2週間に1回のテストの意義って!?

2017 年 1 月 23 日

 1月19日(木)には、広島大学附属中の入試が行われました。多くの受験生にとって、「附属」と言えば“あこがれ”の存在です。いきなり本命校から始まり、動悸を押さえられないほどの緊張と闘いながらの受験となったお子さんもおられたことでしょう。。

 なお、広島大学附属中の合格発表はすでに行われ、合格者数は外部受験生では男子が115名、女子は60名と、昨年よりもそれぞれ10名、5名少ない人数でした。昨年度の歩留まり率を考慮してのことでしょう。今年はやや狭き門となった様子です。附属小からの内部受験者による合格数は、男子19名(昨年18名)1、女子14名(昨年14名)で、昨年とほぼ同じ数でした。同校を第一志望にされた受験生が、一人でも多く合格されていますことを心より念じています。

 広島大学附属中入試の翌日(20日)は、広島県西部地区の私学入試解禁日。この日は、さっそく広島なぎさ中、崇徳中(前期)、安田女子中(入試Ⅰ)、AICJ中と、4校の入学試験が行われました。

 今年は、男子の主要な受験対象校の入試が5日間続きます。そのハイライトとも言えるのが、昨日(22日)の広島学院、今日(23日)行われる修道の入試です。女子校においても男子校と同様に、広島大学附属中の入試を皮切りに、連日受験が続く過酷な日程となりました。女子受験生にとって最もポピュラーな受験対象校である広島女学院中、ノートルダム清心中の入試は、それぞれ21日(土)、22日(日)に行われ、さらに今日(23日)は安田女子中の入試Ⅱが行われています。

 以上のように、広島の主要な私立中学校の入試は本日をもってあらかた終了します。なかには、「いざ入試が始まると、あっという間に全部終わってしまった」と感じている受験生もおありでしょう。悔いの残らぬ受験であったことを念じています。

 なお、このあとは県立広島中入試が28日(土)に、崇徳中の後期入試と広島大学附属東雲中の入試が29日(日)に予定されています。これらの中学校の受験を控えたみなさんは、あとしばらく適度に緊張感を保ちつつ、体調を整えて入試に臨みましょう。受験生のみなさんがベストパフォーマンスで受験を乗り切られることを、心よりお祈り申し上げます。

 入試シーズンの訪れは、学習塾にとっては新規通学生の募集が佳境に入ることを意味します。弊社においては、5・6年部が開講する2月18日(土)まであと1ヶ月を切りました(4年部は3月4日に開講します)。これから入会を検討していただくご家庭におかれては、当ホームページにて「入会ガイダンス」という催しの案内をチェックしていただき、ご都合が合えばぜひ参加していただきたいと存じます。この催しでは、各校舎の校舎長(責任者)が、弊社の学習指導について詳しくご説明いたします。どうぞお気軽にお越しください。

 さて、ここからが今回のブログテーマに沿った話題となります。今回は、弊社の会員募集に関連する内容を採りあげてみました。弊社の学習指導の基本的な枠組みの一つに、2週間に1回の割合で繰り返されるテストの制度があります。2週間取り組んだ単元の「まとめ」となるもので、弊社では「マナビーテスト」と呼んでいます。

 このテストは、各学年ごとに全員で2週間の学習成果を競い合う形式で行われます。ただ出来栄えを確かめるのではなく、意気込みをもってテストに挑戦する姿勢をもってほしいからです。また、そのほうが勉強に向かう姿勢もより積極的になるものです。テスト終了後は、返却される答案やテストデータを点検していただき、各自成果と反省点を胸に次の単元の学習へと進んでいきます。

 テストが1週おきにあることには大きな意味があります。単元の学習とその成果を検証するテストを一定のスパンで繰り返すことで、日々の勉強にリズムが生まれます。たとえ失敗しても、次の単元に即したテストが2週間後にありますから、失敗の原因を振り返って取り組みを修正していけば、すぐに成果が表れます。それを励みにがんばっていくのです。

 ところで、学習した内容の理解を深めたり、テストでよい結果を得たりするうえで必須の勉強として、誰もがご存知なのが「復習」だと思います。弊社では、前述のように2週間を一括りにした単元設定の下、教室での授業と家庭の復習を反復していく学習システムを採っています。週3日の通学を原則としているのはそのためです。5年部を例にあげてご説明してみましょう。月曜日に授業を受けたら、翌日は家庭で復習(若干の予習もあります)、水曜日に次の授業を受けたら、翌日は復習(と予習)、さらに土曜日に授業を受け、また復習(と予習)、さらに次の週も同じパターンを繰り返します。こうして、2週目の週末土曜日には、全員で成果を競うテストにチャレンジしていただきます。

