学力格差を生みだす家庭環境のファクターとは?

2020 年 6 月 29 日

 前回は、長期間の学校休校によって学力格差が広がることへの懸念についてふれました。学校があるときは、子どもを否が応でも勉強に向かわせる力が働きますが、学校がないとなると勉強から離れてしまう子どもが出てくる恐れが生じるからです。

 学校の休校中、多くの家庭では「わが子の勉強をどうするか」が、悩ましい問題になったのではないかと拝察します。こういうとき、問題を最小限に食い止められる家庭と、それができずに苦心惨憺する(あるいは適切な手が打てない)家庭とでは何がどう違うのでしょうか。このようなことを考えているうちに、「子どもの学びの基盤を築く家庭とはどのようなものか」について、参考になりそうな情報を探してみようと思い立ちました。

 そこで今回は、筆者の目に留まった調査資料をご紹介し、若干筆者の考察したことをお伝えしてみます。まずは、次の資料をご覧ください。この資料は、ベネッセ教育研究所の「教育格差の発生・解消に関する研究報告書〔2007年~2008年〕によります。

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 上記資料は、小学校5年生児童2952名と、保護者2744名を対象とした調査の結果をもとに作成されました。どういう内容かというと、算数と国語のテストを上記対象者の子ども全員に実施し、学力(正答率)を上から順にA~Dの4段階に分けました。そして、それぞれの層の保護者に実施したアンケートの回答を仕分けて、家庭環境と子どもの学力の関係を分析したものです。

 上記資料では、算数・国語ともに正答率で8ポイント以上差が見られたのは7項目で、数字に網掛けが施されています。これら7つの項目を、算国の平均ポイント差の大きい順に並べてみましょう。

1. 家には本(マンガや雑誌を除く)がたくさんある      国…24.6 算…14.9
2. 子どもが英語や外国の文化にふれるよう意識している  国…17.5 算…13.8
3. 子どもが小さい頃、絵本の読み聞かせをした        国…17.9 算…11.7
4. 博物館や美術館へ連れて行く             国…15.9 算…13.7
5. ニュースや新聞記事について子どもと話す       国…10.8 算…9.5
6. 毎朝子どもに朝食を食べさせている          国…10.4 算…9.2
7. テレビゲームで遊ぶ時間は限定している        国…8.1  算…9.3

 結果については、みなさんが驚かれるようなものはなかったのではないでしょうか。本を通じて知らない世界にふれたり新規の知識を得たりする経験は、大人であれ子どもであれ、掛け値なしに楽しいものです。そういう経験を幼いころからたっぷりとしている子どもは、学ぶことへの高い志向性が育まれますから、どの教科の学習成績もよくなるのは疑いのないところでしょう。加えて子どもの場合、絵本の読み聞かせや読書は活字との接触機会を増やし、読みの能力を磨く体験にもなります。このことが学力形成にも大いに貢献するのは当然の成り行きでしょう。

 特に、絵本の読み聞かせ体験の豊富な子どもは、自分で読む読書へと移行しととき、結末を早く知ろうと飛ばし読みをしたり、話の展開のみに興味をもつ読みかたに走ったりしません。本に描かれている世界を心から堪能し、より多くのメッセージを受けとることができます。それは、活字で表現されている情報を、すべて耳を通して受けとり、自分なりのイメージを描いて楽しむ経験をしているからでしょう。つまり、読み聞かせはほんとうの読書ができる人間に成長させてくれる、親(大人)からのすばらしい贈り物なのですね。

 なお、朝食を毎日食べているかどうかと学力との関係ですが、脳のエネルギー補給の面から朝食は欠かせないものであるということだけでなく、朝食を採るプロセスで生じる親子間のコミュニケーションが、子どもの心の安定や学習意欲に好影響を及ぼすこということもあるのではないでしょうか。

 ここで、もう一つ資料をご紹介します。家での勉強時間、テレビ視聴時間、テレビゲーム、インターネットの利用と学力との関係を調べたものです。上記と同じ一連の調査によるものです。

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 これもまた、大方の予想通りの結果が示されているのではないでしょうか。家での勉強時間が多い子どもほど学力は高く、勉強時間が少ないほど学力は低いという結果がわかりますね。テレビ視聴やゲームの時間が長ければ、当然勉強の時間は削られます。子どもに与えられた時間は一定ですから、遊びの時間と勉強の時間のバランスが崩れないよう、幼いころからの生活において親(大人)が配慮しているかどうかが問われるでしょう。

