「やる気」はどこからやってくる?

2017 年 4 月 24 日

 新年度が始まって、早くも最初の1か月が過ぎようとしています。お子さんは新しい学年・クラスで張り切って勉強や運動に取り組んでいるでしょうか。そんなお子さんの姿を見ながら、「もう◯年生なんだから、言われなくても自分から動いてほしい」「意欲的に勉強に取り組んでほしい」などと思われることはありませんか?
 私達大人は、子どもに対してつい「もっとやる気を出しなさい」と言ってしまいます。ご褒美を与えたり、厳しい言葉を掛けたり罰を与えたり・・・、何とか子どもの気持ちを高めたいと、アメとムチを使い分けるお母さん・お父さんも多いことでしょう。もちろん、そうした働き掛けによって、自分で楽しさを見出して取り組むようになってくれればいうことはないのですが、なかなかうまくはいきません。

 この「意欲」や「やる気」ですが、一体どんな流れで生まれて、どうやって高まっていくのでしょうか。脳科学者の先生の著作の中に、これに関して興味深い記述を見つけました。それは、「『意欲』を生み出しているのは脳である。そして、脳が『意欲』を生み出すきっかけを与えているのは、体の動きや周囲の環境である」というものです。
 脳科学的にいうと、意欲ややる気が高まるときの脳の変化ははっきりわかっているのだそうです。モチベーションに関わるのは、大脳基底核の一部である「淡蒼球」と呼ばれるところ。脳の運動野が体を動かして実際に筋肉が動くと、この刺激が脳に戻ってくる流れでループが形成される。このループが、淡蒼球から信号が送り出されることに関わっていて、この信号によってモチベーションが高い状態になり、それが勉強や習い事などへの意欲につながっていく・・・のだそうです。このように「やる気が高まるきっかけをつくるのは体や環境である」と聞くと、なんだか不思議な感じがしますよね。

 この中では、これに関連したいくつかの実験結果が紹介されていました。そのうちの一つが、表情に関するものです。この実験は、2つのグループに分かれ、ペンを噛んだ状態で漫画を読むというものです。片方はストローをくわえるようにペンを唇ではさんだ状態、もう片方は歯や歯茎をむき出しにしてペンを噛んだ状態で漫画を読みます。全く同じ漫画なのですが、後者のグループの方が「面白い」と感じた人が多いという結果が出ました。なぜこのような差が生まれるのでしょうか?
 もうお気づきかもしれませんが、後者のペンのくわえ方は、笑顔に近い表情を強制的に作ることになります。つまり、そのときの感情がどうであれ、無理矢理にでも笑顔を作ることによって、脳がポジティブな思考をするようになったということです。「楽しいから笑う」のではなく、「顔が笑っているからきっと楽しいんだろう」と脳が解釈したというわけですね。
 つづいて実験結果をもう一つ。今度は、握力に関する実験です。被験者に握力計を渡して、目の前のモニターに「握ってください」という表示が出ている間だけ握ってもらうというものです。まずは通常通りに計測します。そして次に、開始前の一瞬だけ「がんばれ」とモニターに表示して、その後で計測します。すると、「がんばれ」と表示して計測したときの方が、通常通り計測したときの2倍の数値を記録したという結果が出ました。その上、反射スピードも上がり、力を発揮する時間も長くなったのです。この結果は、人はプラスの情報を取り入れられる環境に置かれると、自然と脳が前向きな反応をするようになるということを証明しています。
 ですから、受験生が「目指せ◯◯合格」という紙を壁に貼ったり、「必勝」と書いたハチマキを巻いたり、入試当日に家族から「大丈夫だよ」と声を掛けてもらったりといった行為はすべて、脳科学の観点からも、子どもの意欲を高めるために効果のあるものだといえます。

 いかがでしょうか。これらの実験結果はいずれも、体全体や五感を使って楽しいと感じることや、周囲からポジティブな働きかけや情報を与えられることによって、脳はそれに応じた対応をするようになるということを証明するものです。「楽しんでいる」「面白いと感じている」と脳が感じたり思い込んだりするような状況を作れれば、やる気や意欲は自然と高まっていくということなんですね。そして、学力を形成する上で最も重要な家庭学習においてこのような環境を作れるのは、お母さん・お父さんに他なりません。
 やる気は、誰かに「やる気を出しなさい」と言われて高まるものではありません。お子さんが勉強や習い事に対して意欲的に取り組むためには、叱って動かそうとするのではなく、普段から前向きな言葉掛けや環境づくりをすることこそが重要なのだ、と心に留めておいていただければと思います。

