失敗は誰にもある。大切なのは後の対応!

2018 年 5 月 21 日

 ご存知のように、弊社では2週間を一括りとした単元に基づいてテスト(マナビーテスト)を実施しています。子どもたちはこのテストでの結果を学習成果の指標とし、少しでも得点や順位を上げようとがんばっています。

 保護者の方々は、わが子の学習成果をこのテストの結果である程度判断しておられると思います。以前もお伝えしましたが、テストの結果が順位で知らされるのはいささか刺激的で、成績がよければ大きな励みと自信を得ることができますが、成績が芳しくないときには気分が沈み、自信が揺らいでしまうお子さんもいます。特に、「がんばった!」という実感を胸にテストに臨んだのに生憎な成績に終わったときは、本当にがっかりしてしまいます。今回はテストをよい意味での刺激とし、学力向上のために積極的に活かす方法について、共に考えていただきたいと思います。

 わが子の学力向上を願わない親なんていません。おそらく大概のかたは、開講後しばらくはわが子の成績に関心を寄せ、「どんな結果を得ているのか」と、テストの成績がわかる日を心待ちにしておられたと思います。今はどうでしょうか。前述のように、テストの成績が芳しくないと気分を落ち込ませたり自信を失ったりするお子さんが出てくるのと同様に、保護者も残念な成績が続くことに落胆し、わが子の勉強に対する関心やサポートの熱意を失ってしまう傾向があるようです。

 すでにそうなりつつある保護者はおられませんか? もしもあてはまるかたがおられたなら、気持ちを立て直し、わが子が前向きに取り組む姿勢を取り戻すためにどうしたらよいかを、今こそ真剣に考えていただきたいと存じます。子どもがやる気を失ううえで最も残念なのは、親の情熱あふれる後押しが得られなくなったときです。成績だけで子どもは勉強の意欲を失うわけではありません。今、わが子の勉強ぶりや成績に不満のあるかたは、「どうしたらわが子は意欲を失わずに受験生活を全うできるか」という視点に立ち、巻き直し策を考えていただきたいですね。

 上記のことは、筆者自身の過去の後悔と重ね合わせて保護者にお伝えしていることです。ずいぶん昔の話で恐縮ですが、筆者もわが子を家庭学習研究社の教室に通わせて受験させました。当時、いつまで経ってもわが子の勉強ぶりや成績に進展が見られず、業を煮やした筆者はいろいろと反省や注意を促すための働きかけをしたのですが、わが子はそのたびに興奮して言い返してくるばかりでした。「もはや受験の結果は期待できないな」という親の内心を察したのか、入試が近づいてもわが子の取り組みが熱を帯びる様子はなく、ほぼ予想した通りの入試結果に至りました。

 入試を終えた直後は、わが子に対して「ふがいないやつ」とは思ったものの、「親としてもっとやりようがあったのではないか」と振り返っているうちに、はっと気づいたことがあります。筆者はわが子にがんばりを要求するばかりで、どう巻き返すかについての冷静な話し合いをせず、また、わが子の気持ちに即して考え、奮起を引き出すような働きかけもしていませんでした。入試結果は、ある意味において親である筆者に対する採点に他ならなかったのです。

 ただし、今や社会人となった息子の様子を見ていると、受験までの不完全な勉強のなかにも、貴重な収穫を得ていたことに改めて気づかされます。自分なりに準備と心づもりをしてテストに臨む。そのテスト結果について、不完全でも点検や反省をし、次に臨む。こうしたことの繰り返しを通じて、誰に言われなくても自分の行動を顧みて修正していく姿勢がそこそこ身についています。このような姿勢は、社会に出てからますます求められるものですが、中学受験をめざして学んだ経験があってこそ培われたものに他なりません。このことに鑑みるなら、「成績が思い通りにならなければ、受験しても意味がない」「受験をめざしても無駄」などということはありません。わが子が中学受験生だったころ、もしも筆者がもっと親として適切なフォローやサポートをしていたなら、息子はもっと望ましい成長を遂げていたのではないかと、今更ながら後悔しきりです。

