今回は、ジュニアスクール3年部の様子をお伝えしつつ、そこでのある出来事をご紹介しようと思います。
前半の算数は、「ふしぎなものさし」を使って長さや数の操作に関して勉強しました。この「ふしぎなものさし」は、通常のもののような細かい目盛りがなく、代わりに0・1・2・6・13cmの目盛りだけが並んだ「ものさし」です。これを手にした子ども達からは、「えーっ、普通のと違う。」「mmの目盛りがないよ。」などと一斉に声があがります。そして、あえて使い方の説明をしないまま、第1問「この『ふしぎなものさし』を使って4cmの直線を引いてみましょう」という問題に取り組みました。まずは何もヒントを与えない状態で、どうやったらこのものさしで長さを測れるのか、子ども達それぞれにしっかり考えてもらいます。しばらくみんなで一生懸命考え、あれこれ悩んだ結果出てきたのは、「2cmを二回測って、それをつなげれば4cmになります」という意見でした。「確かにそれでも4cmの直線が引けるね。でも、ものさしを動かさずに線を書く方法があるよ。」と、さらに考えを深めるよう促すと、「えーっ、そんなのできんよ。」「だいたいの位置じゃダメ?」などと口々に言いながら、またあれこれと考え始めました。
さらに数分が経過した頃、「あっ!!」と声をあげて、一人の女の子が手を挙げました。そして、「2から6の目盛りまで線を引けば、6-2=4で4cmの直線が引けます。」と、満点の発表をしてくれたのです。クラスのみんなからは「おー!!」「あー、そっか!」と驚きの声があがりました。しかし、実はこの時、私も内心驚いていました。なぜなら、この発表をしてくれた女の子は、やや算数を苦手としていて、プリントを解き終えるまでにいつもクラスで一番時間が掛かり、普段は自ら進んで意見を発表する機会の少ない子だったからです。その子が、誰も解けなかった問題の答えにクラスの誰よりも早く気付き、しかもそれをみんなに向かってきちんと分かりやすく説明できたことに驚いたと同時に、とてもうれしい気持ちになりました。
続いて、後半の国語は「声に出して読んでみよう!」という音読の授業でした。まずウォーミングアップとして短い文をみんなで音読した後、『これはのみのぴこ』(谷川俊太郎著)の音読に挑戦しました。これは、1ページ目より2ページ目、2ページ目より3ページ目・・・と、後ろにいくほど少しずつ長くなっていく構成になっているのですが、これをクラス全員で1ページずつリレー読みするというのが今回の課題で、それをクラスの記録としてタイム測定することにしました。もちろん、どれだけタイムを縮めようとして早く読んでも、姿勢を正して一音ずつはっきりと大きな声で、というルールは厳守しなければなりません。誰かと競争する訳ではないですが、結果がタイムという形ではっきり表れるので、みんなやる気満々です。
張り切ってリレー読みを何度か行いましたが、途中で読み間違えたり、焦って読み飛ばしてしまったりで、タイムはなかなか縮まりません。そうして授業の終了時刻が迫ってきたところで、最後は各自の立候補制で音読の順番を決め、タイムの更新に挑戦することにしました。すると、子ども達の希望は、文が短くてプレッシャーの少ない前半部分の順番に集中・・・。これを見て、心のうちで「これは、一番長い文を読むアンカー役は誰も立候補しないかな・・・」と思いながらも希望を聞いたところ、なんと算数で「ふしぎなものさし」の秘密に最初に気が付いた、あの女の子が自信に満ちた表情で「はい!!」と元気よく手を挙げたのです。そして、その最後のチャレンジで、見事に最高タイムを更新!みんなで「やったー!!」と喜び合いました。
今回、非常によく頑張った女の子は、普段はもの静かで、引っ込み思案なところもある子なのですが、最初の算数の中でしっかり発表できたことによって、きっと大きな達成感を得られたのだと思います。そして、それが本人の中で自信につながり、プレッシャーのかかるアンカーへの立候補という形で表れたのではないでしょうか。低学年の授業では、毎回のように大小様々なドラマが起こるので、教える側としては感動を覚えるような機会も多々あります(もちろんうまくいくことばかりではないですが・・・)。1つの成功で達成感を得ることができ、それによって自信を持つことできれば、色んなことに積極的に取り組むことができるようになるというのは大人も子どもも同じ。ですが、発達段階の低学年や未就学児の子どもさんにあっては、たった一つの経験が劇的な変化となって表れることもあるのです。自信をもつことの重要性を、改めて感じることのできた授業になりました。
(butsuen)