「自信を持つ」って大切

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2012年 5月 30日 水曜日

 今回は、ジュニアスクール3年部の様子をお伝えしつつ、そこでのある出来事をご紹介しようと思います。 

 前半の算数は、「ふしぎなものさし」を使って長さや数の操作に関して勉強しました。この「ふしぎなものさし」は、通常のもののような細かい目盛りがなく、代わりに0・1・2・6・13cmの目盛りだけが並んだ「ものさし」です。これを手にした子ども達からは、「えーっ、普通のと違う。」「mmの目盛りがないよ。」などと一斉に声があがります。そして、あえて使い方の説明をしないまま、第1問「この『ふしぎなものさし』を使って4cmの直線を引いてみましょう」という問題に取り組みました。まずは何もヒントを与えない状態で、どうやったらこのものさしで長さを測れるのか、子ども達それぞれにしっかり考えてもらいます。しばらくみんなで一生懸命考え、あれこれ悩んだ結果出てきたのは、「2cmを二回測って、それをつなげれば4cmになります」という意見でした。「確かにそれでも4cmの直線が引けるね。でも、ものさしを動かさずに線を書く方法があるよ。」と、さらに考えを深めるよう促すと、「えーっ、そんなのできんよ。」「だいたいの位置じゃダメ?」などと口々に言いながら、またあれこれと考え始めました。

 さらに数分が経過した頃、「あっ!!」と声をあげて、一人の女の子が手を挙げました。そして、「2から6の目盛りまで線を引けば、6-2=4で4cmの直線が引けます。」と、満点の発表をしてくれたのです。クラスのみんなからは「おー!!」「あー、そっか!」と驚きの声があがりました。しかし、実はこの時、私も内心驚いていました。なぜなら、この発表をしてくれた女の子は、やや算数を苦手としていて、プリントを解き終えるまでにいつもクラスで一番時間が掛かり、普段は自ら進んで意見を発表する機会の少ない子だったからです。その子が、誰も解けなかった問題の答えにクラスの誰よりも早く気付き、しかもそれをみんなに向かってきちんと分かりやすく説明できたことに驚いたと同時に、とてもうれしい気持ちになりました。

 続いて、後半の国語は「声に出して読んでみよう!」という音読の授業でした。まずウォーミングアップとして短い文をみんなで音読した後、『これはのみのぴこ』(谷川俊太郎著)の音読に挑戦しました。これは、1ページ目より2ページ目、2ページ目より3ページ目・・・と、後ろにいくほど少しずつ長くなっていく構成になっているのですが、これをクラス全員で1ページずつリレー読みするというのが今回の課題で、それをクラスの記録としてタイム測定することにしました。もちろん、どれだけタイムを縮めようとして早く読んでも、姿勢を正して一音ずつはっきりと大きな声で、というルールは厳守しなければなりません。誰かと競争する訳ではないですが、結果がタイムという形ではっきり表れるので、みんなやる気満々です。

 ジュニア3年張り切ってリレー読みを何度か行いましたが、途中で読み間違えたり、焦って読み飛ばしてしまったりで、タイムはなかなか縮まりません。そうして授業の終了時刻が迫ってきたところで、最後は各自の立候補制で音読の順番を決め、タイムの更新に挑戦することにしました。すると、子ども達の希望は、文が短くてプレッシャーの少ない前半部分の順番に集中・・・。これを見て、心のうちで「これは、一番長い文を読むアンカー役は誰も立候補しないかな・・・」と思いながらも希望を聞いたところ、なんと算数で「ふしぎなものさし」の秘密に最初に気が付いた、あの女の子が自信に満ちた表情で「はい!!」と元気よく手を挙げたのです。そして、その最後のチャレンジで、見事に最高タイムを更新!みんなで「やったー!!」と喜び合いました。

 今回、非常によく頑張った女の子は、普段はもの静かで、引っ込み思案なところもある子なのですが、最初の算数の中でしっかり発表できたことによって、きっと大きな達成感を得られたのだと思います。そして、それが本人の中で自信につながり、プレッシャーのかかるアンカーへの立候補という形で表れたのではないでしょうか。低学年の授業では、毎回のように大小様々なドラマが起こるので、教える側としては感動を覚えるような機会も多々あります(もちろんうまくいくことばかりではないですが・・・)。1つの成功で達成感を得ることができ、それによって自信を持つことできれば、色んなことに積極的に取り組むことができるようになるというのは大人も子どもも同じ。ですが、発達段階の低学年や未就学児の子どもさんにあっては、たった一つの経験が劇的な変化となって表れることもあるのです。自信をもつことの重要性を、改めて感じることのできた授業になりました。

(butsuen)

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「家庭学習」を研究する塾?

