学力不振は“読み”の力の底上げで脱出できる!?

2021 年 7 月 31 日

 オリンピックの開幕前後から、新型コロナの感染者が急激に増加しています。広島県内でも、感染力が強いとされるデルタ株の感染者が確認されており、今後ますます感染者が増加する恐れを感じます。みなさま、くれぐれも感染防止のための配慮を怠りなく。

 コロナ禍の夏休みとあって、たくさんの人が集まる場所でのレジャーは控えざるを得ません。また、お盆の帰省も自粛されるご家庭が多いのではないかと思います。何かと行動がセーブされる状況において、家庭や親子という視点からプラス材料とされているのは、親子の会話が以前よりも増えたことだ、親子の信頼関係が強化されたことだという調査結果が、ネットの記事にありました。これは頷ける話ですね。

 夏休みは、親子一緒に過ごす時間がいつもより多く確保できます。そこで、ふと思いついたのは、おとうさんに(無論、おかあさんや他の家族でも構いません)、受験生のお子さんのバックアップをお願いできないかということです。

 と言っても、勉強を教えることではありません。おたくのお子さんは、勉強しているわりに成果が上がらないと嘆いておられませんか? 同じテキストを読んでも、そこから吸収できる情報の質や量は一人ひとりみな違います。なぜそうなるかは、頭の良し悪しという面もありますが、“読み”の力の違いによるという側面が非常に大きいのです。おたくのお子さんの読みの力がどうであるか、それが勉強の成果に影響を及ぼしていないかどうか、一度チェックしてみるとよいかもしれません。特に4~5年生は、読みの態勢づくりがスムーズに進んできたかどうかが、学力面にはっきりと表れてくる時期です。

 どういうことかをちょっとご説明してみましょう。低学年期から積み重ねてきた読みの習練は、中~高学年期になってからの知識獲得や思考力向上に多大な貢献をするようになっていきます。

【3年生】
子どもの読みの能力が安定軌道に乗ります。多くの子どもが、正確によどみなく黙読できるようになり、読書に勤しむようになります。たくさんの言葉との出合いが始まり、語彙がどんどん増えていきます。この流れが築けるかどうかが勝負です。

【4年生】
読書の活発化に伴って、これまでとは比較にならないほどの勢いで語彙が増えていきます。前年までと比較し、4年生の1年間で約4割も語彙が増えていきます。それに伴って思考力も発達し、抽象語の理解も進んでいきます。

【5年生】
1年間に5000~6000語も語彙が増える、人生でいちばんの語彙増加期を迎えます。活発な読書活動は、読みのスキルをさらに向上させ、効率よく活字から知識を得られるようになります。かなり難解な文章でも読みこなせる子どもも出てきます。

 読みの力をつけた子どもは、3~4年生頃から読書量が一気に増加し、そこから信じられないほど知識を増やし、思考の大人化を達成していきます。これが、教科学習における理解力や吸収力の差を生み出します。4~5年生頃の急速な語彙発達を、専門家は「語彙の爆発」と呼んでいます。その現象をわがものにしたお子さんは、勉強においても大変有利になるのは疑いありません。なにしろ、テキストを速く読めるうえ、著述内容を理解して知識にするレベルも高いのですから。逆に、この段階で読みの力が不十分だと、知識獲得や学力形成において後手を踏むことになりがちです。

 とは言え、近年は優れたエンターテインメント性をもったゲームが子どもたちを虜にしています。さらには携帯をもたない子どもはごくわずかになりつつあります。したがって、活字との親和性を築けないまま高学年に到達してしまう子どもが少なくありません。もしもそうした傾向が、おたくのお子さんから感じられたなら、この夏を起点にして、読みの力の強化に向けてバックアップしてやりませんか? 今からでは遅いなどということはありません。読みの力はこの先もずっとお子さんの学習成果を規定します。今すぐにでも始めましょう。

 では、何をすればよいかという話になります。それは音読練習のサポートです。“読む”とは、普通黙読のことをさします。黙読というのは、活字のつながりを目で追っていきながら、言葉の意味や言葉同士のつながりなどを判断して著述内容を理解していくことを言います。このとき、実は読み手は声に出して読む代わりに文字の読み(発音)を脳の中でイメージしています。これが上手にできるようになるには音読練習の積み重ねが必要なのです。

 なぜかというと、もともと人間には音声の言葉しかありませんでした。たとえば、日本で文字の言葉が一般に普及していったのは平安時代です。音声言語の歴史が20~30万年とすれば、文字言語の歴史は1000~2000年でしかありません。したがって、人間の言語理解の中枢は、音声の言葉のそれしかありません。その音声言語の理解中枢を使って文字言語を理解する手立てが、「読みの発音(自分の読む声)を脳の中でイメージすること」なんですね。