 普段から、勉強の時間、遊びの時間、生活面で必要な時間、親子団らんの時間など、家庭にいる時間帯での行動の仕切りやけじめ、切り替えなどについて、子どもが自分で判断する姿勢や行動の管理能力を育てていれば、今回の学校休校期間においても、比較的子ども自身も対応力を発揮できたことでしょう。

 今からでも決して遅くありません。自分の行動について、自分で取り仕切れる子どもに成長できるよう、毎日の生活でしっかりとお子さんをサポートしてあげてください。長い目で見れば、子ども自身の人生に多大なプラスの影響をもたらす子ことになるでしょう。

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夏の講座で学びの態勢を築き直しましょう!

2020 年 6 月 22 日

 新型コロナウィルスの感染拡大により、3月から長期間にわたって学校が休みとなりました。また、弊社においても長期間の休講を余儀なくされました。みなさんのお子さんは、学校や塾の休み期間をどのようにお過ごしだったでしょうか。

 学校や塾があるときには否が応でも勉強しなければなりません。しかし、家で自主的に勉強するとなると話は違ってきます。勉強の“しばり”が弱くなりますから、子どもたち一人ひとりの勉強に対する意識や姿勢が大いに問われることになります。親は「しっかりやってほしい」と願っても、タガが外れてしまうお子さんもないではありません。

 今回のコロナウィルス禍に伴う学校の休校もそうですが、子どもを勉強に向かわせる社会的な制度やシステムに支障が生じたとき、学力差の拡大という問題が懸念されるようになります。学校や塾が休みになっても、勉強を怠らない子どもと、勉強がおざなりになってしまう子どもとの学力差が広がる恐れが生じるのです。弊社の会員家庭のように、中学受験を視野に入れておられる家庭は教育熱心ですから、学力形成面で支障を来さないよう対策を施されたことでしょう。したがって、子どもが勉強を放棄してしまうことは概ねなかったと思います。しかしながら、勉強がどれだけ子ども自身に根づいていたかについては個人差があります。したがって、今回のコロナ禍の影響はどのお子さんも大なり小なりあったとみるべきで、今後そうしたマイナスの影響を少しずつ埋め合わせることが求められるでしょう。

 現在のお子さんの勉強の状態はどうでしょうか。学校の休校が始まる以前と変わりなく勉強に向き合っておられるでしょうか。勉強の取り組みやクオリティと生活習慣とには強い関連がありますから、両方をまたいだチェックリストでお子さんの現状をチェックしてみませんか?

★現在のお子さんの生活と学習の状況 チェックポイント

 勉強の内実は、テスト成績だけでは判断できません。しかしながら、決して易しくはない受験勉強のレベルになると、「怠けているのに偶然よい成績を取れる」などということはほとんどありません。弊社では、休講措置期間においても2週間に1回のマナビーテストは実施しています。このテストの結果も踏まえて、お子さんの勉強に向かう姿勢や学力の状態をジャッジしてみてください。

 もしも心配な点があるようでしたら、早目に状態を改善したいですね。というのも、弊社の教室に通っているお子さんのほぼ全員が国立・公立・私立の中学校を受験(受検)します。そのことを踏まえると、少しでも早く学習成果のあがる状態を取り戻しておく必要があります。

 なかには、もともと上記チェックリストのうちのいずれかにおいて、おとうさんやおかあさんが心配するような要素のあったお子さんもおられるかもしれません。そういう家庭も含め、お子さんが規則正しい生活のもとでリズムよく受験勉強に取り組める状況をつくりだすチャンスが夏休みの講座です。

 ご承知のように、今年の夏休みは大幅に短縮される予定ですので、弊社の夏休み講座も学校があるときと同じように「週3日通学」を原則とし、授業も通常の講座に準じた夕方からの時間帯での実施がメインとなる予定です。ですから、通年のような独立した講座という印象は薄まるかもしれませんが、連日の通学ではないことで「授業前の予習(5・6年生)」→「授業」→「授業後の復習(4~6年生)」の流れを、余裕をもって見通しながら勉強することができるという利点もあります。勉強が今一つ軌道に乗っていないお子さんにとっては、却って立て直しにはよいかもしれません。