 そうした筆者自身の反省も含め、これからお子さんが中学受験をされるご家庭の保護者にお伝えしたいことがあります。まず、「わが子はやる気がない、能力が足りない、こんなことではどうせろくな結果は…」と、ネガティブな発想でわが子を絶対見ないでいただきたいということです。今より、わずかずつでもやる気を出し、努力する姿勢を築いていけば、1年間で大変な進歩や違いが生じます。それなのに、まだ入試が来てもいないのに、わが子への期待や関心をトーンダウンさせたのでは、せっかくの、成長のチャンスをみすみす取り逃がしてしまいます。

 この点に絡めて胸に留めていただきたいのは、「勉強しても成績をあげられないのは、ある意味あたりまえのことだ」ということです。理由は簡単。みんな同じように勉強しているのですから。そんな集団のなかでは、現状の成績を維持することさえ容易ではありません。見かたを変えれば、どの子どももやった分だけの成果は得ているのです。そのことを認識したうえで、子どもに無用なハッパをかけるのではなく、「どうすれば、より上の状態に漕ぎつけられるか」を親子で一緒に考えるべきではないでしょうか。子どもの勉強の活性度が落ちるのは、子ども自身のせいばかりではありません。親の適切なサポートがあれば、一時的に子どもがやる気を失ったとしても、必ず挽回できるのです。

 そこで保護者にお願いしたいのは、成績を軸にしてほめたり叱ったりを繰り返すのをやめることです。無論、成績が上がったときにほめることまで反対しているのではありません。親は成績で一喜一憂するのではなく、テストの点や成績にかかわらず、子どもが「失敗した」「やってしまった」という残念な問題がいくつあったかを一緒に点検し、「こんな問題、もう一回出たら絶対に征服してやる!」という意気込みをもち、次の勉強に臨んでいくようなサポートに徹することをお勧めします。

 私の過去の指導経験を思い出すと、入試が近づくほどに学力を上げていくお子さんの多くは、成績が悪かったときには、なぜ失敗したのかを逃げずに正面から振り返り、必ずやり直しをしていたということです。「次は絶対に取り返すぞ!」という意気込みは、失敗を点検してしっかりやり直しをしてこそ生まれるものです。

 これはアメリカの心理学者の著作にあったのですが、アメリカの子どもたちは成績がよかったらやる気を高める傾向が強いのに対し、日本や東アジアの子どもは成績が悪かったら取り返そうと奮起しやる気を高める傾向が強いと指摘していました。こうした気質の違いは親のものの考えかたや子育ての違いによるもので、「学力は生まれつきの能力で決まる」と考えがちな西欧社会に対し、「学力は努力次第で高められる」と考える日本人をはじめとする東アジア圏の社会との考えかたの違いが、子どもの勉強に対する関わりかたにも影響を与えているようです。日本の子どもの学力が相対的に高いのは、そうした民族的な気質の違いも一要因であるといったようなことがその本に書かれていました。

 この考えにもとづくなら、成績がよくなかったことの原因は、努力不足によるものだという考えを軸に置き、失敗の原因を確かめて次に生かそうという姿勢をわが子にもたせるような働きかけをすることが親に求められるのではないでしょうか(無論、努力する姿勢は親の強要で育つものではありません。子どもが自分の能力に対する信頼の気持ちを失わないよう、上手に励ますことが求められます)。

 テストで思わぬ大失敗をしてしまう。それは誰にでもあることです。問題はそのあとなんですね。イヤな記憶はただ消してしまうのか、臥薪嘗胆よろしく、失敗を忘れずに次に備えるか。その繰り返しが先々の歩みに大きな違いをもたらすのです。

 失敗を恐れず、失敗を糧にして次に備える。そうした姿勢を尊重し、お子さんを励ましてあげてください。その働きかけを一貫して行けば、必ずお子さんは自分で這い上がるすべを身につけていきます。


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おかあさんは、がんばり過ぎないで!