 このことからわかるのは、音読が速くて正確であればあるほど黙読も早くて正確になるということです。さらに、黙読は音声というバイアスを伴いませんから、ずっと速く快適に読むことができます。だから子どもは読書に勤しむようになるんですね。この流れをうまく築いた子どもは、前述のように急速に語彙や思考を発達させることができるようになります。

 前期に弊社の校舎に通っていたお子さんなら、前期のテキストまたは夏期講座の素材文を利用してください。夏休みからの通学生は、夏期講座のテキストの素材文(学校の教科書でも、一般の児童書でも構いません)を利用してください。さきほど、サポートはおとうさんにとお伝えしましたが、その理由は夏休みは食事の準備などでおかあさんの負担が大きくなるからです。毎日、20~30分、素材文を大きな声で一気に読ませてください。躓いた回数をチェックし、メモします。おとうさんと読みの力比べをしてもよいでしょう。楽しい時間にしてください。

 音読で気をつけたいのは、読むことに気持ちを取られ過ぎて、肝心の著述内容の理解に気持ちを傾けられない子どもが多いことです。ですから、読み終えたら、どういうことが書いてあったかをお子さんに必ず尋ねてください。男の子は、口頭で答えるとしどろもどろになるかもしれません。自分の考えを整理しながら順序だてて説明する練習の場としてとらえ、気長に付き合ってあげてください。決して叱らないようお願いします。おとうさんも一度音読し、著述内容をもとに感想や印象に残ったことなどをやり取りするのも楽しく、お子さんのモチベーションアップに役立つかもしれません。また、おとうさんに負けまいと、お子さんの音読に熱が入るかもしれません。

 なかには音読練習などに時間を割くよりも、勉強の内容に直接手を染めさせたいとお考えのかたもおありかと思います。しかし、そもそも読む力がうまく機能していないから、勉強の成果を引き出し損ねているのです。滑らかに読めるようになれば、読むこと自体を苦痛に思わなくなるし、同じことを勉強しても吸収度が高まるので勉強に向かう能動性も高まることでしょう。成果の違いは推して知るべしです。読みの習練のやり直しは、学力向上に向けた遠回りのようで近道なのです。

 その昔、読むとは声に出して読むことでした。この原点をしっかり押さえ、読みの力の増強に向けてがんばっていただきたいですね。

 夏休みは、あらゆることの起点や転換点となるありがたい長期休暇です。うまく生かしてください。

LINEで送る
Facebook にシェア
Pocket

カテゴリー: アドバイス, 勉強について, 勉強の仕方, 家庭での教育, 音読・読み聞かせ

親子のコミュニケーションが夏休みの学習成果を決める?

2021 年 7 月 21 日

 夏休みが始まり、早速本日(7月21日)から6年部の「中学受験夏期講習」が開講します。このあと、他の学年も次々に夏休みの講座が始まります。

 6年生の子どもたちにとって、入試本番までに残された期間はあと半年足らず。この夏休みは基礎から応用への転換期にあたりますから、今から始まる夏期講習で手ごたえをつかめるかどうかで入試に向けての見通しも変わってきます。毎年夏の講座が来ると同じようなことをお伝えしていますが、受験生の子どもたちには「夏を制する者が入試を制する」という自覚のもと、悔いの残らぬ夏休みの受験対策を実現してほしいですね。がんばれ、受験生!!

 ところで、これから盆過ぎまでは、年間を通して最も蒸し暑さを感じる時期であり、戸外と室内を行き来すると体が変調を来しがちです。家で勉強を始める際には、冷水のシャワーを浴びたり洗顔したりして、気分をさっぱりと切り替えたうえで取りかかるなど、集中力の伴った勉強を実現するための工夫も必要でしょう。また、早朝や夜などの涼しい時間帯を上手に活かし、時間や量より質を重視した勉強を実現していただきたいですね。

 もう一つ。子どもたちの集中度を左右するのがメンタルです。小学生のメンタル面を左右する要素として何と言っても見逃せないのは親子関係であり、親の上手なサポートです。夏休み期間は、これまで以上にお子さんとのコミュニケーションを大事にしていただきたいですね。

 親子のコミュニケーションを図るうえで重要な役割を果たすのが、わが子をほめることです。小学生までの子どもは、いつだって親にほめてもらい、親の承認を得たいと望んでいます。ほめ過ぎるとほめる効果が失われるなどということはありません。いくら親にほめられても、「もっとほめられたい!」と望むのが子どもというものです。親にほめられると、子どもは「自分は親に愛されている、期待されているんだ」ということを確かめることができます。当然、心が安心と幸福感で満たされますから、自然の流れとして「自分は親にどうすることを期待されているか」ということに思いを馳せるようになります。受験をめざして勉強している子どもなら、受験勉強へと気持ちが向かうのは間違いありません。

