“オノマトペ”を親子で楽しもう!

2月 11th, 2022

 新年度の講座の開講日が少しずつ近づいてまいりました。とは言え、学校が新学期を迎えるまでにはだいぶ時間があります。まだ学習塾選びが終わっていないご家庭も多数おありでしょう。弊社への通学を検討いただいているご家庭におかれては、まずは「会員選抜試験」を受けてみてください(無料です)。お子さんの算数と国語の基礎学力の状況もおわかりになるでしょう。首尾よく合格されたら、ぜひ入会に向けて親子で話し合っていただければと思います。

 6年部の会員家庭におかれては、長かった受験生活が終わり、親子共々一息ついておられることでしょう。弊社の合格実績については、ホームページでご報告している通りです。男女の私立難関校の合格者数は、もう少しよい結果を予想していましたが、毎年同じわけにはいきません。広島大学附属の合格者数は、調査書が関与するせいか合否の予測がやや難しく、弊社内での学力判定通りにならないこともあります。昨年は、予想外に合格者が多く、今年はその逆の結果になったというところでしょうか。受験生の進路選択の状況は、詳細を把握するまでに至っていません。また、機会を見てご報告する予定です。

 さて、今回のブログの話題に移りましょう。ご存知のように、日本は年間を通して雨が多く、豊かな水資源に恵まれた国です。無論、人間にとって水は生命にかかわる重要なものですが、日本ではその水に事欠かない代わりに梅雨時には大雨や洪水にも悩まされます。またそのいっぽう、水(雨や雪)は季節の移り変わりに彩りを添える大切な役割も果たしています。必然、日本には水に関する言葉がたくさん存在します。今回は、このことに関わる話題を取り上げ、お子さんとの言葉遊びにつなげていただくことをご提案してみようと思います。

 なお、今回の話題を思いついたのは、文明に関する評論で有名な森本哲郎氏(1925-2014)の有名な著作(「日本語 表と裏」新潮文庫)が自宅の本棚で目に留まり、久しぶりに読んでみたことがきっかけでした。そこに関わる著述をちょっとご紹介してみましょう。

 (前 略)日本人は水の音に限りない親しみを抱き、安らぎを覚え、懐かしさを感じるのだ。芭蕉が「古池や」の一句をもって俳聖のように仰がれ、蕪村が春の海を「のたり/\」と表現したことで人口に膾炙(かいしゃ)されるようになったのも、けっしてゆえないことではない。

 では、日本人の胸の奥で、水はどのような音を響かせているのだろうか。水音を表現した擬態語、擬声語がその微妙な音をさまざまにつたえている。擬態語というのは、ものごとの状態を象徴的に音であらわした語であり、擬声語というのは物音や動物の鳴き声などを、写実的にとらえた語である。言語学では、それをオノマトペ onomatopéeというが、日本語には、こうした擬声語、擬態語がきわめて多い。オノマトペが日本語の特質だといってもよいほどである。このことは、おそらく日本人が音に対してきわめて敏感であることを語っているのであろう。そして、それも水と深い関係があるように思われる。というのは、数多くの擬声語、擬態語のなかでも、ことに水に縁のある語が目立つからである。

 上記引用部分の後、著者の森本氏は水に関わる擬声語の実例をたくさんあげておられました。今からそれらをご紹介してみますが、そのまま言葉を取り上げるのではなく、穴埋め式にしてみました。○の部分に当てはまる文字をお子さんと一緒に考え、クイズのように楽しんでみたらいかがでしょうか。