2018 年 5 月 14 日

 毎年のことですが、弊社はゴールデンウィーク(GW)と重なる1週間は、全校舎・全学年とも休講としております。

 GWの期間は家族での長距離移動やイベントなどもあり、勉強も不規則になりがちです。まして受験生といえども小学生ですから、気持ちの切り替えが難しく、勉強に身が入らないものです。10数年前から「いっそのこと、1週間丸ごと休講にしよう」ということになり、以来ずっと継続しています。学習塾の指導担当者は、1年を通じてまとまった休みが取れない環境で働いています。ですので、この休講期間をよきリフレッシュの機会にさせていただいています。ご了承をお願いいたします。

 さて、2018年度の講座が始まってから2~3か月が経過し、一定のカリキュラムを消化してきましたが、お子さんはある程度勉強のコツや要領を身につけつつあるでしょうか。授業での指導は全員に同じように行いますが、日々繰り返される家庭での取り組みは、お子さんそれぞれに異なるものです。自分に合った勉強の方法やスタイルを確立することが学力伸長の度合いを左右しますので、こうした視点からも現状のチェックを今のうちにしておきたいものですね。。

 お子さんが自分の性格やライフサイクル、家庭環境にうまく合致した、最も成果の上がる勉強スタイルに行きつくまでにはある程度の試行錯誤が伴います。しかも、まだ頼りない面が多い年齢ですから、勉強を本人任せにするにはいささか心もとないのは否めません。現に多くのご家庭におかれてはそのことを実感され、様々な助言やサポートを試みておられると思います。

 たまたま、最近何人かの会員家庭のおかあさんと親のサポートに関してやりとりをする機会がありました。どのおかあさんも大変熱心にわが子の学習状況を見守りながらサポートをされているご様子で、「がんばっておられるな」と、頭の下がる思いをしました。そのなかで、「こういうのが理想だな」と思ったケースがありますので、今回はその話をご紹介してみようと思います。

 そのおかあさんは、お子さんが算数の復習に取り組む際、「ちゃんと正しい考えかたが身につくように」と、ご自身もお子さんに配布された解答と解説を熱心に読んでおられました。しかしながら、どなたも感じておられると思いますが、受験対策の算数は結構難しく、勉学から遠ざかって久しい親にとっては手強い課題がたくさん存在します。それに逐一取り組んで解を得るには、ましてわが子にわかるまでアドバイスするには、大変な努力と時間を要します。

 昔の話ですが、同じようなことをされていたおかあさんが、やがて算数という教科の魅力に引き込まれ、「あ~、もしも私が小学生のときにこんな考えかたや解きかたに出合っていたら、私は理系人間になり、全く違った人生を歩んでいたでしょうに…」と、冗談とも本気ともつかぬ思いを吐露されていたことを思い出します。で、果たしてこのようなサポートはアリでしょうか。

 少なくとも弊社はお勧めしていません。まず前述のように親に大変な負担がかかりますし、ましておかあさんが理解されたことをわが子に伝授するには、「もう一苦労」では済まないほどの苦労を余儀なくされることになりがちです。ついでに申しあげると、6年生秋頃になると、どんな優秀な親でも音を上げる難問が次々に登場してきます。親に頼らせるような流れをつくった挙句、一番肝心な追い込みの段階で親がギブアップするような事態に至ると大変です。第一、このような方法で合格に漕ぎつけても、中学生になってからの勉強で子どもが難渋するのは目に見えています。自らに課すべき家庭学習を選別して実行に移すことができず、未提出の宿題を溜めて四苦八苦するのがおちです。学びの自律性や自発性は、受験生の段階である程度築いておいてこそ、高度で進度のはやい中学校の学習についていけるものです。中学生になってから、急に学習の自立を果たすのは無理というものでしょう。何事もそうですが、種なくして花は咲きません。

 先ほどのおかあさんの話に戻ります。あるとき、おかあさんが着眼や解法について説明しようすると、「えっ、おかあさんでもこの問題ちゃんとわかるの?」とお子さんに言われたそうです。その言葉から、「勉強は自分でやるもの」という観念がしっかりとわが子に根付いているのを感じとられたようで、「もはや親が教えようとする必要はないのだ」と悟られたとか。わが子の成長の様子を見ながら、徐々に親が手を引く。これは弊社が保護者にお願いしたい肝心要のサポート法に他なりません。お子さんにとってもおかあさんにとっても、この流れは大変賢明で望ましいものだと思います。わが子を親以上の能力の持ち主にしたいなら、子どもの自立に向けたプロセスを見守り、どこかで親が手を差し伸べるのをやめる必要があるのではないでしょうか。