 小学生の受験勉強が軌道に乗るには、おとうさんやおかあさんの見守りと応援が欠かせません。というのも、親から精神的に独立する中学生以降と違い、児童期までの子どもは親の評価が何よりも発奮材料となるからです。そういった意味で、おとうさんおかあさんにはこれまでのわが子への接しかたについても振り返ってみていただきたいですね。

 毎日のわが子のちょっとした頑張りをちゃんと見届けておられたでしょうか。勉強に限らず、何でも前向きに自分からやろうとしたとき、すかさず親が喜んでいるのだということを伝えておられたでしょうか。結果でなく、プロセスを見て評価してもらうと、子どもは何よりもそのことを励みにし、「次こそは!」と発奮するものです。そして、何につけ必ずよい結果を引き出そうと努力を惜しまぬ人間に成長していきます。そうした意味において、親の応援を背に受けてがんばるというステップは、とても重要なことなんですね。無論、親はそういうことを全てわかっているのですが、受験生活が始まると、つい成績のほうにばかり目が向かいがちになり、大原則を忘れてしまうものです。夏の講座開始前に、親のほうも「これまで」を振り返り、わが子の真摯な学びを実現するための見守りや応援の態勢を整えておくことも必要でしょう。

 「この夏休みの講座中は、特にわが子の生活や勉強を注意深く見守り、子どもが奮起するような声かけをしてやろう!」――このようなつもりで夏の講座を生かしていただきたいですね。どうぞよろしくお願いいたします。

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この夏、子どもの学びをどうする? 《低学年児童の保護者各位》

2020 年 6 月 15 日

 今日は6月15日(月)です。本来なら、6月早々から夏休みの講座の募集が始まっており、今頃はかなりの数のお申し込みをいただいているのですが、今年に限っては募集の開始が大幅に遅れています。

 夏休み講座の告知は、今月の20日(土)に当ホームページにて行います。中学受験部門の現会員(4~6年生 週3日コース・土曜コース)のご家庭には、このタイミングに合わせて案内を配布する予定になっています。また、低学年部門の現会員(1~3年生 玉井式・ジュニアスクール)のご家庭には、それより若干遅れて(23日~27日頃)案内等の配布を行う予定です。夏休みの講座の日程や実施時間等は、学校への通学日や授業実施時間を考慮し、通年よりも大幅に変更をしておりますので、案内書をよくご確認のうえお申込みいただきますようお願いいたします。

 なお、この夏から弊社の講座に入会をご検討いただいている家庭につきましては、本部事務局または通学希望校にご連絡いただければ、案内書や申込書等をお届けいたします。「まずは夏休み講座の日程を知りたい」というかたは、ホームページ(20日に告知開始)やチラシ(21日にオリコミ予定)などでお確かめのうえ、所定の手続きに沿ってお申し込みください。

 さて、今回の記事は低学年児童(主として小1~小3)の保護者の方々を念頭に置いた内容となっています。もう少し上の学年のお子さんにも当てはまろうかと思いますので、よろしければ目を通してみてください。

 本ブログの読者は、お子さんの家庭教育に熱心であり、中学受験を視野に入れておられる方々であろうと思います。このようなかたの多くは、夏休みをどう生かすかについても関心をもっておられることでしょう。ただし、今年に関しては学校の夏休み期間が大幅に短縮されています。したがって、通常のような長い休暇を前提とした学習や行動の計画も立てられません。

 そこで今回は、「低学年児童期に築いておきたい学力基盤」がどのようなものかをお伝えし、みなさんのお子さんの現状チェックに役立てていただければと思ったしだいです。「何が順調で、何が課題か」がわかれば、この夏からの生活や勉強のありかたについて指針ができますし、弊社の夏休み講座の役立てかたもおわかりいただけるのではないかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず低学年(小学1~3年生)までに築いておきたい学力基盤ですが、これを明確にするには「中学受験対策の学習でを快適に進めるために要請されるものは何か」と考えるとわかり易いでしょう。大ざっぱに申し上げると、次のようなことがあげられると思います。

 

① 読み書きの基本的能力
② 掛算九九や筆算などの基礎計算技能
③ 算数の感覚的素養(直観力など)
④ 基本的な生活習慣
⑤ 知的好奇心
⑥ コミュニケーション力