(butsuen)


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高学歴の集団内で差を生み出すファクター

2017 年 4 月 17 日

 今回は、昨年の12月に新聞誌面で目にした記事をもとに書いてみようと思います。その記事は、子育てのタイプと子どもの学歴や年収との相関関係についての調査研究の結果が報告されたものでした。中学受験生のご家庭に大いに参考にしていただける点があるように思い、今回はその研究結果をもとに、子育てや受験勉強のありかたをともに考えてみようと思ったしだいです。

 この新聞記事は、神戸大学経済経営研究所の特任教授西村和夫氏と、同志社大学経済学部教授の八木匡氏の研究報告を取り上げたものでした。調査対象は、インターネットの調査会社に登録している23歳~69歳の男女で、その対象者リストから無作為に抽出した方々に、子ども時代に親から受けた子育ての特徴について尋ね、その回答結果を分析したものでした(回答者は1万人に及びます)。27の質問項目に対する回答から5つの子育てタイプのいずれかに振り分け、どのタイプの子育てを受けた人物が高学歴・高収入を得る傾向が強いかが調べられました。

 まず5つの子育てタイプとはどのようなものでしょうか。それをご紹介しておきましょう(以下は、新聞に記載されたままを写したものです)。

 この5つの子育てタイプのうち、最も平均学力が高く高収入を得ていたのが、1の「支援型」だったそうです。

 小学生までの子どもは、親が見守ってくれているか、やったことを承認してほめてくれるかどうかで、ものごとに取り組むうえでの意欲や志向性に大きな違いが生じます。何でも自分自身でやり遂げようとする姿勢を尊重し、子どもが自分でやったときには大いにほめる。やろうとしないとき、親は癇癪を起さず粘り強くやってみるよう促す。そういうことの辛抱強い繰り返しが、子どもに自立的な行動姿勢を植えつけます。それはある意味で、親が授けた一生モノの財産と言えるほど貴重なものです。1の「支援型」は、そういった子育てに当てはまるでしょう。

 いっぽう、2~5のような子育てで育った人間は、自分がとるべき態度や行動がどのようなものかを自覚し、実行に移すことができません。あるいは自覚していたとしても、それを実行に移そうとしません。学業面について言うと、厳しく命令したり罰を与えたり、無理やりやらせたりする方法(どちらかというと2に近いでしょうか)や、褒美でその気にさせる方法(敢えて当てはめるなら3になるでしょうか)などでも受験の結果を得ることは可能だと思います。

 しかしながら、先々の大成までも見通すと大きな違いが生じていきます。自分自身の考えをもち、どうするのが望ましいかを考えて行動するようしつけられて育った人間は、高いレベルの知力を巡る競争に強く、より優れた能力を発揮するのです。なぜかというと、高い次元での知的能力が問われる状態になればなるほど、どういう勉強で学力を獲得したかがものを言うようになるからです。東京大学や京都大学などの一流大学で学んだ人は、ただ学力が高いだけでなく、自立志向型の勉強を通して学力を高めているため、学んで得た知識の活用力が高く、結果として実社会でも有能性を発揮でき、収入も一般的な大学を出た人よりもはるかに高くなる傾向が強いと言われています。

 イギリスのノンフィクション作家イアン・レズリー氏は、著書で次のようなことを述べておられます。

 最近では、成績の良し悪しを分ける原因について研究する心理学者たちは、個性や性格といった要素を意味する「非認知的特質」に注目している。こうした研究によって、学習に対する「姿勢」と日常的な習慣が、従来考えられていたより大きく成績を左右することが確認されている。この傾向は、高等教育に進み、母集団に含まれる個々人の知的能力の差が狭まったときに顕著に表れる。イギリスでエリート養成校の学生を対象に長期間にわたる研究を行ったところ、試験の結果を左右する要因として、性格的な特質が知能より四倍も大きな影響を及ぼしていることが明らかになったのである。