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2012年 5月 23日 水曜日

 弊社の社名である「家庭学習研究社」という名称についてですが、これまでに何度か「そちらは、普通の塾ですか?」と質問されたことがあります。先日も、中学受験に関わりのない知人から「何の家庭教師?」と言われ、驚いたことがありました。確かに、「塾なのに家庭学習を研究する?矛盾しているのでは?」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。

 弊社には、合格できる学力を保証するのは当然のこととして、子どもの学習は、受験が全てではなく、子どもの成長に資するものであるべきという考えがあります。これを低学年の学習に照らしあわせてみると、その根本にあるべきは塾や学校の授業ではなく、充実した家庭学習である、といえるのではないでしょうか。なぜなら、発達段階にある低学年にあっては、授業で知識を身につけることも大切ですが、それ以前に主体的に学ぶことの楽しさを知ることや正しい形で学習習慣を身につけることの方がより重要であり、そしてその学習習慣の基盤になるのは、やはり生活の中心である家庭での学習だといえるからです。
 まだ家庭での学習習慣が確立していない段階から、いくら塾や学校で難解な内容を学んだとしても、それらを本当の意味での学力として定着させることは非常に困難です。しかし、だからといって、問題集を積んで「お家でたっぷり勉強しようね。」と言ったところで、まだ幼い子どもさんにとっては、無理に机に向かうよりも好きなことをして遊ぶ方が楽しいに決まっていますから、おそらくうまくいかないでしょう。ですから、家庭で勉強に取り組むための動機付けや理解を助ける知識の土台形成として、塾の授業で楽しく主体的に学んだ経験を家庭に持ち帰ることに大きな意味があるのではないかと考えています。つまり、塾での授業が家庭学習のペースメーカーとなり、指針を示す役割を担うことで、「授業で学ぶ→家に帰って復習・宿題に取り組む→家庭学習(宿題)の内容を授業で確認・新たな単元を学ぶ→家に帰って・・・」という、家庭学習をベースとした塾と家庭が連動する一連の学習サイクルを確立させられれば理想的であるといえます。

 これから学習基盤を築く段階にある低学年にあっては、この時期にどのような経験をし、どのような姿勢で勉強に取り組むかによって、高学年や中学校進学以降の学習が方向付けられるといっても過言でありません。毎日を過ごす家庭での学習が、非常に大きな割合を占めるものになるからこそ、弊社の低学年部門では、学習意欲を喚起して家庭学習の動機付けにもつながる「楽しく学ぶ」工夫を随所に取り入れています。その楽しさと結びついた学習体験をもとに、保護者から働きかけを受けながら家庭での学習を毎日継続していくことによって、基本的な学ぶ姿勢が築かれていくと考えているのです。

 冒頭のような質問に対しては、必要であれば「家庭学習研究社はこんな塾ですよ(=怪しい会社ではありませんよ)」と、先述のような考えとともに話すようにしています。塾の立場から家庭学習を考えるということは、決して矛盾している訳ではなく、切り離しては考えられないものなのですね。

(butsuen)

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いよいよ「小学生 第1回」

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2012年 5月 16日 水曜日

 今回は、玉井式国語的算数教室1年部の授業風景をお伝えしようと思います。
 弊社玉井式1年部では、これから小学校で学び、初めて塾に通う子どもさんにも楽しく学習に取り組んでもらうため、弊社で作成する年間カリキュラムにも工夫をこらしています。その一つが、「玉井式 ジュニアS」という幼稚園年長カリキュラムの一部導入です。小学校入学前後にあたる3~4月は環境の変化も大きく、子どもたちにかかる負担も少なくありません。そこで、この時期を玉井式や小学校の学習内容に慣れるための導入時期と位置づけ、小学校の勉強をこれからスタートさせる子どもさんにとって授業のスピードも難易度もピッタリの「ジュニアS」を一部取り入れることにいたしました。そして、「そろそろ学校の勉強にも慣れて、生活リズムも安定してきているかな?」という5月以降、いよいよ玉井式小学校カリキュラムを開始するという流れで年間カリキュラムを設定しています。つまり、今回ご紹介するゴールデンウィーク明け最初の授業が、「玉井式国語的算数教室 小学生第1回」にあたるものなのです。