 では、いつほめたらよいかということになりますが、それには、次のような時間を夏休み中に毎日設け、その際に必ず最低一つはほめる言葉を用意しておき、子どもに伝えるというのはいかがでしょうか。

 その時間とは、1日の振り返りの時間です。勉強は、ただ漫然と取り組むのではなく、絶えず今の状態を振り返りながら成果と課題を明確にし、現状にある問題点を解消していくとより効率的に成果へとつなげることができます。その日その日の勉強について、成果と課題をノートに記す習慣をつければ、お子さん自身が現状を振り返って客観視する姿勢が身につきますし、親にすればわが子の現状や努力の様子を確かめることができます。

 「うちの子にはほめるべきところが一つもありません」と、あるおかあさんに言われたことがありますが、それはおかあさんの期待する勉強や成績という観点に縛られているからに他なりません。お子さんそれぞれにほめてやりたくなるよい点は無数にあるものです。それを見つけてわが子に伝えてやることは、親としての重要な仕事の一つではないでしょうか。またそれは親として楽しいし、わが子に関わる様々な発見にもつながるものです。

 このような「振り返りノート」を用意し、夕食後一息ついたときに「ちゃんとやれたこと」と、「上手くできなかったこと」をお子さんに振り返らせ、両方を書き記すよう促すとよいと思います。そして、親子でそのことについて 会話を交わすのです。がんばっている点については、大いに喜びほめてやりたいですね。また、がんばれなかった点については、次にどうしたらよいかについて子ども自身に考えさせ、必要に応じてアドバイスや激励をしてあげるとよいでしょう。

 無論、場が堅苦しい雰囲気になると長続きしませんし、お子さんのやる気を高める効果も引き出せません。そこで、この振り返りの時間を利用してお子さんをほめるようにすると、楽しく元気の出る雰囲気になるのではないでしょうか。先ほどの例のように、勉強のこと以外の話題でもよいのです。お子さんが前向きに頑張っているところを見つけて指摘してもよいし、少しでも進歩が認められることを指摘してもよいのです。

 とりあえず、受験勉強は置いておき、わが子のよいところ、ほめてやりたいところを5つイメージしてみてください。普段気づかなかったことがいきなり思い当たり、早く伝えてやりたくなることもあるかもしれません。こういったポジティブなやり取りの繰り返しは、必ず子どもによい影響をもたらします。ぜひ実行してみていただきたいですね。

 なお、ほめる際の原則として専門家の多くが指摘していることをご紹介しておきます。それは、能力や人間性をとりあげてほめるのではなく、子どものしたことをとりあげ、それをほめるということです。たとえば、「弟の面倒を見るなんて、なんて心のやさしい子なの!」ではなく、「弟の面倒を見てくれてありがとう。おかあさん、助かったわ」が適切です。なぜなら、誰だって、いつも人にやさしくは振る舞えません。「弟はウザイ。消えてしまえ!」と思うときだってあります。「なんてやさしい子なの!」とほめられると、「違う。ボクはそんないい子なんかじゃない!」と後ろめたさや反発心がこみあげてくるものです。そうなると、せっかくのほめ言葉も意味をなさなくなり、気まずい雰囲気に陥ることになりかねません。

 この夏休みを起点に、楽しい会話の時間、振り返りの時間を設け、親子のコミュニケーションを一層密なものにしませんか? 親子の気持ちのつながりは、お子さんのやる気を高め、学習の成果を増大させるだけでなく、家庭の雰囲気よくする効果ももたらすことでしょう。

LINEで送る
Facebook にシェア
Pocket

カテゴリー: お知らせ, アドバイス, 勉強の仕方, 子育てについて, 家庭での教育

夏休みは、‟行動の切り替え”を合言葉に!