 では、どのような性格的特質が重要なのだろうか。もっとも注目されているのは、「勤勉さ」だ。また、これと関連する「粘り強さ」や「自制心」、それから心理学者のアンジェラ・ダックワースが指摘する「やりぬく力」――失敗に対処し、挫折を乗り越え、長期的な目標に意識を集中する能力――も重要だ。さらに最近では、学業成績を左右する性格的特質として、これらと同じくらい影響力のあるものが存在する可能性が濃厚になってきている。

 どうでしょう。高い次元での競争になると、学びの姿勢や日常的な習慣がものを言うようになるということなのですね。また、その人の性格的な側面、たとえば「勤勉さ」、「粘り強さ」、「自制心」、「やり抜く力」(これらには、親の子育てが深く関与していることでしょう)などが、結局は高い次元での学びの成果を保障してくれるのでしょう。同じ学力を得るのでも、テストのためにしかたなくやる勉強、大人に依存した勉強では一定以上の高いレベルの学力には到達しませんし、学んで得た知識を活用する能力も育ちません。

 ところで、引用文の最後に書かれていた「これらと同じくらい影響力のあるもの」とは何でしょうか。それは「知的好奇心」です。前出のイアン・レズリー氏によると、この見解を発表したのはロンドン大学ゴールドスミス・カレッジの講師ソフィー・フォン・シュトゥム氏で、彼女は学業成績の決定要因に関する過去の研究を再検討するため、併せて5万人の学生を対象とした200件の研究データを収集し、その結果、

学業的な成功の裏では知的好奇心――「労力を伴う認知的活動の機会を求め、積極的に携わり、楽しみ、突き詰める」傾向――が大きな役割を果たしている

という結論を導いたというのです。

 新たな知識を獲得したり、新たな考えを吸収したりするうえで、知的好奇心を強くもっているかどうかは大きな差をもたらすことでしょう。この研究結果を発表したフォン・シュトゥム氏と共同研究者は、好奇心が成績に対して勤勉さと同じくらい大きな影響を及ぼしていると指摘しています。また、勤勉さと好奇心という性格的特質と合わせると、知能と同程度の価値があるということがわかったとも報告しています。

 以上のような研究結果は、「支援型」の子育ての有効性と大いに関連していると思いませんか? 子どもが何事も自分からやってみようとする姿勢を尊重し、温かく見守りサポートする。このような子育ては、わが子を将来高い知性と教養を携え、よい人生を歩む人間にするうえで最も有効な方法の一つだと言えそうですね。


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子育てを振り返るときのために

2017 年 4 月 10 日

 新学期が始まりました。みなさんのお子さんは、それぞれ一つ上の学年に進級されたわけですが、これまでよりも少しだけ、おにいさんやおねえさんになったことへの自覚をもたれているのではないでしょうか。

  新6年生のお子さんには、来年1月の中学入試が控えています。そうしたことへの自覚が態度や表情に表れるお子さんもおられることでしょう。それはわが子の成長に他ならず、親にとってはうれしいことですね。

 わけても大きな変化が見られるのは新小学1年生です。小学校への入学は、子どもたちにとってカルチャーショック以外の何物でもないからです。幼稚園では最年長だったのに、小学校に入学すると最年少の立場へと一瞬にして逆転するのですから。これまで通っていた幼稚園と比べ、小学校は何もかもがスケールアップしています。校庭の広さ、校舎の建物の大きさ、人の数の多さ、正式なリテラシー社会への参入…。

 思うに、人間として完成された大人と違い、子どもたちにとっての日々の体験は新鮮な驚きや発見の連続です。そして、その一つひとつの積み重ねが人間としての個性の形成につながります。それだけに、どんな環境で児童期を過ごし、どんな教育を受けるかということは、子どもの成長に莫大な影響を及ぼすのだということに思いを致さずにはいられません。

 このように、小学生は成長途上の未完成な子どもです。それは親にとってまだ子育てが終わっていないことを意味します。それどころか、これまでと違って児童期後半になると体の自由度が格段に増し、行動範囲は広くなり、ものごとの好き嫌いや考えにおいて個性がはっきりと出てきます。親にとって、子育てやしつけの難しい時期なのです。

 みなさんはどうでしょう。毎日「ストレスとは無縁」とばかりに子育てを楽しんでおられるでしょうか。筆者のかつての経験からも、数多くの保護者と接した経験においても、子育てとは大変な苦労やストレスが伴い、しかも投げ出すことのできない重要な仕事だと言わざるを得ません。しかしながら、この親としての苦労やストレスを乗り越えてこそ、わが子は一人前の人間に成長し社会へと巣立っていくことができるのですね。