1.水で布などを洗う音     ○ぶ○ぶ    
2.涙が流れる様ようす     ○め○め
3.水気を含んでいるようす   ○っ○り
4.湿気が過度なようす        ○め○め
5.水がたえず流れ出る状態   ○ゃー○ゃー
6.水が揺れ動くようす     ○ゃぶ○ゃぶ
7.水滴が垂れる音       ○た○た
8.水が跳ねるようす         ○ちゃ○ちゃ
9.水にひどく濡れるようす   ○ちゃ○ちゃ  
10. 水にひどく濡れるようす    ○しょ○しょ
11. 水に軽そうに浮かぶようす    ○か○か
11. 水に沈むようす         ○く○く
13. 雨が降り出すようす      ○つ○つ
14. 水から泡が浮かぶようす    ○か○か
15. 水を一気に飲み干すようす   ○ぶ○ぶ
16. 水が吸い込まれるようす       ○ぼ○ぼ
17. 大波が打ち寄せるようす        ○○ろ
18. 滝が落ちるようす          ○う○う
19. 石が水中に落ちるようす       ○ぶん
20. 水が跳ね返るようす        ○ちゃっ
21.
夕立が降るようす          ○ーっ
22. 梅雨の雨が降るようす          ○と○と

 こうしてみると、オノマトペには同じ音の繰り返しが多いですね。上記のクイズは低学年児童には無理でしょうが、4年生ぐらいだとそこそこ答えられるかもしれません。試してみてください。また、なかには保護者の方々にも難しく感じられた設問もあったかもしれません。それは、質問者である私の不適切な設定のためです。お許しください。

 ほかにも、日本には水に関する言葉が実に数多くありますね。それらを一緒に調べてみるといいですね。そうすると、生活に密着したものほど、細かくいろいろなことばの振り分けがあるということにお子さんも気づかれるでしょう。

 雨にしても、外国ではただ雨に該当する言葉ぐらいしかない国もあるのに対し、日本には五月雨、時雨、にわか雨、春雨、夏雨、驟雨(しゅうう)、涙雨、暴雨、天気雨、狐の嫁入り、お湿り、慈雨、霧雨、小ぬか雨、村雨、通り雨・・・なんと多彩な雨の呼称があることでしょう。おもしろいですね。いっぽう、日本で牛や豚などを食するようになったのは欧米諸国よりもずいぶん遅いからでしょうか。これらの動物の肉の部位を細かく分けて言い表す習慣はありませんでした。そのせいか、ロースとかカルビ、リブ、サーロインなど、多くは外来語をそのまま使っています。

 ところで、森本氏の「日本語 表と裏」には、上記のようなオノマトペの語源について触れている箇所があります。

 (前 略)「雨がしとしと降る」の「しとしと」という擬態語であるが、おそらくこの語は、「湿」という漢字から生まれたのであろう。その「湿」から、「しっとり」も、「じゃぶじゃぶ」も、「じめじめ」、も、「しゃーしゃー」も派生したと思われる。が、ひとたびそのような音声がオノマトペとして使われるようになると、それは本来の語義から独立し、微妙な情感を育て上げることになる。たとえば、清音と濁音の使い分けがそうである。水には澄んだ清い水と、濁った水とがある。そうした水の様相は、そのまま音声にはねかえって、「しとしと」と「じとじと」とが区別され、「しっとり」と「じっとり」、「しゃーしゃー」と「じゃーじゃー」さらには「きらきら」と「ぎらぎら」「はらはら」と「ばらばら」、「さーっ」と「ざーっ」という使い分けが成立した。そして清音は快く、濁音は不快感を伴う感覚語になったのである。

 この記述は、おとうさんやおかあさんにとっても参考になると思います。こうしたことを話題にしながら、お子さんが言葉というものに興味をもち、豊かな感性を育むよう導いてあげてください。きっと日本語に対する興味が随分と違ってくると思います。そのような時間をもつこと自体も、各家庭にとって大いに意味があるでしょう。

 

※正解 1.ざぶざぶ 2.さめざめ 3.しっとり 4.じめじめ 5.じゃーじゃー 6.じゃぶじゃぶ 7.ぽたぽた 8.ぴちゃぴちゃ 9.びちゃびちゃ 10.びしょびしょ 11.ぷかぷか 12.ぶくぶく 13.ぽつぽつ 14.ぼこぼこ 15.がぶがぶ 16.ごぼごぼ 17.とどろ 18.ごうごう 19.どぶん 20.ばちゃっ 21.ざーっ 22.しとしと

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