 受験は子ども自身のものです。汗を流して試行錯誤するのは子どものほうでなければなりません。親のほうが必死に問題の解きかたを勉強しても、それが必要なのは子どものほうであり、それでこそ汗を流した分の成長が見込めるのです。「かわいい子には旅をさせよ」という諺がありますが、かわいいわが子だからこそ勉強の自立に向けたもどかしい体験をさせてやらねばなりません。

 同じようなことは学習塾の指導担当者にも言えるでしょう。子どもたちのためにありとあらゆることを思い描いてはサポートする先生は、保護者から見ると「よい先生」かもしれません。しかし、それが子どもの学力増進につながるかというと、必ずしもそうではありません。先生の側があくせく手を尽くしていると、意外と子どものほうはその先生の指示を待つだけで汗をかいた勉強(頭を働かせた勉強)をしていないものです。

 筆者が指導現場にいた頃、目立った指導成果をあげていたのは、「授業で勝負をし、その授業を通して子どもの勉強を活性化させるタイプの先生」、「子どもが必死で家庭勉強に取り組むよう導くタイプの先生」でした。筆者などは、授業日は大概居残りをしたがる子どもたちに補習を行っていましたが、子どもの書いたものを点検してアドバイスをしていると、みるみる長蛇の列ができ、待っている子どもが騒ぎ出す始末で、極めて効率の悪いフォローをしていたことを後悔とともに思い出します。

 子どもが我を忘れて没頭するような勉強を実現するには、まずもって「いかに学んだらよいか」を習得させなければなりません。家庭での勉強がなかなか活性化していないと感じておられるなら、「今、わが子は授業をどのように受けているか」、「家庭勉強の要領がわかっているか」、などについてまずは確かめてみてはいかがでしょうか。

 授業は何のためにあるのか。家で何をどうしたらよいのか。これらを理解し、塾と家庭の勉強の連動性が生まれれば、子どもは間違いなく自分から机に向かい始めます。この流れを築くための指導は授業担当者の仕事です(もっとがんばらないといけませんね)。保護者におかれては、同じ視点に立ち、わが子が自分で勉強をやり遂げる姿勢を培えるようフォローをお願いいたします。受験の主役である子どもが必死で汗を流して勉強に取り組む受験生活を実現すべく、ともに応援してまいりましょう。

 最後に一言。受験は親が子どもの将来の大成をを願ってさせるものです。受験生である子どもが汗を流すプロセスこそ、先々の飛躍を実現するための経験的財産となるものです。親が子どものためにため汗を流すのは愛情ゆえのことですが、その割に子どもの成長に寄与してくれないものです。子どもの試行錯誤を見守り、子どもの一生懸命を応援するのが親の仕事なのだとご理解ください。

おかあさんは、がんばり過ぎないで!お子さん自身の苦労こそが、やがて血となり肉となるですから。


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家庭環境と子どもの学力との関係 その2

2018 年 4 月 30 日

 今回も、前回(4月23日掲載)に引き続き、「家庭の環境と子どもの学力との関係」に関わる情報をお届けしようと思います。今度は、保護者を対象にした調査の結果をご紹介します。

 学力を伸ばすには、「何をどれだけ、どんな方法で勉強したらよいか」という発想によるアプローチだけでは成果につながりません。学習者である子どもの内面と勉強の関わりに目を向けなければ、せっかくの勉強も十分な成果をあげることはできないからです。

 言うまでもありませんが、学習成果は子どもの意欲や熱心度、継続性などで随分違ってきます。勉強のメニューや取り組みの方法も重要ですが、それ以前の土台をどう築くかにも目を向けるべきです。そして、小学生の場合、そうした学力形成の側面を決定づけるのは家庭環境や親です。弊社の会員児童を見ても、すばらしい取り組みをしている子どもの背後には、必ずと言ってよいほど上手な親のサポートがあります。以前お伝えしたように、勉強の時間になったのにテレビを見ている子どもに対して、「いい加減にテレビを消して勉強しなさい!」と大声で叱るか、「あれ? いつの間にか勉強の時間が来ているね」と子どもを我に返らせ、行動の切り替えを促すかとでは、子どもの心に宿るものが随分違ってきます。