 復習がなぜ大切なのかについては、説明など無用かもしれません。やり直すと、より理解が深まるとともに、忘却に歯止めをかけられるからです。もう少し詳しくご説明しましょう。学習や体験を通して入力された情報は、側頭葉を経て脳の奥深くにある海馬と呼ばれる部位に転送され、そこで約1カ月かけて長期記憶に加工されます。その後、長期記憶となった情報は再び側頭葉へと転送され、そこで貯蔵される仕組みになっています。

 無論、学んで得た情報が全て記憶されるわけではありません。むしろ、忘却する情報のほうがはるかに多いのが普通です。では、学習によって得た情報をより多く記憶するにはどうしたらよいでしょうか。入力された情報が忘れ去られてしまわないうちに、すなわち情報が海馬に送られた直後に復習し、それからしばらく経った頃(2~3日後)に再び復習し、さらに記憶としてまとめられる過程(例:1週間後・2週間後・1ヶ月後)で念押しの復習をする。このように、段階を追って反復して復習すると記憶の確率がぐんと高くなります。つまり、反復の復習こそ、学力を定着するうえで決め手になります。以下の資料を参照してください(この資料はインターネットで入手したものです)。

 このことを踏まえ、弊社では2週目のテスト前の授業では「まとめの学習(がんばりチェック)」を組み入れ、復習内容を授業で扱うことで理解の深化と定着を促進させています。そのうえで、週末土曜日のテストを実施すれば、より多くのお子さんが成果を実感できるのではないでしょうか。またテスト後、テスト結果返却後にも復習を奨励しています。このように復習をするのが当たり前になる。そして、それをリズムよく行えるようになる。こうした流れができれば、学習が常に活気を帯びてきます。テストも楽しみになるという好循環が生まれてきます。弊社で好成績を維持しているのは、大概この流れがうまくできあがっているお子さんです。

 以下にお伝えする事柄は、以前このブログに書いていることですが、学習したことを記憶に残すうえで大切なことがあります。それは、「面白い!」「知りたい!」という好奇心や探求心を背景とした学習を実践することです。つまり、興味や関心をもって勉強すれば、同じ勉強をするのでも記憶に残る確率が高くなるのです。

 その理由を書くと長くなりますが、要するに、記憶の加工に関わる海馬の細胞の働きが活性化することで記憶力が高まるのです。さらには、海馬の入り口で情報を取り込む際に働く細胞(顆粒細胞)が増殖することにより、記憶力が高まるのです。弊社の教室では、覚え込ませたりたくさんの問題演習をしたりするのではなく、学習課題にある面白さに気づかせる指導に力を入れています。その理由もこれでおわかりいただけるでしょう。

 みなさんは、かつて大ヒットした「バック・トゥー・ザ・フューチャー」というアメリカ映画をご覧になったことがあるでしょうか(おそらく、多数いらっしゃると思います)。高校生のマクフライの友人で、ドクというニックネームの科学者がいましたが、彼がタイムマシン(デロリアンDMC-12)を製造しているときのワクワク感に満ちた表情(まるで目が飛び出るかのような笑顔)を今でも思い出します。そういう体験を子どもの頃から繰り返すと、偉大な頭脳が築かれるのだろうと思いませんか?

 ちょっと話が横道にそれてしまいましたが、子どもたちが学ぶ楽しさ・ワクワク感を味わうような勉強こそ、記憶力も、頭脳の働きも大いに活性化するのだと言えるでしょう。

 最後に。テストについて、近年注目されている意義というか効能があります。テストと言うと、「学んだ成果の確認」や「実力を試す」ためのものとみなされがちですが、それ以外にも重要な役割を果たしていることが明らかにされています。それは、「記憶を強化する」という働きです。

 テストを受けたとき、何度も何度も問われているものの名前を思い出そうとしたり、必死になって解決の突破口を見つけ出そうとした経験をどなたも思い出すことでしょう。そのとき、あなたは普段の勉強とは比べ物にならないほど集中力を働かせていたはずです。このように、記憶を呼び出そうと心を集中させることで、学んだことを深く記憶に刻みつける働きがテストにはあるのです。