2021 年 7 月 12 日

 早いもので7月も半ば。夏休みが近づいてきました。弊社では、7月21日(水)の6年部「中学受験夏期講習」を皮切りに、全ての学年で夏の講座を開始します。

 さて、夏休みはかつてよりは短くなったものの、学校への通学が中断することや自由に使える時間が増えること、さらには年間で最も蒸し暑い日が続くことなどから、行動のリズムが変調を来しがちな時期です。このような条件の下で受験勉強をするわけですから、ともすれば学びの質が低下しがちであり、毎日をどう過ごすかで個々の学習成果に大きな違いが生じるものです。親子で話し合ってしっかりとした学習計画を立て、規則正しい生活のもとで勉強に取り組んでいただきたいですね。

 夏休みで特に気をつけたいのが‟行動の切り替え”です。朝起床してから夜の就寝まで、子どもたちに与えられた時間は誰でも同じです。中学受験生なら、1日の行動予定もさほど違わないことでしょう。だからこそ問われるのは計画の実行力と学びの質です。その違いが学習成果に少なからぬ違いをもたらします。そのカギを握るのが‟行動の切り替え”なんですね。

 一つ例をあげてみましょう。おたくのお子さんは次のAとBのどちらにも当てはまりますか?

A 勉強の時間になったら、遊びをやめてすぐ勉強にとりかかれる。
B 勉強の時間は集中して取り組み、予定を終えたら気持ちよく遊べる。

 どちらもOKなら素晴らしいですね。ですが、かつて指導現場にいた頃の経験を思い起こすと、次のようなご家庭がかなり多かったように思います。

  上記のような家庭が多いのは無理からぬことです。遊びは子どもにとって掛け値なしに楽しいものですが、勉強は頭を使って考えるプロセスに苦しみもあり、楽しいばかりではありません。おまけに、幼いころから親に「勉強、勉強!」と追い立てられてきた子どもは、「勉強とは嫌なもの」という観念がが染みついています。したがって、やるべき時間が来てもなかなか勉強に切り替えられない子どももいることでしょう。やっと取りかかっても、ダラダラと時間を費やしてしまい、終了時間が来たらやりかけのまま投げ出してしまいがちです。

 行動の切り替えが上手になると、時間を有効に使えるし、やるべきことに集中できるので成果も格段に上がります。しかしながら、それができるようになるには、楽しいかどうかだけを追い求めるのではなく、より重要なことを優先して行動する姿勢も求められます。このような姿勢は子どもの頃までに身につけておくべきもので、学業面での成果や人間としての歩みに多大な影響を及ぼします。今、勉強よりも遊びを優先しがちなお子さんも、心の中ではどちらが大切かはわかっています。易きに流されることなく、大切なほうを優先して行動したときの気持ちのよさ、得られるものの大きさを知る体験が足りないのです。

 この点において参考になる話があります(別件ですでにご紹介したことがあります)。アメリカの学者によって次のような実験が行われました。幼児を一人ひとり順に呼び出し、マシュマロやクッキーの類を一つ見せ、「すぐ食べてもいいよ。でも15分食べるのを待ったら、もう一つ同じものをあげるよ」と言って、実験者が席を立ちます。さて、結果はどうなったでしょうか。大概の子どもはすぐ食べたいという欲求に負けてしまいました。15分待ち、二つのお菓子を見事手にした子どもは僅かだったそうです。

 この実験はかなり前に行われたものですが、今でも世界中の教育関係者によく知られています。その理由は、人生の成功者になるうえで極めて重要な要素を示唆してくれるからです。実は、被検者の幼児のその後の人生の歩みが20年、30年以上にわたって調査されたのです。その結果、食べるのを我慢できた子どもは、総じて社会的地位が高く、高い水準の所得を得ていたことがわかったのです。

 いったいどうやって幼い子どもが欲望を抑制できたのでしょうか。「あのお菓子はまずいに違いない」とか「あれはおもちゃのお菓子だ」など、今すぐ食べてしまいたいという欲望を押しのけるための知恵を絞ったのです(うろ覚えですが、だいたいそういうことだったと記憶しています)。それは、「15分我慢したらもう一つもらえる」と先を見通し、すぐに食べてしまうのを我慢し、適正に自分の行動を制御することができたからではないでしょうか。幼児期の子どもにとってはハードルの高い行動ですが、見事目先の欲望をコントロールできる子どもがいるのですね。そして、そういう子どもは、多くの場合人生においても成功しているのです。

 この夏休みを機会に、おたくのお子さんを行動の切り替えが上手な人間、少々辛くてもより重要な行動のほうを選択できる人間へと成長させませんか? ポイントは、「何が本当に自分にとって必要か」を理解し、目先の欲求をコントロールする練習を繰り返すことです。ゲームや漫画は目先の快楽は与えてくれますが、勉強は自分にとってもっと必要なものだというぐらいのことはどの子もわかっています。だいいちやるべきことを放って遊んでも、心から楽しむことはできません。

 やるべきことをちゃんとやったうえで、楽しみにしていたことをする。そのほうが気持ちがよいにきまっています。そういう体験を是非お子さんにさせてあげてください。そうすれば子どもも変わります。前述の実験で、一部の子どもが自己抑制を働かせることができたのは、幼児期の親のしつけ・家庭教育の賜物に他なりません。