 子育てを終えた後の自分の姿を思い描き、毎日悔いの残らぬ親業を実践すべくがんばっていただきたいですね。今回は、絵本作家の佐野洋子氏の著書に、子育てを振り返って書かれた文章がありますので、そのくだりをちょっとご紹介してみようと思います。

 もはや初老に突入している私、および友人達は一応子供を育て上げた。

 友人の夫が妻に「あなたの一生で、いちばんよかったことは何だった」と聞くと妻は間髪を入れず「子育て」と答えた。「じゃあ、一番大変だったことは」「子育て」

 彼らの子供は、私なんぞから見ると、実にすくすくと何の問題もないめったにお目にかかれない様な立派な若者たちであり、子供の時も、健やかで、何よりも、はつらつと私達を楽しませてくれた。そんな恵まれた子供を持った母親でさえ、子育ては、全身全力で闘うべき大事業であったのだ。

 私なんぞは狂乱の子育てで、狂乱したからこそ、その中身の手ごたえは充分で、今になると、思い出すさえ、涙が甘ったるくにじみ出る。

 おうおう、よく生きのびて、でかくなってくれた。ありがたい。おうおう、私よ、なりふりかまわず見苦しく幾多のあやまちを犯しながらよくがんばった。

 私が狂乱していた昔、河合隼雄(心理学者・故人)は今の様に、日本にあまねくいきわたっていずおすがり申すわけにはいかなかった。

 私は常にオロオロしていた。

 『こころの子育て――誕生から思春期までの48章』は、具体的な問いに河合先生がやさしく答えて下さる実に親切な本である。

 例えば、

・イライラして叱ってばかりいます。
・「早くしなさい」「それはだめ」と小言ばかり云っています。
・子供がいじめにあったときの対応を教えてください。
・悩み始めると迷ってばかり、さっぱり結論が出ません、等々。

 生まれたときから自立するまで私達がウロウロしていて、今読むと、子育て時代が、赤ん坊の乳くさい手のひらややわらかいうでの感触が、急に体中に角材を組み込んだ様な“()体”にぬうっとでかくなり、足を見ると足の爪のそばに黒い毛が生えて、仰天した時のことが、思い出され、もう一度子供と共に過ごした年月がよみがえって、ため息をついた。あの時この本があったら、私はもっとましな子育てができただろうか。

 いややっぱり出来なかっただろう。

 何故なら、人間一人子ども一人の持っている世界は私達を存在させている果てしない宇宙、まだほとんど解明されていない宇宙と同じ位、その小さな体の奥に広がっているからなのである。時に人間について多少わかった様な気がする事があるが、それは、宇宙衛星ひまわりが持ち帰る情報程度なのだ。

 (中略)河合先生がくり返し教えてくれることは、一人の子どもをおそれを持って見守りなさいと云うことだろうか。

 どんな子供にも、宇宙の果てが解明出来ない様に、おそろしい闇と、光が無限にあるという事のような気がする。

 佐野氏は、「どんな子どもにも闇や光が無限にある」ということに関して、親の期待とは異なる様々な子どもの現実や反応について例をあげながら、それらに振り回されたり、感動させられたり、泣かされたり、七転八倒したりするのが親というものだということを踏まえつつも、それでいて「七転八倒している時、少し待ちなさい、近視眼になるのはやめなさいと云われて、『はい、そうしましょう』と仲々なれないのである」とも述べておられます。

 こうしてみると、どのようなすばらしいアドバイスを得ようと、親というものはそれぞれに苦労を経ずして子育てを終えることはできないのだということを思わずにはいられません。「七転八倒の苦労を伴ってこその子育てなのだ」ということなのではないでしょうか。この苦労を自分なりに乗り越えたとき、親は本当の意味で人の子の親になれるのでしょう。

 受験生活のバックアップと子育て。この両方を受けもっておられる保護者の方々の苦労は並大抵ではありません。しかし、子育てはあと少しの段階を迎えつつあります。振り返ったとき、「一応がんばれたかな」と思える日がくるまで、どうか後悔のないようベストをつくしていただきたいと存じます。