 授業と復習を繰り返し、さらに定期的にテストを受ける。この流れをうまく軌道に載せれば、弊社の教室に通って受験対策をするお子さんは誰でも一定の成果を得ることができるでしょう。リズムやテンポのよい勉強をしていると、必ず学んでいるそのこと自体が楽しく、また新たな発見が繰り返されることになります。こういう勉強で成果を得られるようになったなら、中学進学後も、大学への進学後もテストに強い人間であり続けることができるのではないでしょうか。

 弊社に入会されたお子さんには、このテストの制度、授業と復習の反復のしくみを説明し、少しずつ理に叶った勉強の態勢が築けるよう指導していきます。課題意識や展望をもち、計画的に学ぶ受験生活がきっと実現すると思います。「決めたことをやらずにはいられない」――そんな受験生になったなら、受験での合格など当たり前になります。さらに先の将来への展望も開けてくることでしょう。


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2017年度の中学入試がいよいよ始まります!

2017 年 1 月 16 日

 2017年度の中学入試シーズンがやってきました。先週末から日本列島が強い寒気団に覆われ、日本のかなり広い領域が雪に見舞われました。広島の中心部でも、30年以上ぶりの積雪を記録したもようです。受験当日には雪が降らないことを祈るばかりです。

 昨日は、広島市や廿日市市、呉市、東広島市などで新規会員の募集チラシを折り込みました。毎年のことですが、この時期のチラシには「中学受験生への応援メッセージ」を掲載しています。以前は筆者が書いていましたが、このところ若い広報スタッフの成長もあり、こうしたスタッフが記事の執筆を担当しています。今回は、かつて中学受験を経験したことのある女性スタッフが書きました。ご家庭に折り込まれなかったかたは、本HPに掲示していますので、よろしければぜひ目を通してみてください。

 さて、広島県西部地区の私立一貫校の入試解禁日は1月20日(金)ですが、すでに近畿大学附属中学校(東広島校)の前期入試が1月7日(土)に行われ、10日(火)に合格者も発表されています。また、公立一貫校の広島中等教育学校の入学適性検査も14日(土)に終了しました。合格者の発表は1月20日(金)となっています。

 多くの受験生にとっては、解禁日からの数日が勝負になると思います。下の入試日程表をご覧ください。たとえば男子の日程を見ると、19日(木)が広島大学附属、20日(金)が広島なぎさ(崇徳・AICJもこの日に入試があります)、21日(土)が広島城北、22日(日)が広島学院、23日(月)が修道と、全て受けると5日連続で入試が続く日程となっています。

 女子についても、19日(木)に広島大学附属、20日(金)に安田女子Ⅰ・広島なぎさ、21日(土)に広島女学院、22日(日)にノートルダム清心、23日(月)に安田女子Ⅱと、これまた連日いずれかの中学校の入試が予定されています。なお、安田女子の入試Ⅰは第一志望を安田としている受験生を対象とし、入試Ⅱは一般の他校入試と同じ扱いの入試です。募集定員は異なりますが、入試Ⅰによる募集比率が高くなっています。

 このように、男女とも圧縮された形で入試の日程が組まれています。全部受験するお子さんの場合、相当な負担となりますので、体調の管理は絶対に疎かにしないよう気をつけてください。

 ただし、近年の傾向としては「3校受験」が主流となっており、その次に「4校受験」「2校受験」が拮抗して続いています(弊社会員の受験校調査による)。したがって、連日の入試の負担も考慮して、第一、第二志望校を優先しつつ、残る1校を選択して受験するといったパターンが多くの受験生家庭で見られます。たとえば、広島学院が第1志望の場合、もう1校は修道、さらに3つめの受験校として広島大学附属、広島城北、広島なぎさのうちのいずれかを選ぶといった具合です。3つめの受験校選択にあたっては、学力状態や男子校か共学校かなどの好みで選ぶなどの傾向があります。

 各中学校の入試の志願者数ですが、修道中学校は1056名の受験生が出願しており(11日に同校HPにて公表)、前年比73名の増加となっています。これは、長く続いた県立広島との同一日入試が行われなかったことがかなり影響してのことでしょう。男子の他校、女子校はそれぞれ若干の増減があったものの、特筆するほどの大きな変動は見られなかったもようです。広島大学附属の志願者は1053名(男子594名・女子459名)です。この志願者数には、附属小の受検生男子37名、女子39名を含みます(同校HPにて16日に公表)。なお、県立広島については、志願者数の確認ができておりません(18日が願書提出の締め切り)のでご了承ください。