 まずは、「遊び ⇔ 勉強」の切り替えの現状を、お子さんと気楽な雰囲気で振り返ってみることをお勧めします。そして、

そして、この三つの要素と照らし合わせながら、毎日の勉強にどう取り組むか、成績の向上はどうしたら実現するか、どうすれば中学入試で希望する結果が得られるか、中学進学後も勉強で躓く生徒と躓かない生徒はどこが違うのか、将来よい人生を歩むうえで今必要なことは何か、などに絡めて話し合ってみてはいかがでしょうか。それはアバウトな内容で構いません。ただし、夏休みの生活と勉強については、具体的にどうするかをできるだけしっかり目標として定めましょう。できれば、親から一方的に語り聞かせるのではなく、「これはどう思う?」とまずは子どもに問いかけ、子ども自身で考えるような流れをつくるほうがよいでしょう。こうしたやりとりも、子どもの主体性を築くうえで効果があると思います。

 また、そういった会話の際、おとうさんやおかあさんの子ども時代、学生時代、社会人になってからの歩みと、上記の三つの重要性に照らす形で話してあげていただきたいですね。失敗談や後悔の気持ちなども効果があると思います。なにしろ、親の経験はお子さんにとって自分のこととして考えるうえで大きな作用を果たします。

 現在アメリカのメジャーリーグで、バッターとピッチャーの二刀流で大活躍をしている大谷選手も、ただ才能だけで頭角を現したわけではないことを、野球に興味をおもちのおとうさんはよくご存知だと思います。怪我や野球の違いなどで苦労をしたものの、治療、食事、トレーニング、メンタルなどの様々な要素と向き合いながら、何年もかけて今のような結果を手に入れたのでしょう。大谷選手が目標を叶えるまでのプロセスを、お子さんに話して聞かせるのもよいかもしれません。結果は偶然もたらされるものではないということは、お子さんにもよく理解できると思います。

 弊社の教室に通い、受験勉強をしているお子さんは家庭環境に恵まれた優秀な小学生です。自分を適正にコントロールする方法を身につければ、中学入試突破は無論のこと、中高一貫校、大学、社会人までの歩みに大きな期待がもてるようになることでしょう。子どもを大きく変えられるのは小学生の今のうちです。「今こそ、親の出番!」と心得てください。

LINEで送る
Facebook にシェア
Pocket

カテゴリー: アドバイス, 中学受験, 勉強について, 勉強の仕方, 子育てについて, 家庭での教育

子どもに‟自信”と‟やる気”を吹き込む親になろう!

2021 年 7 月 5 日

 現在夏休みの講座の申し込みを受け付けていますが、現会員のかたで手続きをまだ済ませておられないかたはおられませんか? 受講できない事情が特におありでなければ、ぜひ参加いただきますようお願いいたします。

 さて、今回は先週の話題を引き継いで「子どもの自尊感情」を話題に取り上げてみようと思います。まずは次の資料をご覧ください。これは日本、アメリカ、中国、韓国の高校2年生が自分自身をどう思っているかについての調査結果を示したものです。なお、わざと日本のデータを白紙にしています。まずはあなた自身で1~11の質問に「全くそうだ」「まあそうだ」と思われるものに印をつけてみてください。前者なら◎、後者なら〇でお答えください。

 

 表中の数字は、「全くそうだ」もしくは「まあそうだ」と回答した生徒のをパーセントで示したものです。質問項目のは、人格や協調性などの人間的側面に関する質問です。3・4・5・10は自己肯定感に関わる質問だと思います。6・7・8・9・11は、メンタルの強さや安定度に関わる質問でしょう。いずれも、人間が前向きでよい人生を送るうえで欠かせない要素です。

 日本人の特徴として、「自信満々」のタイプにカテゴライズされる人物が少ないということはよく知られています。謙譲の美徳という言葉があるように、日本人は謙遜をよしとする傾向があります。ですから質問のなどの数値が低いことは予想されました。その点に鑑みるなら、数値はあくまで参考程度とすべきかも知れません。

 ともあれ、みなさんそれぞれご自身の結果を踏まえつつ、アバウトで結構ですから日本の高校生のデータを想像して書き込んでみてください。

 書き終えましたか? では、実際のデータを確かめてみましょう。質問は43.7%、質問は64.3%、質問は44.4%、質問は36.8%、質問は60.1%、質問は31.8%、質問は27.0%、質問は48.0%、質問は22.3%、質問10は56.1%、質問11は45.7%でした。みなさんの予想と概ね一致していたでしょうか。何と、質問の以外はすべて日本の高校生の数値が一番低いことがわかりました。これにはいささか驚かされます。