 最後に、河合隼雄先生の著書のなかに、「思い通りにならないことこそ、ほんとうにおもしろいことなんだと思うんです」という文言があるのをご紹介しておきます。子育ての最中にある親に、大いに励みを与えてくれる言葉ではないでしょうか。


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受け身の勉強が気になる日本の高校生

2017 年 4 月 3 日

 ある日新聞に目を通していると、社会面の記事の見出しが目に飛び込んできました。「日本の高校生 勉強受け身」というものです。そのすぐ横に、「日米中韓調査 上昇志向も低さ目立つ」とあります。どうやら、日本を含めた4か国の高校生の比較調査の結果を紹介する記事のようです。

 この調査は、昨年(2016年)の9月から11月にかけて、国立青少年教育振興機構が、日本、アメリカ、中国、韓国の4か国の高校生を対象として、勉強のやりかたや学校生活などについて質問したものでした。回答を得た7854人のデータを集計した結果、それぞれの国の高校生の違いが浮き彫りになりました。日本の高校生については、見出しの通り、「勉強に取り組む姿勢が受け身である」ということや、「上昇志向が低い」ということでした。

 学びの姿勢や価値観は一朝一夕に形成されるものではありません。高校生になってから急にそうなったわけではなく、幼少期から受けてきたしつけ教育によって少しずつ形成されたものです。むしろ、人間としての基盤が形成される小学生時代に由来する要素が大きいのではないかと想像されます。そこで今回は、この記事の内容をご紹介することで、家庭でしつけ教育にあたっておられるおとうさんやおかあさんがたに、何らかの指針や方向性が提供できたらと考えた次第です。

 では、前述の新聞の掲載されていた調査の結果を見てみましょう。

 まず、「問題意識を持ち、聞いたり調べたりする」という質問項目への回答結果を見てみましょう。「そうである」と答えた日本の子どもは12.3%でした。これは、知的興味や関心、勉強への積極性をはかる質問だと思いますが、アメリカや中国の高校生と比較すると随分ポイントが低くなっています。韓国の高校生共々、知的興味・関心の低さが目につく結果となっています。

 次の「教わったことを他の方法でもやってみる」という質問項目に対しては、日本の生徒で「そうである」と答えた生徒はわずか7.5%しかいません。アメリカの45.8%と比較すると実に6倍以上の少なさです。

 日本や韓国は学歴獲得を巡る競争が激しく、暗記主義のテスト対策に偏っているという指摘の多い国ですが、そうした現実を反映しているのでしょうか。日本の生徒は、「テスト結果に直接反映されることしかやろうとしない」「学んだことを応用するのが苦手」とよく言われますが、そのことを証明するデータを突きつけられた感があります。

 三つ目の「授業中、積極的に発言する」という質問項目に対して、「そうである」と答えた日本の生徒は、驚くことに3.7%でした。授業中に積極的に質問するという生徒が7割8割もいたら、先生もその質問をさばくのに四苦八苦するでしょう。質問するには、わからないこと、知りたいことを頭の中で整理し、要領よく話さなければなりません。したがって、授業で質問するには相応の勇気や積極性が必要で、熱心に質問する生徒はどの国でもそう多くはありません。それにしても、他国の生徒の15~17%に対して日本の生徒の3.7%という結果は残念な状況のように思います。

 上記以外の質問に対する回答結果について書かれた箇所をご紹介しましょう。

 勉強時間でも「平日に学校の授業と宿題以外にどのくらい勉強するか(塾なども含む)」について、「しない」と答えたのは、日本が24.2%で4カ国で最も高かった。「試験前にまとめて勉強する」は69.3%に上り、「一夜漬け」の多さもうかがえる。

 日本の高校生の「上昇志向」の低さも際立った。「リーダーになること」を強く望む割合は、米国50.8%、中国24.7%、韓国18.9%に対し、日本は5.6%。「高い社会的地位に就く」「有名な大学に入る」はいずれも13%台で米中韓を下回った。

 調査に関わった明石要一・千葉敬愛短大学長は、「勉強が受け身になる背景として、生徒が能動的に学ぶ授業が少ないことが考えられる」と指摘。「勉強への姿勢が、控えめな人生目標にも反映しているのではないか」と見ている。