 さて、冒頭でもお伝えしましたが、心配なのは入試当日の天候です。天気予報の推移を毎日チェックし、降雪の確率が高いときには前日までに学校に対応の確認をしておくと多少は安心かもしれません(インターネットでの出願者は、メールで情報を得られると思います)。もしも入試当日の朝雪に見舞われたときには、早めに学校に電話で連絡をし、状況を確認したり、指示を仰いだりするのが賢明です。学校側は必ず対処(時間の変更、別室受験など)について決めておられると思いますので、あわてないでください。

 受験生はまだ小学生です。親が平常心を失うと、子どもも気が動転して実力発揮どころではなくなってしまいます。天候で不測の事態が生じた場合、大半の受験生に影響が出ていますから、焦ったり慌てたりする必要はありません。保護者におかれては、最後の最後までお子さんの心身のコンディションへの配慮をよろしくお願いいたします。

 受験生のみなさんの健闘をお祈りいたします。


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日本の男子の問題点を検証すると…

2017 年 1 月 10 日

 あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 正月は、子どもにとって年中行事として欠かせない楽しみの一つです。しかしながら、中学入試をめざす6年生の子どもたちには入試本番が目の前に控えています。どの受験生も、今年に限ってはお雑煮を食べ、お年玉をもらったあとは正月気分もそこそこに、入試に向けた最後の点検や調整に気持ちを切り替えておられることでしょう。泣いても笑っても受験生活はあと残りわずかの期間です。悔いののこらぬよう、しっかりがんばっていただきたいですね。

 さて、今回は年末のテーマに引き続き、男子の問題を話題にとりあげました。前回は外国における男子の問題についてご紹介しましたが、今回は日本のそれについて書いてみようと思います。

 外国の男子に関わる問題は、主として少年期の男子にまつわるものでした。しかしながら、日本で問題とされてきたのは、どちらかというと青年期の男子に見出される問題です。そういうと、なかにはすぐに思い当たったかたもおありでしょう。いわゆる、フリーターやニートと呼ばれる青年が増えている問題です。ご存知かと思いますが、フリーターというのは、15~34歳の年齢(学生や主婦を除く)で、就職せずに自らの意志でパートやアルバイトをして生活している人のことで、ニートは同様の年齢、同様の立場にあり、仕事をせずに求職活動もしていない人のことをいうようです。

 フリーターやニートは、本来は男子のみに適用される言葉ではありません。なぜ男子が問題視されるのでしょうか。それは、相応の年齢に達したら、「男は結婚して家庭をもち、一家の主として働いていてこそ一人前である」という観念が根強く日本社会に残っているからだと言われています。こうした男性中心の見かたに基づく社会の揺らぎ。それが表面化した問題だということなのでしょう。

 日本の青年男子に関わる問題も、その原因は欧米と同じように大きく二つに分類されています。一つは、“若い男性の堕落”という批判的な視点に立ったものです。「働く意欲の欠如」「親に寄生している」などの若者批判がこれに該当するでしょう。もう一つは、欧米の少年の逸脱の理由に対する見かたと同じく、男子を被害者的な視点でとらえたものです。たとえば、女子の優遇、男子の不利といった観点から、男子が不当に差別されているとみなす人たちがいます。

 この問題も、素人が深入りすると誤解や不勉強で読者を混乱させかねません。ここまでに留め、そろそろ今回予定していた内容に移ろうと思います。このブログをお読みくださっているかたの多くは、小学生をおもちの保護者であろうと思います。よって、日本における男子の問題を、学齢期にある子どもに焦点を当てて考えることのほうに興味がおありであろうと思います。

 この話題に着目したきっかけは、大学の先生の著作が目に留まったことでした。その先生によると、欧米の学齢期にある男子の問題は日本の子どもには無縁かというと、そんなことはなく、前回ご紹介したドイツの子どもの学力低下の問題と同様のことが日本においても見られるそうです。それについて言及されている著述部分をご紹介してみましょう。

 ( 前略 )ドイツで男子を敗者とみなす言説が台頭するようになったきっかけの一つが、2000年のPISAにおいて男子の成績がふるわなかったことであった。実はこれまでに結果が公表されている過去5回のPISAの結果を見てみると、日本でも、成績がふるわないのはどちらかといえば男子の方であることがわかる。「科学」の平均点については、第5回(2012年)では男子が女子を有意に上回ったが、残りの三回では統計的に有意な男女差は見られない。ところが、「読解力」については、他のほとんどの参加国と同様に、過去5回とも平均点が男子のそれを有意に上回る結果となっているのである(国立教育政策研究所2015)。

