受験生は変わりますし、保護者も同じ方々ではありません。今回初めてお読みくださるかたも多数おありでしょう。よろしければ目を通してみてください。

 まずは、「子どもは放っておいたら勉強しない」「わが子はやる気が足りない」という思い込みはないか振り返ってみてください。ものごとに興味関心のない小学生など一人もいません。当然、好奇心に基づくやる気はもっています。問題は、「もっとやる気を!」という大人のアプローチのしかたにあるのです。これは、子どものやる気を失わせるネガティブメッセージに他なりません。

 そこで保護者には、お子さんと和やかな会話の時間をもっていただき、さりげなく「あなたはどういうときにやる気が湧いている?」と尋ねてみることをご提案します。きっといろいろな返事が返ってくるでしょう。おそらくは次のようなものが多いのではないでしょうか。

 上記は、何年か前に弊社の4・5年部生へのアンケートの結果で多かった回答をご紹介したものです。1~4は、いずれも親との関わりでやる気が生じているということにお気づきでしょうか。親は5~8のような事柄を期待しがちです。しかし、小学生までの段階においては、「まずは親との関係性がやる気のベースになるのだ」ということを踏まえていただきたいと存じます。

 というのも、児童期までの子どもは、親に認めてもらったり、親との精神的なつながりを感じたりすることで、自分の存在を肯定的にとらえ、気持ちを落ち着かせることができます。この状態を得て、はじめて子どもは本来もっている知的欲求や好奇心を稼働させることができるのだと言われています。親が絶対的な存在である児童期までの子どもにとって、やる気は子ども自身に帰するものではなく、「親しだい」のものなのだということを、ぜひ心に留めていただきたいですね。

 親の愛情をしっかりと受け止めると、子どもは安心して自分の周囲にあるものごとに関心をもつことができます。4~8は、そういった前提が整ってこそやる気のもとになるのですね。

 反対に、子どものやる気を失わせるのはどんなことでしょうか。もはや、ここで事例をあげつらう必要はないかもしれません。上記の1~4の逆を思い浮かべていただくとすぐにおわかりになるかと思います。親に叱られてやる気になるとしたら、それはほめられることをたくさん経験しているという前提条件があるからでしょう。叱られてばかりでは、子どもは心を落ち着かせることはできませんし、自分を肯定的にとらえることもできなくなります。

 子どもが奮起する条件として、2は非常に大きな役割を果たします。うまくできなくても、親ががんばりを見ていてくれ、喜んでくれたり励ましてくれたりする。このことは、親への信頼や尊敬の気持ちを大いに高めます。成績で一喜一憂せず、「やるべきことをがんばる姿勢を奨励する」親であってください。きっとお子さんは、成績に振り回されず、自分自身の満足のために勉強に取り組む人間に育っていかれることでしょう。

 3や4も、子どものやる気を刺激する大きなファクターです。1や2と根は一緒です。かけがえのない家族と楽しい時間を共有するとき、必ず子どもは「親は自分に何をを望んでいるか」ということに思いを巡らすと言います。楽しい団らんが終わると、子どもは自発的に机に向かって勉強し始めるという話をよく耳にしますが、理由は今述べたようなことであろうと思います。

 今回は、どの子どもにもやる気はある、子どものやる気は親しだい、ということをお伝えしました。このことは、小学生であれば何年生にでも適用できることです。まずはわが子との信頼関係の現状、親のわが子に対する接しかたを振り返ってみてください。そこから状況を改善する道が開けることでしょう。

 受験までの道のりは長く続きます。「やる気が見られない → 叱る → ますますやる気がなくなる」といった負の連鎖に陥ると、立て直すのが大変になります。「子どものやる気の大本は親にあり」を心に留め、温かく辛抱強くお子さんをサポートしてあげてください。

次回はこの続きをお伝えできたらと思っています。よろしくお願いいたします。

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カテゴリー: アドバイス, 勉強の仕方, 家庭での教育

弊社受験生 私立一貫校の入試結果と進学状況

2020 年 3 月 2 日

 早いもので、先週の土曜日(2月29日)には弊社の各校舎で新年度の開講の催し(オリエンテーション」がありました。

 しかしながらご存知のように新型コロナウィルスの拡大を食い止めるため、政府の要請に基づいて学校は当分の間休校となる模様です。弊社にも多数の小学生が通っていますので、おそらくしばらく休講になると思います(このブログは2月28日に書いています)。これ以上感染が広がり被害が深刻化しないためにも、リスク回避の措置を講じることは必要であり、やむを得ないものだと思います。一刻も早く、ウィルス感染の問題が収束することを祈るばかりです。