 

 他にもありますが、とりあえずこれぐらいに留めておきましょう。学力に直結するのは①~③です。④は、自分から学ぼうとする主体性や実行力に深く関わる重要事項です。「生活習慣の自立」は、子ども自身による学習の成果に莫大な影響を及ぼします。⑤⑥は、学校、家庭、塾など、子どもを取り巻く環境の総和で高めるべきものですが、これらが学習全般に及ぼす影響は実に大きなものです。

 同じテキストで勉強しても、同じ授業を受けても、子どもたち一人ひとりの成果は異なります。それは、上記要素がどのような状況にあるかによって、情報の処理能力、伝達力に違いが生じるからです。「頭がよい」「頭が悪い」で片づけようとする人がおられますが、児童期前半までに6つの要素をしっかり整えておけば、少なくとも中学受験で通用する学力は誰でも身につけることが可能です。

 4年部からの中学受験対策においては、教室での授業と家庭学習を連動させながら学力を伸ばしていきます。学習内容を規定しているのはテキスト(あるいは副教材やプリント)ですが、テキストが伝える情報は主に文字によります。したがって、活字を読んで理解する力(読みの力)は受験勉強の大前提と言えるほど重要な基礎能力です。

 お子さんの読みの力の状態は音読をすればだいたいわかります。国語の教科書を、お子さんに声に出して読ませてみてください。読む力が達者なお子さんは、音読が滑らかで正確です。すぐに躓くお子さんは勉強に手間取るだけでなく、理解することもままなりません。なぜなら、文字の連なりを目で捉えながら瞬時に言語の塊やつながりを峻別することができないからです。どの教科の学習も難渋することになります。「まだまだ」と思われたら、ぜひお子さんとの音読時間を設け、毎日少しずつ実行しましょう。おかあさんが手本を示し、お子さんと楽しく交互に読む。これを続けると必ず上達します。

 掛算九九や筆算は、受験勉強で無数と言えるほど使用する技能ですから、それが完璧なら大変な強みになるでしょう。逆に不十分だと、算数の課題解決を妨げるブレーキになりがちで、思考をすすめることもままならなくなります。こうした要素を点検して磨き直していけるのは今のうちです。基礎技能こそ、バカにせずにしっかりと身につけておきましょう。

 ③は、思考や言葉が入り込む余地がなく、「直観」などの感覚的な素養がものを言う領域です。たとえば、図形や速さなど単元で求められるセンスが代表的なもので、この領域の得意不得意が算数の得点に影響を及ぼすことが少なくありません。直観力は、9歳前後までの積み木、レゴ、タングラム、砂場遊び、工作などの経験が影響すると言われます。つまり、形あるものに触れ、つくったり壊したり、いじったりする経験で培われる能力です。今のうちに再度経験を!

 ④は、直接勉強に関わりはありませんが、生活において「自分のことは自分でする」ということができるお子さんは、遊びと勉強の切り替え、やるべきことをやり遂げるなどの行動がしっかりしています。「決めたことは、やらずにはおれない」という子どもにしておきたいものです。これが受験での親の負担を著しく言に軽減してくれることになります(親にとって、ここが重要なところです)。ことに時間になっても一向に勉強にとりかかろうとしないわが子を、癇癪を起越すことなくサポートできる親はほとんどいないと言っても過言ではありませんから。

 ⑤は、同じ勉強をするのでも、本人が「知りたい」という欲求に突き動かされて学ぶのと、大人に強制されてしかたなく学ぶのとの違いを考えてみればよいでしょう。親の負担は全然違いますし、子どもが得る成果に著しい差が生じます。さらには、受験勉強が辛く厳しいものになるか、楽しさを伴う充実感のあるものになるかを決定づけることにもなるでしょう。今のうちに上手に子どもに働きかけ、「この勉強って楽しいね」という体験をさせてあげてください。勉強の能動性は、お子さんの一生を変えるほどの価値ある財産となりますよ。

 ⑥は、テストでの成績には直結しないかのように感じられがちですが、日々の学習の成果に大きな影響を及ぼしますし、何よりも先々まで続く長い学校生活を有効かつ快適なものにするうえで大変重要なものです。弊社の授業は学校と同じような講義形式となっています。先生の話に耳を傾ける力、わからないことを質問する力、みんなの前で自分の考えを発表する力」を養いながら学力を身につけると、これが中学進学後の学業成果にも大いに役立つことになります。