 ( 中略 ) 学校生活において女子よりも男子に積極性がない傾向は、深谷昌志らが首都圏の中学生1500人を対象に行った質問紙調査の結果からもうかがえる。中学生に自己評価を求めたところ、「その場を仕切るタイプ」(男子26.1%<女子31.9%)、「意志が強い」(男子46.9%<女子53.3%)という、積極性をイメージさせると同時にどちらかといえばこれまで男性的と見なされてきた項目においても、女子の方が肯定する割合が高くなっている。また、「友だちをまとめるのがうまい」(男子16.3%<女子20.7%)、「納得がいかなければ先生にも文句を言う」(男子32.2%<女子37.0%)、においても、それほど大きな差ではないものの、女子の方が肯定する割合が高くなっている。一方、自分の現状に対する満足度という点では、男子の方が高い傾向が見られ、「学力」(男子30.4%>女子18.8%)、「性格」(男子46.0%>女子33.0%)、「友達関係」(男子70.9%>女子63.3%)のいずれにおいても男子の方が満足度が高くなっている。これらの結果から、深谷らは「元気な女の子」と「ほどほど志向の男の子」という対照性を確認している(ベネッセ教育研総研2003:深谷2003)。

 引用部分の内容について確認してみましょう。PISA(ピザ)というのは、OECDが3年おきに15歳児を対象として実施している国際比較テストのことで、「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3分野で調査しているものです。OECD加盟国だけでなく、非加盟国も多数参加している大がかりなテストです。

 先ほどの引用文にある、2015年のPISAテストの結果が直近の調査ですが、それによると読解力については、日本の男子も西欧諸国の傾向と同じく、男子のほうが女子よりも点数的に下回っています(全参加国で、同様の結果が示されていました)。また、男女の平均点の差は、調査参加国の全てのなかで4番目に少ないものでした。男子の正答率は、62%で、女子のそれは65%でした(文部科学省・国立教育政策研究所のHPによる)。

 こうしてみると、読解力においては男子が女子より劣るのは世界共通の現象のようです。日本の男子は女子との差がかなり少ないほうだということもわかりました。

 また、「その場を仕切るタイプか」「意志が強いか」といった性格面での自己認識では、女子のほうに積極性が感じられるのに対し、男子はその点において女子ほどにないという結果が示されています。かつてなら、この二つの項目は男子のほうに高いポイントが出ているはずでした。男女平等の原則が浸透しつつある近年の傾向なのでしょうか。そのいっぽうで、男子が高ポイントを得ている項目もありました。「学力」「性格」「友達関係」などでは、男子のほうが満足指数が高くなっています。

 さて、この結果だけを見ると、日本の場合は「男子の問題」を深刻に受け止めるほどのことはないようにも思えてきます。しかしながら、すでに書いてきたように、「男子は女子より思考が幼稚」「男子のほうが読解力で劣る」というとらえかたは、かなり一般的なものになっています。また、真面目にコツコツがんばる傾向のある女子のほうが、中学、高校、大学においても学力面で優位に立ちつつあることも報告されています。

 また、これは筆者の思い込みかも知れませんが、自分の「学力」や「性格」「友人関係」を肯定的にとらえるのは、男子のほうが単純で幼稚であることの裏返しのようにも思います。自分を肯定的に受け止めるのは決していけないことではありません。それどころか望ましいことです。しかしながら、現実が伴っていない男子が多いのではないでしょうか。

 たとえば、前回からの話題を取り上げるきっかけとなった書物の著者(関西大学教授の多賀太先生)によると、「学業面以外での、いくつかの反社会的行動や社会的不適応を引き起こす割合も、女子よりも男子で高い傾向が見られる。たとえば、少年鑑別所入所者に占める男子の割合は女子の8倍以上であり、少年院の入院者に占める男子の割合は女子の9倍以上である。不登校やひきこもりは圧倒的に男子のほうが多い傾向にある。さらに、2014年の19歳以下の自殺者に占める男性の割合は69.3%と三分の二以上を占めている」と述べておられます。

 こうしてみると、学童期の男子に見られる諸問題は、西欧に限らず日本でも看過できないレベルに達しています。その割に、日本では青年期の男子の問題のほうがクローズアップされているのです。なぜなのか。それについては、前出の先生もご自身の考えを述べておられましたが、今回はとりあえず問題が現実にあるということをお伝えしたところで終わろうと思います。