 子どもの勉強の成果は、「いかにして意欲を伴わせるか」「いかにして自発的な取り組みを引き出すか」で決まります。そしてそのことは、子どもが小学生までのうちは「生活習慣のルーティン化による自立促進」や「親の粘り強いバックアップ」によって、どの子どもも達成可能なのです。

 では、本日のテーマに関わる資料をご覧いただきましょう。まずは、子どもにどんな方面に働きかけをしたかと子どもの学力についての関連性を調べた結果をご紹介してみましょう。なお、調査者や調査の対象者、調査年などは前回と同じです。

※A層・D層:算数・国語それぞれの質問(算数18問、国語19問)に対する正答率を4つの階層に分け、正答率が最も高い層をA層、正答率が最も低い層をD層としたものです。

 ざっと目を通したところで、どなたもいくつかの気づきを得られたのではないかと思います。まず、「絵本の読み聞かせをする」「博物館・美術館へ連れていく」「ニュースや新聞記事について親子で話す」「家に本をたくさん備える」「英語や外国の文化に触れさせる」「いろいろな体験の機会を与える」などは、大まかな括りに基づく共通性が見出せるでしょう。すなわち、リテラシーへのいざないや文化的刺激にふれさせる体験等を通して、子どもに知的なものごとに対する興味関心を引き出す試みを数多くしていた家庭の子どもは、総じて学力が高いということがわかると思います。

 特に、国語に関しては「読み聞かせ」や「文化施設訪問」「家庭の蔵書」「外国語・外国の文化との接触」などが10ポイント以上の差を生じさせています。また、算数に関しては、「読み聞かせ」や「文化施設訪問」、「家庭の蔵書」「外国語や外国文化との接触」などが同様の差を生み出しています。文化的なものに触れる体験は、国語力にも算数力にも影響を及ぼすことが確認されました。

 筆者が興味深く感じたのは、「勉強しなさい」と子どもに頻繁に伝えることが、必ずしも子どもの学力向上につながらないというデータを示していることです。というよりも、国語、算数ともに逆効果を招いています。他の項目と関連づけて考えると、子ども自身が自発的に行動する気持ちになるような働きかけをするほうが子どもの学習にも好影響を及ぼすということなのでしょう。これと同様に、「土曜日にも授業を」と望んでいる家庭の子どもは、そうでない家庭の子どもよりも学力的に芳しくないという生憎なデータが示されていることです。「勉強、勉強」と、親がせきたてると、却って子どもの学習活動は活性化しなくなるということなのでしょうか。

 では、もう一つ資料をご覧いただきましょう。今度は、保護者の普段の行動と子どもの学力との関係性について調べたものです。

 注目されるのは、「本を読む」や「文化施設を訪問する」などが、子どもの学力にプラスの影響を強く及ぼしていることです。やはり子ども自身に体験させると同時に、親もそのことに熱心であるということが重要なのですね。また、「新聞の政治や経済欄を読む」「クラシック音楽のコンサートに行く」「政治や社会に関する情報をインターネットでチェックする」「パソコンでメールをする」なども、同じように文化的なもの・知的なものへの志向性を引き出すプラスの効果を引き出しています。

 逆に、「携帯でゲームをする」「TVのワイドショーやバラエティ番組を見る」「スポーツ新聞や女性誌を読む」「カラオケに行く」「ギャンブルをたしなむ」などは明らかにマイナスの影響を与えています。これらは、子どもの知的好奇心や向上心を刺激しないだけでなく、勉強よりも今の楽しみを優先する子どもにしてしまうのではないかという懸念を感じます。

 この資料でもう一つ注目したのは、「学校の行事」に保護者が頻繁に参加した家庭の子どもは、行かない家庭よりもかなり正答率が高い(学力が高い)というということです。子どもは、親が自分のことに興味・関心を持ってくれることを大変喜びます。親に期待されている、見守られているという気持ちが、前向きな姿勢を育んでくれるからでしょう。

 以上は小学5年生の保護者を対象とした調査の結果でした。昔から「子どもは親の背を見て育つ」と言われます。また、外国の教育関係者の著作を見ても、「子どもは親を模倣して育つ」(「モニタリング」という言葉を使って、以前ブログ記事を書いたことを思い出します)などということが書かれていました。子どもは目に前にある手本を見て育つのは自明のことであり、その手本とは親に他なりません。