 今、公教育は「アクティブラーニング」をスローガンに掲げて「学びの積極性」を引き出すべく、全国の学校で様々な試みがなされているようです。それは、日本の子どもたちの学びの消極性を自覚し、それへの打開策という側面もあるのでしょうか。

 勉強への姿勢が消極的であることと、人生目標が控えめであることとには相関関係は確かにあると思われます。ただ、高度成長期の日本と比較し、日本社会に夢がなくなってしまっていることが根底にあり、「学歴を得てもたいした人生が待っているわけではない」など、勉強のモチベーションが得られない状況も無関係ではないように思います。また今日の日本では親の多くは大卒ですが、その親の様子を見て育った子どもの多くは、「親のようになりたい」と思っていません。生きがいや心の充実感を得にくい世の中になってしまっています。

 どうすれば、子どもが知的興味に支えられた積極的な学びを取り戻せるでしょうか。弊社のような進学塾に通う子どもたちは、ともすれば試験に受かるための勉強になりがちで、気をつけないと今回の国際比較調査の結果で示されるような受け身の勉強姿勢が染み付いてしまう危険性があります。

 子ども自身が知ることに熱心で、自ら調べて新たな知識を収めたり、様々に考えを巡らせて問題解決にあたったりする姿勢を培いたいものです。そのために私たち学習塾はどのような指導をすべきか、親はどのように子どもの勉強を支援すべきか、互いに同じ視点から子どもの学びを応援していきたいものです。

 そのことに関する記事はこれまで何度も書いてきましたが、折を見てまた私たちの考えをお伝えしてみようと思っています。保護者におかれても、「どうすれば積極的に学ぶ姿勢がわが子に身につくか」ということを是非掘り下げてお考えいただきたいと存じます。そのことは、今後のお子さんの人生の歩みに多大な影響を及ぼすと思います。


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子どもの前向きな努力を引き出すために

2017 年 3 月 27 日

 前回は、5・6年部の開講後の最初のマナビーテストが終了したところで、「テストの結果を冷静に受け止め、今を起点に少しずつ状況がよくなるようお子さんをバックアップしていきましょう」ということをお伝えしました。それは、進学塾につきもののテスト制度をよく理解し、上手に活かすことが効率的な受験対策の実現に直結するからです。

 言うまでもありませんが、テストは子どもの現段階の学力(学んだことがどれだけ身についているか)を測るためのものです。能力を測るものではありません。落とした問題を点検すると、様々な原因がそこから見出せます。たとえば、単純ミスや思い込みが多数あった、覚えたはずのことを忘れた、思いがけない箇所が出題された等々。このような失点は、対処次第で未然に防ぐことができるでしょう。

 また、何よりもテスト結果は日々の取り組み次第でどのようにも変わります。テキストの各単元の導入部分を理解しているか。テキストの問題をやっているか。やった問題の○つけをしているか。間違えた問題をやり直しているか。授業の板書をノートに書いているか。授業後のおさらいをしているか。副教材をやっているか等々…。これらについて、定期的にお子さんと学習ノートを点検しながら振り返ることも必要です。親が子どもの勉強に関心を寄せ、率直な思いを伝えれば、お子さんは心を開いてノートを見せてくれるでしょう。

 問題点の在り処を子ども自身に気づかせ、少しずつ改善していけばよいのです。焦る必要はありません。しかしながら、とかく親はわが子の試行錯誤の様子を黙ってみていることができません。子どもは子どもなりの考えをもっています。そこで、親にいろいろ指図されると口答えをしたり反抗したりします。そんなとき、冷静さを失って激しく叱る親も出てきます。

 少々ならしかたありません。しかし、こうしたことが日常化すると、子どもの勉強に向かう姿勢自体が崩れてしまい、勉強嫌いになるなど、受験をめざしたこと自体に意味がなくなってしまいます。

 「わが子のことになると、どうしても感情的に叱ってしまう」と、悩んでおられる保護者がおられるのではないかと想像します。 そこで今回は、わが子への期待と愛情が適切に伝わる方法について考えてみようと思います。受験生活を通じて親子の絆を深めれば、お子さんは中学進学後も親を信頼し前向きな取り組みを失うことはありません。

子どもが率先して取り組む受験生活を実現しよう!