 ただし、学童期の男子の問題のうち、読解力の不足を中心とする男子の問題について、最後にひと言お伝えしたいことがあります。

 まず、就学前の段階での親子の会話生活を大切にしてください。また、読み聞かせを男子の子どもには特に励行してください。人の話を聞くこと、自分の考えを発信すること、物語の世界を楽しむこと。これらが、プレリテラシーの段階でとても重要な働きをします。言葉や思考に堪能な子どもにするだけでなく、親子の信頼関係、心の安定した子どもにするうえでとても大きな作用を果たすからです。

 また、小学校に入ってからは、音読を上手に仕向け、声に出して本を読むことを励行させてください。音読が軌道に乗るまでは、親子交替で読む、親が範読するなどの工夫をお願いします。そうして、声に出して滑らかに読めるようになれば、黙読へとよりスムースに移行できます。黙読がしっかりとできる子どもは、自然と本読みになります。語彙の充実、より深い読みへの移行、思考力の向上、学力アップとよい循環が約束されていきます。

 こうしたことについて触れると、限りなく文字がかさんでいきますので、ここまでで終わらせていただきます。ともあれ、男子の問題は幼少期からの親の関わりで未然に防げるものです。「うちは関係ない」と思わず、わが子にできることを精いっぱいしてあげてください。

 男子の問題については、筆者自身もう少し勉強して、再び話題にとりあげてみたいと思っています。


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世界中を席巻する“男子の問題”って!?

2016 年 12 月 26 日

 気がつけば、このブログも年内最終回となっています。1年が経つのは本当に早いものですね。みなさんにとって、この1年はどんな年だったでしょうか。

 中学受験に関わる広島県内の学習塾にとっては、相変わらず厳しい状況が長く続いています。少子化に歯止めがかからないうえ、中学受験熱が沈静化しつつあることが主要な原因でしょう(東京をはじめとする大都市圏では、相変わらず中学受験が盛んなようですが)。そのいっぽうで、学習塾の数が大幅に減っているのかというと、そんな話は聞きません。やがては一部の地域を除くと、学習塾の淘汰が進んでいくのではないかと思われます。

 弊社もこうした流れのなかで埋没し、存在感を失わないようがんばらねばなりません。来年度以降は、これまで以上に「子どもの望ましい成長に資する学習指導」の実現に向けて精進してまいります。また、子どもたちの合格の夢が叶うよう全力で応援してまいります。引き続きご支援をよろしくお願い申し上げます。

 先日、図書館でふと手にした本の題名が気になり、少し立ち読みをするや否やたちまちその内容に気持ちを奪われてしまいました。以前から気になっていた話題をとりあげたものだったからです。その話題とは、「男子の問題が世界中で深刻化している」というものでした。今回は、その本のごく一部にふれるに過ぎませんが、男子の何が問題とされているのかについてお伝えしようと思います。

 まずは、次の引用文をお読みください。

 「学力」のさまざまな側面のなかでも、ほとんどの国においてとりわけ「男子の問題」とされるのが、「読解力」である。これまでのPISAの結果を見る限り、ほとんどの参加国で、「読解力」に関する男子の平均得点は女子のそれを有意に下回っている(国立教育政策研究所2015)。また、義務教育修了後の進学動向において、女子の方がよりアカデミックなタイプの学校へ進学する割合が高い国も目立つ。たとえばアメリカでは、2007年に学部(undergraduate)レベルの高等教育機関に入学した女性は、男性の1.3倍であった。ドイツでも、中等教育段階で最も学力が高いとされる学校種である「ギムナジウム」への進学者は女子の方が多いし、1970年には6割を越えていた一般大学入学資格取得者に占める男子の割合は、2002年には44%にまで低下している。

 さらに、男子の学校生活や社会生活への不適応を示す例としてしばしば挙げられる次の諸傾向も、各国でほぼ共通して見られるものである。すなわち、男子は女子に比べて、学習活動に積極的に参加したり学校生活を楽しんだりする度合いが低いこと、特殊教育で学ぶ生徒の割合が高いこと、学習障害と診断される率が高いこと、後期中等教育段階での留年率が高いこと、自殺率が高いこと、虐待の被害者となる率が高いこと、刑務所に収容される率が高いこと、学校における成功と齟齬をきたすような態度や習癖をもちやすいことなどである。

 どうでしょう。「学校生活や社会生活への不適応」の例としてあげられているものは、相当に深刻な問題を内包しているものばかりです。

 日本の男子の問題は、筆者自身多少なりとも感じていたことです。以前、小学生を例にあげ、「男子は女子よりも精神年齢の発達で後れを取り、国語の読解力に差が生じやすいほか、何かにつけて女子のほうが活動的であり、喧嘩をしても男子は女子にかなわないことが多い」といったようなことを書いたことがあります。また、中学や高校においても、「男子よりも女子のほうがまじめに勉強するので優秀な生徒が多くなってきていること、最近では大学入試においても女子のほうが優位に立ちつつあることなどについても書いた記憶があります。