 筆者は、このことに関しては胸を張れる点が全くないので偉そうなことは言えませんが、児童期にあるお子さんをもつ保護者(このブログをお読みくださっている方の大半が該当するでしょう)は、「今こそ親にとってしつけの仕上げをする重要な時期なのだ」という認識の下、お子さんによい手本を示してあげていただきたいと存じます。

  次回の掲載日は5月14日(月)を予定しています。ゴールデンウィークを挟む1週間は、社全体がお休みさせていただきます。ご了承をお願いいたします。


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家庭環境と子どもの学力との関係 その1

2018 年 4 月 23 日

  もうすぐGW(ゴールデンウィーク)がやってきます。弊社では、GWと重なる5月初めの一週間を休講期間としております。新年度の講座が始まって約2カ月が経過したところですので、ちょっと息抜きをしながら、これまでの学習の振り返りと調整の機会にしていただければと思います。

 さて、今回は家庭での生活習慣や時間の使いかたなど、日々のルーティンが子どもの学力にどのような影響を及ぼすかを話題に取り上げてみました。家庭で毎日繰り返される行動は、子どもの人間性や知的能力の成長に深く関わっているのではないかと想像されます。そのことについてある程度データとして判断できそうな資料を探してみました。お子さんの家庭生活のありかたについて参考にしていただければ幸いです。

 小学生までの子どもの学習の様相は、保護者の関わりや周囲の大人の環境整備のありかたによって随分違ってきます。特に、弊社のような中学受験塾に通う子どもの場合、1日における学習の比重が一般の子どもよりもかなり高いため、学力形成により大きな影響を及ぼします。

 これからご紹介する資料は、文部科学省の委託に基づいてお茶の水女子大学の研究者がベネッセ教育開発センターと共同で行った調査による結果をまとめたものです。調査は平成7年~8年にかけて、全国の大都市圏、一般都市圏、町村部の公立小学校の5年生とその保護者、学校関係者等を対象に行われました。今回は児童対象の調査結果の一部をお伝えします。回答者は、2952名(算数2952名、国語2950名)、男女の比率はほぼ半々です(参考程度にしていただくための資料ですので、細かい調査の内訳データについては割愛します)。

 まず、「家庭での子どもの時間の過ごしかたと学力とに何らかの関係があるのか」、についての調査結果を見ていただきましょう。以下の表で示されている数値は、国語19問、算数18問に対する正答率をパーセントで示したものです。

 調査の結果は、大概の保護者が予想された通りの傾向を示しているのではないかと思います。「家で勉強する」という項目では、算数・国語ともに「勉強時間が長い子どもほど正答率が高い」という結果が示されています。テレビ視聴の時間やテレビゲームの時間については、時間が短ければ短いほど正答率が高いことがわかりました。テレビでは、「ほとんど見ない」という子どもの正答率が特に高いことが注目されます。弊社会員の家庭で、テレビをほとんど見ないお子さんがどの程度いるのかを調査してみるとおもしろいかもしれないと思いました。

 「パソコンでインターネットをする」という質問項目に関しては、1時間以内の子どもの正答率が相対的に高くなってはいますが、利用時間と正答率について他の質問項目ほどはっきりとした傾向が見られません。インターネットの利用目的は、ゲームなどのエンターテインメントとは限りません。学習に活用しているケースもあるでしょうから、そういった点がデータに反映されているのかもしれません。家庭にインターネット環境がない子どもの正答率が算数・国語ともいちばん低いことも、それを裏づけているように思います。

 次は、家庭でどのような勉強をしているかということと学力との関係について調べた結果をご紹介してみましょう。

A層・D層:算数・国語それぞれの質問に対する正答率を4つの階層に分け、正答率のいちばん高い層をA層、正答率がいちばん低い層をD層としたものです。

 上記資料は、それぞれの質問項目について、「よくしている」もしくは「ときどきしている」と回答した子どもの正答率を算数と国語それぞれについて示し、A層(もっとも正答率が高い集団)とD層(もっとも正答率が低い集団)を比較したものです。

 「学校の宿題をする」という質問項目については、「よくしている」と答えた児童のみで比較した場合、算数・国語共にA層の児童の9割近くが該当し、D層の児童よりも各20ポイント近く高い数値を示しています。つまり、学力の高い子どもの大半は「宿題をやるのは当たり前」という状態になっていることがわかりました。