 夏休みの講座に参加されるご家庭においては、お子さんの講座期間中の授業の様子や家庭学習の様子をしっかりと見守ってあげてください。そして、受験勉強を始めるにあたっての前提となる要素が今どうなっているのかを確かめてください。課題がはっきりすれば、対策にも的が絞れます。4年生になり、受験勉強が始まると、「今さらこんなことをやっている暇はない」と、基礎・土台に立ち返って補強することに手が回らなくなりがちです。ここから鍛え直すことが先決であるにもかかわらず。高学年の勉強は、低学年の土台の上にあるものだということを忘れないでいただきたいですね。

 夏の講座を通して、お子さんの学びの現状を点検し、より効率的な勉強のできる体制を築いていきましょう!

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カテゴリー: アドバイス, 家庭での教育, 小学1~3年生向け

男の子の自立は「ほめて、おだてる作戦」で!

2020 年 6 月 8 日

 小学生の受験勉強で、親が苦慮することの一つが“勉強のとりかかり”です。約束の時間になったのに、いつまでもぐずぐずしたり遊んだりで、一向に机に向かおうとしない。そんなわが子にイライラするおかあさんは少なくありません。生活習慣はある程度自立できても、勉強面での自立は、小学生の子どもにとって最も難しいことだと言われています。

 そこで今回は、「どうしたら、わが子が自分から率先して机に向かうようになるか」をともに考えてみようと思います。というのも、弊社に通って受験勉強をしている子どものうち、良好な成績を安定して得ているのは勉強の自立度が高いお子さんです。ただし、一足飛びに子どもは変われるものではありません。まずは、決めた時間にとりかかれるようになる」ことをめざしましょう。それがうまくいけば一気に見通しが明るくなっていきます。

 ここに、小学校高学年の子どもたちの勉強のとりかかりの現状について調べた資料があります。だいぶ前にご紹介したことのある資料ですが、参考になると思います。

 この資料によると、親に言われなくても自分から勉強を始める子どもは高学年で3~4割程度であることがわかります。1~3年生のデータは割愛していますが、低学年からの流れで言えるのは「高学年になるにつれ、自立度が少しずつ上がっている」ということです。

 ただし、自分から勉強を始める子どもが3~4割という数値は十分とは言えません。また、結果は男女合わせてのものであり、自分から勉強を始める子どもは圧倒的に女子のほうが多いという指摘もあります。問題はどうやら男子にあるような気がします。

 実際のところ、上記以外にも様々な行動の自己決定に関する調査項目がありましたが、男子の自立度が女子を上回った項目は一つもなかったそうです。ですから、行動の自立性の問題は女子よりも男子のほうにより多く存在するのは間違いないと思います。

 理由として、大学の研究者は男の子に対する保護者の干渉の度合いが女の子よりも高いことをあげておられます。男子は概して女子よりも精神面の成長が遅く、幼稚です。だからこそ、親は簡単に手を貸すのではなく、子どものことは子ども自身に判断させてやらせるべきでしょう。そのチャンスを奪われると、それだけ自立も遅れることになります。

 ただし、悲観的に考える必要はありません。子どもは本来、自分で決めること、自分でやり遂げることが好きです。その点は男子も負けていません。むしろ、幼い頃にはできるかできないかに関わらず何でも一人でやりたがり、親が手伝おうとすると「自分でやる!」と口をとがらせて抗議したことがあるのは男子ではないでしょうか。

 何かと頼りなく、放っておけなくなりがちな男子ですが、だからこそ自立に向けた効果的なサポートが求められるのですね。中学受験のプロセスで最も親を悩ませるのは、「男の子は、放っておくと勉強しない」という問題です。この問題を解決できなければ「無理やりやらせる」という男子特有の方法がありますが、筆者は賛成しかねます。というのも、この方法で受かっても、先が思いやられるからです。「先のことは、またあとで考える」とおっしゃる保護者もおられますが、大人の手を離れる年齢になって親が対処できることは一つもありません。「勉強を自立させるのは今しかない」と思うべきでしょう。