 自分の人柄について尋ねられると、日本人なら大人も子どもも多くは控えめに答えるでしょう。ですから、数値が低いことは予想できましたが、これほどまでとは思いませんでした。

 実は、この資料をご紹介した理由は、保護者の方々に質問項目の3・4・5・10などの結果、つまり日本の高校生の自己肯定感の現状を見ていただきたかったからです。というのも、自分の能力を肯定的にとらえられるかどうかが、お子さんの将来の歩みに大きな影響を及ぼします。みなさんのお子さんが高校生になったとき、これらの質問項目に「全くそうだ」「まあそうだ」と、内心胸を張って答える人間であってほしいですね。

 では、自分の能力に信頼の気持ちをもった子どもに育てるにはどうしたらよいでしょうか。それには様々な方法があると思いますが、今回はひとつのことに的を絞ってご提案しようと思います。それは何かというと、「努力を奨励し、子どもの努力の実践のプロセスをしっかりと見届け、ほめたり承認したりすること」です。努力すれば結果はついてくるということを子どもに実感させるのです。仮にうまくいかなかったとしても、「親ががんばったことをこんなにも喜んでくれる。認めてくれるんだ」ということを繰り返し体験することは、心の健全性を養ううえで大きな作用を果たすことでしょう。親がしてやれることとして、これ以上ないものではないでしょうか。

 だいいち、人間には誰にも一定の能力が備わっています。それなのに、ほとんどの人間は本来有している能力の何分の一も発揮しないまま大人になっているのです。その原因は、「やればできるんだ!」ということを実感する経験が足りないからではないでしょうか。

 努力の価値について、東京大学の遺伝学者は著書で次のように述べておられます。

 私のように遺伝の研究をしている立場からすると、その影響の大きさをことさら主張したいところですが、実際には、どうもそれ以上に環境の影響が大きいようです。

 たとえば、生まれつき知能が高いとしても、それにともなう努力がついていかなければ、その能力は発揮できません。平均的な知能であっても、努力すればかなりの能力を発揮できます。もちろん、ノーベル賞級の研究者になるには、生まれつきの才能が高いうえに、人にはまねのできない努力が必要でしょう。しかし、一般社会レベルでの「頭がいい人」「仕事ができる人」となれば、生まれもった能力はそれほど違いがないのですから、努力の量にかなり比例するといっていいのではないでしょうか。

 そして努力することによって、遺伝子のはたらきが変わることはあるのです。遺伝子自体は決して変わりませんが、遺伝子のオン、オフを変えることはできます。

 一生懸命努力すれば頭がよくなるのは、それまではたらいていなかった遺伝子がオンになって、有効に働くようになるからだと考えられます。

 生まれつき頭がいい人というのは、ある能力が働きやすい遺伝子をもっていて、それに対して、ある能力が不得意な人は、それが働きにくい遺伝子をもっているわけです。

 しかし、はたらきにくい遺伝子をもっていたとしても、くりかえし努力することで、その遺伝子のスイッチがオンになってはたらきやすくなることがあります。たとえば、もともとはたらきにくい遺伝子がある物質の受容体だとします。そのはたらきが悪いために、電気の流れがよくないわけですね。しかし訓練、努力を重ねることで、つねに電気が流れ、受容体のはたらきが活発になることは起こりうるわけです。

 どうでしょう。開花する可能性を有した能力を、埋もれたままにするのはあまりにもったいない話です。「うちの子には才能が必ずある!」と信じ、つねに努力する姿勢を引き出しやりたいものですね。

 わが子を受験塾に通わせていると、努力の大切さは十分にわかっているはずの親でも、目先の成績に振り回されて子どもの努力を認めてやることを忘れ、不満を漏らしたり叱ったりすることになりがちです。そうした傾向はありませんか? そうことが繰り返されると、子どもは能力開花に向けてよい流れを築くことができません。

 とは言え、親がわが子に努力の大切さを伝えるのは当然としても、いきなり努力、努力と言い出したのでは不自然です。まずはわが子の小さな努力を一つも見逃さないよう注意して観察することから始めたらどうでしょうか。ほめる対象は勉強面に限りません。努力の様子が感じられたなら、タイミングを見計らってほめるのです。喜んでやるのです。「親は、結果よりもプロセスを大事にし、がんばっていたらどんな結果になってもほめてくれる」――そういった雰囲気が家庭内で定着したら、子どもは必ず変わります。子どもが自信を失うのは、他者と比較され、自分にしたことを認めてもらえないときです。親がわが子を見守る視点を変えれば、子どもは自信を取り戻します。子どものがんばりに活気が伴ってきます。そうなると、上記引用文のように電気の流れがよくなるのは間違いありません。