 さて、先週のブログでは、弊社受験生の国・公立一貫校入試結果と進路選択状況をご報告しました。そこで今回は、私立一貫校の入試結果と進路選択の状況をご報告してみようと思います。

 弊社は50年余り前の設立時から現在まで、一貫して広島の中学入試に的を絞った受験指導を行っています。かつて、広島の中学受験といえば広島学院、修道、ノートルダム清心、広島女学院などの私立一貫校や、国立の広島大学附属などへの受験が主流でしたが、近年は公立一貫校が増え、しかも着実に実績を積みあげつつあります。もはや公立一貫校への受検も、広島の中学受験生にとって主要な選択肢の一つになったと言っても過言ではありません。そこで今年は、受験の結果をご報告する際も、国・公立の中学校群と、私立中学校群とに分けてご報告することにした次第です(国公立の状況は前回掲載)。

 まずは資料を見てください。

弊社会員 私立一貫校の入試結果と進路選択の状況  ※数字は人数

学校名 募集定員 志願者数 弊社合格者数 弊社進学者数
広島学院中学校 184 648 65 46
修道中学校 276 931 146

79

広島城北中学校 200 590 149 36
ノートルダム清心中学校 180 570 74 59
広島女学院中学校 200 715 139 60
安田女子中学校 前期150 568 102 24
後期50 266
広島なぎさ中学校 160 男362
女267
男87
女49
男26
女9
近畿大学附属広島中学校東広島校 前期110 前期324 男12
女25
男3
女6
後期30 後期149

 初めに今年の中学入試の状況を概観しておきましょう。広島学院、修道、ノートルダム清心、広島女学院といった、広島を代表する伝統的な私学の受験動向に大きな変化はありませんでした。人口集中が相変わらず激しい首都圏と比べ、人口が横ばいで経済情勢が長期低迷を続ける地方都市の広島においては、20年前、30年前ほど中学受験熱の盛り上がりはありません。しかしながら、広島は昔から私立の6か年一貫校の多い土地柄であり、それに加えて公立の6か年一貫校が増えており、全国的にも稀なほど中学受験が当たり前のように認知されている特異な地域となっています。

 したがって、私学のトップ校や広島大学附属、県立広島などは難易度が高く、優秀な受験生にとってバラエティに富んだ選択肢があります。また、中堅の私学も男子校、女子校、共学校と様々な選択肢があります。さらには、広島中等教育学校や県立叡智学園などの個性を携えた公立一貫校、広島国際学院や鈴峯女子改め修道大学附属協創となった私立共学校など、新たな選択肢も加わっています。「わが子によい教育環境を」と望まれるご家庭にとっては、以前に増して多様な中等教育の受け皿が整いつつある恵まれた地域だと言えるでしょう。

 それでは男子校の受験状況や弊社会員の入試結果を踏まえ、少し説明をさせていただこうと思います。。

広島学院中学校

 今年の広島学院中学校合格者は、昨年の58名から若干増えて65名でした。昨年比で目につく変化が見られたのは進学者数です。合格者65名のうち46名が同校に進学しますが、進路としての選択率が7割強と、今年は近年になく歩留りの低い年となりました(例年は8~9割)。他校に流れた19名の内訳は、広大附属が12名、修道が4名、県立広島が3名でした。広島学院と附属の重複合格者は、例年であれば大半が広島学院を進路に選びますが、今年は24名の重複合格者のうちの半数が附属を選びました。これは今年に限った現象とも考えられます。ただし、ここ2~3年附属の選択率は少しずつ上がっており、地域の経済情勢が反映されつつあるのかもしれません。また、今年は附属をもともと第一志望にしていた受験生が例年よりも多かったことも原因の一つでしょうか。なお、県立広島を選択した3名はいずれも東広島校の受験生でした。