 そこで、つぎは「どうやったら、自分から率先して勉強にとりかかるようになるか」という話題に移ろうと思います。

 男子に限らず、子どもは誰でも「偉くなりたい」という気持ちを強くもっています。また、よいことに関しては「自分でやったんだ」と主張したがります。ちゃんとやれたときには、「親にほめてもらいたい。認めてもらいたい」と望みます。これらの心理の底にあるのは、「誇れる人間になることへの憧れ」ではないでしょうか。男の子には、特にそれが言えると思います。

 わが子が自分から勉強にとりかかることを期待するなら、親はこういった子どもの気持ちを尊重し、上手にくすぐりながらその気にさせる必要があるでしょう。ただし、ご存知のように男子は概して自分の願望と現実とにギャップがあります。そして、その割にはネガティブな自分の現実に無頓着で、反省の色が見えないものです。そこを大人は指摘して叱ってしまいがちですが、それでは男の子はよくなりません。男の子を自立に向かわせるには、親は「気長な気持ちで臨むこと」、「感情的に叱らないこと」、「なるべく楽天的になること」、「寛大になること」が必要です。そして、やや大げさなくらいの笑顔や身振り手振りでほめることが求められます。「虫のいい話だ」と思われるかもしれませんが、寛大で楽天的な親によって救われる男の子は少なくないのです。少なくとも、親を恨んで、しかも自らに努力を課さない人間に育つよりはずっと効果的な対処法だと思います。

 以上のような前提に立って、それぞれのご家庭の事情に合わせてお子さんの自立に向けた働きかけを考えてみていただけたら幸いです。お子さんに有効な対処は、個々でそれぞれに違っていると思うからです。以下は、筆者が原則として提示する対処法です。

 まずは、勉強に限らず何でも構わないので、わが子が自分で率先してやろうとしていることを見逃さずにほめてやりましょう。自分からやろうすることを、親は強く望んでいるのだということを感じ取ったなら、子どもは「勉強も自分で」と変わっていきます。子どもは「親に信頼されている」と感じると、素直に本当の気持ちを言ってくれるものです。怒鳴りたいのを押さえ、「今日は、時間になってもなかなか勉強しなかったね。何かあったんだね」と声をかけたなら、意外な理由があるかもしれませんし、たとえ言い訳をしたとしても、子どもの今の心の状態が掌握できるでしょう。そこから話を詰めて行けばいいのです。小学校高学年の子どもの学習意欲は、「親の期待に沿った人間でありたい」という願望と強くリンクしています。親の望む取り組みを、わが子に一貫して伝えてやりましょう。

 あきらめずに、明るく、自分を信じて励ましてくれるおかあさん。それを子どもが受け入れないはずがありません。「打てども響かない」かのように見えるわが子(男の子)ですが、粘り強く根気よく、一貫してわが子を励まし続けることこそ、おかあさんがたに求められる応援です。それには、情熱を失わないことです。ある心理学者は、「“情熱”とは、“夢中”や“熱中”とは違います。『一つのことを最後までやり続けること』なのです」と述べておられます。わが子の自立を願い、癇癪を起さずに粘り強く親の期待をメッセージで伝えてあげてください。

 なお、冒頭でお伝えしたように、「勉強への自発的とりかかり」は、子どもの自立的行動のなかで最も困難なものだと言われています。だからこそ、働きかける親に“情熱”が求められるんですね。がんばってください!

※本文中の資料は、「小学三年生の心理 落合幸子/編著」より引用しました。

★子どもの自立促進に関する過去の記事  《参考》
勉強を嫌がらない子どもにするために その1   2019.10.07
勉強を嫌がらない子どもにするために その2   2019.10.14
親の声かけ・励まし原則 ~あいうえお~    2019.08.05
子どもの“やる気”のメカニズム研究 その1   2020.03.09
子どもの“やる気”のメカニズム研究 その2    2019.03.16
子どもを自立させ、頑張らせるおかあさんって!?    2019.02.11
できる子は“切り替え”が上手!?    2018.04.02
子どもの奮起を促すフォローを!    2017.09.04
子どもの前向きな努力を引き出すために    2017.03.27

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“授業”再開を機に、理想の受験生活を築こう!