 グローバル社会は、お子さんが社会に出る頃にはますます進んでいることでしょう。外国人との交流において、日本人の欠点としてしばしば指摘されているのは自己表現や自己主張の弱さです。それには自己肯定感が低いこととも大いに関係があると思います。自分にプライドをもち、自分の考えをしっかりと言えない人間が国際社会で通用しないのは自明のことです。国際派の人間が少ないのは日本人が英語を苦手にするからだという説もありますが、実は英語力は本質的問題ではなく、日本人が自分の考えをもち、その考えを、自信をもって主張する姿勢を欠いているからだと指摘する専門家も少なくありません。

 ものごとが意図通りに成就するには、少々のことではへこたれない精神力や実行力が不可欠ですが、それを支えるのは自分への信頼の気持ちではないでしょうか。わが子に自己信頼の気持ちを吹き込むのは親の大切な仕事の一つです。小学生までの子どもは、親の対応ひとつで大きく変わります。子どもに努力の価値を教え、自分に手ごたえを感じる体験をたくさん味わわせてあげてください。

※上記引用文は、「『頭のよさ』は遺伝子で決まる!?」石浦章一/著 PHP新書478 によります。

LINEで送る
Facebook にシェア
Pocket

カテゴリー: お知らせ, アドバイス, 子育てについて, 家庭での教育

子どもを前向きに生きる人間に育てる家庭内会話

2021 年 6 月 28 日

 ご存知のように、広島県では6月21日をもって緊急事態宣言が解除されました。ただし新規感染者の数は減少傾向にあるものの、毎日一定数の感染者が確認されています。予断を許さぬ状況であるのは変わりません。十分にお気をつけください。

 さて、今回は家庭内での親子間の会話のもつ役割や重要性を話題に取りあげてみました。親子の意思疎通を図るうえで会話がいかに大切なものであるかは論を待ちませんが、中学受験をめざして勉強しているお子さんのメンタルケアの観点においても大変重要な意味をもっています。みなさんのご家庭では、親子の会話はどれぐらいあるでしょうか。

 まずは、家庭内の会話の時間と子どもの学習状況に関する調査資料をご紹介しましょう。以下は、小4~高2の子どもを対象に実施された調査の結果です(ベネッセ教育研究所による)。

学習時間と親子の会話量          ベネッセ教育研究所(小4~高2対象調査)

 グラフ内の数字は%(パーセント)を表します。親子の会話が多い家庭では、総じて子どもの学習時間が長いということがわかりますね。子どもと心を通じ合わせる時間を確保することが、子どもの学びに向かう意欲を高める効果をもたらすのでしょう。子どもにしっかり勉強してほしいと考える保護者のなかには、「おしゃべりしている暇があるなら、勉強、勉強!」と子どもを追い立てておられる保護者はおられませんか? しかし、それは子どものやる気をしぼませる生憎な結果を招きがちです。

 筆者は、親子関係を密なるものにするうえで重要な時期は児童期だと考えています。というのも、児童期の親子のコミュニケーションの状態が、子どもの成長に後々までも影響を及ぼすからです。どういうことか、ちょっとご説明しておきましょう。

 小学生の子ども、特に低~中学年までの子どもは親を全面的に頼って暮らしていますから、親の影響力がきわめて強い状態にあります。この段階においては、親が多少理不尽な命令をしたり、子どもの意向を無視したりしても概ね従大きな問題にはなりません。しかしながら、成長とともに行動範囲が広がり、他者との交流が増えるにつれて自分自身の考えをもつようになり、親への精神的依存性が徐々に低下していきます。もしも親への不満や反発の気持ちを根底に抱いていたなら、やがて親に反発し口答えばかりするようになる危険性が多分にあるでしょう。そのような子どもが思春期を迎えると、もはや全く親を顧みなくなってしまいかねません。ですから、わが子が小学生のうちにこそ信頼で結ばれた風通しのよい親子関係を築いておく必要があるのではないでしょうか。

 上記資料を見ると、子どもの年齢が上がるほど会話時間が長いか短いかの違いが学習時間の差を拡大させています。児童期に親子の会話時間が少なかった家庭が、高校生になって激変し、十分な会話の時間を設けるようになるとは考えられません。その理由は先ほどお伝えしたとおりです。親子の会話を今のうちに大切にしておきたいものですね。