 また、A層とD層との数値上の違いが大きいのは、「わからない言葉が出てきたときには辞書を使う(特に国語)」、「勉強の内容を自分なりにわかりやすくノートにまとめる」、「(宿題以外の)プリントや問題集で勉強している」、「苦手な教科もわかるまで勉強する」、「先生や親に言われなくても勉強する」などで、いずれも子どもの学習の積極性や自発性の面で差が生じているようです。勉強を自分なりに工夫したり、わからないことを放っておかないようにしたりするなど、勉強への関わりかたが熱心で継続的な子どもにすることが求められることがよくわかりますね。

 最後に、子どもの日頃の生活習慣や行動のありかたについて、正答率の高い(学力の高い)子どもとそうでない子どもとの特徴的な違いがないか調べた結果を見てみましょう。

 こちらの調査結果も納得されたかたが多いのではないでしょうか。「朝食を食べる」「決まった時間に起床する」「決まった時間に就寝する」など、基本的な生活習慣が自立し、規則正しく繰り返されているお子さんのほうが高い正答率を示しています。

 学校へもって行くものの点検も、まめにやっている子どものほうが優秀であるのも頷けます。漫画以外の本をよく読んでいる子どもは国語で高い正答率を示しています。ニュース記事を読んでいるかどうか、インターネットで情報収集をしているかどうかなども、算数・国語に関係なく正答率に影響しています。

 このことは、生活上自分のことは自分でやるという習慣を身につけることが、何につけ行動の積極性や自発性につながり、ひいては学力の向上をもたらすということを示唆しているように思います。また、興味をもったことをより詳しく知りたいという気持ちをもち、自分でいろいろ調べようという姿勢をもっている子どもは勉強もよくできるということがわかりました。いずれもきわめて当たり前のことではありますが、子どもにしっかり根付かせるのが意外と難しいということも、保護者が実感されていることであろうと思います。

 

 以上、3つの資料を見ていただきましたが、勉強ができるかできないかの因果関係について、ごく当たり前のことが確認いただけたのではないでしょうか。

 子どもを優秀な人間に育てるには、勉強面だけでなく、生活面や行動面と合わせ、子どもの全体的な成長を支援していくことが必要だと言えそうです。特に習慣化することから 諸々の行動の自立性を引き出すことが重要なポイントでしょう。やるのが当たり前になると、やらずにはいられない気持ちになるのが人間です。そこまでたどり着くには、親や保護者の熱心なサポートが欠かせません。

 これをきっかけに家庭生活や学習の現状について振り返り、問題点が明らかになったなら、今のうちに親子で話し合い、必要と感じたなら習慣づけのレベルからやり直してみてはいかがでしょうか。


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「読書」「会話」「勉強」には、相関関係がある?

2018 年 4 月 16 日

 寒からず暑からずのよい季節がやってきました。こういう季節は全ての人間を活動的にします。今こそやるべきことを軌道に乗せるチャンスですね。

 さて、お子さんを弊社などの受験塾に通わせておられる家庭では、「これって、受験勉強に差し支えないの?」とお迷いになる事柄もいろいろあると思います。受験勉強が大詰めを迎える6年生の秋からは、「すべて受験勉強優先」で迷うこともなくなりますが、4~5年生までの家庭では、「受験勉強も大事だが、気分転換にもなるだろうし…」と、気持ちが揺れてしまうものです。

 たとえば読書。いったん本を読み始めると、一気に最後まで読みたくなるものです。大人なら踏みとどまって状況を顧みる分別がありますが、子どもは時間を忘れて読みふけってしまいがちです。また、家族団らんの時間の会話は子どもにとっても楽しいものです。特に子どもの興味の範囲の話題なら、いつまでも話していたい気分になります。こういう場合においても、大人は場の雰囲気を察知して適当に切り上げますが、子どもの場合それがなかなかできません。

 「うちの子は受験生なのだから、読書に時間をあまり割くべきではないのではないか」「ぺちゃくちゃしゃべっている時間があったら、勉強に精を出させたほうがよいのではないか」―――こんなふうに迷っているかたはおられませんか?