 ですが、欧米諸国の顕著な傾向としては、学力以外の生活面における乱れや、人間としての劣化とさえ言えるほどの逸脱が国を問わず進みつつあるという点です。どの国であれ、このような重大な問題を放置するわけにはいきません。男子の補償教育の必要が叫ばれ、各国で対策が講じられているといいます。

 かつては、ジェンダーに関わる問題の大半は「男女の不平等」であり、教育を受ける際に女子が不利をかこつことが多いことや、就職において女子には様々な制限や差別があったことでした。しかしながら、1990年代の半ばごろからジェンダーに関わる問題は、女子が不平等な扱いを受ける問題ではなく(無論、今も完全に解消されたわけではありません)、男子の学力低下、劣化、逸脱の問題へと変わってきています。問題にすべきは女子ではなく男子になったのです。

 先ほど引用した本の著者は、諸外国の実状などを調べたうえで、この男子の問題を二つのタイプに分けて説明しておられました(以下の説明は著者の書かれている内容を簡略にしたものです)。

 一つは、「厄介者としての男子」という見かたです。学業不振や粗暴なふるまいなどの問題に対し、責任を男子自身に求め、このような男子を排除されて然るべき「厄介者」とみなします。

 こうした見かたをしている国の例としてイギリスがあげられていました。これは、「自由主義の原則に基づく社会においては、競争的環境で成功するための機会は万人に与えられているのだから、そうした機会を活かせるかどうかは個人に委ねられた問題であり、失敗したとすればその責任はその人自身に帰するべきである」という考えかたに立ちます。いわゆる新自由主義に立脚した考えかたです。学業面で苦労し、辛い思いにさらされている男子は、手を差しのべるべき“かわいそうな”人間ではなく、自分自身で這い上がる姿勢の欠落した‟落ちこぼれ”であるとみなされるわけです。

 こうした見かたが主流になるにつれ、かつて少々の逸脱や反学校的な態度をとる生徒に対する寛容な見かたが影を潜め、真面目に学校で学んでいる他の生徒の迷惑や邪魔になるとして、非難する風潮が強くなっているといいます。

 もう一つは、「被害者」としての男子という見かたです。男子が直面している様々な問題は、男子に不利な状況からもたらされたもので、彼らを救い出すべき対象とみなします。前述のような、男子の粗暴なふるまいや反学校的態度を全く違った観点でとらえ、「男らしさの危機」といったような、被害者的なとらえかたをします。こうした見かたをする国は多いようですが、先ほどの著者は「それが最も顕著にみられるのがオーストラリアである」とし、オーストラリア政府の報告書の内容を紹介しておられました。

 それによると、「シングルマザーの家庭や、約8割を占めている初等教育学校では、男子はモデルとなる同性の教師から適切なふるまいや人間関係のありかたを学ぶ機会を奪われている」とされています。また、「初等教育や中等教育の現場では、受動的で言語を重視した女子向きの学習スタイルがとられる傾向がある」「かつては肉体労働や熟練労働への就業によって男性は女性よりも高い割合でフルタイムの雇用にありついていたが、近年はそうした職業が衰退している」云々。

 こうした問題が進行しているにもかかわらず、女子を支援するためのプログラムの実行に注力するあまり、男子の教育ニーズを明らかにしてそれを満たそうという試みがほとんどなされていない。――オーストラリア政府の報告書には、そのような見解が示されていました。

 どうでしょう。この二つはある意味で正反対の「加害者」と「被害者」という、相反する視点でとらえてあるものですが、いずれも男子に関わる問題を看過できない由々しいものという認識に立っています。果たしてどちらが現実に向き合ったものなのか、専門家でない筆者には語る知識も資格もありません。先ほどの本を熟読したうえで、子どもをもつ保護者に有益な情報が得られたらまた話題としてとりあげてみようと思います。

 なお、日本における男子の問題については、年が明けたらいずれ詳しい情報をお届けしようと思います。正月明けのブログ再開は、1月10日(火)を予定しています。よろしくお願いいたします。

 みなさん、よい年をお迎えください。


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低学年部門「HWコース 親子勉強会」実施報告 その2

2016 年 12 月 19 日

 前々回につづき、去る11月26日に実施しました「1~3年生ホームワークコース親子勉強会」のご報告をいたします。その1は保護者向け説明会に関する報告でしたが、2回目の今回は子ども達が参加した授業の様子を少しだけお伝えいたします。