2020 年 6 月 1 日

 新型コロナウィルスの新規感染者が全国的に減少傾向にあり、収束の方向に進んでいるように見えます。こうした状況にあわせ、学校や企業の活動も徐々に元に戻りつつあります。弊社でも先週から授業を再開しました。

 ただし、第2波の訪れる危険性も多方面から指摘されているように、まだまだ油断は禁物です。また、再び感染者が増加傾向にある地域も見られます。教室での授業も“3密”を避け、安全を期して行ってまいります。ご家庭におかれても、引き続き感染の予防に向けて十分な配慮をお願いいたします。

 さて、久しぶりに授業を受けたお子さんは、どんな感想をおとうさんやおかあさんに語っておられるでしょうか? 無論、4年部生を始め、今春から会員になられたお子さんにとっては、“家庭学の授業”は初めての体験です。「授業が楽しい!」という感想を語っておられるようなら安心なのですが。というのも、それが起点になり、弊社の教室に通っての受験生活が軌道に乗っていくからです。

 今回は、このことについて少し詳しくお伝えし、弊社の考える「小学生にとっての理想の受験生活」の実現に向けて、ご家庭と学習塾との連携や協力の体制を築いてまいりたいと存じます。

 弊社の学習指導は、「受験で合格できる学力の育成」をめざしているのは言うまでもありませんが、もう一つ重要な柱と位置づけている目標があります。それは、中学進学後に控える長い学びの人生を上手に渡っていくための基盤を築くということです。そのための核となるのは、「自学自習の姿勢」を養うことです。というのも、「自分で学習を算段し、段取りをつけて学べるかどうか」で、大学卒業までの長い学校生活における成果が随分違ってくるからです。

 「小学生に自学自習なんて…」と思われるでしょうか。しかしながら、中学校、高校、大学と学問の水準が上がるにつれ、個々の学びの自立度や自己教育力が学力形成に多大な影響を及ぼすようになります。児童期までの子どもは、大人の庇護のもとにありましたが、同時並行して求められるのは自立に向けた準備をしていくことです。というもの、中学校課程に足を踏み入れると「半分大人」とみなされるようになります。当然、学びにおいても生活においても、自分のことを自分で律していく姿勢が不可欠になるのです。

 しかしながら、中学生になって急に「自分でやりなさい」と言われても、簡単にできるものではありません。自立の姿勢は中学進学以前に築いておく必要があるのです。無論、真の自立は人生を通しての一大目標であり、小学生の段階においては、完全とは言い難いレベルに留まるでしょう。しかし、自立に向けたステップを踏んでいることが重要な意味をもつのです。

 児童期は人間としての枠組みや基盤が形成される時期ですから、周囲の大人が自立を促していくのは至極当然のことであり、理に適っていることです。中学生になると、子どもたちを取り巻く環境はより複雑になっていきます。多くの刺激にさらされ、忙しい毎日を送る中学高校生時代に至ってからでは、自分を変えるのはきわめて困難なのではないでしょうか。おまけに、すでに親の影響力は児童期とは比較にならないほど小さなものになっていますから、全ては本人の意思や努力にかかっています。親としては、今のうちに「うちの子ならやれるだろう」という状態にしておきたいものです。

 本題に入ります。では、弊社の授業を楽しく受けることが、子どもの自立にとってどうしてプラスの影響を及ぼすことになるのでしょうか。実は、集団で学ぶ授業は、うまく機能させれば子どもの成長にとって様々な恩恵がもたらされるのです。自立への意欲についても然りです。弊社が意図する授業の役割は、大まかに言うと次のようなものです。

 1について。毎回テキストの仕組みに沿って、同じ手順や段取りに基づいた授業を実施します。それにより、「授業は、こう受けるもの」という構えを子どもたちに浸透させます。また、後で見直せるよう、上手なノートの取りかたなどもくり返し指導します。2について。授業を通して、「家庭でどのような手順で勉強したらよいか」を少しずつ指導していきます。3について。単元の最も大切な考えかた(理屈)は、全員に徹底させる必要があります。それを理解したうえで、類似問題などに発展していくと、しっかりとしたベースの上に肉付けすることができます。このように、弊社の授業は知識の注入や解法スキルの訓練の場ではなく、新規の知識や考えかたを学ぶ場であり、家庭での一人勉強(学びの自立)を可能にするための指導の場と位置づけています。