 実際のところ、読みたい本を読んだり、家族団らんの時間に楽しい会話を交わしたりするのは、受験勉強をしているお子さんにとってマイナスに作用するのでしょうか。今回は、そのことを話題に取り上げてみました。

 今からご紹介するのは、2010年に実施された中学3年生(7131名)を対象にした調査の結果です。調査対象者を一定の偏差値ごとにいくつかの学力の階層に分け、それぞれの階層ごとの読書量を調べたもので、学力と読書量の関係性についてある程度の傾向が読み取れるでしょう。

質問/「どのぐらい本を読んでいるか」 回答/1:ほとんど読まない 2:月1~2冊は読む 3:月3~4冊は読む 4:月5冊以上は読む

 これを見ると、絶対的な傾向とは言えないものの、学力と読書量にはある程度比例の関係があることがわかります。学力の高い生徒ほど月あたりの読書量は多いようです。なお、漫画や雑誌はこの調査においては読書に含まれていません。

 この調査の対象者は中学3年生ですが、もしもより読書が活発な小学生(読書量は、子どもの年齢が高くなるにつれて少なくなる傾向があります)を対象に調査したなら、学力と読書量の関係がより明確になるかもしれません。ただし、類似の調査をいくつか点検してみると、読書時間は長すぎるのも短すぎるのも学力形成にマイナスの影響を及ぼしているようです。読書時間があまり長いと、勉強にも差し支えるのは自明のことですから、気をつけたいものです。

 さて、次の資料は前出の調査と同時に行われたもので、学力階層別に家庭での会話状況を調査したものです。

質問/保護者とは日ごろよく会話する 回答/1:とてもあてはまる 2:まあまああてはまる 3:あまりあてはまらない 4:まったくあてはまらない

 これによると、大ざっぱに見て成績上位者の家庭では親子の会話が相対的に豊富であり、成績不振者の家庭では親子の会話が少ないという傾向が見られます。ただし、会話が多ければ多いほどよいというわけではないことも見て取れますね。 

 すでにお伝えしたかと思いますが、団らんの時間の会話は子どもの心の安定に寄与します。それが子どものやる気につながりますし、親が何を自分に期待しているのかを感じとる場にもなります。ですから、親子団らんの時間が家庭で確保されていることは、受験生家庭にとっても大切なのだということがわかりますね。また、親子の会話は、子どもにとっては理路整然とした話しかたを習得する場になりますし、親から新しい語彙を仕入れる重要な機会にもなります。家族団らんの時間に楽しい話に興じるのも、受験生にとって決して無駄なことではありません。

 最後にもう一つ資料を見ていただこうと思います。子どもの読書量と家庭での団らんの時間との関係について調べたものです。

 この資料を見ると、親子の会話が豊富にある家庭の子どもほど読書量が多いということがわかります。これまで、「学力」と「読書」、「学力」と「家族との会話」には、一定の相関関係があることを確認してきましたが、「読書」と「家族との会話」にも同じような関係があることがわかりました。どうやら、「学力」と「読書」と「会話」には互いに正の相関があるようです。

 子どもにとって、新たな知識や考えを獲得する場は「勉強」だけではありません。「読書」や「会話」も、同じように重要なものなんですね。それらは互いに根底の部分でつながっているのでしょう。知らないことを知るのは人間の基本的欲求で、‟快“の感情をもたらします。まして子どもは成長の真っ盛りですから、「勉強」「読書」「会話」の体験は、いずれも知ることの喜びや楽しさに触れる体験として相互に刺激し合うのでしょう。

 受験を意識すると、とかく勉強を最優先しがちです。特に親がそういう姿勢でいると、お子さんの勉強が活性化しない根本の理由に気づかないまま悪循環に陥ってしまいかねません。今回ご紹介した資料のデータは、「なぜ、わが子の勉強に意欲が伴わないのか」について、解決に向けたヒントになるかもしれません。勉強の成果は、投入した時間に比例しません。子どもの知的欲求が活性化する仕組みを理解し、勉強の時間が効率的で有効なものになるよう配慮することも大人の役割だと言えます。

 「読書」や「会話」は息抜きになるだけでなく、勉強の成果をバックアップする効能もあるのだということを踏まえ、お子さんの受験生活がバランスのとれた有効なものになるよう配慮してあげてください。


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