 「親子の会話の重要性はわかった。でも、会話の際どんなことに留意したらよいかがわからない」というかたもおありかと思います。教育学者の汐見稔幸氏(東京大学名誉教授・前白梅学園大学学長)は、親子間の会話について次のようなことを述べておられます(「学力を伸ばす家庭のルール」2006小学館)。

 家庭の中で考えることを促すような会話、言葉を選んで答えなくてはいけないような会話が意識されているかどうかによって、普段の何気ない会話の中で、ある程度知的な準備がされるかどうかの違いが生じます。

 たとえば子どもと会話をしたときに、親が期待していることと違うことをしゃべる、ということがよくありますね。そういうときに「何をバカなことを言っているの」とか「子どものくせに生意気云うんじゃないの」と批判するか、「え、どうしてそんな面白いことを言うの?」とか「そうかあ、お母さんはそういうことを聞いたんじゃないんだけど、あなたは面白い発想をするね」というふうにして、子どものこちらの期待通りではない発言に対しても、きちんとプライドを大事にしてやる、ということを心がけているかどうかによって、子どものセルフイメージ(自己像)が大きく変わってきます。

 セルフイメージとは、自分を自分でどう価値づけるか、ということです。「自分がどう考えたとしても、自分が一生懸命考えたことは大事にされるんだ」というふうに自分を感じるのか、「親の期待通りに発想しないと自分はいつも否定される」と感じるのか。

 自分という人間は祝福されているし、ちゃんと肯定されている、ということになれば、自己像も肯定的になります。こういった親の配慮のもとで育つと、望ましい自尊感情や自己肯定感が育まれていきます。

 一方、いつも頭ごなしに反論されたり批判されたりすると、「自分という人間はどこかダメなのかな」とか、「何を考えても意味がないのかな」ということを学習してしまいます。これでは、自分に対する肯定感や受容観がうまく育まれません。

 このように、親の何気ない対応によって、わが子の知的能力だけでなく、心というか、セルフイメージも違ってくるわけです。ですから、普段の会話はできるだけ一方的にならず、活発にやりとりができる雰囲気をつくるよう心がけたいものです。

 これを読むと、子どもの自尊感情・自己肯定感を育むような会話を心がけることの重要性が語られています。そのための会話のポイントがわかり易く書かれています。ぜひ参考にしていただきたいですね。

 また、上記引用文で紹介されているような親の会話における配慮や対応は、中学受験をめざして勉強している高学年児童にとっても極めて重要な意味をもたらします。

 というのも、自分と他者とを比較し、優れているとか劣っているなどの意識が芽生えるのは、だいたい小学4~5年生の頃だからです。塾通いを始めた当初、塾に通って授業を受け、新しい友達もができたことを喜んでいたお子さんが、いつのまにか学びの活力を失い、勉強に向かう意気込みをしぼませることがあります。それは、テスト成績で自分と全体(他者)を比較する新しい世界の洗礼を受け、自分の能力に疑念をもつようになったからに他なりません。これまで何度もお伝えしてきましたが、全員が受験をめざす集団内での成績はそうやすやすと上がるものではありません。実際は、随分学力的に向上しているのですが、他者と比較すると頭打ちに見えたり、下がって見えたりするものです。

 しかしながら、自尊感情をサポートする親の存在があったなら子どものメンタルはダメージを回避することができます。自分に対する信頼の気持ちがあれば、子どもは困難に出合っても簡単にはあきらめません。「どうやったら成績が上がるか」を考え、柔軟に対処することができます。また、親子間の会話が常にある家庭では、親がわが子を励まし奮起させる機会を適切に設けることができるでしょう。上記引用文にあるような親の対応は、子どもの気持ちを強くさせ、困難に立ち向かう勇気を吹き込んでくれるのではないでしょうか。

 児童期後半の子どもは、少しずつ親離れしていく時期にいます。この時期が結構難しいのです。親が手の差し伸べ過ぎるのもよくないし、ほったらかしもよくありません。大切なのは、失敗を恐れず困難に立ち向かう姿勢を育むことです。無論がんばったのに失敗することもたびたびでしょう。しかし、「あきらめるな!次がある」「困難にくじけずに挑戦する人間になることが親の願いなんだよ!」と、サポートしてくれる親がいれば何も心配要りません。

 受験までの道のりは決して平たんではありません。度重なる失敗もあることでしょう。しかし、親子間に強い信頼関係があればだいじょうぶです。そうした信頼関係を育むのが毎日家庭で交わされる会話なんですね。現状をもう一度振り返り、今回の記事のなかで参考になる点が見つかれば採り入れてみてください。

LINEで送る
Facebook にシェア
Pocket

カテゴリー: アドバイス, 子どもの発達, 子育てについて, 家庭での教育, 家庭学習研究社の特徴