 受験での合格のみを視野に入れたなら問題演習を基調とする訓練型の指導も選択肢の一つになります。しかしながら、弊社は子どもたちの中学進学後の学びを視野に入れた結果、このような授業手法が最も望ましいと考えたしだいです。4は、受験生活が軌道に乗るまでは、保護者の方々にもご協力いただきたいことです。小学生までの子どもは、まだまだ自分でやっていることの良し悪しを客観的に判断できません。どうかすると、いい加減なやりかたでも「これでいいや」と考えがちです。うまくできるようになるまでは、大人のサポートも欠かせません。1~4が全てではありませんが、自立勉強に向けた備えを強く意識した授業だということが、ある程度おわかりいただけたのではないかと思います。

 ただし、子どもたちが「授業が楽しい!」という感想を述べるのは、上記のような授業の実践によるものではありません。むしろ、授業が楽しいのは、次のような要素があるからであろうと思います。

 5について。子どもたちに「ここをよく理解してほしい」と願い、理屈を一生懸命に説明しただけでは期待するほどの成果は引き出せません。というのも、詰め込んだ知識はどんなに頑張ったところで忘れ去られるものだからです。弊社に限らず、効果的な指導をする先生は、たとえ話や面白いエピソードに絡めて学習対象が理解できるよう導きます。これによって、子どもたちは「あのときに、こんな話があった」と具体的なエピソードとともに理屈とセットで記憶に残すことができます。これが、「よくわかり、よく記憶できる」につながります。また、授業が「楽しい学びの場」にもなります。好奇心旺盛な時期の子どもには、ことさら効果があるのです。

 6も5と関連しますが、一方的に先生から説明を受けるのではなく、同じクラスの仲間の考えを聞くほうが、子どもにとって参考になったり、新たな気づきにつながったりすることが多いものです。同世代の子どもの考えを知り、「あんなことを思いつくのか。凄いな!」と感心することが、「自分もやってみよう!」になるのです。そして、そのときのやりとりもまた、学んだことを記憶に残すうえで大いに貢献してくれます。

 6もそうですが、7は私たち指導する者が引き出す成果ではありません。塾の提供する環境自体が、子どもにとって刺激的であり、やる気を喚起する効果を引き出すのです。小学生時代の子どもは、みんなの尊敬を集める同級生のところに群がって勉強法を聞きたがります。また、ちょっとした会話をすることで励みを得たりやる気を高めたりするものです。また、成績面でちょうどよいライバルが現れれば、俄然目の色が変わってきます。これらが塾に通う最大の楽しみになる子どもも少なくありません。

 ここまでお伝えしたことで、弊社の学習指導の意図をご理解いただけたでしょうか。子どもは、学ぶ環境を受け入れると伸び伸びとがんばるようになります。ただ勉強を強要されるばかりの環境では、子ども自身に自立に向けた意欲は生まれてこないものです。「自分でやるんだ」という意志のもと、自ら工夫してやるのが当たり前のような状態に少しずつ近づいていけばよいのです。こうした流れに歩調を合わせ、ご家庭においてもお子さんが生活全般において自立していけるようサポートしていただいたなら、より効果があがることでしょう。

 受験での志望校合格に届く学力への到達については、50年以上に及ぶ蓄積ノウハウがあります。「この環境で、このように学んだら、必ず合格できる」という裏付けのもとに指導しています。まずは授業を楽しみにし、励みをもって学ぶ態勢を築きましょう。そこから、大いなる成長に向けた見通しは必ず立ってきます。ときどき、「うちの子は塾に通っているのに全然力がつかない」という話を聞きます。それは塾に通って学ぶことと家庭学習との連動性、それぞれの役割についてご理解いただいていないことも原因の一つではないかと思います。

 保護者におかれては、お子さんがどんな気持ちで塾に通い、どんな勉強をしているのかについて関心を寄せ、必要に応じてほめたり励ましたりしてあげていただきたいですね。また、家庭でわが子がやるべきことを心得て取り組んでいるかどうか、ある程度手応えのある勉強ができているかどうかについても、当分の間チェックしていただけるとありがたいです。弊社においても、前述のような授業および学習指導がきちんとできるよう、指導担当者全員がより一層努力していけなければならないと考えています。ご理解ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

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カテゴリー: アドバイス, 勉強について, 勉強の仕方, 子どもの自立, 家庭学習研究社の理念