修道中学校 

 次に修道ですが、志願者数は昨年比30名弱の増加で、ほぼ昨年並みと言えるでしょう。弊社からの合格者は146名と、昨年比26名の増加でした。合格者のうち、修道を進学先に選んだのは79名で、今年は1クラス半以上の受験生を修道に送り出すことができました。重複合格をして他校を選んだ受験生のほとんどは、広島大学附属もしくは広島学院を進学先に選んでいます。他の有力校に受かっても修道を選ぶ受験生の多くは、自由で明るく骨太な校風にあこがれるケースが多く、それに加えて家族や親戚に修道OBがいることや、部活のスポーツも視野にあることなどが修道選択の理由となっているようです。ご存知のように、修道は広島で最もポピュラーな私学で、弊社の会員の大多数が毎年受験しています。来年度も、今年に負けない合格実績があげられるようがんばってまいりたいと思います。

ノートルダム清心中学校

 女子校に移ります。ノートルダム清心の合格者は昨年比で8名少ない74名でしたが、進路としての清心選択者は逆に若干増えて59名でした。わずかな違いではありますが、これは附属との重複合格者のなかに清心ファンがおられ、何名かが清心のほうを選ばれたことも影響しているでしょう。ですが、以前は清心の選択率がもっと高かったと記憶しています。また、かつて80名以上の進学者を弊社から輩出したこともありますので、来年はもっと多くの進学者を送り出したいと思っています。近年清心への受験生が若干減少気味ですが、女子受験者は、男子と比べると共学志向が高く、附属のほかに、県立広島や広島中等教育なども人気です。そういった点が作用してのことかも知れません。何と言ってもノートルダム清心は広島の私立女子一貫校高の最高峰です。来年は清心への合格者、進学者がもっと増えるようがんばってまいりたいと存じます。

広島女学院中学校

 広島女学院への合格者は昨年の141名に対して今年は139名と、ほぼ同じくらいでした。進路としての選択者も、昨年の56名に対して今年は59名で、あまり変わりませんでした。広島女学院の受験者数が近年やや減っている(昨年は741名)のは、上記のように女子にもともと共学志向が強いという傾向があるのに加えて、県内に公立の一貫校(いずれも共学)が次々に開校され、ライバルが増えていることも多分に影響していると思います。しかしながら、広島女学院は男子の修道とともに広島で最も幅広く認知され親しまれている私立学校です。また、同校の明るく開放的な校風と、自立した優秀な女性の育成という点は高く評価されており、今後も「広島の女子私学と言えば女学院」というイメージをぜひとも堅持していただきたいと思っています。来年はもっと多くの合格者・進学者を家庭学から送り出したいと思っています。

広島なぎさ中学校

 共学の広島なぎさは、弊社からの合格者と進学者が例年以上に男子に偏りました。男子合格者87名、男子進学者26名に対して、女子合格者49名、女子進学者が9名でした。これは、同校の近隣にある弊社の五日市校と己斐校の受験生の男女比が、男子のほうに偏っていたことと多分に関係があると思われます。ただし、特色教育を謳い、勢いがあったころの同校は、広島市の中心部にも名前が浸透しつつあったのに対し、近年は広島市西部地域以外での認知度が下がっているように見受けられます。弊社の受験生も、三篠校や広島校からの受験生が減少気味です。AICJ、修大協創、国際学院などの私立共学校、広島中等教育などの公立共学校と、ライバルが増えていることも影響しているかもしれません。先生がたは広報活動に熱心に取り組んでおられますが、その成果が目に見えるようになることを願っています。

 そのほか、弊社の受験生の受験動向で目についたのは、近年AICJ中学校への受験者・進学者が増えていることでしょうか。以前は受験するお子さん自体が男女合わせて数名程度でしたが、今年は男子合格者が7名、進学者が2名、女子合格者が13名、進学者が4名となっています。合わせて合格者20名、進学者が6名となり、ずいぶん増えています。また、修大附属協創も校名が変わり、女子校から共学になったことがプラスに作用してか、入試の様相に変化が見られました。今年は弊社から13名の合格者があり、そのうちの3名が同校に進学します。

 以上、一部の学校ではありますが私立一貫校の受験と進学の状況をご報告しました。私立学校のよさは、何と言っても設立にあたっての志があり、学校独自の教育理念があるということです。伝統を有する私学には、学校のたたずまいからも一種のオーラのようなものが醸し出されています。そこでの6年間の学校生活は、私学の一員としての資質を浸透させ磨いていくことでもあります。単に学力をつけるということよりもはるかに多くの価値をもたらしてくれる私学。どの私学に進学しても、その私学の一員として誇りをもって学校生活を送り、成長して行ってほしいですね。

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カテゴリー: 中学受験