 1年生は、「ひろさくらべ」の学習です。最初に単元の導入を兼ねて、「場所取りゲーム」を行いました。チーム対抗で代表者がじゃんけんを行い、勝ったチームは青い正方形を二つマス目に置き、負けたチームは赤い正方形を一つだけマス目に置くというルールで、マス目がすべて埋まるまでじゃんけんを繰り返し、合計の面積の広さを競います。ルールのわかりやすい単純なゲームなのですが、子ども達はみんな盛り上がり、喜んで取り組んでいました。
 そして、ここからがこの授業のねらいです。全てのマス目が埋まった黒板上のゲーム盤を見て、赤の面積と青の面積、どちらが広いのかを子ども達自身でジャッジしてもらいます。大人は「それぞれいくつの正方形があるかを数えればいい」と考えますが、ここではあえて先生も答えやヒントなどを言いません。子どもたちなりに自分で考えてもらいます。ゲームの勝敗がかかっていますから、子ども達はみんな真剣。「小さな四角の数を数える」はもちろん、「赤のところと青のところを重ねて比べる」「見た感じで青が大きい気がする」など色々な考え方が出てきます。
 さて・・・、どういう方法が一番結果がわかりやすいかな?

 2年生は、ひき算の学習です。といっても、たくさん並んだ計算問題に取り組む・・・というようなものではなく、こちらも楽しくゲーム形式で学んでいきます。
 今回取り組むのは、「3ケタ-2ケタ」のひき算。二人組になり、「ひき算の答えをできるだけ大きくすること」を目指して、交互にさいころをふって出た目の数を好きな位に当てはめていきます。ここでのポイントは、「ひき算の答えが大きい方が勝ち」というルールをどれだけ理解できているかです。
 ひき算の答えを大きくしたい場合は、引かれる数をできるだけ大きく、引く数をできるだけ小さくしなければなりません。最初は先生からヒントを与えることはせず、自分でその点に気づけるかどうかが勝負の分かれ目です。とはいえ、それに気づいていても、目の数の大小は運次第ですから、教室のあちらこちらで「やった!」とか「うわー」などという声があがっていました。こうした活動を通して、筆算をつかった計算方法はもちろん、数の構成や大小、数の操作などについても学んでいきます。

 cimg2045%e3%83%96%e3%83%ad%e3%82%b0%e7%94%a823年生は、「順序を表す言葉」について学びました。ここでも単なる知識として言葉のルールを学ぶだけではなく、子ども達には楽しく頭と手を動かしてもらいます。まずは、先生から作り方の説明を受けて、牛乳パックなどの厚紙と輪ゴムを使って「パッチンカエル」を作ります。作り方そのものは単純ですから、楽しみながら全員ちゃんと作ることができました。
 さて、ここからが今回の主題。途中から参観に入ってこられた保護者の皆さんに対して、子ども達から「パッチンカエル」の作り方を伝えてもらいます。授業の前半で学んだ「順序を表す言葉」を活かし、お母さん達がやってくるまでに書いた自分なりの作り方の説明書きを読んでもらって作るのです。たとえうまく伝わらず、保護者の方が上手に作れなかったとしても、子ども達が手を出すことは禁止です。あくまでも「言葉で」伝えなければなりません。こうした経験の中で、順序立てて話をすることの重要性や、相手の立場に立つならどのような説明がわかりやすいのかといった点を学んでもらいます。

 いずれのクラスも、途中から保護者の方に参観していただき、わが子と一緒に学ぶ機会を設けました。参観する機会はあっても、親子で授業を受けたり教室でわが子の課題に丸つけをするような機会はあまりないと思いますから、子ども達はもちろんのこと、多くの保護者の方達もとても楽しそうに活動されていました。和やかでとても良い雰囲気の催しになったと思います。

 このように、低学年部門では、何よりまず「学ぶ楽しさ」を子ども達に感じてもらいたいという思いで授業の設計や教材作成、実際の指導にあたっています。低学年の講座に通ってくれている大半の子ども達のご家庭は将来の中学受験を考えられていますから、学力の向上を目指すのは当然のこと。ただ、そのための基礎学力を身につけるためには、今のうちに「勉強って楽しい!」と感じられるような学習の土台づくりが欠かせません。
 今後もこのような機会をご提供できるよう、様々な催しを企画していきたいと考えていますので、ぜひその際にはご参加ください。

(butsuen)


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