1.受験生活での約束事について親子で話し合う。
 毎日の学習生活の原則・ルールを、親子で話し合って決めましょう(学習計画についても、今の計画で問題ないか話し合いましょう)。受験生活での原則が明確であることは、勉強にも生活にもテンポが生じ、それが親にも子にも好影響を及ぼします。
 大切なのは、子どものプライドを尊重すること。叱るのではなく、子どもが自分で気づいて行動を修正するよう促せば、少しずつ勉強の自律性は高まります。

2.子どもへの「信頼」の気持ちを伝える。
 子どもは、「親に信頼されている」と感じるとやる気を高めます。親は指示・命令を控え、「計画通りやれるよね」と、信頼に基づく声かけをしましょう。
 やるべき勉強をしていないときには、咎めるのではなく、時間が来ていることを伝えましょう。親に言われてしているのではなく、自分からやっているのだという気持ちをへこませないことが重要です(子どもを追い込むと喧嘩になるだけ)。

3.勉強はリビングなど、親が見守れる場所でやらせる。
 勉強は、個室よりもリビングや食卓でさせましょう。小学生までの子どもは、親が見守ってくれている、ほめてくれる、という環境で勉強するほうが励みを得てやる気になります。
 また、小学生の子どもは「サボろう」という気がなくても、一人だと知らぬ間に楽しいことに流れがちです。自己管理ができる段階までは、親のサポートが必要です。
 勉強中は、ときどき子どもの様子を見て、激励してやりましょう。

4.指示や命令を避け、子どもに考えさせる。
 大人に言われた通りの勉強をしてよい成績をあげても、子どもの将来にはつながりません。自分で試行錯誤して這い上がれる子どもにしたいものです。
 子どもが問題に直面したときには、すぐに対処法を語って聞かせるのではなく、まずは子ども自身に問題点がどこにあるのかを考えさせましょう。
 長い受験生活で得られる最も大きな成果は、「自分で考えて解決する姿勢」を身につけることです。

5.どんなときにも感情的になって接しない。
「どんな立派な人間でも、わが子のことになると感情を押さえられないものだ」とよく言われます。親にとってわが子はそれだけ特別な存在なのですね。
 そんなわが子だからこそ、受験勉強に取り組む姿を冷静に見守り、応援してやりたいものです。受験生活は決して楽なものではありません。それだけに、受験までのプロセスで感じ取った親の期待や愛情は永遠に忘れないものになることでしょう。また、親にしても怒鳴りつけたい気持ちを押さえて子どもを忍耐強く導いた経験は、一生の思い出として残るに相違ありません。


 「こんなまどろっこしいこと、できるわけがない」と思われたでしょうか。しかし、こうした辛抱強い親の対応あってこそ、子どもは親の期待する人間に近づいて行けるのではないでしょうか。受験生活のプロセスは、子どもの人間としての枠組みの形成と軌を一にしているのですから。

 子どもは親に信頼されれば安心し、それに応えようという気持ちを高めます。「ちゃんとできるよ。やってみなさい」と励まされれば、「やれるかな」と思い、やってみるようになります。それが自信につながり、何でも自分でするようになります。また、親が取り組みのプロセスを見守り応援してくれたときには、子どもは心から喜びの気持ちをたぎらせ、次の行動に向けたモチベーションを高めます。

 テストで思わぬ失敗をしたとき、何よりも重要なのは「わが子に何かあったのだろう」と理解を示すことです。実際、理由なしにそのテスト結果はもたらされたのではありません。親がどんなときにも冷静に対応すれば、子どもも落ち着いて自分のしたことを振り返ったり、自分の考えを率直に親に伝えたりすることができます。親子が互いに気持ちを高ぶらせ、感情を露わにすることの続く毎日とは比較にならないほどのよい親子関係が築けることでしょう。何よりも子どもの勉強がはかどります。

 今回お伝えした点について、多少なりとも参考になる点、改める点はありませんでしたか? もしもあったなら、ぜひ意識して修正を試みてみてください。お子さんの表情が明るくなり、親の期待に沿った行動をとるようになるかも知れません。

 私ども学習塾の指導スタッフは、ご家庭でお子さんをサポートしておられる保護者の方々のご苦労を慮りつつ、お子さん一人ひとりが「自ら学ぶ姿勢」を携えた人間に成長されることを願って指導に当たってまいります。ご理解ご協力の程よろしくお願い申し上げます。


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