 今回、まず「きほんのおはなし」で勉強したのは、『なんばんめ』です。アニメーションによる説明と先生からの解説により、「右(左)から~番目」と「右(左)から~個」の考え方や両者の違いについて学びました。アニメの中では、弟のルディが「右から5個」を「右から5個目」と勘違いして、お姉さんのメアリーから指摘される場面がありましたが、それを見ていたクラスの子どもたちも、その後に取り組んだプリントで同じような間違いをしてしまうことも・・・。やはり、小学校カリキュラムということで少し難しくなったかな?「う~ん・・・」と悩む場面も見られましたが、その後の解説を受けて、全員正解することができました。
 次の「ものがたり算数」は、マギー家の姉弟6人がみんなで公園に遊びに行くという内容のお話でした。6人がすべり台を滑る順番や、遊具に乗る2人ペアの組み合わせ方などから、「きほんのおはなし」で学んだ『なんばんめ』に関する出題がなされました。このように、子どもたちが食い入るように見ていた物語から、自然な流れで無理なく算数の問題が出されるところは、やはり玉井式ならではの特徴ですね。先ほどまで登場人物に自分を重ねながら集中してアニメを視聴していましたから、問題にも取り組みやすくなりますし、さらには弊社が独自に作成した教具も併用することで、より一層子どもたちの理解を助けることができます。
 かたち最後の「かたちの形」では、『さんかくけいをみつけよう』をテーマに取り組みました。三角形の基本的な定義を学び、その後、直線を組み合わせた図形の中から三角形を探したり、棒を使って三角形を作る過程の中から「三角形が1つ増えると棒は2本ずつ増える」という規則性を見つけ出す段階まで進みました。中には、大人でも一瞬考えてしまうような内容の問題もありますから、すぐには正解にたどり着くことができませんでしたが、アニメの立体的な図形ヒントを見たり、各問題のために作成した教具を実際に自分の目で見て手に取って考えることで、頭の中にどんどんイメージが膨らんでいきます。その後の答え合わせでは、あちこちから「あーっ、そっか!」「わかった!!」という声があがりましたが、こうした反応は、難しい問題を自分なりに一生懸命考えたからこそ出てくるもの。こうした発見や驚きの積み重ねが今後の成長につながっていくのです。

 1年部もいよいよ小学生カリキュラムに入り、学習内容も本格化していきます。少しずつ難易度も上がっていくため、子どもたちが苦戦する場面も出てくるかもしれません。しかし、すぐに正解にたどり着けるかどうかは別として、今回のように一生懸命考えながら試行錯誤することで学びの基盤を築くことができますから、難しい問題にぶつかっても、楽しみながら最後まで諦めずに取り組んでもらいたいと思います。といっても、目を輝かせてアニメに夢中になっていたり、悩みながらも必死で問題に取り組んだり・・・、元気いっぱいの子どもたちの楽しそうな様子を見る限り、これからもきっと大丈夫だと確信しています。

(butsuen)

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「塾って楽しい」?

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2012年 5月 9日 水曜日

 先日、ある校舎に行った時のことです。授業開始前に子どもたちと雑談していた際、「先生!学校はあんまり楽しくないのに、何で塾は楽しいん?」と言われました。その時は「何でかな?でも、塾が楽しいと思ってくれるのはうれしいね。」などと答えましたが、後になって、ふと「なぜなんだろう?」と自問自答してみました。

 自分自身の幼い頃を振り返ると、毎日暗くなるまで外で遊んで帰ってきても、晩御飯の後に必ず母が熱心に勉強を教えてくれていました。田舎育ちでおおらかな時代だったということもあり、実は小学生時代に塾通いをした経験がありません。母のおかげで勉強の苦労もなく、友達にも恵まれ、その頃辛かったのは、目覚めの悪い体質で毎朝叩き起こされることぐらい(弊社イベント等でお話させていただいている「自立できていない子ども」ということになりますね・・・)で、今振り返ってみても、子どもの頃に「学校がつまらない」と感じたことはほとんどなかったように思います。また、中学生になって初めて某塾に通うようにはなりましたが、そこはかなり厳しいスタイルの指導で、答えを間違えたり予習が足りなければ、容赦なくみんなの前で叱り飛ばされるようなところでした。ですから、「学校より塾がいい」などと思ったことは一度もなく、学年の違いはあっても、先述の「塾が楽しい」という言葉は、私にとって非常に大きなものでした。

 その後も自分なりにあれこれ考えてみたところ、きっとその子にとっての家庭学習研究社が、「居心地が良い」場所になっていることが最大の理由なのではないかという結論に至りました(自問自答による勝手な結論ですが)。低学年部門の授業では、子どもたちが主体的に学び、自分なりに考えて発表することを大切にしていますので、「積極的に情報を吸収する→自ら考える→自分の言葉で表現する」という一連の活動の積み重ねが、さらなる学ぶ楽しさにつながっていきます。教室をこうした学びの場とするために、授業の随所に楽しみながら学べる工夫をしていることや、毎回全員が発表の機会をもてるようにすることによって、子どもたちが積極的に授業に参加することができ、それが他では味わえない達成感を得ることのできる貴重な場となっている理由なのかもしれません。

 自発的に勉強して学力を向上させることは、自分のため、ひいては自身の将来のためであることはいうまでもありません。しかし、同時にそうした子どもたちの頑張りが、学習の場を新たな発見に満ちた居心地の良いものにしているともいえます。先述の「塾が楽しい」と言ってくれた子は、楽しみながら積極的に授業に参加し、毎回の授業で達成感を得ることによって、居心地の良さを感じてくれているのだと思います。そうした空間であれば、低学年に限らず中高校生であってもきっと「楽しい」と感じられるでしょうし、それが自然と継続的な学習に結び付いていくはずです。単に知識を与えるだけでなく、子どもたちが楽しく学びながら積極的に頑張ることができるような環境を提供することは、私たちにとって大切な役割の一つなのですね。

(butsuen)

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